こんにちは、HR NOTE編集部 藤本です。
今回は、経路検索アプリ『駅すぱあと』を提供する株式会社ヴァル研究所が取り組む「見える化・カンバン・カイゼン」をご紹介します。
日々組織で仕事を進めていく中で、「業務が属人化してしまう」「隣に座っている人が今日何をやっているかわからない…」という事態が起こってしまいがちです。そんなお悩みがある企業様も多いのではないでしょうか。
ヴァル研究所では、「カンバン」や「KPT」を導入し、組織活性をはかり続けています。今回はそんな取り組みの概要や、実際の運用方法について、オフィスツアーの様子とともにあわせてお届けします。
新井 剛 | 株式会社ヴァル研究所 開発部 部長
プログラマを経て現在は駅すぱあとエンジンを司る部門長として組織をマネジメント中。同時に、アジャイルコーチ、カイゼンファシリテーター、ワークショップ等で組織開発にも従事。CSP(認定スクラムプロフェッショナル)、CSM(認定スクラムマスター)、CSPO(認定プロダクトオーナー)。
代表著書:カイゼン・ジャーニー(https://www.amazon.co.jp/dp/4798153346)
新関 俊文 | 株式会社ヴァル研究所 総務チーム リーダー
社労保険労務士であり認定スクラムマスターである、自称、世界で唯一の”スクラム社労士”。入社後、営業、広告宣伝担当を経て、2008年から総務チームにて、人事労務担当になる。3年前からチーム内でアジャイルな取り組みをスタートし、現在に至る。最近ではグループ会社の社内制度改定に注力中。
丸山 ひかる | 株式会社ヴァル研究所 API Technology Dept
2014年に株式会社ヴァル研究所にエンジニアとして新卒入社。入社して間もなく経路検索WebAPI「駅すぱあとWebサービス」の開発部署へ配属。新機能の開発や保守、基盤の改修などに携わる。開発だけではなくお客様とのやりとりや、ドキュメントの改善活動を通してデベロッパーリレーションに興味をもち、テクニカルエバンジェリストとなる。現在はエンジニアと、自社サービスをつなぐべく積極的に活動中。
「見える化・カンバン・カイゼン」とは?
全社的な意識浸透の秘訣は、スモールスタートからの伝播だった
――「見える化・カンバン・カイゼン」は、どんな経緯で始められたのですか?
新井氏:
簡単にお伝えすると、「業務における属人化・部署のサイロ化からの脱却」「メンバーの精神的負担の軽減」という2つのポイントの改善が目的でした。
ヴァル研究所には「駅すぱあと」という、30年続くメインプロダクトがあります。
ソフトウェア業界で、冠のついてない独立系のソフトウェア会社で、こうしたパッケージビジネスをやっている会社は例を見ません。ただ30年も続いていると、プロジェクト開発チームも成熟していて、各部門を見渡せばサイロ化(※)し、役割や業務担当が随分と属人化していたんですね。
例えば、1日誰ともコミュニケーションをとらないプログラマーがいたり、隣に座ってる同じチームの人が今日何の業務をやってるかわからなかったり、とある業務担当が休んでしまったら売上が止まってしまったりなど、その傾向は顕著でした。
また、「駅すぱあと」というプロダクトは、その開発・運用過程に細かな神経をつかっています。なぜかというと、サービスそのものがコモディティ化(※)していて、例えば表示されている運賃が1円でも違っていると、そこから生まれる利用者の不利益は大きく、サービスの信頼度ダウンにつながってしまうんですね。
そのため、メンバーは神経をすり減らしながら、集中力を極大化して仕事に向き合っているので、それをなんとかもっと楽にできないものかと考えていたんです。ストレスフルっていうわけではないですが、緊張感も絶えず、大変なので……。
「もっとコミュニケーション量多く仕事を進めていきたい」「もっと見える化して改善していきたい」、そして「もっと自動化できる部分は自動化して、より安全により楽に仕事ができる環境をつくりたい」、そう思って2012年から着手し、徐々に部署の垣根を越えて広がっていったのが「見える化・カンバン・カイゼン」の意識です。
つまり、組織・チーム・プロジェクトなどにおいて、関わるメンバー全員が見れる場所にそれぞれが必要な業務をカンバン方式で可視化し(見える化・カンバン)、業務効率を高め、属人化を解消していく(カイゼン)していくということですね。
――最初はスモールスタートだったんですね。
新井氏:
そうですね、状況を改善するために会社の経営会議で「アジャイル(※)を推進したい」と提議したのが始まりでした。組織内での業務の属人化をなくし、またコミュニケーション量を増やしながらチーム連携して、メンバーひとり当たりの無駄な業務負担を減らしていきたいと考えてスクラム開発(※)を進めたいと思ったんです。
主体的にこの取り組みを進めていくチームとして、「アジャイル推進委員会」を会社の公式な組織図に掲載する承認をもらいました。
当時、会社全体の6割がエンジニア組織だったのですが、そこから着手したのが始まりです。
「アジャイル推進委員会」は公募制にして、会社全体から手をあげてくれたメンバーと一緒に勉強しながら、進めていきました。学んだことは、それぞれ自分のプロジェクトや組織へ持ち帰って、トライしていった感じですね。最初5人くらいの委員体制で進めたんです。
――スモールスタートから、どのように全社へ広がっていったのですか?
