産学官の垣根を超え、4つの取組から『働き方改革』の本質を考える |HR NOTE

産学官の垣根を超え、4つの取組から『働き方改革』の本質を考える |HR NOTE

産学官の垣根を超え、4つの取組から『働き方改革』の本質を考える

  • 組織
  • 企業文化・組織風土

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※本記事は、主催企業や登壇者/登壇企業に内容を確認のうえ、掲載しております。

MATCH-UP!!(※)主催の、働き方改革について考える人事イベントに参加。『これからの働き方の本質を考える』をテーマに、行政機関、調査機関、大手・中小ベンチャー企業など、産学官さまざまな立場の方々が集まって議論されていました。

MATCH-UP!!
およそ20社50名のHRパーソンが集まり、垣根を超えて採用、教育から勉強会まで様々な取組を手弁当で実行する団体。垣根を超えて可能性を開発し、人と組織を幸せにする。

今回はその中で、リクルートワークス研究所、経済産業省(以下 経産省)、サイボウズなど、4人の方々が調査、立案、実践している「働き方改革」について記事にまとめました。

働き方改革の背景、働き方についての考え方、具体的な取り組み事例を知ることができ、非常に多くの気付きを得ることができたイベントでした。是非、ご参考となれば幸いです。

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【登壇者紹介:城倉 亮】東京大学卒業後、大手航空会社に就職。日系コンサルティングファームを経て、2012年株式会社リクルート(現株式会社リクルートホールディングス)に入社。グループ人事労務を担当する部門のマネージャーとしてグループ各社の人事業務を支援。その後ITベンチャー企業での人事を経て、2015年10月リクルートへ復帰し現職に至る。

行政側の働き方改革の取り組み内容

城倉氏:働き方改革は2013年頃から政府の資料のなかに、少しずつ登場しはじめました。2013年の「日本再興戦略」という、政府が出した資料の中に一言だけ「働き方改革」というワードが入っています。

翌2014年から徐々に働き方改革が注目を集めはじめ、2015年1月には、厚生労働省が「働き方・休み方改善ポータルサイト」をリリースしました。このあたりから、メディアでも働き方改革が特集として取り上げられるなど、盛り上がりを見せていきます。

2016年には、働き方改革実現会議が9月に設置され、2017年3月には働き方改革実行計画が決定されました。働き方改革実行計画には、従業員の処遇の改善、女性・若者が活躍しやすい環境促進、高齢者の就業促進など、かなり幅広く実行計画が立てられている状況です。

このように、2014年頃から働き方改革が一気にキーワードとして盛り上がってきています。

企業側の働き方改革の取り組み内容

城倉氏:一方で企業側はどんな取り組みをしているのか。去年に7月に経団連、日本商工会議所、経済同友会、全国中小企業団体中央会および賛同している業界団体により、「経営トップによる働き方改革宣言」が公表されています。

「誰もがいきいきと働ける職場環境の実現に向けた取り組み」として、具体的に3つのことが書かれています。

  • 経営トップの明確な意志表明とリーダーシップの発揮
  • 管理職によるマネジメントの徹底と自らの意識改革
  • 具体的取り組み例
    1.業務プロセスを見直し、効率化することにより、ムリ・ムダを省く。
    2.ノー残業デーの徹底、深夜残業の原則禁止や朝型勤務の導入、フレックスタイム制やテレワークの活用を進める。
    3.職場・個人単位での年休の計画的付与や半日・時間単位年休の導入を進める。
    4.プラスワン休暇(土・日・祝日の前後に年休を取得)や子どもの休みに合わせた年休の取得などにより、年3日程度の年休の追加取得を検討する。
    5.年休実績を見える化し、取得率が低い社員に管理職が取得を働きかける。

「労働時間の月間の上限を決めましょう」「ノー残業デーを作りましょう」「20時以降の残業を禁止にします」「テレワークを促進します」「副業・兼業をこれから認めていきます」などといった施策に各社が取り組んでいるのが現状だと感じています。

その中で、よく企業の方々と私たちでディスカッションをするとこのような社員の方々の声を聞きます。
「なぜ働く時間に制約のない私まで早く帰らなければいけないんですか?」「早く帰るのは良いんですけど、業績目標は達成しなくても良いんですか?」

“あるある”ですよね。このような声に対して、どのように働き方改革を推進していくかを一緒に考えさせていただいています。

日本人は長時間労働から抜け出すことができるのか?

