人事部で仕事をしているとさまざな人と出会うことが多いかと思います。
中には自分が非常識なのか、相手が非常識なのかと思わず考えてしまうような人と会うことも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、「『立つ鳥跡を濁さず』という言葉は死語なのかも知れない」と思ってしまう、人事を困らせる退職者のケースと、それにどう対応すればよいのかをご紹介します。
人事が退職者の対応に困ってしまう12のケース
あなたは全国にチェーン展開している某小売業の人事もしくは労務担当者です。
これからあげる12のケースに直面した時、どう対応しますか?一度考えてみましょう。
- 直属の上司や人事部に相談せず突然、社長室宛に退職届を郵送してきた。
- 無断欠勤を続けた後に上司にメールで「退職します」と連絡。
- 長期の無断欠勤を続けるうえに、直属の上司からの電話にも出ない。
- 社宅の管理を委託している企業から「退職者の部屋に誰か居る」と連絡が入った。
- 入社して1ヵ月で人事部に退職を願い出た。
- 親が子供の代わりに退職手続きをして「企業が悪い」とクレームをつけてくる。
- 「健康保険証を貸与された制服やマニュアルと一緒に返却した」と言っているが見つからない。
- 出家したいからと退職。さらに退職者の家族から人事部に「引き留めて欲しい」と電話が入った。
- 社宅から夜逃げ同然で社員が行方不明になった。
- お昼休憩に行ったまま行方不明なった。
- 「店長と相性が悪くて出勤できないが、毎日店長が社宅に迎えに来るので怖いから退職したい」と人事部に入電。
- 人事部宛に退職相談のメールが入ってきたので、開封したら画面いっぱいの文字の波。しかもスクロールをしても最後までたどり着かない。
困った退職者にどう対応はどうすればいいか
それでは、答え合わせです。
基本的に困った退職者については、どんなことが起きてどう対応したのか詳細に人事記録に残しておきましょう。
なお、これからご紹介する方法が正解とは限りません。退職者により対応が変わりますので、あくまでも「参考」にしてください。
1.直属の上司や人事部に相談せず突然、社長室宛に退職届を郵送してきた。
残念ながらよくあるケースです。
退職届は社長宛に書きますが郵送先は社長室ではありません。また、企業によっては企業所定の退職届があります。
そもそも、退職を考えた時に相談するのは上司か人事部です。そのうえで、決意が固ければ上司や人事部で退職手続きについて教えるのですが、なかには自分で調べて書いて郵送してしまう人がいます。この場合は、電話で意志を確認して決意が固ければ所定の手続きを伝えましょう。
2.無断欠勤を続けた後に上司にメールで「退職します」と連絡。
このケースも近年増えているようです。
これも1)と同様に電話で意志を確認して決意が固ければ所定の手続きを伝えましょう。
3.長期の無断欠勤を続けるうえに、直属の上司からの電話にも出ない。
これも多いケースです。
人事から連絡すると番号が違うため出ることがありますが、留守電にメッセージを吹き込ませて出ない(居留守を使う)ケースもあります。
次の手は、緊急連絡先に電話をして本人から人事へ電話をさせるように伝えます。
これでも連絡がこない時は、奥の手として退職者が男性の場合、人事部内で若い女性社員に電話をかけてもらい「佐藤(仮名)と申しますが(退職者の下の名前)君いますか?」と企業名を出さずに伝え、本人が出てきたら女性社員と電話を代わり「人事部の○○です」とお説教をしましょう。
詐欺っぽいやり方ですが、若い男性社員には効果的です。退職者が女性の場合は同世代の女性社員が友達のフリをして電話をしても効果があります。
4.社宅の管理を委託している企業から「退職者の部屋に誰か居る」と連絡が入った。
退職者が居座っているケースです。人事が行くことができない時は退職者の直属の上司に見に行ってもらい、退職者本人からカギを預かり人事部へ連絡をしてもらいます。
電話がかかってきたら、なぜ社宅に居るのか事情を聴取してお金や住宅に困っているようなら、しかるべき公的機関へ相談に行くように伝え、社宅から退去してもらいましょう。
5.入社して1ヵ月で人事部に退職を願い出た。
採用のミスマッチが原因の退職です。
このような退職者の場合、採用試験の結果を見ると合格ラインぎりぎりであったり、面接の印象は好印象でも職務経歴に一貫性がなかったり、人数合わせで合否ラインを下げたことにより入社してきた人が多いため、採用プロセスを見直す必要があります。
また、入社して半年もしないうちに辞める人には特徴があります。
- 入社書類に記入見本があっても正確に書くことができない
