「職場も採用メディア」採用難のアルバイト雇用で今求められていることとは? |HR NOTE

「職場も採用メディア」採用難のアルバイト雇用で今求められていることとは? |HR NOTE

「職場も採用メディア」採用難のアルバイト雇用で今求められていることとは?

  • 採用
  • アルバイト・パート採用手法

※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

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こんにちは!HR NOTE編集長の根本です。

ブラックバイト、モンスターアルバイターという言葉をよく耳にするようになり、アルバイト雇用においても大きな変化が起きているように感じています。

そこで今回、アルバイト・パートをはじめとした多様な働き方の調査研究機関であるツナグ働き方研究所 所長の平賀さんに、アルバイト・パート採用や育成・活性化に関してお話をお伺いしました。

平賀先生

平賀 充記(ひらが あつのり) | 株式会社ツナグ・ソリューションズ ツナグ働き方研究所 所長

1988年に株式会社リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。新卒採用を担当した後、ニューヨークに留学。帰国後、アルバイト情報誌「FromA」の編集長に就任、2008年にはFromAだけでなく「タウンワーク」「とらばーゆ」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長。その後リクルートジョブズのメディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年に株式会社ツナグ・ソリューションズの取締役として経営の一翼を担い、翌年にツナグ働き方研究所を設立。

本記事では、「仕事探しのプロセス」「アルバイト採用を上手くおこなうコツ」「アルバイトの関係性を円滑にする方法」などをまとめており、店舗の店長、採用担当者のみならず、アルバイト・パートのマネジメントに携わる方にとっても参考となる内容かと思います。

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採用難を加速させている「少子高齢化」と「シフトの細切れ化」

―アルバイト・パートの採用マーケットの現状は今どのような感じなのでしょうか。

 

平賀氏:平賀さん:2017年1月の全体の有効求人倍率が1.43で、アルバイト・パートに限った有効求人倍率は1.75になります。

社員と比較してアルバイト・パートが採用難である構造は以前から変わらないのですが、昨今はさらに加速してきているように感じています。また業種や職種で見るとサービス業の有効求人倍率は3.21。飲食業では調理3.17、接客3.77。アルバイト・パートに依存する産業の採用難易度が非常に高くなっています。

―アルバイト・パートの有効求人倍率がここまで高いのは、どういった背景があるのでしょうか。

 

平賀氏:マクロ的にいうと、いわゆる少子高齢化の問題です。例えば居酒屋のアルバイトなどは学生やフリーターといった若年層に頼っていた部分が大きくあります。若者の数自体が減ってきていることが、これらの業態の採用難を加速させている要因です。

また、若年フリーターの減少が採用人数の増加を誘引するという問題も発生しています。いままではフリーターを1人採用すれば、フルタイムで1日働いてもらえる時代でした。

しかし“先発完投型シフト”で完投してくれる働き手が減ったことで、働く時間に制約のある主婦やシニアといった多様な人材を採用することで、なんとか1日のシフトを埋めていくことになります。

このような1日を3つ~5つぐらいのシフトに切り分けていく “中継ぎ型シフト”では、おのずと採用する人員数も増えていきますよね。採用する母数が増えれば当然採用難は加速します。

主婦、シニア、外国人など、多様な人材を多く採用し「シフトの細切れ化」で、人手不足を乗り切るというシフトチェンジが求められる状況なのですが、多くの採用現場では「少子高齢化で若者が減ってきている」こと自体、まだ受け入れられていないのが現状のようです。

「2人に1人は下見をしている」店舗そのものがリアルな採用メディア

―各社、採用手法に関して変化はあるのでしょうか。

 

平賀氏:採用手法も多様化してきています。アルバイト求職者が仕事を探す方法として徐々に「WEBメディア」にシフトしているという全体の傾向があります。

一方では、主婦の方やシニアの方々は、依然「紙の求人メディア」のほうが身近だと感じていたりします。このように働き手の多様化が採用手法の多様化に拍車をかけているのです。

だからターゲット層によって、メディアの出し先を考える必要があります。

手法が多様化してきているので「今のままのやり方でいいのか」「じゃあどれを使うのがいいのか」といった悩みはますます増えてきています。

しかもWEBなのか?紙なのか?という“デバイス”に閉じた話ではなくなってきています。従来の有料の求人メディアへの掲載という手法だけでなく、最近は自社のホームページを活用する流れも見られるようになってきましたから。

こういった「オウンドメディア」活用の流れは、オンラインの世界だけではありません。今日いちばんお伝えしたいことでもあるのですが、リアルなオウンドメディアとして職場や店舗そのものが採用メディアになってきているということです。