城倉氏:このような働き方改革に対する声の根底にある、日本人の働き方に染み付いた長時間労働の課題についてご紹介をします。

1つ目が、生産性への関心の低さ。長時間労働を厭わない労働観からの脱却が求められています。「自分が成果を出すためには長時間働いても構わない」というのではなくて、まず生産性をあげるための観点で考えてみる必要があります。

2つ目が、フルタイムで働けない事情のある方のワークスタイルを、本当の意味で組織が受け入れられていないように感じています。“配慮”をするのではなくて、本当に組織の一員であるという状況をつくっていくべきです。

3つめは、「バックオフィス業務は生産性を測れない」という諦めから脱却することです。得られる成果を測ることは難しいかもしれませんが、働く時間を含めた経営資源・コストの部分は測ることができます。それが下げられれば、間違いなく生産性は上がっていきます。

働き方改革は「生産性を高めていくこと」が重要だと思います。生産性を高めていくことにより成果が増え、それが給料に跳ね返ってくる。「成長と分配の好循環化を目指していく」ということが、働き方改革が目指していく本質ではないでしょうか。

神奈川県にある旅館の事例になるのですが、ITを導入してできる限り業務工数を減らし、また営業日数も減らして、定休日を設けています。それでも売り上げは変わらずに高い生産性を実現できています。社員の方々の給料も上がっています。働く方々も実際にお客さんと接する時間が増えてイキイキと働けているようです。

こういったことが生産性を高める良いサイクルだと思いますし、そういった事例から学べることも沢山あるのではないでしょうか。

外資系IT企業の働き方改革の事例とは?

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【登壇者紹介:松嶋 活智】外資系企業にて働き方改革を担当。働き方改革について、ユーザー向けのセミナーなどに登壇。IT以外を含む働き方改革の進め方や意義について情報提供をしている。

松嶋氏:「働き方改革の必要性」の話になると、賛否両論さまざまな意見が出てきます。働き方改革に取り組んでいる企業とそうでない企業に分かれてきていて、やらない企業は「働き方改革を諦めてきてしまっている」ように感じています。実際にどのように取り組めばいいのかわからないという方も多いと思います。

そこで今回は、「外資系IT企業の働き方改革推進の事例」についてお話ししたいと思います。

外資系IT企業が抱えていた3つの課題

松嶋氏:まず、その企業が抱えていた課題についてご紹介します。

  • 紙の文化問題
    当時のオフィスでは、誰も開けない書類がつまったダンボールがたくさんありました。山のように高く積まれていたため、時には“なだれ”が起きることもありました。また、月に75万枚もの紙を印刷しており、ものすごく大量の紙を消費していました。
  • 会議に工数がかかる問題
    当時は都内にオフィスが5ヶ所あり、その間をシャトルバスが走ってました。新宿-赤坂などを結んだりしていたのですが、移動に無駄が発生していました。1時間の会議のために3時間の工数がかかるんです。1時間かけて移動し、1時間会議をし、1時間かけて帰ってくるといった感じです。
  • 組織の一体感問題
    正社員以外の方も多く働いている環境でした。そうするとどうしても一体感が薄まってきてしまい、労働生産性・コスト効率・組織カルチャーといった部分で支障をきたすようになります。ワークライフ・バランスなどの女性の活用理解状況もなく、結果として社員のエンゲージメントが非常に低い時期が続いていました。

働き方改革に向けた4つのポイント

松嶋氏:そういった状況を打破するため、4つのポイントに絞って働き方改革を実行に移していきました。

1つ目は会社のビジョンを明確にすることです。会社が掲げるビジョンはあるのですが、明確化、浸透ができていませんでした。ビジョンがないと何が起きるか。何かを決める時に拠り所がないためブレるんですよ。まずは「ビジョンの実現に向けて何をすべきなのか」という方向性を揃えることは重要です。

