LIFULLが取り組む『日本一働きたい会社のつくりかた』のカギは「内発的動機づけ」 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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LIFULLが取り組む『日本一働きたい会社のつくりかた』のカギは「内発的動機づけ」

  • 組織
  • エンゲージメント

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※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

働き方」をテーマに、人事領域に携わる4名の著名人の方を講師に迎え、各社の最新ケーススタディ、働き方改革の実態とその打開策をお話いただいた『第73回グローバル人事塾

その中で、今回は【日本一働きたい会社のつくりかた】をテーマに、株式会社LIFULLの人事本部長である羽田さんの登壇内容を記事にまとめました。

羽田さんは、社員有志を集めた「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、2017年には「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。7年連続「働きがいのある会社」ベストカンパニーに選出。健康経営銘柄選定など、LIFULLという企業の価値を高めることに貢献されています。

では、上記の実現のために羽田さんが実施したことは何か。その内容をご紹介します。

羽田さん

羽田 幸広 | 株式会社LIFULL 執行役員人事本部長

1976年生まれ。上智大学卒業。人材関連企業を経て2005年6月ネクスト(現LIFULL)入社。人事責任者として人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに尽力。2008年からは社員有志を集めた「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、2017年「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。7年連続「働きがいのある会社」ベストカンパニー選出(2011年~2017年)、健康経営銘柄選定(2015年度、2016年度)など、企業として高い評価を得るまでに導いた。

【目次】

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「自由をビジョンで束ねる」組織づくり

羽田氏:私は2005年にLIFULL(旧ネクスト)に入社しました。入社したときは29歳、人事業務未経験でしかも私1人でスタートしました。当時は80人規模の会社でしたが、手探りで採用・育成・人事制度構築などをコツコツやってきました。

その中で、私たちが何を大切にして会社をつくってきたのか。一番重要なのは「内発的動機づけ」になると考えています。これはその人の内側から出てくる、「自分はこれをやりたい、こうなりたい」という欲求です。この欲求をいかにして形にする機会を提供していくか、ということを非常に意識して仕事をしてきています。

逆に「お金や地位を得たい」といった外発的な動機づけを中心に組織づくりをするようなことはしていません。やりたいこと、なりたい姿をどんどん聞いて、その実現に向けたチャンスを提供しています。

ただし、「こんな事業をやりたい」「こんなプロダクトをつくっていきたい」という声が多くなると、会社として目指したい方向にばらつきが生まれてしまいます。そうならないために、「自由をビジョンで束ねる」ようにしています。

会社の目指す方向性であるビジョン(経営理念)を明確に示し、その上で「この方向性に沿っていれば、好きなことどんどんやってください」と伝えています。

ですので、ビジョンに共鳴した個性的な同志が自由に挑戦して、必要に応じて協働する。そのような組織をつくっていくことを心がけています。

LIFULLが設けている4つの採用基準とその優先順位

羽田氏:採用においても、「その人のやりたいこと」と「会社がやっていきたい方向性」、このベクトルが合っているかどうかを確認するようにしています。

「ベクトルが合っているのであれば、当社で仕事を通じてその人の自己実現になり、会社にとってもビジョンの実現に近づく」と考えています。特に新卒採用においては、将来的にどんな方向の事業をやりたいのか、どう成長していきたいのかなど、かなり掘り下げて聞いています。

そしてその上で、採用における基準が4つあります。

  • ビジョンフィット
  • カルチャーフィット
  • ポテンシャル
  • スキルフィット

この中で、ビジョンフィット、カルチャーフィット、ポテンシャルはMustの要件。スキルフィットはWantの要件にしています。

会社の方向性に合っているか、企業文化に合っているか、マネージャーやスペシャリストになるようなポテンシャルがあるか。そのようなことを重視して採用をしています。

もちろん、即戦力となるようなスキルも魅力的なのですが、あくまで「同じ志を持ってくれる人材だけを入社させる」という部分にこだわって採用活動をおこない、組織づくりをしています。

内発的動機を満たすための「挑戦できないという言い訳ができない」環境づくり

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羽田氏:社員の内発的欲求を満たす機会を提供していくために、「挑戦できないという言い訳ができない環境」をつくることを意識しています。