- 入社書類の家族との続柄で「義姉」と書かず「兄の嫁さん」など、公的な文書を書くことができない
- 『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』の見本があっても「自分には扶養がいないんですけど」と問い合わせをしてくる
- 入社書類を郵送するように郵送用の封筒を同封しても、アポイントなしで人事部を訪問して手渡し
- 数枚ある入社書類を1枚ずつ小さい封筒に入れてからA4サイズの封筒に入れて郵送してきた
これらの特徴からわかることは、社会人として必要なマナーや知識が不足しているうえ、考え方が甘いところがあることです。
入社書類は公的な書類であるため、見本をつけて間違いのないように配慮をしているにも関わらず、見本を読まずに「書いておけばいいんでしょ」という甘い考えで記入しています。
こういうタイプは安易に転職を考え、転職先も深く考えずにエントリーをして受かったから入社してきた人です。なので、あまり引き留めずに退職手続きをするのがよいかもしれません。
6.親が子供の代わりに退職手続きをして「企業が悪い」とクレームをつけてくる。
近年増えてきているケースです。
基本的には「子供が18歳以上の場合は親が代理で手続きをおこなうことはできない」と説明をして、本人と話しをさせてもらうように交渉をします。それでも、親が引き下がらず「お宅の会社はブラックだ。労基に訴える」といってくるようであれば上長に判断を仰ぎましょう。
女性社員が退職者の対応に当たっている時には、年配の男性社員に対応を代わってもらうだけで、相手が引き下がることもありますので試してみてください。
7.「健康保険証を貸与された制服やマニュアルと一緒に返却した」と言っているが見つからない。
健康保険証が大切なものであることを認識していない人は、雑に返却してきます。実際にあった下記の例をもとに探してみましょう。
- 100ページ以上あるマニュアルの間に保険証または退職届が入っている
- 制服のポケットに保険証または社宅のカギ
- 段ボールの底にガムテープで健康保険証や退職届を貼り付け
- 段ボールに入れ忘れたことに気がつき、段ボールの外側の側面にガムテープで貼り付け
- ノートパソコンを開けたら保険証または退職届が入っていた
などなど思わぬ所から出てきますので、念入りに探しましょう。
8.出家したいからと退職。さらに退職者の家族から人事部に「引き留めて欲しい」と電話が入った。
退職手続きが正常におこなわれていれば、あとは家族の問題なので深入りせずに「警察に相談してください」と告げて深入りしないようにしましょう。
9.社宅から夜逃げ同然で社員が行方不明になった。
このケースは携帯だけでなく緊急連絡先も繋がらなくなるケースが多いです。緊急連絡先(家族)も繋がらない時は保証人に連絡をして、社宅の明け渡しや荷物の引き取りをお願いするしかありません。
保証人の連絡先を入手していない企業は、上司に判断を仰ぎましょう。
10.お昼休憩に行ったまま行方不明なった。
このケースは派遣社員やアルバイトに多いケースです。
正社員よりも採用のハードルが低い分、雇用される方もあまり企業研究や仕事内容を確認せずに入って来るため、初日で「イメージしていたのと違う」「自分にこの仕事は無理」とお昼に行ったまま帰ってこなくなってしまうのです。
アルバイトの場合は本人や緊急連絡先に連絡をして、事情を聞きどうしても続けられなければ退職の手続きをおこないましょう。
派遣社員に関しては派遣会社に対応をお願いしましょう。
11.「店長と相性が悪くて出勤できないが、毎日店長が社宅に迎えに来るので怖いから退職したい」と人事部に入電。
パワハラに当たる可能性が出てきます。店長に迎えに行く行為をやめるように指導をおこない、社員には配属先を異動させることで仕事を続けられるようであれば異動の手続きをしましょう。
12.人事部宛に退職相談のメールが入ってきたので、開封したら画面いっぱいの文字の波。しかもスクロールをしても最後までたどり着かない。
うつ病または他の精神疾患を発症している可能性が高いので、衛生管理者に相談をして産業医面談を実施してもらいましょう。
なお、長文を全部読むと自分も気分が沈んでしまいます。最初の文章を読んで、自分の仕事の担当ではないと思ったら読むのをやめてください。
まとめ
いかがでしたか?
こんなこと起こるはずがない、と思った人もいるかも知れませんが全部実際に起こった事例です。読者の中にはもっとヘビーな事例にあって仕事が嫌になった経験をした人もいると思います。
人事部はストレスが溜まりやすい部署です。しっかりストレスを発散できるようにしましょう。