2つ目は制度の整備です。実際にビジョンを明確化し、その上で「こういう働き方をしていきましょう」と実行に移そうとしてもできないんです。なぜかと考えたときに「制度が整備されていないのでやって良いかどうか分からない」という声があったのです。

制度を変える際に「実行できます」ではなく「実行した方が良いですよ」と明示的に出すと、みんなの行動が変わります。実はテレワーク導入の際も、制度の内容を変えたときが一番実行する人が増えました。それまでは、「やっても良いけどやらなくても良いよ」という認識だったのですが、「これやった方が良いんだ」と明確に分かるようになるんです。

3つ目はペーパーレス化とフリーアドレス制にしたことです。個人の座席を固定しないフリーアドレス制を導入し、ペーパーレス化を推進していきました。席は毎日、自分が好きなところに座ることができます。引き出しがなく、ディスプレイだけが置いてあります。パソコンだけ持って行き、自分でディスプレイにつないで、リアルディスプレイで仕事をおこないます。

4つ目はクラウドサービスの導入です。家でも会社でも何処でも仕事ができるように環境を整えました。それこそ、新幹線や空港にいても仕事ができます。それくらいどこでもやれる環境を用意しています。さらにテレワークを推進することでface to faceでなくても話せる文化をつくっています。Skypeを活用してコミュニケーションをとることができますし、その結果として移動時間が削減されます。

ただ一方で、「会いたい」という気持ちは出てくるもので、face to faceの機会も大事にしています。その際は、フリーアドレス制ということもあり、フロアや部署をまたいで一緒に仕事をすることを許容しています。

目指しているのはフレキシブルワークで、みんながそのメリットを享受できるように推進しています。

「規則」「情報管理」「評価制度」の重要性

松嶋氏:また大事な考え方として、「規則」と「情報管理」があります。

規則を変えないと行動は変わりません。たとえば「有給を取得しても良いよ」と言われても取得状況は変わりません。しかし、「有給を好きに10日取りなさい」となれば取得数が増えていきます。これは会社が推奨しているように見えるからです。もちろん良し悪しはあるのですが、そのように規則を変えると人間の行動は変わってきます。

情報管理は、社外で仕事をすることは情報漏洩リスクがあるため、万が一そうなった際の罰則が怖くて誰もやりたがらないんです。そこは「社外でやっても問題ないです」と会社がリスク保障をしてあげるようにしています。

そうしたところ、自宅やカフェなどで仕事をやることが増えました。「規則」と「情報管理」両方のバランスは大事です。

また、フレキシブルワークをやることで、上司・部下の関係が変わります。これまでは上司・部下があると必ず出てくるのが評価の話です。上司は普段社内であまり見てない人を評価することになり、部下の人は「見てくれていないのに評価が心配だ」となります。

ただ、毎日朝から晩まで部下のことを見ている上司はあまりいません。それでも評価できているということは、実際は同じ空間にいることが大事ではないということです。業務を通してどのようなアウトプットが出てきているかが非常に大事なんです。

それをきちんと評価できるようにするためにも、ITを導入することが大切だと思います。システム上で何をしているのかが分かりますし、レポートを明確に出せるので、メンバーがパフォーマンスを出せていたのかどうかが、数値化して残るようにしてあります。

働き方改革を実行してどのような変化が起きたのか?

松嶋氏:実際にこれでどれくらい変わったのか。改革前後の変化に関して測定しており、このような結果が出ています。

1つ目はライフワーク・バランスの満足度です。毎年1回~2回、全社員を対象にサーベイを実施しているのですが、そこでワークライフ・バランスの満足度が40%上がっています。

2つ目は、この5年間の間に一人あたりの事業生産性が26%上がっています。その期間の社員数はあまり変化がなかったため、純粋に売上が26%上がったことになります。ペーパーレスも49%となり、印刷コストも大幅に下がりました。

3つ目、女性の離職率も40%下がりました。優秀な人が、結婚・出産によって退職となるケースはあると思いますが、その理由に多いのは時間の制約です。そこをフレキシブルワークにすることで、お子さんの体調不良で早退して家で仕事をしたり、朝早く来て保育園に迎えにいくために17時で帰宅する人など、その人に合わせて自由に働けることを推奨しています。

経済産業省が取り組む働き方改革とは?

