元LIXIL副社長 八木氏に学ぶ、ブレない『自分の軸』のつくり方#強みを活かす | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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元LIXIL副社長 八木氏に学ぶ、ブレない『自分の軸』のつくり方#強みを活かす

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今回は、元LIXIL副社長の八木さんとサイバーエージェントの曽山さんの対談記事をご紹介。「強みを活かす」をテーマに曽山さんが八木さんにインタビューした内容をまとめました。

八木さんは、日本GE取締役、LIXIL副社長という経歴を経て、株式会社People firstを設立。現在に至るまで長きに渡りHR領域の第一線で活躍されています。

八木さんは「強みを活かす」とは「自分らしさを持つこと」だとおっしゃっています。それでは、自分らしさを持つために意識していることは何か、八木さんのノウハウや“こだわり”を、是非ご覧ください。

八木様

八木洋介(ヤギ ヨウスケ)|株式会社People first 代表取締役

1955年生まれ。京都大学卒業後に日本鋼管株式会社(現JFEスチール)に入社。National Steel Corporationを経て、1999年にはGEに移り、2009年日本GEの取締役に就任。2012年に株式会社LIXILグループ執行役副社長 人事総務担当を経て、株式会社people firstを設立。
曽山様

曽山 哲人(ソヤマ テツヒト)|株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括

株式会社伊勢丹(株式会社三越伊勢丹ホ ールディングス)に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事したのち、1999年株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。現在は取締役として採用・育成・活性化・適材適所・企業文化の取り組みに加えて、「最強のNo.2」「クリエイティブ人事」「強みを活かす」など複数の著作出版やアメーバブログ「デキタン」、フェースブックページ「ソヤマン(曽山哲人)」をはじめとしてソーシャルメディアでの発信なども実施。
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海外に比べると日本は「自分らしさ、自分の意見」がない人材だらけ

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曽山氏強みを活かすというテーマで、八木さんが強みを活かすために意識していることを教えてください。
八木氏:そもそも、強みを持っている人、活かしている人は、言い換えると「自分らしさ」を持っているということです。

リーダーになるような自発的な人材を育てて行きたいと考えたときに「自分らしさ」持っているかどうかが重要だと考えています。

なぜかというと、日本人は小さい時から「皆と仲良くしましょうね」「人に迷惑をかけないようにしようね」「お兄ちゃんだから我慢しようね」と、とにかく自分を抑えて育ってきたように感じています。

一方で海外では、「一番になれ」「勝ちなさい」「自分らしく」と言われて育ってきています。これはすべて自己主張することにつながります。

たとえば、ずっと自己主張をしてきた人材と自分を抑えてきた人材が、グローバルという場で一緒に仕事した際に、誰が主導権を握るのか。自己主張できる人材ではないでしょうか。

また、グローバルな場に限らず、「自分を抑えましょう」と育ってきた人は、自分を抑えるのではなく、「自分の意見を言わない人」になります。さらにそこから「自分の意見を持たない人」になるんです。

何にも考えないで「はい分かりました」と言う人が多くいますが、そうではなく「自分はこう考えています」と意見をしっかりと言える人材が強い組織には必要です。

そのために、自分らしさ、強みを持っている人材を育てていかねばならないと思います。自分らしさ、強みを持っている人は、すなわち自分の考えがある人です。自分の考えがしっかりできると、周りの人たちを尊重しながらも自分の意見を言うことができます。

「自分らしさ」を引き出すための方法

曽山氏「自分らしさ」を持つためには何をすればいいのでしょうか?

八木氏:私はGE時代からたくさんの人たちの育成に携わってきましたが、そのときに必ずしていたことは、「あなたの考える『自分』って何ですか?」いうことを問いかけることです。そうやって、その人が持つ「その人らしさ」をしっかりと引き出していくことに注力をしてきました。

「その人らしさ」は無意識の中にあるんです。私は無意識というのは人格のことだと思っています。そして、前向きだとか後向きだとか、そのような人格は、その人の周囲の環境が育てていくものです。

自分が20歳、30歳、40歳と成長していく中でさまざまな体験をしながら、その無意識内の人格が形成されていきます。そして、その人格の中には良いもの、悪いものが存在します。

