「痛みを抱えているビジネスマンを救いたい」労務リスク軽減のために人事と産業医ができること | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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「痛みを抱えているビジネスマンを救いたい」労務リスク軽減のために人事と産業医ができること

  • 労務
  • 労働安全衛生

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。
「働き方改革」「健康経営」といったキーワードが注目を浴びるようになっており、「メンタルヘルス」といった労務リスクへの対応の重要性も高まってきているのではないでしょうか。しかし、「残業問題」「コンプライアンスへの対応」「ストレスチェックの活かし方」「休職手続きの方法」「復職への対応」など、従業員が安全・安心に働くために何をすべきか悩まれている方も多いと思います。

そこで今回は、メディカル・ヘルスケアベンチャー株式会社Miew株式会社Avenir2社の代表を務める、刀禰(とね)さんに「人事と産業医の関わり方」を切り口にインタビューさせていただきました。

刀禰様
人物紹介:刀禰 真之介(トネ シンノスケ)|株式会社Miew 代表取締役
デロイトトーマツコンサルティング株式会社、三菱UFJ証券株式会社、株式会社環境エネルギー投資などを経て、株式会社Miewを設立し、代表取締役に就任。その後、株式会社Miew株式会社の100%子会社としてAvenirを発足し、同社の代表取締役就任。

刀禰さんは、事業のひとつに『Avenir産業医』という産業医の紹介サービスを展開しています。

本記事では、「労務リスクに備えるために企業は何をすべきか」「企業と産業医の関わり方はどのようにしていくべきか」など、多くの企業、産業医と関わってきた刀禰さんのノウハウをまとめています。

【目次】

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現代のビジネスマンは思った以上に痛みを抱えている

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企業ニーズに合致した産業医と付き合えているか?

―まずは、Avenir産業医のサービスについてお伺いさせてください

刀禰氏Avenir産業医は、産業医としてのスキルや経験のある医師を企業の規模やニーズに合わせてマッチングさせていただくサービスになります。

よく「名義貸し」「面談するだけ」「人あたりがよいだけ」の産業医がいるという話を聞きます。資格は持っているものの、スキルのアップグレードに努めていない産業医が残念ながら一定数います。

また、産業医の選定基準も厳格なものがなく曖昧ですし、産業医の選任が義務付けられているため「とりあえず」企業と産業医が関わっている印象を受けることもあります。

そういった背景があって、企業の課題解決やニーズを満たす産業医に巡り会えていない現状があると考えています。

そこでAvenir産業医では、産業医と一人ひとりと面接をおこない、産業医としての質をチェックした上で企業様にご推薦をしていきます。コミュニケーション力は当然、課題解決力、提案能力があるかなど、弊社独自のチェック基準で厳しく選定しています。

また、万が一、産業医の質にご納得いただけない場合は無料で産業医を変更させていただくといった対応もしており、「緊張感を持って企業と向き合う環境」をつくっています。

そのような中でAvenir産業医では、以下のような内容に対しサポートをしていきます。

  • 衛生委員会への参加
  • 健康診断対応
  • ストレスチェック対応
  • 過重労働者の面談
  • 職場巡視
  • 希望者の面談対応
  • 休職者対応
  • 健康教育、衛生教育

そして、これらの業務に対して、「顧問契約方式」「スポット契約」という形式の契約プランをご用意させていただいています。

「自身の大病」という原体験から立ち上げた産業医紹介サービス

―なぜ、Avenir産業医を立ち上げたのでしょうか?

刀禰氏:私の“とある原体験”がきっかけなのですが、実は20代後半で働いている最中に、大病を患って入院したことがありました。今はこうして健康でいられるわけですが、そのような経験があってから、医療分野に貢献していきたいという想いが芽生えてきたのがはじまりです。

そうした中でわかってきたことは、「がんばって働いているビジネスマンが思った以上に痛んでいる」ということです。

100人くらいの規模の会社だと、だいたい1人ぐらい休職者がいて、それが2人~3人と休職者が増えていくと何かしら組織に異常があったりなど、いろいろわかってきました。そういった背景があり、ストレスチェック制度が出てきましたが、まだうまく活用できている企業は多くない印象を受けます。

さらにいろいろ調べていくと、うつ病の平均完治期間は2年とのことです。ただ、休職できる最大の期間が2年に満たない企業は多く、短いところだと3ヶ月というところもあります。

そのため、そもそも完治していないのに、復職がどうこうという話になってしまうのです。そこに関して、適切な処理ができるような仕組みを構築することが求められますし、何より「事前に救う仕組み」が重要だと感じ、まずは産業医の紹介サービスを提供していこうとスタートしました。

精神疾患は「起きてからでは遅い、事前に対処すること」が重要である

―産業医の先生が関わる問題として1番多いのはどのようなケースでしょうか?