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【登壇者紹介:白石 紘一】東京大学・同法科大学院卒業後、司法試験合格。都内法律事務所にて企業法務、労働法務等に従事した後、経産省に任期付公務員として着任。「働き方改革」に関する政策立案に従事し、法的側面のほか、企業人事制度の変革、HRテクノロジーの普及促進等を担う。第二東京弁護士会所属。

「働き方改革=長時間労働の是正」ではない

白石氏:私は、経産省の産業人材政策室に所属しています。「働き方改革実現会議」が内閣に設置され、経産省の担当部署として政策の立案、実現を担っている部署になります。

我々としては、働き方改革を一時期のバズワードで終わらせてはいけないという危機感のもと、現在は働き方改革のセカンドフェーズとして、そのための政策を考えています。

そういった中で「働き方改革=長時間労働の是正」だという論調が非常に多いと感じています。長時間労働の是正は一側面としては非常に重要ですが、それ自体を目的とすべきものではないと思っています。本当の意味での働き方改革をやったときに現れる結果の1つに過ぎないと考えています。

では、働き方改革の本質とは何か。すごくざっくりした言い方になりますが、「誰もがイキイキと働ける環境づくり」ということだと思っています。

今は「ヒト・モノ・カネ」の中でヒトが重要な世の中になってきています。私の個人的な考えですが、たとえば機械は、ある程度普通のメンテナンスをしていれば、同じ成果を出し続ける。しかし、ヒトというのは、ケアのやり方次第でそのアウトプットが2倍も3倍も変わってくる資産だと考えています。

これからはヒトをどのように活用するかを本気で考えないと、企業力・競争力で劣ることに直結してくるのではないでしょうか。そうであれば、ヒトという資産を最大限活用するために何が必要かを考えていかねばなりません。そのためには、まずは働きやすい環境をつくることが必要だと思います。

そのためにたとえば、「柔軟な働き方」ということが働き方改革実行計画でも取り上げられており、その中には兼業・副業などの話があります。要するに、今までは一社で一生働くということが当たり前だった世界ですが、これはもう決して必然ではありません。

選択肢として兼業・副業を選択できる社会というのをどうつくっていくのか。選択肢があるということが、みんながやりたいことをやれる、イキイキできる、働きやすい環境につながるのではないでしょうか。

人事評価制度を見直すことも重要である

白石氏:また、よく耳にするのがテレワークですが、制度としてテレワークを取り入れるだけでは何も解決しません。なぜかというと、どのように評価するのかという、評価制度の問題があるからです。

そのため、テレワークを生産性を高めるための施策として位置づけるためには、評価制度も一緒に見直さなければいけません。そういう意味で、本質的な改革としてはテレワークの導入ではなく、人事評価制度を合わせて見直していくということが必要になりますが、それはおそらく時間が非常にかかる話だと思います。しかし、そこにこそ踏み込まなければいけません。

人事評価制度の見直しとは、たとえば、その人はどういう業務をやるべきなのかを明確化した上で、それがどれくらいできているかというような、評価の手法をきちんと確立しなきゃいけないということです。特に旧来型の日本企業だと、長く働いている人間を評価していたわけですが、これは簡単なんです。

でも今はそうではない評価方法を確立する必要があります。長く働かないと評価ができないという仕組み自体を変えていくことも重要になってくるはずです。

「熱意はないけれどずっと同じ会社にいたい」という社員が増えている状況を変える必要がある

白石氏:また、従業員のエンゲージメントもこれから重要になってきます。要するに会社の理念に共感して自発的に働いていくという意欲をどのように醸成していくかです。

アメリカのギャロップ社の調査結果では、日本には熱意のある社員は6%しかいないらしいのです。アメリカでは32%です。これは各国比較で比べると、その時に調査した139カ国中132位と限りなく下の順位なんですよ。