新井氏:
徐々にですね。アジャイル推進委員会のメンバーも年度によって入れ替わっていきます。そうすると、アジャイルの影響を受け、トライしてみた人が少しずつ会社のなかで増えていったんです。そこから、「あのチームはこういう取り組みしてるからうちもやってみようよ」と、なかば口コミのように広がっていったように思います。
――トップダウンのような全社的な取り組みだと、いつの間にか形がい化してしまったりする例もあると思うのですが、そうならなかったのは主体的なスモールスタートからの展開だったからでしょうか?
新井氏:
そうですね、主体的な取り組みで、自分たちでコントロールできていることが影響していると思います。ホワイトボードのレイアウトにしてもボードやカイゼンアイディアの名前づけにしてもそうです。「今こういう問題があるからこの方法を試してみようか」と、メンバーたちが主体的に改善案を出し、導入していくので、改善施策の形もどんどん変わっていくんです。
形がい化しないのは、こうした改善施策の改善を常日頃からメンバー自身が考えているからかもしれませんね。すべては、各々がより仕事をしやすくするためなので、浸透しやすいのではないでしょうか。
部署単位で変わる改善施策。その部署オリジナルの「アジャイル活動」
――具体的には、「見える化・カンバン・カイゼン」の意識から、どんな施策を実行しているのですか?
新井氏:
さきほどお伝えしたように、「この施策を全社で実施しよう!」という取り組みではなく、各部署でそのチームの組織課題に向き合い、施策を実行しています。基本的には、KPT(ケプト※)という振り返りプラクティスを用いて見える化を実行しています。
新関氏:
私の管轄は管理部門なのですが、最初に新井も言っていたように、まさに縦割り組織の代表格だったんです。総務とひとくくりにしても、なかにはさまざまな業務があって、当時は人事、労務、法務、庶務、それぞれに担当がいました。とはいえ、4~5人で席も隣り合わせで同じ部屋にいるんですね。なのに、実は隣の人がどんな仕事をやってるかわからない。それぞれの業務に繁忙期・閑散期があって、その時期も異なるのですが、お互いがお互いの業務内容を知らないので、助け合うこともできなかったんです。
管理部門というひとつの組織ではありますが、それぞれがそれぞれの分野でプロフェッショナルの知識を持っていて、完全に個人で仕事をしている状態でした。
この現状に対して、「みんなで仕事を共有できたらいいよね」という共通の思いが生まれたんですね。
そこで、アジャイル推進委員会で取り組んでいたカンバン方式(※)を用いて、各自の仕事・業務の見える化から、少しずつ取り組んでいきました。その結果、みんなで助け合いながら仕事を共有できるようになったんです。
管理部門で利用しているカンバンには、誰のタスクかを明記しません。取り組まなければならないタスクに関しては、スキルがあってそれぞれのタスクをこなせる人が優先順位をつけて業務を進めていきます。
こうしたチーム全体の必要業務・タスクを見える化しながら、効率的に仕事を進めていけるようになりました。
丸山氏:
私はエンジニア主体の部門にいて、主にWebAPIを開発・保守する仕事をしています。2014年入社なので、カンバン方式による見える化が広まってきた頃に入社をしたんですね。
それでも入社をしてから、いろいろなことが改善されてきたと思います。
たとえば、コミュニケーション手段にチャットを導入したり、迅速に障害対応できるように、音声で知らせたりするような仕組みも導入しました。
サーバー構成図やアプリケーション構成図も、デジタルではなくアナログで管理しています。
以前はデジタル管理だったのですが、KPTで振り返りをおこなった際に、「トラブル対応ができる人とできない人がいる」「構成図データを誰がどう管理するのかがあやふやになっている」という問題が出てきたんです。
そのとき「それであれば、アナログでつくり直して、目にとまる場所に可視化しよう!」という改善策があがり、「構成図の見える化シート」を全員でつくったんです。
アナログ管理にすると、組織で状況を共有する際にとても便利なんですよ。システム構成を変えたら自分でシートの構成図も必ず変えておく。障害があったら見える化シートを見ながら全員で確認できる。打ち合わせのときに印刷したりデータを呼び出したりすることもなく、とてもスムーズに仕事ができるんです。
ヴァル研究所のオフィスツアーへ!
