最近注目されている研修の1つに、VR(仮想現実)を活用した研修があります。
eラーニングなどのオンライン研修をおこなっている企業も多くありますが、より現場の仕事に近い研修を実施したいと考える企業も多いのではないでしょうか。
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特に、就職活動を終えたばかりの内定者の中には、入社前、入社後に実施される研修に期待や不安を募らせている人が多くいるかもしれません。
「できるだけ効率よく、効果的な研修をしたい!」と考える人事担当者側の意見、「研修が難しかったらどうしよう?」「研修で仕事感覚をつかめなかったらどうしよう?」という内定者側の不安。
この両者の気持ちを解決することができるかもしれない、VR研修について詳しく調べてみました。
1. VR研修とは?
VR研修とは、その名の通りVRの技術を利用した研修のことです。
そもそも、『VR』とは『Virtual Reality(仮想現実)』の略であり、近年ゲームだけでなくさまざまなビジネスシーンで活用される事が増えてきました。
VRの特徴である映像体験を利用し、仕事の「仮想現実現場」をつくり上げることで、よりリアルに仕事の体験を積むことができます。
実際に、アメリカではケンタッキーフライドチキン(KFC)の従業員トレーニングの一環としてVRを活用しているという事例があり、そのVR研修がユニークかつ効果的だと話題になっています。
また、株式会社デジタル・ナレッジが全国の企業100名を対象に実施したアンケートによると、VR研修の導入に興味を示している企業は約60%をしめていました。
とくに、飲食や宿泊などのサービス業や金融・情報通信業の企業がより意欲的だという傾向が見られたそうです。(参考:【プレスリリース】研修担当者の6割が「VR導入」に意欲|デジタル・ナレッジ)
このように、多くの企業がVRを活用した研修に注目していることがわかります。
2. VR研修のメリット
では、VR研修にはどのようなメリットがあるのでしょうか。VR研修のメリットは、以下の3つです。
1. コミュニケーション研修の指導人員の削減
激しいクレーマーへの対応や取引先との商談など、繰り返しの経験が重要とされるコミュニケーション研修には、指導人員が複数人必要です。
しかし、VR研修であれば相手役となる指導人員が不要なので、指導人員を削減することができます。
2. 技術習得のためのコスト削減
技術職の繰り返しの練習には、資材費などコストがかかりがちです。
しかし、VRでの仮想現実空間であれば資材を最小限にすることで、費用を掛けずに何度も反復して練習をすることができます。
3. 研修の効率化・期間短縮
コミュニケーション対応や技術習得訓練・現場対応の訓練を大勢が一斉に実施するため、時間の短縮につながります。
また、ロールプレイングに近いリアルな状況をVRで体感できるため、短期間でスムーズな対応やスキルの習得を身に着けることができるようになります。
3. VR研修の導入事例
最後に、どのような企業がVRの研修をおこなっているのか、導入事例をご紹介します。
アウディ|自動車メーカー
ドイツの自動車メーカー『アウディ』では、従業員に対して物流センターでのVR研修を実施しています。
従業員は、VRメガネを装着し、ビデオゲームのコントローラーを使ってコンテナや部品などをバーチャルに移動させて現場を疑似体験できるようです。
さまざまな難易度を設定することにより、各従業員の研修の進捗状況にあわせた研修をすすめていくことができます。また、VR研修は言語設定を自由に変えることができます。
VRを活用した研修を取り入れることで、教育者のスキルの違いや言語の違いなどの障壁がなく、全社員が同じ研修を受けることができるので、教育システムとしては非常に魅力的な教育システムの一環となっているようです。
セコム|警備サービス業
警備サービス会社セコムは、危険事例の疑似体験研修にVRを導入しています。
研修をするために、火事の煙の充満した状況などを実際に再現することは難しいので、VRを活用した仮想現実体験でその対応が学習できます。
これまでの研修では、準備や片付けに多くのコストがかかったり、危険性の高い研修は説明だけで終わったりしていたようですが、VRを活用することにより社員が現実に近い状況の体験が可能になったということです。
塚田農場|飲食業
外食チェーンの塚田農場は、アルバイトの研修にVRを導入しています。
正社員が鹿児島などの地方に出向いて受ける、養鶏場や食肉加工などの現地研修を映像化しVR研修に組み込んでいるようです。
動画よりもリアルなVR映像により、より商品に対して理解を深める効果が期待されています。
このように、地方研修など、コスト的にも物理的にも大人数の参加が難しい場面をVR化することにより、知識を共有できるようになります。
ケンタッキーフライドチキン|飲食業
冒頭にもご説明した通り、アメリカのケンタッキーフライドチキン(KFC)も調理研修にVRを導入しています。
カーネルサンダースが不気味に笑うサスペンスホラー風の世界観と、5段階の調理工程を習得しなければ部屋から出られないという過酷な条件で、サスペンスホラー風のゲームに仕立てているようです。
従業員は楽しく調理方法を習得できるだけでなく、現実だと25分もかかるトレーニングがVR研修の導入により10分に短縮できたようです。
ゲーム感覚で技術を習得できるような研修ができるのも、VRというテクノロジーが導入できてこそなのかもしれませんね。
まとめ
VRを活用した社員研修や社員教育は、これまでよりもリアルな状況を再現した研修をおこなうことができる点で効果的です。
ロールプレイングでの研修は、社員や同期を相手にするため過度の緊張が生じてしまったり、反対に緊張感がなくなってしまったりすることもあります。
VR研修は自主練感覚で第三者を相手に訓練できるので、余計な雑念を抱くことなく研修内容に集中できるのではないでしょうか。
また、ゲームなどにも取り入れられているVRの技術を体験できるというだけでも、研修に対するモチベーションが上がる場合も多いかもしれません。
企業側にも多くのメリットがあるVR研修が、今後の研修のスタンダードになる日も近いかもしれません。