良いものに関してはそれを強みと言っていいと思います。そして、その強みを邪魔している悪いものを取り除いてあげることも、私はすごく大事だと考えています。

曽山氏「その人らしさ」を引き出すために、具体的にどのような問いかけをするのでしょうか。

八木氏:その人が今まで何をやってきたのか、小さい頃からの体験を話してもらっています。

「お父さん、お母さんはどんな人でしたか」「子供時代にどんな思い出がありますか」「まわりに何て言われてきましたか」「どんな子供でしたか」と、ずっと聞いていきます。これは、長いときだと3時間くらいかかります。

そうすると、なぜその人がそのような雰囲気を持っているのかが、そこはかとなく分かってくるんです。

曽山氏人事をやっていると、そういうことがわかってきますよね。

八木氏:特に、その人が持っているその人らしさは、腹が立った時や嬉しい時に出てくるんです。そのため、私は「あなた人生の中で一番腹が立った時のことを思い出してみてください」と良く聞きます。

腹が立つというのは、自分が大切にしているものを踏みにじられるからです。その大切にしているものがその人の良さになります。

自分の感情が立った時のことを思い出してもらいながら、自分が大事にしているものが何かを一緒に探していきます。そこから、「すごく良いところも含めて、あなたの過去の体験があって今のあなたができているんだね」という話をします。

加えて、「あなたが持っているその良いところは、周りの人たちが教えてくれたから、叱ってくれたからでしょう」「それであれば、他人を育てる時に、同じことをやってあげるといいんじゃないの」ということを伝えていきます。

「周囲の支えがあって成長できたのに、どうして一人で大きくなったような顔して、あなたは人を育てないわけ」と言うと、その人はハッとするわけです。

その人の中にある良いもの、自分の強みを見つけて、そしてそれを活かそうと前向きな気持ちを引き出すようにしています。

強みを活かすことを邪魔しているものは捨てよう

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曽山氏ここまでやると、過去の自分が大事にしてきたもの、自分がどういうふうに育ってきたのかが明確になりますね。

八木氏:そして、私はそこからネクストクエスチョンをします。
「過去に学んだことを明確にしました。でも、これからも学びますよね?」「これまではさまざまな経験から学んで成長してきました。だけどこれからの自分の人生はどうしていきますか?」と、問いかけます。

私がLIXILのときによく言っていたことは、
「LIXILは家に関わる会社です。家を建てる時には設計図が必要です。あなた方は人生の設計図を持っていますか?設計図がないと家が建たないように、人生の設計図をつくらないとまともな人生にならないことは理解していますか」ということです。

面談で、その人が持っている強みや自分が大事にしている基礎のようなものが出てきます。「こういうものを大事にしてきた」「私の性格はこうだ」という話をしてきました。

そしたら次はそれを今後どう活かしていくのかという、人生の設計図を書いてもらうように促します。これは、自分の現在描ける範囲で構いません。成長してまた新たな設計図をつくっていけばいいんです。

すると、その時になぜか、ネガティブな性格、自分が嫌いな性格もたくさん出てくるんです。

「すぐに人を批判したくなる」「弱音を吐いてしまう」これは強みではありません。自分の強みを活かすために邪魔をしているものです。私は、「そういったものは捨てよう」と言っています。

身に付けてしまったけれども自分の良さを邪魔しているもの、自分の強みを邪魔しているもの、これを取り除くことが非常に重要だと思っています。

そのために、無意識を一回、意識化する必要があります。無意識を意識化して「これはちょっと変だよな」と思ったやつは意識的に捨てていきます。

「過去の私はこうだった、今後はこういう人間になりたい、もう少し良い人生を歩もう」と考えたら、自分の人生を良くするために何が必要か気づいていきます。

今度はそれを意識的に身につけていくようにします。強みを活かすだけでなく、強みをつくって身につけようと。実際にしっかり意識することで、一年に一個くらいは身につきます。

このように「自分の人生というのをしっかりと設計図を持って、良い人生にしていきなさい」と、そのようなことをずっと言ってきています。

自分でつくった軸を生きる

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曽山氏このような考えは八木さん自身の経験からきているのでしょうか?