その人の希望がどんなものであれ、できるかぎり実現できるような風土や制度をつくっていこうと考えています。

そのためにおこなっている施策をいくつかご紹介します。

1.キャリアデザインシートの作成

羽田氏:そもそもどのように内発的な欲求を顕在化させていくのか。まずは「キャリアデザインシート」を作成してもらい、年に1回提出してもらうようにしています。

将来のキャリアビジョンから逆算して、5年後、3年後、半年後にどんなことをやっていきたいのかを考え、それを踏まえて面談を実施していきます。

たとえば「今は営業だけど将来的にはプロダクトを自分でつくっていきたい。だから、ものづくりに関われる部門に異動したい」という話があれば、面談をして異動できるように動いていきます。

当社は職種変更を伴うジョブローテーションをおこなっていません。ですので、基本的に職種が変わる異動は、「キャリア選択制度」という、社員の希望を聞いて異動する制度しかありません。ここで希望を聞いて、約7割の社員はその希望の部署に異動できています。

2.新規事業提案制度「Switch」

羽田氏:「Switch」は新規事業提案制度になります。

今年も2回実施していますが、だいたい年間で130件から150件の事業提案があります。提案数から単純計算すると、社員の20%~25%ぐらいがなんらかの事業提案をしている計算になり、内定者からも10件~20件くらいの提案が出てきます。

なぜ多くの提案が出てくるのか。内定者はもちろん、ノウハウ・スキルなしに事業提案をできる社員はそこまで多くありません。そこで、事前のレクチャーや事業経験者による支援をおこなっているんです。そういったことをすることで、提案数が増えています。

そして、ここから立ち上がった事業に関しては、基本的には子会社化していく方針をとっています。自分が立ち上げたい事業を提案して事業化されれば、年次は関係なく、約2,000万円~4,000万円くらいの資本金を手にすることができます。

ただし、この資本金以外に本社からの支援は基本的に一切おこないません。お金を自由に使える代わりに、従業員への給与の支払いや経費の精算といったバックオフィス業務も全部自分でおこなう必要があります。

人事関連であれば、会社を設立するタイミングで、社労士などの紹介はしますが、給与の計算を自分でやろうが社労士に委託しようが本社の人事に業務委託として委託しようが、すべて本人の自由です。

本社に業務委託を依頼するときは、業務委託料を本社に支払わなければなりません。このようにして、自由と責任をしっかりと持たせて子会社化しています。

3.クリエイターの日

羽田氏:「クリエイターの日」という制度もあります。これは、通常業務以外の新しいプロジェクトや技術に挑戦したい場合に、四半期ごとに7営業日を活用することができる制度です。

この7日間に関しては完全に業務から離れて、合宿形式で新しいことに取り組むことができるという制度になっています。

4.有志で立ち上がるプロジェクト

羽田氏:特に仕組み化しているわけではないのですが、当社では有志でのプロジェクトがどんどん立ち上がっていきます。

全社横断プロジェクトや外部のイベントの運営スタッフの手伝いなど、社内外のさまざまなプロジェクトへ有志として参加すること社員が多く、延べ3割くらいが何らかの活動をおこなっています。

組織には「完全な組織」というものはなく、一方にとってはメリットがあるけれど、一方にとってはデメリットがあるという構造になります。そういったデメリットや、組織と組織の間の問題などをこういうプロジェクトでどんどん埋めていってくれています。

社員が自発的に手を挙げて、「このような課題があるので、こういうプロジェクトに参画したいです」と提案すると、基本的にはそのプロジェクトへの参加を認めています。

5.社会活動貢献支援

羽田氏:また、社会活動貢献支援もおこなっています。たとえば震災の支援など、「世の中の課題に対して個人的に活動したい」というときに支援できる仕組みをつくっています。

年間の総労働時間の1%と、前年度の税引後利益の1%を原資にして、「震災のボランティアに行きたい」という声があがれば、特別休暇を付与したり、交通費などの活動費を援助したりしています。そういう形で本業以外のさまざまな活動に関しても、支援をすることによって挑戦を後押ししています。

6.LIFULL大学

羽田氏:社内大学として学べる機会も提供しており、今では、年間約60講座を開講しています。「一般的な階層別研修」「次世代経営人材育成の選抜研修」などがあり、60講座のうちの約50講座が選択型のゼミナールというプログラムになっています。

これは、教えたい人が講師になって、教わりたい人が自らで手を挙げてその講座を受講するという形式になります。「自分のこのスキルを社員にシェアしたい」という人は講師になってシェアしていく。

