働く人の就労意識の変化や労働力不足、雇用の多様化などが背景にあり、企業もますます中途採用に注力するようになりました。中途採用を試みる企業と転職希望者の重要な接点の一つに合同企業説明会(転職フェア・転職イベント)がありますが、企業が転職フェアに出展することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、企業が出展するイベントを選択する際、どのような点に留意すべきなのでしょうか。
1|転職フェア・転職イベントに出展するメリットとは
中途採用において転職フェアへ出展することは、企業側にとって以下のようなメリットが考えられます。
- 転職意向のある方が多数来場するため、多くの求職者にアプローチできる
- 接触した求職者に対し、その場での選考をおこなうことで素早いマッチングができる
- 求職者に対し、直接自社の魅力を伝えられる
- 自社の認知向上につながる
▶転職フェア・転職イベントの種類と出展する際の留意点
転職フェアは、主催元や趣旨に応じて、以下のようなカテゴリーに区分することができます
主催元
- 中小企業庁、厚生労働省、ハローワークなどの公的機関(出展参画費用は基本的に無料)
- 転職メディアや人材紹介会社などの民間企業・団体(出展は有料だが、求職参加者の規模などが大きい) など
イベントの性質
- 認知度が高く規模が大きいもの
- 業界や職種など、求める専門性に特化したもの
- 帰国子女や障がい者を対象としたものなど、求職者の特徴に着目したもの
このようにイベントの趣旨や規模などの性質に応じて出展企業や来場する求職者の傾向はさまざまです。
中途採用において転職フェアの費用対効果を最大化するためには、自社に合ったイベントを選択し、適切なタイミングで出展することが重要です。
それでは、具体的にどのような転職フェアがあるのでしょうか。今回は、代表的な転職フェアから、業界ごとや求職者の属性ごとに特化した転職フェアまで、中途採用力強化に役立つ転職フェアを調べてみました。
転職フェアへの出展を検討する際に、何かしら参考となれば幸いです。
2|中途採用担当が参考にしたい20の転職フェア・転職イベント
●大手転職フェア・転職イベント
まず、大手転職サイト運営会社や人材紹介会社の主催する、認知度の非常に高い転職フェアから紹介していきます。こうしたイベントは参加者が多く、出会える人材の幅広さがメリットの一つと言えます。
マイナビ転職フェア 2021年度開催のフェア予約も受付中
【特徴】
- 登録者のうち60%が20~39歳の若手社会人
- 利用企業の約半数が従業員100名以下の中小企業で、3社に1社が地方での採用を検討など幅広い層から支持
- 全国50エリアで転職フェアを開催。地方の採用にも特化
主催元:株式会社マイナビ
URL:https://www.neo-career.co.jp/humanresource/middlecareerservice/fair/mynavitensyokuexpo/
転職博
【特徴】
- 20代、30代の社会人経験者と出会える(85%以上が20代から30代前半)
- 意欲のある即戦力に出会える(73%以上が1ヶ月以内に転職したい意欲のある人)
- 面談形式なため、選考に直接つながる
doda転職フェア
doda転職フェアは日本最大級のエージェントサービスdodaを運営するパーソルキャリア株式会社が主催するイベントで、大手・優良企業出展数が300以上(東京開催実績)と、業界最大級の規模を誇ります。
【特徴】
- 来場者はdoda登録者で即戦力となるような人材が多い
- 出展企業は参加者のデータを閲覧し、スカウト機能を使うことで効率良く求める人材と接触できる
- 東京・名古屋・大阪・福岡の全国4箇所開催で、web広告によるプロモーションなどを通して毎回集客数が充実している
はたらいく就職フェア
【特徴】
- 「地元が勤務地」をアピールする企業の出展が多い
- メディア登録者の75%は地元志向 (*出典元:はたらいく編集部調査(2016年6月))
- ユーザーの年齢層や経験職種が均等にバランスを取れている (*出典元:はたらいく応募者データ(2016年10月〜12月))
リクナビNEXTの転職フェア-はじめての転職フェア
株式会社リクルートキャリアの運営するメディア「リクナビNEXT」の転職イベントです。「はじめての転職フェア」の他にも、女性にターゲットを絞った「私の転職フェア」など訴求するポイントに応じて複数の転職イベントを主催しています。
【特徴】
- 来場者の約9割が20代から30代
- 日本最大級の登録者データベース・利用者数
