今回は、既卒・第二新卒の就活/転職サポートをしている株式会社UZUZの評価制度についてご紹介。
UZUZは、会社の変化とともに評価制度を7回も変えてきており、ときには社員のエンゲージメントが著しく下がるような大失敗もしてきたとのこと。
それでは、UZUZではどのような評価制度を実践してきたのか、その結果、どのような学びや気づきを得たのか。同社専務の川畑さんにその内情をお伺いしました。
【人物紹介】川畑 翔太郎 | 株式会社UZUZ 専務取締役
目次
1. 通算で7回も変えてきたUZUZの評価制度
-まずはUZUZさんについて簡単にご紹介をお願いします。
川畑さん:UZUZは、既卒・第二新卒を中心とした20代若手向けの就業サポートをおこなっている会社です。
会社の設立は2012年の2月22日。ちょうど2がそろっていますが、第二新卒向けのサービスをやるならこの日を設立日にしようと、タイミングも良く全部2でそろえたんです。
「いずれは2月22日を第二新卒の日にしたい」という野望を密かに抱いています(笑)。
-たしかに「2・2・2」でわかりやすいですね。組織構成はどのようになっているのですか?
川畑さん:現在の社員数は約50名となってます。
内訳としては、約半数が営業兼キャリアカウンセラー。残りの半分はいわゆるバックオフィス系の職種です。
バックオフィス系は、WEBマーケター、デザイナー、編集、自社サイトの運用、管理部門、カスタマーサポート、講師など、多くの職種があり兼任でやっているメンバーも多くいます。
-今回は「UZUZ×評価制度」がテーマですが、今までにどのくらい評価制度をつくり変えてきたのですか?
川畑さん:7回ですね。UZUZは半期に一度のタイミングで評価制度を実施していますが、最初のころは大きく変えたわけではなく、半期ごとに微妙にチューニングをしてきただけです。
ただ、ガラッとやり方を変えたのが、直近の2018年夏の評価と2018年冬の評価です。これはバックオフィス部門の増加が背景としてあります。
今までは営業メインの組織だったので、売上を見て順位をつければある程度は評価できたんです。でも、バックオフィス部門が増えると、売上以外の部分で評価をしなければなりません。
さまざまな職種がある中でどのように評価をしていくか。ずっと試行錯誤をしてきており、直近で大きくやり方を変えてみました。
-では今回は、このように3つのフェーズにわけて、具体的にどのような評価制度をつくったのか、運用してみてどうだったのか、お伺いしていきたいと思います。
2. 【第1世代】いわゆる「普通の評価制度」をしてきた
-第1世代の評価制度はどのようなものですか?
川畑さん:これは本当に普通の評価です。定量・定性の2つの評価に分け、その割合も基本的に50:50です。
定量評価は営業であれば売上で見ます。ただ、バックオフィス系の職種は定量項目がバラバラなため、定性評価のほうの比重を多くし「定量20:定性80」くらいの割合にします。
その内容をもとに役員陣が最終的に「えんぴつなめなめ」をして評価を決定していきます。
-出ましたね「えんぴつなめなめ」。評価制度で良く聞くワードですね。最初はこのように評価していったと。
川畑さん:でも、定量・定性評価だけではカバーできないなと思ったんです。
特に新人に目を向けると、定量・定性というよりは、まずは何かしらの仕事を覚えていくフェーズです。そうすると、数字上あまり結果が出てないように見えてしまうんです。
そこで、新たにつくったのがクレド評価です。当時のクレドは以下の3つです。
- 「Be Professional」プロとしての仕事ができているか
- 「Thanks for you」周りへの思いやりがあり協力しあえているか
- 「Change the Team」チーム・組織を変革するような動きができているか
さらに、これらを10項目に細分化し「3つのクレド×10レベル」の30項目をつくり、それぞれの項目で○がつくか×がつくか、数値化していくんです。
それで、「この人はレベル3までできていて、レベル4からできてないな」と、きれいな評価になることを想定していました。
しかし、「レベル4の項目は×だけど、レベル7の項目は○」みたいな問題がでてきてしまったんです。
なので、「この人はこう調整して評価しよう」と、結局えんぴつなめなめになってしまって、最初と変わらない状態に戻っていきましたね。
-当時の評価制度を振り返って、良かった点・悪かった点は何ですか?
