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「内定者と関係性築けていますか?」離職防止に繋がる”キョウイク”の新しい形とは

今回は、内定者や新卒を対象にした研修の企画・運営をサポートしている株式会社ファーストキャリアの内定者研修ノウハウについてご紹介。

ファーストキャリアは、入社後すぐの4月のみで、約17,000人の新入社員・内定者研修を企画・運営しており、日々内定者との関わりも多いとのこと。

研修を企画・運営し、内定者と関わる中で感じた最近の内定者の傾向とは何か?また、多くの企業が実施している研修内容、理想の研修などを、同社代表取締役の瀬戸口さんにお話を伺いました。

【人物紹介】瀬戸口 航| 株式会社ファーストキャリア 代表取締役社長

2003年早稲田大学商学部卒業後、大手コンサルティング会社にて自動車業界を中心に新規事業開発支援・ビジネスプロセス構築などに従事。2010年ファーストキャリア入社。グループマネージャー、企画開発本部長を歴任し2016年代表取締役社長就任。大手企業を中心に、ファーストキャリア層(新人、若手人材)の育成支援施策のコンサルティング、及び教育研修体系の構築を手がける。

1. 内定者を一箇所に集めて教える研修は、時代遅れ

ーまずはファーストキャリアさんについて簡単にご紹介をお願いします。

 

瀬戸口さん:ファーストキャリアは、入社後すぐの4月のみで、約17,000人の新入社員・内定者研修を企画・運営している会社です。

「若⼿の人材育成」に特化した研修の提供を通じて培ってきたナレッジと、1,600 名以上の多岐にわたる、当社及びセルムグループの講師・コンサルタントのネットワークを活かし、若⼿育成に関する組織開発コンサルティングに取り組んでいます。

 

内定者研修において、人事の方が抱えている悩みにはどのようなものが多いのでしょうか?

 

瀬戸口さん:最近は多くの企業が「内定者研修をどのように運営したらよいか」で悩んでいます。

従来の内定者研修では、早期戦力化を目的に実施されることがほとんどでした。新卒研修で実施されるような「ロジカルシンキング」「仕事の進め方」などを前倒しで進め、入社時により高い位置からスタートできる研修内容です。

同時に、内定者のロイヤリティ向上のために、内定者同士での顔合わせの場を「研修」と称しているものも多くありました。

 

しかし、費用対効果の観点や内定研修と称した実業務が横行していることから、世の中的に内定者研修の位置づけが見直され、内定者研修の開催を見送る企業が増えた時期がありました。

研修内容やその様子がSNSでネガティブな文脈で拡散されることもあり、企業が慎重になったといえます。

しかし、ここ数年、就活売り手市場の影響で就活生の選択肢が増え、内定辞退が増加しております。そこで、内定辞退防止の観点から内定者研修が再度注目されています。入社前から内定者との関係性を維持して、自社に確実に入社してもらえるように企業の意識も変わってきております。

 

内定辞退の防止を目的に実施するとのことですが、どのような内容が多いのでしょうか?

 

瀬戸口さん:今、多くの企業で実施されている研修は、e-ラーニングです。

e-ラーニングによって、内定者を自社や外部会場に集める必要がないため、社員の工数を割かずに比較的安価で実施することができます。

また、「内定者に自社の採用活動に参加してもらう」という動きも徐々に増えております。社員と比較して内定者は、会社文化に染まりきっておらず、就活生とも距離が近い絶妙な存在だと思います。

そのため、自社を志望する就活生に対して、内定者だからこそ伝えられるアドバイスや会社の魅力もあるはずです。内定先の採用を手伝うことで、会社に対する魅力や入社理由を振り返ることにつながり、改めて企業へのロイヤリティが高まり、内定辞退防止の効果を発揮します。

e-ラーニングによって知識の前出しが容易になったため、内定者を集めて研修することの意義や目的が見直されています。集まるからには企業・内定者双方にとって有益であるものにしたいという想いがあり、その結果「採用の手伝い」などの新しい動きが出たりと、企業も試行錯誤しております。

2. 「情報収集力と割り切ることに長けている」それが最近の学生の傾向

ー瀬戸口さんは、最近の学生はどのような傾向があると感じますか?