専門性の高い転職フェア
業界や職種を限定することで、求職者と企業の効果的なマッチングを生み出す転職イベントも複数存在します。
@typeエンジニア転職フェア
@typeは株式会社キャリアデザインセンターが運営する転職メディアで、中でもエンジニアに特化した日本最大級のエンジニア転職イベントが注目を集めています。
エンジニア転職を志望する求職者と、求める経験やスキルを持つ人材と出会いたい企業の双方を支援するサービスがイベント内で充実しており、企業はイベントを通して得た情報をもとにダイレクトリクルーティングをおこなうことができます。
開催実績も過去50回以上と信頼もあり、人気を集めています。
【特徴】
- 国内最大級のエンジニア特化型転職イベント
- 来場者の訪問カードをもとにスカウトの送信が可能
- 出展企業社員とのフリートークコーナーなど、マッチングをはかる充実したサービス
新・農業人フェア
新・農業人フェアは農業への就職・転職や独立を考えている学生から社会人まで幅広い層に対して農業を仕事にするきっかけをつくることを目的に、農林水産省の補助事業として株式会社リクルートジョブズが主催・運営している農業特化型就転職イベントです。
【特徴】
- 参加者の60%が20から30代、うち会社員が44%
- 2016年度は全17回開催、総来場者数8352人、1543団体が出展
- PRセミナー(セミナー形式による自社PR)によって直接魅力を伝えられる
- 目的別ブースの充実(求人・研修生・生徒など、募集する人材と効率的に出会える)
主催元:株式会社リクルートジョブズ(東京・大阪開催)/ 株式会社マイナビ(その他地域開催)
URL:http://shin-nougyoujin.hatalike.jp/index.html
未経験者歓迎!IT企業就職説明会
IT企業へ就職することへの障壁をなくすことを目指し、就活生やフリーター、転職希望者まで様々な層に向けた就転職イベントです。合説どっとこむセミナー専属講師であるエージェントが企業と求職者の仲介に入るため、企業は客観的な視点から自社の求める人材とのマッチングをはかることができます。
【特徴】
- 27歳以下が対象
- エージェントによる来場者の選考等フォローアップ
- 企業側はエージェントを介した第三者的な視点から求職者を判断できる
飲食×レストラン業界 転・就職合同説明会
求人情報誌・求人掲載サイト グルメキャリーが主催する転・就職イベントは、飲食/レストラン業界に特化しています。企業は自由に自社のPRや面接などの選考をおこなうことができるなど、自由な採用活動が担保されています。
【特徴】
- 飲食/レストラン業界専門の合同企業説明会、当日面接・内定の可能性あり
- 新規出店や商品開発などの特別求人あり
- ブース出店なので求職者に直接自社のPRができる
保育のお仕事/栄養士のお仕事就職・転職フェア
業界最大級の保育士転職サイト「保育のお仕事」と、同じく業界最大級の栄養士転職サイト「栄養士のお仕事」を運営する株式会社ウェルクスが主催する就職フェアです。
業界最大級の集客規模と登録者の質の高さ、ブース訪問を促すイベント内の工夫により、出展企業は多くの即戦力人材に直接PRをすることができます。
【特徴】
- 株式会社・社会福祉法人・NPO法人運営の関東地域を中心とした全国展開する法人が多数出展
- 保育領域の企業研究や情報収集、園の雰囲気を知ることが数時間でできる
- 登録者の65%が半年以内に転職可能な即戦力(同社ホームページより)
●グローバル領域に特化した転職フェア
外国人、バイリンガル、海外経験のある日本人などを対象とした、グローバル人材向けの転職フェアも複数開催されています。
Daijob Go Global CareerFair 外資系・グルーバル企業合同説明会
外資系企業、グローバル企業に特化した、グローバル人材のための国内最大級の転職サイト”Daijob.com”が主催する転職フェアです。今年で第32回目の開催で、近年では毎年開催され続けている実績があります。
【特徴】
- 様々な業界の外資系・グローバル企業が参加
- バイリンガルなどのグローバル人材の転職市場価値の動向を知ることができる
- 出展企業にとって多様なグローバル人材と効率よく出会える
CFNキャリアフォーラム
日英バイリンガル向け就職・転職サイトであるCFNは1987年のボストン開催を発端に、バイリンガル人材とグローバル企業との出会いの場をプロデュースし続けています。
現在はボストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、東京、大阪、ロンドン、シドニー、上海で開催されています。