周りに悪影響を及ぼす社員も24%いるとのことで、非常に良くない状況です。ただ一方で、最近「ずっと同じ会社にいたい」という人の割合がまた上がっているという話もあります。要するに、「熱意はないけれどずっと同じ会社にいたい」という、おかしな状況になっています。

では、そのために何をするべきかが国としての仕事にあります。それは人が移動しやすい仕組みであったり、移動したときに不利益が起きないような仕組みをいかにつくるかなど、新しい仕組みを我々としては考えていかないといけません。

さまざまな人が活躍できるためには、(全員一律ではなく)個々人のそれぞれにとって最適な施策を打つ必要があります。これから、会社にとって、「人材活用」が競争力という観点で非常に重要になってくる中では、もちろんトップダウンでやっていくことも大切なのですが、人事部門が果たす役割はこれから非常に強くなるし、経営側はそれが非常に優先度の高いものだと思って扱わなければいけません。

良い人をいかに採用するか、その後いかに育てるのか、その人をどこに配置するのか、その人をどう活用するのか。個別最適な施策を打っていくために、このような非常に難しい業務がこれから人事部門に課されていくことになるんだろうと思います。

もちろんその人事部門の業務が円滑に進むようにすることも、我々の仕事です。官と民でできることはそれぞれあるし、それぞれやらなきゃいけないことはまだまだたくさんあります。これからもさまざまなことをみなさんと一緒に考えながら少しでもお役に立てればと思っています。

サイボウズが実践している働き方改革の取り組みとは?

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【登壇者紹介:青野 誠】2006年に新卒でサイボウズに入社。営業やマーケティング、 新規事業の立ち上げなどを経て人事部へ。現在は採用、育成・研修、制度づくりなどを担当。2016年よりNPO法人フローレンスの人事部門にもジョインし複業中。

サイボウズが離職率を20%以上削減できた理由

青野氏:現在サイボウズは国内に500人、海外に100人と600人規模の会社に成長してきていますが、昔は離職率が28%あり、大きな課題となっていました。そこでこの状況を何とか改善していこうと「100人いれば100通りの人事制度」をスローガンに掲げて、働き方改革を実施しています。

一人ひとりの個性を活かした多様な働き方の実現を目指しており、「働き方の選択」、「6年の育児休暇」、再入社できる「育自分休暇」、「複業の自由化」など、さまざまな制度をつくっています。また「感動課」という、ひらすら社員の感動について考えている部署もあります。

  • 働き方の選択
    まず働く時間を「残業する人」「定時で帰る人」「時短する人」の3つの中から選択することができます。働く場所も、オフィス、在宅など3通り選べます。この3×3の9通りで働き方が選択できます。残業もしてずっとオフィスにいるという働き方もできますし、10時~17時まで時短でかつ在宅で働くということも選択できます。また、柔軟に勤務体系を変更できる「ウルトラワーク」というものもあります。入社するときにどのような働き方が良いか選択できるようになっています。
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  • 育児休暇
    育児休暇も6年間にしていて、多くの社員が育児後に復帰しくれたり、男性でも最近取るようになってきたりしています。
  • 育自分休暇
    35歳以下で、退職しても6年以内に復帰することが認められてる制度もあります。転職や留学など、環境を変えて自分を成長させるために退職する人が対象です。

これらは一例で、それ以外にも働き方改革として多くの施策を実施してきています。そしてその成果として、離職率がグッと下がりました。ここ数年では4~5%くらいになっています。あとは女性の応募、採用が増えました。特に男女で差はつけていませんが、女性比率が3割から今は5割程度になっています。

サイボウズが取り組む「複業推進」

青野氏:サイボウズでは、2012年から複業を解禁しています。「副業」ではなく「複業」という名称にしているのは、ただお金を稼ぐだけでなく、マルチキャリアをつくる意味で「複業」として成長につなげてもらいたいというメッセージがあります。

