美容健康商材を中心に扱うDtoC事業をはじめ、メディア事業、ECやマーケティングのコンサルティング事業、WEBアプリ事業と幅広く多角的に事業を展開している、株式会社ビーボ。
9期目に入る2018年からは、カスタマーサクセスという概念にテクノロジーを融合した「カスタマテック」という新概念を打ち出し、新たなシステムの開発を進めています。
さらに 1年半で3つの新規サービスを立ち上げ、2カ国への海外進出を進めるなど、国内外問わず勢いをもって拡大しています。
事業が拡大するとともに、組織も変化を繰り返してきており、9期目に入る2018年の9月には社員数が120名を超えています。
そんなビーボですが、スピード感のある組織の変化に、一時は退職率が50%になったこともあったといいます。そして、そこからさまざまな改革を実施し、現在の同社の退職率は10%未満とのこと。
では、退職率50%という組織では何が起こっていて、そこに対してどのように向き合い取り組んできたのでしょうか。今回は同社の橋口さんに、そのいきさつを具体的にお伺いしました。
【人物紹介】橋口 和奈|株式会社ビーボ 社長室 広報Div.
目次
退職率50%という当事者意識のない組織
-退職率50%というとかなり高めの退職率ですが…、当時の組織はどのような状態だったのですか?
橋口さん:今思うと、会社全体の活気がなかったですね。
小さなところでいうと、挨拶もあまり交わされていない環境でしたし、仕事に対しても「やらされている感」があったように感じています。
どのようなことにおいても「自分がやる」という当事者意識が薄かったように思います。だからこそ、会社や同僚の悪い部分を見つけると愚痴を言ってしまうようなこともあって、自ら良くしようという動きをしている社員が少なかったですね。
-当時、組織が抱えていた課題は何だったのですか?
橋口さん:さまざまな課題がありましたが、組織が拡大していくにあたり、会社が大事にするものが明確にされていなかったことが大きな課題の一つであったと考えています。
というのも、当時社員からは「会社の方針がわからない」や「自分が何のために仕事をしているのかがわからない」というような声があがっていたからです。
こうした中で多くの社員が退職を希望し、ビーボを去っていきました。
ーそういった組織状況になったきっかけなどがあったのですか?
橋口さん:特に大きなきっかけがあったわけではありませんが、事業や組織の成長の中で徐々に会社や社員の雰囲気が変わっていった感じですね。
社員が20名ほどの時は、まだ大きく育っていなかったDtoC事業を大きくしたいという共同意志のようなものがあったのですが、事業が大きくなり軌道に乗ってきた時に、そこに自分の役割を見いだせなくなった社員が増えていったのかもしれないです。
退職率50%から10%未満になるまでにおこなった3つこと
ー退職率50%の状態から立ち戻られたとのことですが、具体的にどのような取り組みをされたのですか?
橋口さん:組織が抱えていた課題を解決するために、以下3つのことを実施しました。
1、社員による企業理念の再策定
2、オンボーディング制度の導入
3、才能開花プロジェクトの立ち上げ
1、社員による企業理念の再策定|退職率が50%から30%に
-会社が大事にするものが明確にされていなかったという課題に対し、まず企業理念の再策定をおこなったのですね。
橋口さん:はい。退職率が50%までにも上った当時も企業理念はありましたが、あまり浸透しておらず、企業理念や会社の大事にしていることについて語られる場面は多くなかったと思います。
今後会社が拡大していくにあたり、社員全員が会社の存在意義を理解して同じ方向を向いていなければ強い組織になることは出来ないと考え、社員が主体となって理念の策定をおこないました。
-今のビーボのビジョンである「〝なりたい〟に本気」もこの時に出来たのですね。企業理念はどのようにして策定されたのですか?
橋口さん:いきなり「企業理念をつくろう」といってもすぐにつくれるものではありませんでした。
「そもそも企業理念って?」という状態の社員が集まっていたので。「企業理念とは?」という部分を他社事例などを参考に調べ議論するところから始まりました。
やはり企業にとって皆が同じ方向を向くための企業理念が必要なんだと、その重要性を理解したところで、ビーボの企業理念について考え始めました。
まずは自分たちがどうなりたいのか、そしてそれを実現することの出来る企業はどのような企業なのかと4ヶ月近くかけて社員で議論し合いましたね。
最初は周りに促されないと意見が出なかった社員も、徐々に自分ごととして捉えられるようになり、最後のほうは前のめりで議論に参加していました。
こうして、社員が会社の将来像を掘り下げて考え言語化したものが、今のビーボのビジョンである「〝なりたい〟に本気」です。
ー思いがこもった理念ですよね。理念を再策定されて会社の変化はありましたか?