川畑さん:良かった点はクレドがものすごく浸透したことですね。
一方で、悪かった点はいくつかあります。まずは、点数化はしたものの最後の最後は「えんぴつなめなめ状態」になってしまったことですね。点数化した通りに評価すると、何か肌感と違うんですよ。
結局それから「感覚値で評価する時代」が1年半くらい続いて、形骸化していましたね。
また、弊害としてあったのが、評価する項目って完璧じゃないと思うんですよ。それなのに「この項目をもとに評価するよ」と言った結果、「その項目だけをやっていればいいんだ状態」になってしまったことですね。
-社員からは評価に対する不満の声はありましたか?
川畑さん:そこまでなかったと思います。実は、今はもうないのですが、当時は「ぶっちゃけ大会」があって、そこで結構不満を解消していた感はあります。
-ぶっちゃけ大会って何ですか?
川畑さん:ぶっちゃけ大会は、対個人、対チーム、対役員、対会社。対象は誰でもよくて、ぶっちゃけて言いたいことを言い合うんです。
一人ずつターンがまわってきて「この場では何言ってもOK」「溜め込むのはNG」というルールのもと、全員が発言をしていきます。悪口大会みたいな感じですね(笑)。
「正直あのときの言動はムカついた」「このクセやめたほうがいいですよ」とか、「服ださい」っていうのもありました。「服ださい」はひどいなと思って(笑)。
その時代にいたメンバーは、「ぶっちゃけ大会が怖かった」って言っていて、本当に嫌なイベントだったと思います。
-ぶっちゃけ大会後は社内の雰囲気が最悪だと思うのですが・・・。
川畑さん:その後、みんなで飲みにいってわだかまりをなくすようにしましたね。
飲み会で「あのときは実はこういうことがあって」「いや、あれ正直言い返したいんだけど」とか語り合って、そこでもう全部しこりをなくしてからその日は終わりにするようにしていました。
ぶっちゃけ大会で全員の不満を共有することができ、それがちゃんと経営陣にも伝わるので、その解消に向けてすぐに動けたということはありますね。もうやりませんが(笑)。
3. 【第2世代】みんなで評価をつけあってランキングにしたら大失敗した
川畑さん:ずっと第1世代の評価制度のやり方を軸に運用してきましたが、2018年の夏にガラッと評価制度を変えました。
そのときにやったのは、みんなで評価をつけあってランキングにして決めていくという形式のものです。
-なぜこの形式にしようと思ったのですか?
川畑さん:他社が導入している評価制度の話を聞いて、「それおもしろい」ってなったのがきっかけですね。
その会社は、全員の給与額を公開していて、かつランキングになっているんです。それで、「そのぐらい全部オープンにしたほうが、もしかしたら不平不満ってなくなるのかな」って思ったんです。
また、「評価者に対して良い顔をして評価される行動をとれば給与もあがる」という考えも排除していきたかったんです。
なので、360度評価に近いのですが、「一緒に働いているメンバー同士で評価をつけあい、ランキングにすることで納得感ある制度になるのではないか」と、メンバーを中心とした評価会議を実施していったんです。
-評価会議でランキングを決めていくのですね。
川畑さん:ただ、当時は35名の社員がいたのですが、全員で一気にやると意見が言えないメンバーも出てくるので、意見が出やすいように評価会議を全8回に分け、「最低1回の参加が必須」「何回参加してもOK」というルールにして意見が言えるようにしました。
そして、各回が終わるごとに「今回はこんなランキングになりました」と、全体に共有していきます。
そのランキングを見たときに「あれ?この人もっと下だと思う」「自分はもっと上だと思う」と感じた際は、次の会に参加して意見を述べてもらい、最終的にランキングを確定していく流れです。
-ランキングが出たときの社員の反応はどんな感じですか?1位から最下位まで出ちゃうわけじゃないですか。
川畑さん:一言でいうと「気まずい」ですね。先輩後輩関係なく順位が見えてしまうで、変な空気になりますね。
あと、ランキングをつけた際のコメントも記載しているんです。誰が書いたかまでは記載していませんが、「なんでこの人をこの順位にしたか」という、ポジティブな情報とネガティブな情報を含んだ理由が書いてあります。そういうのも全部公開されるんですよ。
-かなり怖いですね・・・(笑)。最終的にランキングが完成して評価に反映されていくと思うのですが、感触はいかがでしたか?