刀禰氏:躁うつ病が多いと思います。その次に適応障害といったケースがよく見られます。この2つが大半のように感じています。

躁うつ病は単一の原因から起こるのではなく、いくつかの原因が複合的に影響して発症すると考えられています。職場の人間関係もあると思いますし、IT化によって情報量が増えたということと、パソコン業務が増えたことも一因としてあると思います。

近年になってさまざまな病気が増えている印象ですが、今まで病気として認識されていなかったものが、現在になって病気という形で認識されはじめてきたこともあるのではないでしょうか。

 

―テクノロジーの発達も影響しているかもしれないのですね。

刀禰氏:テクノロジーの発達により、取得できる情報量が圧倒的に増えたこと。さらに業務の効率化やスピード化が進み、業務量も昔に比べると非常に多くなったことは、無関係ではないと思います。

たとえば、20年前であれば、急ぎの仕事でも1日~2日かかって対応しても問題なかったように思います。しかし、現在はメールを開いて数秒で対応、スマホで外出先から対応など、即時で処理することができてしまいます。

また、スマホを見ながら通勤してくる間に相当量の情報にさらされているらしいです。出社した時点で、脳は20年前の1日分の情報量を処理しているとのことです。会社にきたときにはもう脳は疲れ切っているのです。脳そのものは20年前から進化したわけではないので、当然、処理落ちしますよね。パソコンでいうとフリーズしてしまう状態です。

―確かにIT化によって入ってくる情報は一気に増えましたね。

刀禰氏:IT化が進んだ弊害によって、メンタルヘルス失調が起こりやすくなっている状況はあると思います。うつ病などの気分障害を患う人は2014年で110万人以上となっており、この20年で3倍近くに増加しています。

そのような背景があるため、今後ますます精神疾患に関わる労務リスクは増えてくると思います。そもそも、病気が起きてからでは遅いのです。起きることを前提として事前に防ぐために、職場環境にメスを入れて設計していく必要があります。そのために、産業医の役割は非常に重要だと考えています。

労務リスクを減らすために企業と産業医がおこなうべきこと

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自社の状況を経営陣・人事がしっかりと把握しているか?

―労務リスクを減らすためにはどのような対応が求められるのでしょうか?

刀禰氏:まずは、企業のトップがしっかりと自社の現状を認識することが重要です。

職場環境を抜本的に変えるとなると、トップから全社を巻き込んでいく必要があります。そしてその改革のために、自社の社員は疲弊していないか、どこかに課題はないかなど、自社の状況を正確に把握・理解することが求められます。

また、「労務リスクを減らすこと=経営戦略」だと感じています。職場環境が良くないことで結果として出てくることが、休職者が増える、離職率が高まるという点になります。今後、人手不足が明確に見えている現代では、いかに「働き手のLife Time Value」を最大化できるかを考える必要があります。

頑張って働いてくれて会社に貢献していた人が退職となってしまった際に、新しい人材をなかなか採用できない時代になってきています。

さらに採用コストの観点でみても、企業の負担は大きくなります。たとえば、1,000人規模の会社で離職率が10%だとすると、毎年1,000人の従業員数を維持するだけで、新規で100人を採用する必要があります。

100人の採用コストを考えたときに、1人100万円かかると仮定すると、組織を維持するだけで1億円かかります。これを半減できたら、企業としてはすごく助かります。

産業医は、企業が「普通の状態かどうか」をチェックしていく

―産業医の先生はどのように企業に働きかけていくのでしょうか?