 

瀬戸口さん:最近の学生は、2つの傾向があるように感じます。

1つめの傾向は、情報収集に長けていることです。応募する会社を探すために、リクナビやマイナビなどの媒体だけではなく、さまざまなSNSや口コミサイトを駆使します。

ネットから大量の情報を収集する一方で、一次情報を重視する傾向も高まっております。企業の採用サイトやナビサイトのメッセージを「広告」として俯瞰して見ており、説明会で発信される情報も鵜呑みにはしていないようです。

たとえば、会社説明会で「弊社はフラットな組織風土です」というメッセージから組織風土を判断する学生は少ないです。会社説明会後の社員同士の実際のやり取りから、その企業の社風を読み取って自分に合う企業かどうかを判断しています。

このように情報収集への強い意識があるように感じます。

 

 

瀬戸口さん:2つめの傾向は、割り切りの良さです。

従来の就活生は、企業情報も限られており、エントリーも今ほど手軽にできる世の中ではなかったです。そのため、「自分にとっての働く意義」を自問するなど自己分析をしっかりして、限られた時間を有効に活用し、悔いのないよう就活をしている学生が多かったという印象です。

一方、現在は、求人情報や企業情報が莫大にネット上に存在しており、エントリーも比較的容易にできるため、自己分析よりもいかに多くの企業情報を集めるかに意識が向いていると思います。その結果、手元に残った多くの情報を最終的には「やってみないとわからない」と割り切って決断します。

3. 人事の腕の見せ所は、「社員と内定者」をいかに対等にするか

ー企業は内定者とどのように関わればいいのでしょうか?現場社員・人事の2つの切り口で教えてください。

 

瀬戸口さん:内定者との関わり方で、現場・人事に共通して大事なことは、「社員>内定者という構図ではないことを認識すること」です。どうしても社員は内定者を「何もできない」「何も知らない」存在として見てしまいがちですが、時代が変わって、先に挙げた情報収集力のように若手の方が長けているスキルもあることを認識すべきです。

今の若手は会社を客観的に見ております。そのため、社員が学生に対して一切の敬意を払わずコミュニケーションをしていると、会社全体の心象や本人のロイヤリティにも影響してくるでしょう。

社員に必要な心持として、半分は社会人としてしっかりと学生に教えてあげて、もう半分は彼らが先行しているスキルを教えてもらうという「リスペクト」の気持ちを持つべきでしょう。

相互にリスペクトし合うことで、内定者と社員の関係が良い意味で対等になり、関係性やロイヤリティが好転していくと考えられます。

人事が意識するべきことは、社員が学生に教えることが自然とできるような場をデザインすることです。

先日、学生と社会人で合宿形式の研修プログラムを実施しました。学生と社会人で復興地に赴き、社会課題の解決策を提案するという研修内容でした。

社会人にとっても学生にとっても「答えがわからない」という共通した環境下に置くことで、双方が対等な立場で会話をすることができます。その中で、社会人自身が「社会人として目の前の学生に教えられることはないか?」と率先して働きかけるようになります。

人事から現場社員に対して「若手を育ててください」とお願いすることも多いでしょう。ですが、「お願いされたから」育てるのではなく、「自然と」育てる状態に社員がなるように環境をデザインすることで、学生との接し方も大きく変わってくると思います。

このような場をつくれるかどうかが、人事の腕の見せ所です。

4. ”キョウイク”とは「共に育つ」と書く

瀬戸口さんが考える、そもそもの内定者研修の目的とは何ですか?

 

瀬戸口さん:今までお話してきたように、多くの企業は内定辞退防止と早期戦力化を目的にしていることが多いと思いますし、実際にこの2つは大事です。

しかし、この2つを成し遂げるために、さらに一段階上の「大目的」をファーストキャリアでは提示しております。

それは、共育です。共育とは、社員と内定者が、共に教え合い、共に学び合うような関係性のことです。従来の教育のように、「教えて育てる」のではなく、「共に育ってほしい」という想いを込めています。

たとえば、先輩社員と話す座談会。「自分はこんな仕事をしている」といった仕事紹介を語る社員も多いと思いますが、それではコミュニケーションが社員から内定者へ一方通行になってしまい、私たちの思う「共育」ではありません。

そこで、「社会課題」のように、唯一解がなく社員が絶対解を持ちえないテーマで、内定者と社員がディスカッションしてみてはいかがでしょうか。答えのない問いを社員と学生でシェアすることで、互いにフラットな関係になり、双方が学び合うことで「共に育つ」場となります。