川畑さん:悪かったですね。納得感もあんまりないですし、横のメンバー同士の仲も悪くなったりして、反省点だらけでした。
結局、自分の評価を上げるには誰かを下げる必要があるので、評価会議でもぎくしゃくしましたね。
「こういう結果を出したって書いてるけど、それって売上につながったの?」「いや、それは長期的な投資の活動としてやってるんだけど」「それって今期に評価するものなの?」とか。
特に顕著だったのが、営業VSバックオフィスの構図ですね。「そもそも違う基準の成果なので、どっちが上なのか?」という比較が難しかったですね。
また、営業は全従業員35人中20人いたのですが、バックオフィス系のメンバーは業務が分かれていて1人か2人という単位で仕事をしているので、味方が少ないんですよ。
かつ営業のほうがディベートが強いので、「何かあの人のあのときの発言は嫌だ、強引すぎる」みたいなしこりも残って「こりゃあかんわ」ってなりました。
-ギスギスした感じが容易に想像できます・・・。
川畑さん:また、タレントマネジメントシステムの「wevox」を導入していて、従業員エンゲージメントスコアを定期的に計測しているのですが、評価会議を実施していた期間はわかりやすく下がっていきましたね。
-なるほど・・・。逆に良かった点は何かありましたか?
川畑さん:唯一良かった点は、社員が評価をつけることの大変さを理解してくれたことですね。
「なんでしっかりと評価してくれないんだよ」と思っていたメンバーも、「評価はむしろもう誰かに任せちゃったほうがいいわ」となっていましたね。「もう役員が決めてくれて文句ないです」って言う人も出るくらいでした。
みんなが納得する満点な評価制度はない、評価って難しい。このことが伝わってくれたのは大きいですね。
4. 【第3世代】ポジティブ満載にしたら非常にエモイ感じになった
-次はどのような評価制度に変えていったのですか?
川畑さん:最終的に役員が決めるという、以前のやり方に戻しました。結局さっきの「いや、役員陣が決めてくれよ」という声もあったので。
また、評価において不平不満の矛先になるのは経営陣の役目で、「自分たちは責任放棄しただけかもしれない」と感じた背景もありました。
ただ、以前のやり方に戻したといっても大きく異なる部分が一つあって、「役員が最終決定するために必要な情報は、本人たちからしっかりアピールしてもらう」という形式にしました。
結局、自分たちが見れていない範囲のことは評価できないし、「あんまり印象に残らなかった」「印象が強い」というだけで評価するのはやめようと。
そこで、「ポジティブなアピール情報のみのレポート」をつくって30分で役員にアピールする、「アピールタイム」を1名ずつおこなうようにしました。
レポートには、この半年間にどんな良いことをしてきたのか。それは定量だろうが定性だろうが何でも構いません。ネガティブな情報は一切いりません。また、アピールがうまくない人向けに「助っ人」を同席させるのもOKです。
これを40人全員にやったんです。1週間、役員のスケジュールは全部アピールタイムで埋まりました。そして疲れ果てました・・・(笑)。
-ネガティブな材料はいらないんですね。
川畑さん:そうなんですよ。悪いところは目に付きやすいというか、本人が言わなくてもある程度こちらでフィードバックしたいことは把握できてるんですよ。
ですので、最後に「ここは改善したほうがいいよ」というフィードバックはするのですが、アピールタイムでは一切必要ないんです。
-アピールタイム以外の判断材料はありますか?
川畑さん:それ以外の判断材料は、売上や納品物などの数値上の評価ですね。そこがベースとしてあって、それを補足する場としてアピールタイムがあるイメージです。
たとえば、数字上のデータを見ても「ああ、高い実績が出てすごいな」だけですが、さらにそこに対して「この結果が出たのは、実は裏でこんな取り組みをやってたからなんです」とアピールがあれば、さらに評価が上がるじゃないですか。
あと他に、「自分を助けてくれた人」「自分が見ていてすごく良い仕事をしていた人」もアピールしてもらうようにしました。
-「お前、こんな良いこと言われてたぞ」って言えますね。
川畑さん:そうなんですよ。なので、良いこと言ったり言われたりで、全体的にすごくみんなエモい感じになりましたね(笑)。
ただ、最後の昇給や賞与の額の話になり、給与を見た瞬間に現実に戻っていくんです。あんなにエモかったけれど、結局「あ、自分の給料はこのぐらいね」と。
-実際に運用してみて評価はしやすかったですか?