――この活動に取り組まれている現場を、実際に見て学べるオフィスツアーを開催していると伺いました!
新井氏:
はい、実施しています。これまでにご説明した内容を振り返りながら、ご案内しますね。
【1】総務チーム(管理部)
新関氏:
このシートが今週のタスクを示してます。
毎週金曜日の夕方に、来週1週間何をするか、全員で打ち合わせをしてタスクを洗い出します。付せんを書き合って、ホワイトボードに貼っていきます。
ミーティングや期限付きのタスクは分けて貼って、それ以外のものについては、重要度と緊急度に分けて並べ替えをしていきます。
また、デイリーで取り組むタスクも分けています。1日が終わるころには、今日のタスクがなくなるように意識して取り組みます。それぞれ終わったら「Done」の欄に移動。また、今各自がどのタスクに取り組んでいるかわかるように、マグネットを使って示します。アバターみたいですよね。
新関氏:
こちらは、チームとしての向こう半年間の目標を管理しているボードです。長期的な目標も、その進捗を一元化して管理することにしています。この紐は「現在地」ですね。
新関氏:
これは「にこにこカレンダー」。朝出勤したときと退勤するときの気分も可視化しています。シールの色が気分の高低を表しています。
全員の色がそろったら「スイーツでも食べようか」と管理部長が甘いものを買ってきてくれるんです。
――そんな遊び心もいいですね!
【2】セールスプロモーションチーム(ソリューション事業部)
鈴木 菜奈美| 株式会社ヴァル研究所 ソリューション事業部 広報
昨年8月に入社。前職では広告営業を経験し、セールスと広報を担当。横のつながりを広げるために交流会や勉強会に積極的に参加している。製品やサービスだけでなく、社内のさまざまな取り組みを世の中に発信していけるよう活動中。
鈴木氏:
セールスプロモーションチームは私からご紹介しますね!ここでは、広告の販売、個人向け商材のマーケティングやプロモーション、ニュースリリースなどをおこなっています。
ここでも、他部署と同じように、「見える化・カンバン・カイゼン」を実行しています。
――ホワイトボードに、“うんちマーク”がありますね。
鈴木氏:
これはですね……残業時間管理の見える化ボードです。「1時間1うんち」で換算して書いています。(笑)
これはただうんちが書きたくて書いてるわけではなくて、減らしたくてうんちにしているんです。なるべく書きたくないので減らしたいし、一人だけたまってるのはそれも嫌なので……。
朝会のときに、昨日何時間残業したっていうのを確認して記入しています。
鈴木氏:
こちらは「おっぱいボード」です。これは「駅すぱあと」のアプリ企画のブレストにつかっています。課金メニューを考えるときに、ブレストで出したアイディアを貼っていくんですね。
良さそうなアイディアはおっぱいの周りに貼っていくんです。「腕とか腹部にある脂肪をおっぱいに上げる」みたいなイメージですね!
アプリの課金企画にも、Android向けとiOS向けがあるので、それぞれで付せんも色分けしています。どちらのOSも同じぐらいのボリュームにしないと偏りがでてしまうので、それも左右のおっぱいのバランスを整えるように意識しています。
――発想が女性ならではですね!これも遊び心満載の「カンバン」ですね。
【3】API Technology Dept.(API開発部)
丸山氏:
こちらが、この部署のカンバンボードです。ここで朝会がおこなわれています。ホワイトボードの上部についているのは、スマホ固定装置です。最近導入しました。
カンバンボードはアナログなので、社外で仕事をするときでも確認できるように、またテレビ会議にも使えるように、スマホのカメラで映し出せるよう改善したんです。台風の日のリモートワークにも一役買います。
――この「残機」の表示はなんですか?