 

 

瀬戸口さん:近年、人生100年時代といわれています。学生からすると、これは「100年生きることができる!」というポジティブ反応ではなく、「100年生きなければいけない・・」というネガティブな反応が多い気がします。

人生100年時代で個人の労働者としての寿命が延びる一方、技術革新などで市場のライフサイクルが早まり企業の平均寿命が年々短くなっております。初めに入社した会社に勤め続けることが難しくなっており、「転職」を前提としたキャリアを歩んでいかなくてはいけないと、学生も覚悟しているわけです。

そんな、自分の力で生きていくことが求められる時代に、「失敗が許されない」と思っている学生は多く、だからこそ、全体的に成長意欲が高く、「この会社で自分は成長できるのか?」「自分は組織に何か価値を発揮できているのか?」と考えることに敏感になっている傾向があります。

そんな不安を抱えた最近の学生ですので、社員が対等に接してあげて相互に学ぶことができる場をつくることで、学生の発言やアイデアが社員に学びをもたらし、それによる「貢献感」に自分の成長を感じたり、自分の介在価値を感じることができます。

「共に育つ教育の場」をつくることで、学生の不安も和らぐだけでなく、「成長できる場」や「自分の居場所」として企業への印象も良くなり、内定辞退防止や早期戦力化につながるのではないかと思います。

 

 

ー正直なところ、学生側は「内定者研修をやりたくない」という声のほうが多いのではないでしょうか?

 

瀬戸口さん:一概にそうとはいえません。

学生にインタビューすると、「もっと研修をやりたかった」「課題を出して欲しかった」という学生の割合が結構多いです。

企業からすると、入社前に学生に課題を出すことで自社イメージが悪化してしまうことは避けたいはずですし、学業やサークル活動など、学生のうちにしかできない体験を精一杯して欲しいと思うわけです。

そんな企業側の気遣いの一方で、学生自身は、企業から「自分たちは放置されている」と感じてしまいます。もしかしたら、企業が自覚しているよりも研修課題は増やした方がよいかもしれません。

 

ー内定者研修では、内定辞退防止や早期戦力化に加え「文化浸透」も重要だと思うのですが、理想的な配分などあるのでしょうか?

 

瀬戸口さん:研修内容の配分には黄金率はないです。企業によって求める人物像が異なるので、最適な研修内容の配分も異なってくるでしょう。そのため、今年の新卒に「去年正直どう思った?」とコミュニケーションを取りながら調整してみてはいかがでしょうか。次年度の内定者プログラムを、今年の内定者が計画するワークショップも面白いと思います。

内定者研修のポイントとして、点で終わらすのではなく線にするように設計し、変化・成長を追うことが重要です。学生の時は個人のスキルに大きな差がないため、ほぼ同列の状態でのスタートから、ちょっとしたことをきっかけに成長する変化の幅が大きいため、個人の成長が追いやすいといえます。

e-ラーニングをやって終わらせるのではなく、それによってどのように成長したかを学生時代から管理することで、将来のタレントマネジメントに活かせるというメリットもあります。

 

ーなるほど、ありがとうございます。ちなみに、内定者研修をうまくやっている企業の事例など教えていただけないでしょうか。

 

瀬戸口さん:内定者研修で内定辞退の低下に向けた施策を実施している事例があります。採用コンセプトでは「新規事業」が前面に出ているし、学生もそこに目が行きがちだが、実際に新規事業を支えているのは既存事業で、会社全体で見ても9割は既存事業部門に配属となっております。

しかしながら、優秀な学生であればあるほど、「新規事業」に魅力を感じる傾向にあります。そのため、入社前の夏と冬に内定者の懇親会を実施し、段階的に「既存事業の面白みやかっこよさ、社会的意義」などのメッセージを強調して、配属時のショックを和らげるようにしています。

このように、内定者の入社以降・配属以降のモチベーション曲線を見据えて施策を打っていくことが重要となります。採用コンセプト・メッセージと現場とのギャップは、業種や企業規模を問わず共通している課題なのではないでしょうか?

企業が学生のうちから関係性を築いていき、共に育つことができる環境を築くこと。研修が一つのきっかけとして終わるのではなく、将来を見据えて個人の成長や変化を追っていくことを、企業は意識していくべきではないでしょうか。

 

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