実は、求職者がさまざまな求人情報に接して、「あ、ここいいな」と思うと、その半分の人が面接先となる店舗の下見に行っているんです。今や2人に1人は店舗に下見に行く時代なんです。

下見に行って職場で働くイメージをして、「ここなら働けそうかもな、じゃ受けてみようかな」ということを決めているんですね。そして店舗の中でも、一番見られているのはおそらく店長です

「この人のもとで働くんだ、いい人そうかな、怖そうかな」とか、確かにすごく気になるポイントですよね。もちろん働いているスタッフの雰囲気や、どれだけ忙しそうなのか、といったことも推測しています。そういうことを細かくチェックしながら、「面接を受けるかどうか」ジャッジしているんです。

―下見に行くようになった理由はありますでしょうか。

 

平賀氏ひとつは職場の安全確認でしょう。ブラックバイト関連の報道が多くなっていますよね。

「この職場は大丈夫か?」という確認をするために下見が増えているのは間違いないでしょうね。職場の雰囲気はもちろんですが、例えばお客様からのクレームが多そうかなどにも、すごく敏感に反応します。

怒られなさそうな職場かどうかっていうのは、いまどきの大きなキーワードといえます。

もうひとつは、情報量の問題です。昨今、WEBからさまざまな情報が入手できるようになっています。それも文字情報だけでなく画像や動画の情報が溢れるように入ってきます。

なにかひとつの判断をするうえで、ググって調べ、2ちゃんねるのようなクチコミも確認して、さらにインスタグラムを検索してみたり、というプロセスが自然になってくる中、求人に関する情報量だけはそんなに変わっていないんです

「この求人広告の情報だけでどうやって決めたらいいのか?じゃちょっと下見に行ってようか」と、なってるんじゃないかと。

―今はどのような優先順位でアルバイト先を決めているのでしょうか。

 

平賀氏:アルバイトを選ぶ時の重要事項は、「職場の近さ」「シフトの融通」「時給」。この三大要素は昔から変わりません。そこに「安心・安全」というキーワードが入ってきている感じでしょうか。

先ほども言いましたが「ブラックか否か」という職場環境は非常に重要度を増しています。例えば、コンビニのような常時1人、2人しかいない職場だと、クレーマーのようなお客様が来た時に自分ひとりで対応しないといけません。それってすごく怖いですよね。

逆に常に混雑していて、バックヤード含めてスタッフが多くいるようなファストフードの職場のほうが、「忙しくてもクレームが少なそうでいい」という声も聞きますから。

―コンビニの深夜バイトとかまさに少人数ですもんね。そういえば、最近コンビニで学生がバイトしている風景をあまりみないですね。

 

平賀氏:外国人の方が多くなってきているので、学生アルバイトが目立たないのかもしれません。ただ、一部にはマイナスイメージが広がっていることがあるもしれませんね。

よく聞くのはお中元やクリスマスケーキといった季節商品の販売に課せられるノルマの話です。達成できなかったら自腹購入させられるといったネガティブ報道が出てきてましたしね。これもブラックバイトのひとつですから。

―確かに。Twitterでも拡散されると一気に広がりそうですね。

 

平賀氏:そうなんですよ。ですから、店舗や職場のイメージが重要で、実はもはや最大の採用メディアといっても過言ではないと言いたいんです。店舗、職場のブランディングは採用に非常に大きく影響すると思います。

応募者を確実に採用するためには「スピード」と「惹きつけ」が重要

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応募者への対応はとにかくスピードを意識すること

―ここからは実際に応募した方への対応について、何が求められているのかをお伺いできればと思います。

 

平賀氏とにもかくにもスピードです。連絡スピードもそうですし、面接は基本1回にしたほうがいいです。

―スピードが重要視される理由は何でしょうか。

 

平賀氏:今の求職者は、思ったほど複数の応募はしません。新卒採用だと、何十社と同時にエントリーする学生が多いと思います。

ただ、アルバイトの場合は、「なんとなくここかな」と思ったら応募をして、数日間はキープをしますが、返事がこない、上手くつながらないとなると、「もうここは縁がないな」と、すぐに次を探しはじめます。

ですから、応募をどれだけリアルタイムに、どうキャッチアップできるかがポイントです。スマホの普及で、WEBで検索しても電話で応募をするというパターンが多くなっているので、応募電話をどうキャッチアップできるのかが、すごく大事になります。