丸山氏:
この「残機」の表記も、この部署独特ですね。「割り込みの業務でどれぐらい時間を割かれたか」を表しています。
2週間分のタスク・作業予定を決めるのですが、イレギュラーで割り込んでくる作業がどうしても発生します。それが、予定していた作業にも影響してしまう。
割り込みがどれぐらいあるのかというところと、誰がそれに時間を割かれているかというのを「残機」表示で、見える化しています。
この「残機」がたくさんあるメンバーは、その日の業務に余裕があるということなので、「残機」が少ないメンバーに助け船を出したりします。
丸山氏:
これがサーバー構成図ですね。システム障害に対応できる人間とできない人間がいて、その状況を改善しようと可視化したのが始まりです。以前はデジタルで管理していたんですが、3年ほど更新されていなくて……。アナログにしたことで、今では常に最新の状態を保てています。変更するときでも簡単に修正できるように、ホワイトボードシート、付箋、消せるマーカーを使うなど工夫をしています。
丸山氏:
「いまサービスでトラブルが発生しているよ」ということを、ダー●ベーダーがお知らせしてくれるんです。工場のパトランプみたいなものですね。
――お知らせするダー●ベーダーは奉られているんですね!
丸山氏:
そうですね。トラブルがおきないようにみんなで祈願しています。(笑)
これとは別に電光掲示板もあって、「いま中央線が止まっている」「テストが失敗した」「無事リリースできた」「緊急なので皆さん集まってください」などのリアルタイム速報を可視化し、お知らせする仕組みもあります。ダー●ベーダーのお知らせの取り組みがマネされて、より楽しく仕事ができるように、可視化が社内に広がっていった例ですね。
【4】鉄道制作チーム・バス制作チーム
新井氏:
ここのフロアは鉄道・バスのデータを制作・メンテナンスするチームです。鉄道やバスの時刻表、運賃、路線データを開発・管理・保守することが重要なミッションとなります。
このように、バリューストリームマップ(プロセスの行程を見える化してボトルネックを発見する方法)が用いられていたり、タスクボードによって各業務の日々の進捗を可視化しています。工場のラインと同じように、どんな順序でどういうタスクがあるかを可視化していて、「この作業フローに無駄があるんじゃないか」「ここに時間がかかっているから、このプロセスをカットしよう」というディスカッションもこのボードの前でおこなっています。
あとは、「さんくすボード」を作成していて、チーム間での「ありがとう」も可視化しています。
【5】Business Development Dept.(新規ビジネス開発部)
新井氏:
この部署では、いろいろなアイディアを仮説検証しています。仮説があってるのかどうか、実際にWebアプリに組み込んだりしながら試行錯誤をしています。
チーム力を高めるために、これらの仮説検証のボードだけでなく、日々の進捗共有ボード、振り返り、顧客の課題、商談中の顧客ステータスなども見える化を実施して、全員で共有しています。業務の目的や、緊急性・重要性なども含め、やることが明確になることでチームでの成果が格段に向上するからですね。
新しい発見と学びは、社外にも社内にも波及する
――オフィスツアーありがとうございました!このツアーをはじめたのは、どんなきっかけがあったのですか?
新井氏:
先程お話したKPTの振り返りプラクティスが浸透していくのに合わせて、社内標準の振り返りフォーマットを導入することにしました。
月々の業務進捗報告シートをKPT(Keep/Problem/Try)にそって、記入していくことになったのですが、うまく使いこなせないメンバーがたくさんいたんです。
そのときに、たまたま知り合いだったKPTの書籍(「これだけ! KPT」)を書いている天野 勝先生に依頼して、講演やワークショップを開催してもらったんですね。その先生経由で、実際の導入事例を見たいという企業様に向けて、オフィスツアーを実施するようになりました。これがきっかけですね。
このオフィスツアーはオフィシャルに公募しているものでもなんでもなく、人づての紹介で広がってくれているんです。
――今までに、どのくらいの企業が参加しているのですか?
丸山氏:
今、175社です。36社に順番待ちいただいているんですよ。
新井氏:
これまでオフィスツアーに来てくださってる企業の方々は、アジャイルソフトウェア開発やスクラム開発手法を取り入れたいと思って、実際の導入現場を見に来られる方が多いです。
カンバン方式を取り入れて業務効率をはかりたい、と言われる方もいらっしゃいます。職種としては、開発エンジニアの方だったり、プログラマーの方だったり、ソフトウェア業界のマネージャーの方が参加されます。
新関氏:
なかには、組織づくりの観点から、総務・人事関連のお仕事をされている方が見学にいらっしゃることもあります。「隣の人が、今どんな業務に取り組んでいるのかわからない」という課題は、どこの企業様でもあるようですね。
丸山氏:
オフィスツアー当日のファシリテーションは、新井さんや私がメインに対応しています。多いときには週に3回実施していますね。
1回1時間半~2時間くらいなのですが、見学に来られた企業の方の質問量によっては伸びてしまうこともあります。(笑)
――オフィスツアーを実施されて、社内の雰囲気の変化などはありますか?