川畑さん:さまざまな情報が手に入るので、ある程度はそうですね。ただ評価をつけてみて思ったのは、結局は自分たちが普段から思っていた肌感とそんなに乖離がなかったんですよね。
現場に顔を出しながら仕事をしているので、結構メンバーの仕事ぶりって目にも入るし、耳に入ってきてるんだなと。意外な発見みたいなものはありましたけど、8割方は肌感と一緒でしたね。
-意外な発見って何ですか?
川畑さん:結果が出た人間が裏でやっていた努力・プロセスを知れたことですね。「そんなに良いことしてたんなら、全社にも展開してよ」って思いましたね。
あと、「裏では意外とこの社員とこの社員がサポートし合ってたんだ。そんな動きをしてたんだ」ということも知れたのは良かったですね。
-逆に悪かった点はありましたか?
川畑さん:アピールタイムの提出レポートが長すぎることですね。評価されるとなると、みんなめちゃくちゃ必死に書くんですよ。平均でA4用紙10枚くらいになるんです。多いと30枚弱くらいありました。
あと、役員陣の体力の消耗が半端じゃなかったことですね。本当にきつくて疲れました・・・。
-体力的な問題が一番のネックだった感じですね・・・。
川畑さん:まとめると、大枠は最終的には役員3人で協議してランキングを決め、ランキングごとにどれだけの昇給・賞与を配分するのかを決める。
そのための情報を抜け漏れなく出してもらうプロセスを取った。そのプロセスに褒める・お互いを称賛することを追加した、というのが第3世代ですね。
-今回の評価で、社員のコンディションの変化はどうでしたか?
川畑さん:12月に社員が役員へプレゼン。1月に評価が発表。2月に役員から社員へ評価に対するフィードバックという流れだったのですが、wevoxを見ると、12月と2月で社員のスコアが上がっていますね。
-本当だ、上がっていますね!評価制度の振り返りとして、社員のコンディション変化がわかるのは良いですね。
川畑さん:確かに。wevoxで定点観測していないとわからないですからね。
-次回の評価制度は同じ形式でやりますか?
川畑さん:いえ、まったく同じやり方では実施しません。社員の満足度はある程度あったかもしれませんが、あまりにも我々がきつかったんで(笑)。
評価する役員、評価されるメンバー双方の時間を取りすぎた感もありますし。多分、累計するととんでもない時間を使ってます。
もうちょっと簡易的な方法はないか次回に向けて模索しているところです。
5. 結局、評価制度ってどうしたら良いの?
-さまざまな評価制度を実施してきて、どんな気づきがありましたか?
川畑さん:「100点満点の評価制度なんてものはない」ってことですね。
また、メンバーがランキングをつけあう評価制度は失敗でしたが、評価をする大変さ・難しさがわかってもらえるのは大きいですね。そういった気づきをもってもらうための取り組みはやってもいいなと思いましたね。
あとは結局、「肌感ってそんなにずれない」ということですね。主観も入っているとは思うのですが、毎日メンバーと接しているので、ある程度は合ってきますね。
-なるほど。結局、評価制度で大事なことは何だと思いますか?
川畑さん:納得感だと思いますね。ただ、納得感が大事だとは言いつつ、全員が納得するものはあり得ないとも思っています。「納得度の平均値が高い」ことが大事ですね。
あとは納得してない人たちの不満のハケ口をつくってあげることです。結局、評価制度だけで完結させるのはちょっと難しい。常に評価制度を意識して仕事をされても困りますし。なので、評価にコミュニケーションを入れるべきだと思います。
今回のようなアピールの時間だったり、評価が終わったあとにフィードバックミーティングをやったり、評価の結果だけを伝えるのではなく、評価のプロセスにおいてコミュニケーションを取るようなものにしたほうが良いと思います。
納得感が得られない原因は、説明不十分で「見てもらえてない」と思われてしまうことです。そこをコミュニケーション取りながらやることで、多少は解消できるのではないでしょうか。
-この7年間やってみて、理想の評価制度って何だと思いますか?
川畑さん:これはちょっと難しいですが、「評価しない」じゃないですか。自己評価で良いんじゃないかと思いますね。
もっと言うと、無理なのは重々承知していますが「お金」と「評価」を本当は分けられたら良いんですけどね。評価によって昇給・賞与が決まりますが、お金が関わると何か評価が濁る気がするんですよね。