おそらく、店長だけでは対応できないと思います。ですから、応募電話のキャッチアップは、店舗全員がチームとなってキャッチして面接につなげていく必要があります。

一番大事なのは、「●日の▲時に来てくださいね」とその場で面接の予約を取り付けることです。店長しかそのスケジュールを知らないとなると、結局店長がまた掛け直すことになり、機会損失となってしまうことがあります。

そういった“もったいない”を少なくするためにも、例えばお店の電話の側に面接予約表みたいなものがあって、リアルタイムですぐ書き入れられるといったような細かい準備をしておかないとなりません。

さらに面接にきてもらうハードルを下げることも必要です。面接当日に面倒くさくなって面接に来ないというパターンも散見されます。そのためにまず、履歴書、職務経歴書の持参は不要にしたほうがいいと思います。面接にきてからその場で書いてもらえばいいんですよ。

あとは前日のリマインド連絡。電話番号が分かっていればショートメールが使えるので、何月何日何時、住所、地図のURL、担当者名を最低限いれて送りましょう。スピードとホスピタリティの両面を兼ね備えておかないと、なかなか面接に来てくれる率は上がってきません。

面接は見極めではなく惹きつけを重視

―実際に面接する際に求められるものはありますか。

 

平賀氏:面接に関しては、見極めるのではなく、応募者に見極めてもらって、ここで働きたいと思ってもらうような時間にすることです。

バイトの面接って、下手したら15分ぐらいで終わってしまうこともあります。そうすると応募者は「15分で私の何が分かるんだ」って思うじゃないですか。

見極めが完了したとしても、むやみやたらに短い時間で帰さないことが大切です。ここからモチベーションを上げるための“スカウトタイム”として有効に活用すべきです。

仕事内容をしっかりと説明してあげる、職場を案内してあげるなど、の対応は働くイメージの醸成にもつながるって入社へのモチベーションを上げますし、もっというと入社後の離職を抑止することにもつながります。

―確かにそれは重要ですね。

 

平賀氏:ある調査でいくと、店長に「面接の時にしっかりと仕事内容の説明をしましたか」と聞くと、9割ぐらいの人が「一応説明しました」と回答します。

ただ、そのときに採用されたアルバイターの方に聞くと、「面接の時に仕事説明を受けて理解できた」と答えたのは5割でした。つまり、説明したつもりでも伝わっていないケースが多くあります。アルバイトの面接時間の後半は、きちんと職場の説明しつつ動機づけに使ってほしいですね。

それから内定をその場で出すこともモチベーションアップにつながります。「即内定と言われるとモチベーション上がるか」という質問では、8割の人が上がると回答しています。結局、応募の電話がかかってきてから採用を決めるまでの時間が短いほど良い結果につながるということなんです。

アルバイトが定着するために必要なコミュニケーションとは?

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10日、1か月、3か月の壁を越えてはじめて採用成功といえる

平賀氏:内定を承諾してくれてせっかく働きはじめてくれたとしても、ここから続いてもらわないと何の意味もありません。10日、1か月、3か月と定着の壁があると言われるのですが、ここを乗り越えないと本当の意味で採用成功したとはいえないと思っています。

―働きはじめて10日で辞めてしまうのは何が原因なのでしょうか。

 

平賀氏:簡単に言うと放置ですね。ほったらかされて、この職場には自分の居場所がないと感じてしまうと、そりゃ辞めたくなります。

そのために、まずはしっかりと名前を覚えることが大事です。また、逆に先輩スタッフの名前もしっかりと覚えさせてあげる、そのような場や仕掛けを用意してほしいと思っています。何か分からないことがあったときに、名前が分からないと聞きにくいじゃないですか。

ある量販店の取り組みだと、バックヤードにスタッフの一覧の顔写真と名前が貼ってあります。顔と名前が一致しやすく、話しかけやすくなるという効果が見込めます。

また、ぶっつけ本番で職場に立たされて、お客様からのクレームを受けて怒られる、そうなると一瞬で辞めますよね。

そのため、手間がかかりますが、しっかりとトレーニングをしてあげることが大事です。OFF-JTと言われる、職場外でのしっかりとしたトレーニングを実施し、その後に現場に出てもらうことが重要です。

さらに、教育担当を付けて、そこで積極的に声かけてあげたりとか、周りの従業員に紹介してあげたりとか、そのようなきめ細かいフォローが必要だと思います。

―3か月経つとどのような変化が生まれてきますか。

 

平賀氏:そのあたりになると、だいぶ慣れてきていることもあり、客観的に職場を見はじめるようになります。

慣れるまではそこまで周りを見る余裕がないので、がむしゃらにやっているのですが、慣れてくると、職場のヒエラルキーのようなものがなんとなく見えてきます。この人たちと今後もうまくやっていけるかどうかなど、思いはじめます。