受けるほうは、「自分は今営業だけれど、CFOを目指したいので、財務の勉強をしたい」ということであれば、財務分析の講座に入るという感じです。

そういう形で、どんどん自然発生的に勉強会が発生して、そこに対して社員が自分で入っていくという仕組みをつくっています。半年ごとに30講座ぐらいずつ新設の講座を行っています。

内発的動機づけのために大事にしている考え方

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羽田氏:内発的動機づけを重視し、そのために機会、時間、お金、人を提供していますが、実施するにあたって大事にしていることが2つあります。

チャレンジのための余白をつくる

羽田氏:業務でいっぱいいっぱいになってしまうと、新しいことに取り組むことができなくなってしまうので、余白をつくることを意識しています。

具体的には新しい活動にチャレンジできるように、少しずつ管理職の考え方、価値観を徐々に変えていきました。

管理職の人たちは、当然のことですが自分の部署の仕事を部下に注力させたいもの。そのため、「他のプロジェクトに参加したいです」という声に対してなかなか背中を押しにくい部分があります。

そうならないために弊社社長の井上が中心となり、「管理職が社員の全社の活動に挑戦したいという意欲を止めるということは、ミドルのフリーライダーだ」と、啓蒙して文化をつくりました。

フリーライダーとは「タダ乗り」という意味ですが、ミドルフリーライダーは、全社への貢献を考えずに自分の部署の利益だけを考える人を意味しています。

この考えが浸透することで、自部門の仕事だけでなくいろんな活動や新しいチャレンジをする余白を生みやすくしています。

心理的安全性を生むための施策

羽田氏:「自分がこんな発言をしたら無能だと思われてしまうかもしれない」「評価が下がるんじゃないか」といった心理的不安を解消するためにさまざまな施策を行っています。

この場は安全である」という認識をしっかりつくることで、誰かの意見に対して他の従業員から多くの提案がでることで、小さいイノベーションを起こしやすくするようにしています。そういった思考の質を高めて、戦略の質を高めて、行動の質を高めていき、結果を出していこうという考え方になります。

そのためにチームビルディングのプログラムを数多く実施するなど、従業員同士がフラットに仲良くなれることに対して、かなり予算をかけて取り組んでおります。

チームビルディングでは、3つのギャップを埋めることを意識してもらいます。

  1. 感情のギャップ
  2. ビジョンのギャップ
  3. 戦略のギャップ

まずは感情のギャップを埋めることからです。少し緊張感が漂う「はじめましての場」において、いかにしてお互いの距離を縮められるかということに取り組んでもらいます。

バーベキュー大会でもレクレーション大会でもなんでも、各部門、各プロジェクトで考えてコミュニケーションをとっていきます。それにより、お互いの心の壁がなくなり、距離を近づけていくということを、毎年しつこくしつこく繰り返しています。

それによって上司・部下、若手・ベテランと、お互いが壁をつくらずにコミュニケーションがとれる文化ができています。

社内外問わず、機会を創出していくための仕掛け

羽田氏:ビジョンに共鳴した同志と一緒にチャレンジする場を提供するために、社員に限らず外部の人とも積極的につながっていくことを推奨しています。

たとえば、本社の2階は「LIFULL HUB」というコワーキングスペースになっています。これは、コワーキングスペースをさまざまなスタートアップ企業やフリーランスの方に活用してもらい、彼らと接点を持てる機会を増やしていくことが狙いの一つとしてあります。

そこで、何かしらのコラボレーションを生み出し、経営理念を実現するために新しい事業をつくりあげることにつなげていきたいと思っています。

また本社には「LIFULL Table」という社員食堂兼カフェのようなスペースもあります。これは本社の1階にあるのですが、従業員だけでなく外部の方も自由にご利用いただけます。某有名企業の元会長様など、さまざまなビジネスパーソンの方にもお越しいただいており、そこで外部の方とコミュニケーションを取れるようにもなっています。

このように、社内社外問わず、ビジョンに共鳴してくれた同志が自由に挑戦する機会をつくっています。人の働き方に関して、今後はますます会社の垣根を飛び越えた「プロ化」が進んでいくように感じています。

そのような自己実現をしたいという方々とうまく結合して新しい価値を提供できるようになり、当社と関わったさまざまな方々が、「LIFULLと関われて良かった」と思ってもらえる場をつくっていけるように、活動していけたら良いなと思っています。

【イベント概要】

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