2018年1月に発売されてから、常に書店の人気コーナに陣取る分厚い本、『Teal組織』をご存知でしょうか?
Teal組織に関する詳しい説明は、さまざまなメディアも取り上げていますし、「Teal組織」という書籍に丁寧に記載されてますので省かせていただきます。
「社員に自律性を促し、権限を委譲させることでより各々が自己判断し組織を動かす組織形態」だと、イメージしていただければ良いかと思います。
Teal組織にはさまざまな特徴がありますが、そのいくつかの特徴のひとつとして他の組織よりも生産性が高くなると言われています。
今回は、この「生産性」という観点に着目してTeal組織をお話しさせていただきます。
Teal組織がなぜ生産性が高いと言われているのかを理論的に捉え、Teal組織化を目指し生産性をあげるべきなのかを話させていただこうと思います。
「Teal型組織の方が生産性が高い」とは、まだ言えない?
生産性が高いと言われる企業は、必ずしもTeal型なのでしょうか?この示唆は図1の結論を導くように思えます。
Teal組織は「a)」のようにTeal組織の中にも生産性の高い企業とそうでない企業が存在し、単に生産性の高いTeal組織が目立っているだけなのか、「b)」のように生産性が高いと言われる企業の中の一部を指すのか、
この「a)」なのか「b)」なのかという結論を導き出すことも大事です。
しかしここは一旦、この議論は留め置きます。今回はあくまで、少なくとも「Tealだけが生産性を高くする方法ではない」ということを捉えていただきたいと思います。
巷で言われる「Teal組織が生産性が高い」と言われることに少し穿って見ていただきたいと思います。先にも申し上げましたが、Teal組織は生産性が高くなると言われています。
しかし、実際にはそんな簡単に「Teal組織の生産性>それ以外の組織の生産性」とはまだ言えないのです。
「組織の成熟度」と「個人の成熟度」がTeal組織の生産性に深く関わっている
ここからさらに、「Teal組織が何故生産性が高いと言われているのか」という点について、もう少し掘り下げて見ましょう。
以下に「図2のグラフ」がありますが、このグラフは各組織に存在するメンバーの成熟段階を示したグラフになります。
各棒グラフの中の色は「Red、Amber、Orange、Green、Teal」の発展段階に相当するメンバーの成熟度を持つ人の比率を示しています。
理論的にTeal組織というのは、世の中に存在するRed、Amber、Orange、Greenといった組織構造よりも、より成熟度の高い組織として言われ、当然ながらそこに存在するメンバーも成熟度の高さを要求されます。
つまり、その組織を構成する人員には、その組織の成熟度に合わせてRed、Amber、Orange、Green、Tealに対応する成熟段階が存在するのです。
しかし、今の社会において各々が己の成熟段階に見合った組織に所属するとは限りません。
これは単に己の成熟度を見分けるのが難しいことだけではなく、組織自体も外見からは成熟度は計りにくく、組織の中に参画して初めてわかることが多いからとも言えます。
その他にも、中途採用が活発化しつつもいまだに根強い長期雇用制度や新卒一括採用などもその遠因といって差し支えないでしょう。
兎にも角にもこの「組織の成熟度」と「個人の成熟度」は一致しないことが多いと言えます。
そして、この組織の成熟度と個人の成熟度がTeal組織の生産性に深く関わっているのです。
Teal化を実現できている組織は、「生産性の純度」が高い
Teal組織を含め、より組織の成熟度が高度に位置する組織ほど、発展するのに時間がかかっています。
Teal組織と言われる組織が生まれたこと自体近年のものであり、かつ事例が少ないことからも分かるのではないでしょうか?
すなわち、多くの人間が触れる企業は、より組織としての成熟度が下位に当たる組織が多く、結果としてそのような組織に属する人間が多くなるのです。
確かにここ近年、組織文化やビジョンを大事にし、組織とのマッチを考えた就職が増えてきましたが、大抵の場合、どんな発展段階にいる人でもRedやAmber、Orangeといった組織に属することが多くなります。
そのような組織では、成熟度がバラバラのため自分に、最適な組織マネジメントと異なる境遇で仕事をせねばなりません。当然そこでは生産性を100%発揮することは難しく、その人が持つポテンシャルを活かしきれなくなります。
この自身の生産性の低さを感じ取り、状況を打破しようとより高度な組織構造を目指す人々によって発展を遂げたのが、GreenやTealという組織なのです。
したがって、そこに存在するメンバーは大抵が己の発達段階が高度に位置している、あるいは高度化しようとしている経過のメンバーであることが多いのです。
すなわち、他の組織より、「組織を構成するメンバーの発達段階の一致性」という純度が非常に高くなりがちなのです。
「自身の発達段階」と「組織の発達段階」が一致していると当然モチベーションも上がりますし、活躍しやすくなります。GreenやTealという組織はそんな発達段階の一致性という純度が高いからこそ、生産性が高くなるのです。
今一度、「図2」を見て見ましょう。
Teal組織はTeal型の成熟度に位置するメンバーで固まっておりますが、Red組織は混在してます。これでは生産性に差がつくのも無理はないのではないでしょうか?
当然、実際の組織ではこのようなバランスではないにせよ、多かれ少なかれバランスとしてTeal組織に参画するメンバーがTeal寄りの人が多いという点で純度が高い傾向は現れやすいです。
しかし、一方で理論的に言えばRedやAmber、Orangeの組織も十分に生産性を高く保つ可能性があり、純度をいかに高められるかを検討することで実行もできるのです。
単純にいえばそれ以外の発展段階にいるメンバーを追い出すか、適応させれば良いのです。純度が上がれば生産性が上がるということです。
Teal組織が生産性が高いというのは、現段階ではそのような組織の形を望むものたちが集まり働くからこそであり、そうでない面々が多数加わったり、その組織を主導するリーダーがTealレベルの発達段階を目指さない限りはうまくいかないのです。
最後に
今回の結論から言えることは、組織の生産性が最も高い段階は、「組織の成熟度」に加えて「組織が抱えるメンバーの成熟度」に左右されるということです。
Teal化だけが正解ではなく、自分自身の組織の成熟度を意識し、同時に組織のメンバーの成熟段階をいかに意識して最適化した組織こそ、生産性が高い状態にある組織なのです。
その上で我々の会社はどの成熟度に位置しており、メンバーの成熟段階の比率はどうなっているのか意識してみれば自ずと答えは得られるのです。
私はまだまだ、日本企業の中にTeal化できる企業があるでしょうし、一方で、世の中の流行りに乗せられずよりRed化すべき企業があるように思えます。
今少し、流行り廃りに乗せられず最適な組織を自問自答すべき時とも言えるのではないでしょうか?