橋口さん:はい。理念策定だけでなくさまざまな要因が関連していると思いますが、退職率が50%から約30%に下がりました。
改めて会社の存在意義を確認することが出来たのと、社員一人ひとりがなぜ自分がビーボにいるのか個々の存在意義も再確認することが出来た結果、退職率が下がったのだと考えています。
社員の意見が企業理念に反映されているというところから、自分たちで会社を作ることが出来るんだ、自分が何か出来るんだという意識が芽生え、愚痴が多く暗い雰囲気であった会社の雰囲気も変わっていきました。
2、「3ヶ月以内の離職」に着目し、オンボーディング制度を導入|退職率が30%から10%に
ー企業理念の再策定を経て、退職率が下がり会社の雰囲気も変わったのは大きな変化ですね。
橋口さん:そうですね。ただ、そこからも退職率は依然として30%を下回ることがなくて…。
当時のHR Div.(現PEC Div.)内では、その状況をどう打破しようかと、退職時期や理由といった退職者のデータとにらめっこをして悩んでいました。
そうすると、「入社して3ヶ月以内での退職者が多い」ということがわかってきたのです。当時は会社と事業を拡大するために採用もスピードを持って進めていました。
しかし、入社して間もなくの退職者が多く、この時期に何かしらの課題があるとして、新規入社者や退職者へヒアリングをおこないました。
その結果、2つの課題が浮かび上がってきました。
1つ目は、そもそも会社として新規入社者へのフォロー体制が整っていなかったこと。制度が整っていなかっただけでなく、現場も新規入社者を受け入れるという意識があまりありませんでした。
2つ目の課題は、新規入社者に会社の目指すものを明確に示せていなかったことです。
理念に共感して入社したもの、あとはすぐに現場に入るだけで会社が目指す方向性をあまり理解出来ていない人が多くいました。
-そうだったのですね。具体的にはヒアリングでどのような声があがってきたのですか?
橋口さん:ヒアリングでは、
「まだ自分が会社の一人として馴染めていない気がしている」
「会社についてわからないことがあり、どう動けばわからない時がある」
という声があがってきました。
いくらスキルがある人でも、ビーボという会社の目指す方向性を明確に理解出来ていないと、そのスキルを上手く発揮することが出来なくなってしまい、それが続くと自分の存在意義が感じられなくなってしまい退職に繋がることがあるということにも気づきました。
-こうした声を受けて、オンボーディング制度を導入したのですね。具体的には何をされましたか?
橋口さん:内定承諾~入社3ヶ月間の、オンボーディングプログラムをつくりました。
新規入社者一人ひとりにメンターがついて、入社前から心配なことなどがないかをヒアリングし、随時不安を解消出来る環境をつくりました。
メンターからも面談の中で会社のルールや方向性を丁寧に伝えていくことが出来るので、徐々に入社者の会社に対しての理解が深まるようになりました。
メンター制度以外にも、社員との交流を促すために以下の施策をおこないました。
【社員交流を促す施策】
- 全社チームランチ
各チームと新規入社者と一緒にランチにいく - 自分史共有会
所属チーム内で自身について開示しお互いの価値観を共有するチームビルディングの実施 - 入社1ヶ月の報告会
仕事において関わる人へ入社1ヶ月で学んだことやビーボの良いところや改善点を報告・提案する - 自己紹介書の全社配布
新規入社者が自身について書いた紹介書を全チームに配布
さらに、会社についての理解を促すために、以下も実施しました。
【会社理解を促す施策】
- BBB(ビーボベーシックブック)の作成
ビーボのルールなど基本的なことが全てわかるブックの作成・配布 - 社史ムービーの製作
会社のこれまでの歴史をまとめたムービーを製作・鑑賞 - 理念研修
ビーボの理念が出来た背景・企業理念やお互いのなりたい姿の共有をおこなう研修の実施
また、インプットだけにならないよう、レポートを書いてメンターへ提出し意見交換するという一連の流れをつくりました。
-さまざまな施策を一気におこなわれたのですね。社員の方々の変化はいかがでしたか。