刀禰氏:まず普通の状態かどうかを確認します。普通というのは、勤怠管理がきちんとされているか、衛生委員会があるか、健康診断の受診率を管理しているか、ストレスチェックを実施しているか、そのようなことです。

ストレスチェックの結果をレビューしているのか、休職者は今何人いるのか、過去5年間でどのくらいいるのか、それはどういう症状なのか、復職判定の基準はどのようなものか、就業規則は今どうなっているのか、その辺を管理していない、パッと出てこないとなると、あまり従業員のフォローをしていないということになります。

―まずは現状を整理していくことが大事ですね。

刀禰氏:そうですね。当社の産業医の先生は、標準化されたツールにより、ヒアリング、現状把握をしていきます。

ちなみに、弊社に問い合わせをくださるお客様の4割程度は、メンタルヘルスについて何かしら課題を抱えている方になります。そのような企業様の現状を把握していくと、やはりそこまでメンタルヘルス予防や管理ができていないため、「痛み」が出てきています。そういったところに対して、産業医の先生と一緒に仕組みづくりや施策を実施していきます。

人事が産業医とうまく付き合っていくために必要なこととは?

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―産業医の選定について、人事の立場から考えたときに、どのような基準で選ぶべきなのでしょうか。

刀禰氏:弊社からご紹介する先生は、基本的なクオリティーはすでにチェック済で保証しているため、「相性だけみてください」と伝えています。

また、「産業医の選び方」について、事前に何を準備しておくべきか、どのような基準で選定すべきかといった、詳細のマニュアルも作成してご提供しています。

【産業医を選定するためのマニュアルの内容(一部抜粋)】

  • 今の会社で想定しうる課題のリストアップをすべし
    自身の会社で起こっている主な課題は何かをリスト化し、面談時に伝えることで必要な産業医のスキルのミスマッチが少なくなります。
  • どういった産業医を希望するのかイメージすべし
    自身の会社に必要な産業医はどういったタイプの産業医なのか、イメージを伝えることでより産業医の役割が生きてきます。
  • 業務経験の範囲を確認すべし
    はじめて産業医を雇用される企業、健康診断、ストレスチェック後の対応をお願いしたい企業など要望によってスキルは違ってきます。どのような業務経験があるかヒアリングしましょう。
  • 産業医との面接の流れを知るべし
    どのような流れで面接をするとスムーズなのか、何を聞くべきなのか、何を質問されるのかなどを想定して臨みましょう。

スタートアップやベンチャー企業だと比較的年齢の若い先生を希望する傾向がありますし、女性が多い職場は女性の先生を好む傾向があります。

企業様によってさまざまな観点があるので、それを洗い出して、その上でどのような方が合いそうかを事前にイメージしておきます。さらに、面接の時には、産業医の先生に対して基本的な項目をしっかりやったことがあるかを聞いていきます。なぜそういった質問をするかというと、意外とやったことがない産業医が多いからです。

―産業医の先生のご紹介はどのような流れでおこなうのでしょうか?

刀禰氏:問い合わせをいただいた後、弊社で企業様に訪問をさせていただき、ヒアリングをしていきます。

その上でどの産業医の先生が適切かこちらで選ばせていただくこともあれば、複数人面接していただき判断してもらうこともあります。そして、ご納得いただき契約スタートとなります。

万が一、ご紹介した産業医の先生とうまくいかなかった際は、追加費用をいただくことなく変更をさせていただきます。

―人事と産業医、お互いが成果を出すために何が必要となるのでしょうか。

刀禰氏:やはり、自社の課題をしっかりと分析し、その内容を産業医の先生と共通認識として持つことだと思います。どのように分析していいかわからない際は、産業医の先生に頼んで分析してもらってもいいと思います。

業界標準とくらべて自社はどんな状況なのか、比較して高いのか低いのか、このままでいいのか。最低限そこを知る努力をおこない、その上でお互いが同じ方向を向いて取り組むことが重要です。

また、人事の方は産業医の先生に対して言われるまま動くだけでなく要望をしっかりと言うことが大事ですね。当然、人事のほうが自社のことを理解しているので、お互いに任せるだけでなく、二人三脚で取り組んでいってほしいですね。

―ありがとうございます。今後の展望は何かございますか?

刀禰氏:現在、全国に約6,000万人の労働人口がいるのですが、50人以上規模の企業で働く人は約2,500万人です。残りの3,500万人は50人未満企業で働いている現状があります。企業規模が50人未満だと、産業医が義務付けられていません。

そういった、産業医のいない中小企業やベンチャー企業に対して、クラウドなどで産業医と面談ができるような仕組みをつくりたいです。低コストでニーズに応えられるものにしていきたいと思っています。

良い産業医との出会いを増やして、現役世代の心身に及ぶ健康を応援していきたいですね。

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