【特徴】
- 事前の書類選考を通して人材を選別できる
- 圧倒的な集客数を誇り、優秀なバイリンガル人材に効率よく出会える
- 日本でも年に東京2回、大阪1回、その他交換留学生向けに1回の開催
Japan Career Fair in Sydney/ New York
株式会社マイナビが主催の転・就職イベントで、バイリンガルや留学経験を持つグローバル人材を対象に、2017年度はシドニーとニューヨークで開催されます。
【特徴】
- 参加者は大卒(予定含む)以上のグローバル人材のみ
- 出展企業は、参加予約者が登録した自己PR動画を閲覧できる
- 当日に選考や内定を出すことが可能
- ネットワーキングエリアやランチタイムを利用して、求職者と近い距離で自社のPRができる。
●働き方に着目した転職フェア
近年、働き方の多様化に伴い、地元就職、U・Iターン転職、女性転職といった言葉もよく耳にするようになってきました。
そのような働き方にフォーカスをした転職フェアも複数開催されています。
女の転職@type 長く働きたい女性のための転職イベント
株式会社キャリアデザインセンターが運営する女性のための転職サイト「女の転職@type」の、国内最大級の女性向け転職イベントです。
自身のキャリアを描くために転職を希望する女性と、そのような女性を積極採用する企業との出会いの場を創出します。出展企業は直接自社のPRをおこなうことができ、求める人材に対して選考をおこなうこともできます。
【特徴】
- 女性の採用・キャリア支援に力を入れる優良企業約70社が出展
- 「長く働きたい」女性の来場者多数
- 特別選考フローあり
サ~ナ就職フェスタ
障がい者の就職・転職を支援する求人サイト「ウェブサーナ」の就・転職イベントであるサ〜ナ就職フェスタは、今年で134回目の開催を迎えます。優秀な障がい者を積極採用する姿勢のある優良企業のラインナップも、特徴の一つです。
東京・大阪・名古屋・広島(年次による)・福岡で開催され、「企業からのひと言メッセージ」や「OB・OGのパネルディスカッション」などのイベントも充実しており、求職者と企業が相互理解を深められる場が多数用意されています。
【特徴】
- 国内最大級の合同企業面談会
- 人事と求職者は面談形式で接触するため、相互理解が深まる
- 求職者は企業発見、企業研究、応募まで一貫しておこなうことができる
- 年間のべ600社以上の障がい者の採用に積極的な企業の情報・面談の場を提供
●ユニークな転職フェア
企業などの団体が主催する転職イベントの中には、現在の転職者の志向性を上手く捉えたものや、他には真似できない独自のものも存在します。
このようなイベントの開催情報を常にキャッチアップしておくことは、求める人材や自社の特徴にあった転職イベントへ出展し、効果的な中途採用をすることに役立つのではないでしょうか。
既に終了したイベントや単発のイベントも含め、イベントの着眼点がユニークな転職フェアを3つ紹介します。
複業LIVE(終了)
2016年7月に開催された複業LIVEは、パラレルキャリアという新しい働き方についての概念が広まりつつあることを背景に、パラフト株式会社と株式会社エンファクトリーによって共同で主催されました。
【特徴】
- 副業OK企業による成功秘話と失敗談のトークセッション(WワークをOK にする際のリスクやコツ、実際の採用秘話やその実態についての学びの機会)
- 複業OK企業によるブース出展による、複業に興味のある人と企業側とのマッチングの場の創出
- パラレルキャリアという働き方トークセッション
面白法人カヤック 一社だけの合同説明会(終了)
面白法人カヤックは2017年4月に、自社の企業説明会の項目を各ブースに分けることで、「一社だけの合同説明会」を開催しました。人事の皆さんは自社のPRをする際、このような発想も参考になる部分があるのではないでしょうか。
【特徴】
- 面白法人カヤック一社による合同説明会
- 多数のカヤック社員が自ら独自の視点でブース出展
- テーマごとに自社のPRが効率よくできる
3|おわりに
いかがでしたでしょうか。
中途採用は求職者に求められるポジションやスキルが明確なため、求める人材になかなか出会えないこともあるかもしれません。
そんな中、自社の求める人材が来場しそうな転職フェアを見極め、出展することは、採用可能性の高い転職希望者との出会いを増やすことにつながるのではないでしょうか。
転職フェアへの出展を検討する際に、この記事を参考にしていただければ幸いです。