橋口さん:新規入社者から「何かあれば聞ける環境があるから助かる」という声があがるようになりましたし、入社間もない社員が自信を持って会社に対する改善案をあげてくれるようになりました。
退職率だけを見るのは良くないのですが、会社全体の退職率も10%未満に減りました。
そして、何よりも嬉しかったのが新規入社者だけでなく、既存社員の新規入社者に対する受け入れの姿勢が大きく変わりましたね。
新規入社者が一人でいれば、誰かが声をかけるようになりましたし、入社者が何か悩んでいないかを常に周りが気にするようになりました。
現に、オンボーディングプログラムも現場の社員の声をもとに何度も改善を繰り返しています。
3、才能開花プロジェクト|個々の強みを活かす組織へ
-そして現在進行しているのが、才能開花プロジェクトですね。
橋口さん:はい。人事部は社内の人材の育成に勤しむことが多いですが、弊社では育成よりも「才能開花」という考え方を大切にしています。
才能開花は言葉の通り「才能を開花させる」ということですが、必ず人には「才能の元となる強み」があって、それをうまく活用出来るような人材配置やマネジメントをおこなっていくという考え方です。
実際には、個々の強みを診断する「ストレングスファインダー」というツールを活用しています。
社員がそれぞれ自分の強みを把握した上で、ストレングスファインダー認定コーチから自身の強みの活かし方をレクチャーしてもらいます。その上で、チームまたは個人でアクションプランを決めておこなっています。
個々の強みを活かした会社になるためにはまだやるべきことがあると考えていて、社内で部署を横断した「才能開花プロジェクト」というプロジェクトをつくり、会社全体をあげて「才能開花」の動きを進めています。
ビーボという会社は、社員全員でつくる作品である
-さまざまな施策をおこなにあたって大変なことも多くあったと思いますが、常にブラさなかった姿勢や考えがあれば教えてください。
橋口さん:これは弊社の代表である武川が常に言っていることですが、「ビーボは社員全員がつくる作品である」という考えは、常に大切にしてきたことだと思います。
過去、組織が課題を抱えていた時を思い返すと、社員の当事者意識が薄れてしまっていたことが多いなと思います。もちろん当時いた自分も含めてですが。
でも、こうした組織の落ち込みがあったからこそ「誰かがやってくれる、ではなく自分たちがつくろう、変えていこう」という意識の重要性をビーボという会社は身をもってわかっています。
今でも「○○さんがやってくれるだろう」というような発言や行動があればお互いに指摘し合いますし、今後も「ビーボは社員全員がつくる作品」という意識はブラしてはいけないと考えています。
-今後目指すものはありますか?
橋口さん:まず、今は退職率を減らそうとは考えていません。
50%という退職率はあまりにも高かったので減らさざるを得なかったのですが…。ここまでに示してきた退職率は、あくまでも改善を繰り返した結果出た一つの指標に過ぎないと思っています。
その上で、再三になりますが「ビーボは社員全員でつくる作品である」という言葉の通り、社員一人ひとりが当事者意識を持って会社をより良く出来るような組織づくりを進めていきたいですね。
現在、ビーボでは9期目に入る2018年9月より「PEC Div.」という部署を立ち上げました。PECというのは私たちが考えた造語で、People Engagement Criationの略で、社員のエンゲージメントをつくり出す部署ということを意味していて、「人」に関わる部分の多くはPEC Div.が司っています。
ただ、現状このPEC Div.にいるのは2名なんです。
もちろん今後人数は増えていく予定ですが、この人数でいるのはあくまでもPEC Div.だけが組織をつくるとは考えていないからです。
現に、全部署を横断した社内プロジェクトが6つ動いていて、あくまでもPEC Div.はその管理を進めている立場にあります。
これからもビーボでは事業が急速に拡大し、組織も変化を続けていきます。
これまでにない組織課題にぶつかることもあるかもしれませんが、常に一つひとつの課題に向き合いながら、「ビーボは社員全員でつくる作品」であり続けたいですね。