採用プロジェクトにこそ「QCD」の考え方が必要だ|西村 創一朗 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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採用プロジェクトにこそ「QCD」の考え方が必要だ|西村 創一朗

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

こんにちは。株式会社HARESの西村 創一朗です。

「うちの会社は教育研修に時間をかける余裕がないから『即戦力採用』でお願いね。」

人材採用に関わったことがある人なら、一度ならずとも聞いたことがあるセリフでしょう。ついつい「はい!分かりました!」と答えてしまうのですが、安請け合いは禁物です。なぜなら「即戦力採用」は基本的に難易度が非常に高いからです。

「入社してすぐに活躍ができる」ポテンシャルの高い人材は、どこの企業でも求められている一方で、そういった活躍人材は転職マーケットにはなかなか出てこないため、完全に需要過多だからです。「TMP」の「T」、すなわち「ターゲティング」が重要であることは前回お伝えした通りです。

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「QCD」の優先順位を確認しよう

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「よし!即戦力採用だ!」とすぐに動き出す前に確認したいのが「QCD」の優先順位です。

QCDとは、「Quality(品質)」「Cost(費用)」「Delivery(納期)」の頭文字を取った言葉で、元来は製造業において、製品の設計・生産時に重視される3つの視点です。

もちろん、QCDの全てが満点であることがベストですが、基本的にはQCDは「こちらが立てばあちらが立たず」の関係にあります。つまり、コストを下げれば「安かろう悪かろう」で品質(Quality)を犠牲にせざるを得ないですし、通常よりも納期(Delivery)を短縮したい場合は、通常よりも費用(Cost)が高くならざるを得ません。採用においても、このようなQCDの視点が非常に重要です。

【採用におけるQCD】

  • Quality:即戦力レベルのハイスキル・ハイポテンシャルな人材が欲しいのか、入社時点でのスキルはさほど求めず成長に期待するのか。
  • Cost:一人当たりの採用予算をどの程度かけるか。
  • Delivery:いわゆる「採用納期」。いつまでに入社してもらう必要があるのか。

「即戦力採用だ!」というのは、QCDで言えば「Quality最優先だ」という話なので、Delivery(納期)とCost(費用)のいずれかを犠牲にせざるを得ません。さらに「欠員が発生しているので明日にでも採用したい」という場合は、QCDの優先順位が「Q>D>C」となり、通常の採用予算よりも多くの金額をかけて採用に臨まないと、採用プロジェクトが失敗に終わってしまう可能性が高いです。採用の発注を受けた際は、十分な採用予算を確保することが採用担当者のファーストステップになるでしょう。

QCDであらゆる採用は6パターンに分けられる

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その採用プロジェクトのQCDの優先順位を確認・整理することから、採用プロジェクトがスタートするというのは先に述べた通りです。
ここでは、「採用プロジェクトにはどのパターンがあり得るのか?」について考えてみましょう。
「QCD」は極めてシンプルなフレームワークなので、全部で6パターンに分類できます。


  1. Q>D>C:人材レベル重視×投資型

  2. Q>C>D:人材レベル重視×じっくり型

  3. C>D>Q:コスト重視×育成型

  4. C>Q>D:コスト重視×じっくり型

  5. D>C>Q:スピード重視×育成型

  6. D>Q>C:スピード重視×投資型
Q⇒Quality:品質C⇒Cost:費用D⇒Delivery:納期

ビジネスの世界は全てギブ・アンド・テイクです。
何かを得るためには、何かを提供しないといけません。

人材レベル(Quality)最優先の場合

人材レベルと採用スピードを重視する(Q>D>C)ならば、従来の採用費よりもさらに費用を投資する必要があります。それまでリファラル採用メインだったベンチャー企業(Q>C>D)が、事業の成長スピードを一気に加速させるタイミングで、人材紹介会社(エージェント)の利用をはじめられるのはこうした点が理由です。

通常、エージェントの紹介フィーは理論年収の30~35%ですが、採用難易度の高いエンジニアのみ50%以上の高いフィーをお支払いしている企業もあります。それは「お金で時間を買っている」という点である意味で合理的な判断と言えます。

採用コスト(Cost)最優先の場合

また、採用コストを抑えることを最重要視する場合は、人材レベル(Q)か採用スピード(D)のいずれかの優先順位を下げざるを得ません。

たとえば、リファラル(社員紹介)採用は、採用義務のない社員に協力してもらい、かつ必ずしも転職意欲のない優秀な人材を紹介してもらう採用手法です。そのため、リファラル採用を開始してから、実際に採用成功に至るまで、時間が非常にかかる採用手法ですが、デリバリー(採用スピード)を犠牲にする代わりに、非常に優秀な人材(High Quality)を極めて低いコスト(Low Cost)で採用することが可能になります。

また、独自の育成メソッドを持っていたり、教育研修が非常に上手な会社は、未経験人材の採用でも早期に戦力化できるため、低コストかつハイスピードな人材採用が可能になるのです。

スピード(Delivery)最優先の場合

「急遽スタッフが退職してしまったので、すぐにでも採用しないと!」
「2017年入社の新卒採用の内定者が、まだ一人もいないんです!」

上記の場合は間違いなく「スピード重視」です。
今すぐに採用したい!のであれば、通常よりも大きな採用予算(Cost)をかけて採用するか、他社が採用したがらない「ブルーオーシャン」な人材(Quality)を採用するかのいずれかしかありません。

コストをかけてでも採用するのか、採用ターゲットをズラして入社後の育成にコミットをするのかを、経営者や部門責任者に「覚悟」してコミットしてもらうことが採用成功の絶対条件となります。

人事のクリエイティビティが試される時

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優秀な人材を、短納期で採用するためには、ある程度の採用コストをかけて採用することは非常に重要なことです。一方で「金さえかければOK」という発想になってしまうのは、非常にもったいないです。

これは僕の持論ですが「優れた人事とは、クリエイティブな編集者である」と思っています。通常だったら、入社後に任せたい業務内容そのものの経験者を求めますよね。WEB系の企業でエンジニアの採用担当者を採用する場合は、同じくWEB系の企業でエンジニアの採用を経験していた人を採用しよう、というのが普通の考え方です。

そうではなく「エンジニア採用の経験はないが、エンジニア採用の適性が高い人はどんな人なのか?」という問いに対する仮説を立てた上で、「確かにこんな人なら採用未経験でも活躍できそう!」という要件を現場責任者と握った上で採用プロジェクトを進め、見事採用に成功し、入社後にめざましい活躍をされているのをお見かけすると、「ああ、この人事の方はクリエイティブだなぁ」と感じますし、もはや芸術的ですらあるなと感じます。

「QCD」フレームワークできちんと採用要件を整理した上で、最後はクリエイティブ力で勝負する人事こそが「どこに行っても通用する『勝てる人事』」ですよね。

ぜひ皆さんも明日から試してみてください。

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