丸山氏:
たくさんの企業さんが見学に来てくれるので、現場の社員にも、自分たちが日々取り組んでいることを社外の方に説明する機会が生まれるんです。そのこと自体が日々の業務に対しての振り返りになることもあります。
また、社外の方に興味を持ってもらえることは、「自分たちのやってることって間違ってないんだな」という自信につながるのかなと思います。社外の方に称賛されることって、嬉しいものですよね。
1年に1回、アジャイル推進委員会主導で、社内メンバー向けのオフィスツアーも開催します。社内のインナーブランディングにもなりますし、隣の部署への理解が深まったり、別部署で取り組んでいる改善施策を持ち帰ったり、こうした新しい発見もたくさんあるので、社内活性にもつながっています。
「見える化・カンバン・カイゼン」を導入して変わったことは「場」ができること
――エンジニアが多い企業で、あえてアナログで管理する、そのギャップがおもしろいですね!デジタルだと管理しきれないっていうのもなるほどなと思いました。
丸山氏:
ありがとうございます。基本的にカンバンは、「To Do」と「Doing」と「Done」この3つのレーンが一番よく見る形式です。ですが、ボードのスペースの問題で「ToDo」と「Doing」を一緒にせざるを得なくなったときがありました。
そのときにマグネットでアバター化したのですが、そうするとひとりのひとが複数のタスクを同時におこなわなくなったんです。進捗中の仕事はひとつまでになるので、自然と業務にも集中でき全体的に効率化できるようになったんですね。
日々カンバンも効率的でわかりやすい使い方を模索しているので、形がい化せず楽しんで取り組めているんじゃないかと思います。
新関氏:
大事なのは遊び心ですよね。継続的に施策を進めるには、アバター化もそうですが、メンバーが楽しんで主体的に取り組めることが大切なんじゃないかと思います。
――この活動を始めてから、組織内で変わったとことはありますか?
新井氏:
みんなが集まれる「場」ができたことですね。チームや各自の「ToDo」「Doing」「Done」を記載しているカンバンの前で、朝会をやったり緊急ミーティングをやったり、自然とそうした場所ができます。業務進捗などが可視化されていると、コミュニケーションも端的により良い質でおこなえて、業務の無駄・ムラが減ってくるんです。作りすぎずにすむし、作らなさすぎもなくなります。
一番奥の大きいデスクに管理職がいて、「近寄りがたいけどハンコをもらいにいかなきゃ」と新入社員がお偉いさんの様子を伺っている……というような風景や、会議室で喧々諤々話して責任を押しつけあっているなど、そういう昔ながらの雰囲気がほぼなくなりつつあるんですよ。
カンバンボードの前で、チームメンバーが集まり、半円になってワイワイガヤガヤ話すように問題を解決していく。
そうすると、「問題vs.我々」という構造ができあがるんですね。チームみんなでモンスターを倒しにいく、某ゲームのような感じです。「あのモンスターをどう協力して倒そうか」と、会社のプロジェクト進行のなかで、ポジティブな意見交換をする場ができます。
――「こんな組織にしていきたい」など、今後の展望などお聞かせください。
丸山氏:
今後は、「見える化・カンバン・カイゼン」の成果を数値化していきたいですね。
自分たちが取り組んでいて、やりやすいと思った方法が、どんな定量的な数値になるのかは気になっています。具体的な数字があれば説得力が増すので、カンバンを導入したいという他社さんのお力にもなれると思います。
新関氏:
改善にゴールはない。だから手を止めちゃいけない。そう思っています。
新井氏:
今、ティール組織の本が話題になってますよね。マネジメント3.0っていう言い方をしたり、数年前だとホラクラシーっていう組織論の話があるんですが、僕はそういう会社にしていきたいなと思っています。
プログラマーやエンジニアが楽しく働けて、成果も出せる、そういう会社に変えていきたいです。イキイキとみんなが働いて、笑顔で楽しく取り組んでいくことが目指す世界観なので、カンバン方式やカイゼン活動をさらに進めていきたいと思っています。