自分がもらっている給料と自分が提供している仕事のバランスが割に合っているのかどうか、今後仕事をしていく中で、なんとなくハッピーかどうかというあたりが、第2段階の見極めとして出てくると思います。

店長は意外と、店舗内の従業員のヒエラルキーのような内情をそこまで知らない場合があります。ベテラン社員や古株のアルバイターの方が、職場での存在感が大きかったりすることもあるでしょう。

だからこそ、そういうコアなスタッフたちとうまくコミュニケーションをとって、協力体制を築けるようになれば、その店舗はすごくよくなると思います。

職場の一体感を生むためにどのようなコミュニケーションが求められるのか

―従業員と円滑なコミュニケーションをとっていくために必要なことは何でしょうか。

 

平賀氏:2つあります。

1つ目は、一緒に仕事の成果を追う体制をつくることです。今の学生や主婦の方は真面目な方が多く、またシニアの方も会社務めをしてきた経験もあるので、仕事で成果を出したいという欲求があるんですよね。

ですので、朝会などの会合で、例えばお店の実績や目標をしっかり伝えてあげて、「みんな、この目標達成のために頑張ってほしい」と言うことが、実は一体感の醸成に効果的な場合があります。

我々の調査でも、「お店の業績や会社ビジョンをしっかりと共有してほしい」という声が多いというデータがあります。「お店のお役にたちたい」「頑張ってお店の役にたてた」と思える貢献欲求を育めるかが大切なんです。

もう1つは、意外に飲みニケーションを嫌がっていないということ。制約条件のある主婦や、シニアの方は参加が難しい場合もあるのですが、学生やフリーターは、「サシ飲みでなく、みんなでいくのであればアリです」という回答が、我々の調査では多くありました。

年齢に関係なく、敬語で接してほしいという声が多い

平賀氏:飲みニケーションもそれなりにおこなうと距離が縮まって効果的だと思います。ただ一方で、職場の会話の部分で敬語で接してもらいたい、雑に扱われたくない、丁寧に扱ってほしいという声が非常に多いです。

―店長でも学生に対して、「●●さん、お願いしますね」と接するということでしょうか。

 

平賀氏:そうです。良かれと思って下の名前で呼ぶと、かえって逆効果になってしまうことがあります。

また自分の年齢に敏感な女性などは、「あの人には『ちゃん』で、私には『さん』なんですね」と感じてしまうことがあります。どこからどこまでが「ちゃん」で、どこからどこまでが「さん」なのか、非常に難しい。公平感も非常に重要ですし。

近すぎると馴れ馴れしすぎる、遠すぎると他人行儀すぎる。しかも学生、フリーター、主婦、シニアと、多様な方がいるので、それぞれに合わせた方が距離の取り方は、店長からすると悩ましい部分でしょうが。

―アルバイトの方は怒られることに非常に敏感とのことですが、店長は怒ることも控えたほうがよいのでしょうか。

 

平賀氏:アルバイトの方は怒られることに対して抵抗があるので、店長がしょっちゅう怒っているような職場では長続きしないかもしれませんね。

怒るというよりは叱る、指摘するといったかたちで接するようにしたほうがいいと思います。それがないと職場が回らなくなってしまうと思うので。

あとは、叱る一方でちゃんと褒めてあげることです。ただ、飴と鞭とよく言いますが、褒め上手な店長があまりいないように感じます。

店長自体があんま褒められた経験がないため、どうやって褒めていいか分からないのかもしれません。褒め方を学んで、叱ることと褒めることをセットで実行していくことが重要です。

―その辺りのバランスは難しいですよね。

 

平賀氏:上手く期待をかけてあげる、ちょっと自分で決められることの範囲を増やしてあげるといった感じで、信頼関係や協力体制が醸成できれば、「この店長のためにちょっと頑張って手伝ってあげよう」と思ってくれます。

逆にマネジメントが厳しすぎたり、ワンマンであったりというのは避けたいですよね。特に若手店長にありがちなパターンですが、店長になったばっかりで「俺が頑張らなきゃ」と、空回りしてしまうこともあります。

従業員を信頼して、頼る、任せるというのが重要です。

最後に

いかがでしたでしょうか。

「店舗そのものが採用メディアとなっている」と平賀さんがおっしゃっているように、店舗の雰囲気づくりや従業員とのコミュニケーションにより注力していくことが求められているように感じました。

従業員の働きやすい環境をつくり、従業員との信頼関係が見られる職場であれば、自然と応募も集まるようになり、良い循環で仕事がまわるサイクルを生み出せるのではないでしょうか。

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