八木氏:そうですね、私は、自分の人生をどうやったら良くできるかということをずっと考えて、さまざまなことに取り組んできました。

その度に少しずつ学びがあって、自分の人生をつくってきました。そして40歳くらいのタイミングで、もう一回自分の人生とはどういう人生であるべきかということを考えて軸づくりをしたんです。

自分の強みや生き様は、軸になり得るものですが、それだけではまだ軸になりません。

たとえば、「私は人を騙す人が嫌いだ」と言っているとします。でも、「あなたも過去に何かしら人を騙したことはあるのではないですか」と聞くと、「あっ、たしかに・・・」となるわけです。

自分が大事にしている強みは「人を騙さない」ことで、10回中8回は実践できているものの、2回は実践できていない。これは軸とは言えず、その人のなんとなくの性格でしかありません。

それを軸にするためには、100回中99回まで実践できるか突き詰めることです。人間は完璧にはできないので、1回はまあ良しとしています。

そうすると、その人の持ち味がしっかりとした強みになり、軸となります。私はそうやって自分が大切にしている生き様を10個ぐらい出し、歯を食いしばって軸にしていきました。

私は、肩に『ミニ八木君』を乗っけている感覚で軸を実践してきました。

曽山氏ミニ八木君?それはどのようなものですか?

八木氏:「八木さんてロールモデルとなる人はいるんですか」と良く聞かれるのですが、そのような方はいなくて、私のロールモデルは肩に乗っている『ミニ八木君』だと言っています。

自分の軸からはずれそうになると、この『ミニ八木君』が「おいこら洋介、お前何やってんだ。お前の人生、お前の軸はこうじゃないのか」と戒めてくれるんです。常にそうやって自問自答しているわけです。

そのようにして私は、『軸を生きる』をキーワードに自分の人生をつくってきています。

曽山氏『軸を生きる』。

八木氏:軸をつくっても思っているだけではいけません。軸を生きないと意味がないのです。肩に『ミニ八木君』を乗っけている感覚で、「何やってんだお前」という感じで、自分で自分をコントロールすることをやってきました。

そこから、自分の設計図をつくっていく中で、「これが足りない」「もうちょっとこうしよう」となっていき、今は24個の軸があります。

曽山氏24個も軸があるんですか?

八木氏:そうです。そしてその24個の軸は絶対にブレません。こうするとすごい強くなる。

自分の軸No.1は「逃げるな負けるな」。私は高校卒業してすぐに大学受験をしないで逃げました。逃げて本当に情けない思いをしたので、「逃げるな負けるな」が軸No.1です。

これは、「自分がやるべきことから逃げるな、自分に負けるな」という意味です。別に私は他人に負けても良いのです。だけど自分に負けるのはダメ。こういったことを絶対にブラしてはいけない。

軸を生きる人材は大事なところでブレない

曽山氏八木さんから見て、軸がある人間はやはりすごい方が多いですか?

八木氏:すごいというよりは、やっぱり強いですよ。強いし、ブレない。リーダーに一番向いていないのはブレる人材です。

曽山氏ブレるリーダーは嫌ですね。

八木氏:どうでもいい部分では、ブレても構いません。ただ、大事なところではブレてはいけません。自分の軸、強みをしっかり持っている人は絶対にブレません

「自分の生き様」をしっかり持っている人はやはり強いです。軸にこだわって歯を食いしばって生きていると、同じように生きている人間はすぐにわかります。私はそういった人を見ると「この人は強いな、ブレないな」と思いますね。

曽山氏ブレないことは非常に大事なことですね。

八木氏:本当にブレないことは大事。そしてブレない軸をつくる上で違和感に気づくことも重要です。自分が「これなんか変だな」と感じる事象があったら、それを掘り下げていくんです。

曽山氏なるほど、違和感を大事にする。

八木氏:たとえば、言っていることが右に行ったり左に行ったりするリーダーがいるとします。そういったリーダーに違和感を感じることがあった際に、なぜ自分はそのような感情を抱くんだろうと深掘りしていくんです。

そうすると、そのリーダーがブレていることが違和感の原因であったことに気づきます。そこから、「じゃあ、自分はブレていないのか」と自分を省みてみます。結構ブレていると感じたら、ブレないようにするための努力をするようになり、徐々にそれが軸になっていきます。

そうやって違和感をキャッチアップしていく。私は62歳になりますが、自分の人生で蓄積してきたものの中で、無意識になっている価値観も持っているわけです。

無意識という網を持っていて、その中をシューっと何かが通ったとします。そのときに無意識の網にキュっと引っかかるものが違和感です。そして、その違和感の正体を掘り下げていき、これを一回意識化していきます。

曽山氏無意識の意識化ですね。

八木氏:そうです。意識化をして、それが自分にないものであれば取り入れていきます。そういったことをしていく中で、その人の強みがどんどん深みを増していくし、そこにただ強いだけでなく、一貫性が出てきます。一個一個の強みではなく、それがつながった強みになり、一貫性となって、本当に強くなるんですよ。

それがその人に魅力となり、組織の原動力として機能するようになれば、組織として強くなっていくと考えています。

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