複業を推進することで変わったこと

ただ、複業を認めている会社は多いのですが、複業を推進するような複業ウェルカムな会社はまだまだ少ない印象があります。そこでサイボウズでは、複業をより推進していくために「複業採用」をはじめるようになりました。

そうしたところ、本当に多くのさまざまな方が応募してくれるようになりました。中には「自分をもっと成長させて会社を大きくしたいから、サイボウズで学びたい」という理由で会社の社長が面接にきたこともありました。

また、スペシャリストに声をかけやすくなりました。たとえば、日本でも数人しかいないような技術を持っているエンジニアがいたとして、その方に正社員としてフルに働いてもらうことは難しいと思います。ただし、複業というかたちであれば、顧問のような気軽に相談できる立場で関わってくれることはできるかもしれません。今はそのような提案ができています。

サイボウズはBtoB向けのサービスを提供している企業なので、BtoCのサービスなど、自社では提供できないスキルやキャリアも当然あります。そのため、「もっと●●なスキルを磨きたい」と言われても「うちでは無理だから、転職するしかない・・・」という返答をするしかなかったのですが、「複業して他の会社で身につけてきなよ」というコミュニケーションに変えることができます。

私自身も複業をしていますが、知識、スキル、人脈、副収入を得られるようになったことが複業の魅力であり、メリットだと感じています。

複業を推進する上での課題とは何か?

どこまで複業をおこなうことを許可するかが、今考えていることです。たとえば、本業に近い複業はありなのか。「知人の会社にサイボウズ製品の導入を副業でやりたい」と言われても「これは営業が普段やっている仕事ではないか」という話になります。それを複業として導入支援コンサルティングをした人の収入となるのは、違和感を感じるわけです。

自分の仕事と近い複業の方が、スキルが活きるのでやりやすいのですが、近すぎると「これは本業ではないか」という疑問が生まれてきてしまいます。

また、複業だけではないのですが、評価制度を柔軟にしていく必要があります。働き方が多様になってくると、「評価をどうするか」という話には必ず行き着くと思っています。弊社も評価制度を模索しながらずっと変えてきました。最初は個別評価でやっていましたが、目標管理をしたり、360度評価をしたり、グレードをつくったりと、細かくPDCAをまわしながらやっていきました。

しかし、働き方が多様になってくると「会社に来ている人と在宅では給与は同じなのか」「エンジニアはスキルがあればどこで仕事しても変わらないのではないか」などと、評価軸の作成や運営が非常に難しくなっています。

その中で気づいたことは、フィードバックがとても大事だと言うことです。従業員が納得感を持てるかどうかが非常に重要なのです。「ちゃんとあなたのことを考えています」「あなたのことをいつも見ています」という姿勢を見せることで、評価制度に対する満足度が変わってきます。

福利厚生ではなく「ビジョンを実現するための制度」であるということ

青野氏:こういったことを実践していく上で、私たちが社員に常に言っていることがあります。

「これは福利厚生ではありません。サイボウズは世界一のグループウェアメーカーを目指しており、それを実現するための制度です。なので、もしそれから外れるものがあればやりません。福利厚生で働き方が柔軟になっていると思わないでほしい。世界一になるために効率的に働くために実施しています」

という内容です。

あくまでも私たちの掲げる目標の実現のために実施しているという意識を持って活用して欲しいと思っています。

最後に

いかがでしたでしょうか。

「働き方改革」というワードが飛び交っていますが、まだまだ本格的に取り組みはじめている企業はそこまで多くありません。

働き方改革の実践に向けてどのようにはじめればいいのか、何を変えていくべきなのか、どのように推進していくべきなのか。わからないこと、やるべきこと、課題など、取り組むべきことは山積みかと思います。

今回のようなイベントを開催し議論することは、働き方改革に関する悩みを解消するために非常に良い機会だと感じました。1社だけで進めていくのではなく、多くの方々と一緒に取り組む姿勢が非常に大切ではないでしょうか。

【イベント概要】

  • 主催:MATCH-UP!!
  • テーマ:働き方改革について考える人事イベント
  • 日時:2017年7月20日(木)19:00~
  • 場所:ソフトバンク株式会社

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