こんにちは。企業向けに新卒採用のコンサルティング、大学生向けにキャリアデザインの講師をしている社会保険労務士の原田です。
3回に分けてお送りしている意外と注力されていない「見直すべきポイント」の最終回です。
第1回は「採用計画の見直し方」=「なぜ(自社の置かれている環境、方針)」」「誰を(活躍している人材)」を再度明確にする、第2回は「選考途中で学生の動機をどう高めていくのか」についてお送りしました。
第1回の記事はこちら!
▶2018年新卒採用活動で、意外と注力されていない見直すべき3つのポイント|採用企画編
第2回の記事はこちら!
▶2018年新卒採用活動で意外と注力されていない見直すべき3つのポイント|動機編
第3回目は「一般的に優秀な人材と、自社に合う人材(求める人材)の違いは何か?」をお届けします。
目次
一般的に優秀な人材と、自社に合う人材(求める人材)の違いは何か?
これは、あるIT企業(以下、A社)の採用担当者からうかがった話です。
入社1年目、Bさんの現状
いわゆる旧帝大と呼ばれる大学の法学部を卒業したBさんという学生を採用しました。彼女は、難関とされている大手企業からも複数の内定を受けるほどの評価を得ている学生でした。入社前からBさんに対する周囲の期待は大きく、入社後、社長の発案で始めた新規事業部門に配属されました。
タスクのゴールを理解し、現状の課題を洗い出し、自主的に解決策を提案。先輩社員が気づかない点も多角的に検証し、自発的に発言もしてくれます。資料作りも得意で、重要な取引先のプレゼン資料作成も任されるほどでした。事業そのものに対しての貢献度は、1年目といえども目を見張るものがありました。
一方で、やや自己中心的な部分があり、プライドが高く、上司や同僚からの指摘を素直に受け止めない傾向が見えました。目標達成に向けた意識と実行力はありますが、自分が実現したいことをまず優先的に考え、周囲の協力が必要な場面もやや強引に一人で進めることもありました。
困ったことがあっても弱みを見せたくないのか、誰にも相談せずに一人で抱えがちだったため、問題が発覚した時点では事が大きくなっていることも多かったのです。このような状態が続くと、周囲もBさんに対してあまり良い印象を持たないようになり、助言を与えることもなくなっていきました。
A社の求める人物像
異なる領域で新しい事業を次々と創出し、前例の少ない領域にも果敢に挑戦しているA社では、第1回の記事でお話しした「誰を(活躍している人材)」を以下のように置いていました。
新規サービス/事業のイニシアティブを取り、調査・検討、スキーム構築、顧客・パートナーへの提案・説得、関係各部署社内調整ができる人材(中長期的な成長イメージ)
A社はこの「誰を(活躍している人材)」を設定した上で求める人物像の特徴を以下のように6つに切り分けていました。
■上記を実現する人物の特徴とは?(例)
- 興味関心に留まらず、自ら主体的に行動を起こすことをためらわない
- 課題を明確にした上で適切なアプローチ方法を計画し、実行する
- 既存の情報にとらわれず、ゼロベースで物事を考え、根拠を明確にした上で独自のアイデアを出すことができる
- 周囲に考えを的確に伝え相手の意見も理解しながら共感を得た上で、周りを巻き込み物事を推進する
- 困難な状況でもポジティブに考え、粘り強く努力を続ける
- 全体を俯瞰し、その中で自分が何をすべきか常に問いながら物事を遂行する
A社では、ここから更に、能力要素と内容、そこにレベル感を掛け合わせ、詳細に評価基準を設定していました。
Bさんを採用した経緯
では、Bさんに対する選考時の評価はどのような内容だったのでしょうか。
Bさんはグローバルに活躍できる人材になりたい、という目標を持ち、学生時代に海外でのインターンシップや、海外大学と提携した疑似ビジネスの企画・運営のプログラムに参加していました。
与えられた目標に対し、現状の課題分析からアプローチ方法の検討・提案、提案の際は納得してもらうために根拠の提示が求められ、提案が通った後は自ら進んで実行も担わなければなりません。
また、英語が堪能な海外大生と対峙し、相手の言う事を的確に把握する努力をし、同時に自身も意図を誤らずに伝える必要がありました。そして、実行の際には周囲の協力を得る必要があり、どのように伝えれば相手の賛同を得て、行動を促せるのかと常に考えて実行している様子がうかがえました。
A社の面接担当者は、上記の1.~6.までの特徴にも合致し、かつ大変優秀な学生であると評価していました。たしかに、そのような評価をしても頷ける内容です。
なぜBさんが活躍できなかったのか?|A社が採用で見落としていたポイントとは
ではなぜ、BさんはA社で活躍することができなかったのでしょうか。
A社の面接の内容に問題があったのでしょうか?しかし、面接フローについて伺うと、先述のとおり「誰を(活躍している人材)」をもとにした面接評価シートを作成し、各担当者が内容を記録し、全担当者に共有をしていました。また、相手の話を聞くことにも注意を払っていました。
ただ、よく見てみると、A社が注目しているのは「仕事の能力・姿勢」であり、本人の「性格や価値観」が含まれていないことに気が付きます。新しい事業を次々と創出し、前例の少ない領域にも果敢に挑戦しているA社ですが、社内の雰囲気は非常に落ち着いています。落ち着いている、というよりも静かで、むしろ大人しい印象の方が多い。
特定のスター社員が引っ張っている、というよりは、一人一人が切磋琢磨し、分からないことは互いに協力しあって解を見つける。互いを尊重し、信頼があるので、役割に関係なく意見が言いやすく、問題があっても建設的な議論がしやすい。一人一人がスペシャリストであることを求められると共に、抜群のチームワークを発揮し、社内調整ロスが少なく、スピード感を持って物事に対応ができていました。
ではBさんはどうでしょうか。前述のとおり、上記の会社雰囲気や行動様式には合致しない様子が多数うかがえます。
「なぜ(自社の置かれている環境、方針)」」「誰を(活躍している人材)」が明確にあって、相手が合致するかを見る。たとえ一般的に優秀であったとしても、自社の行動方針と合わないと、パフォーマンスを発揮できないばかりかマイナスの影響を与えてしまうことがあります。
A社は現在、社員の入社後の所感を集め、採用計画の際は「なぜ(自社の置かれている環境、方針)」」を踏まえ、「誰を(活躍している人材)」を再検証するためにデータを活用しているそうです。個人の性格や価値観、というものをどのように見ていくのか?ということが、現在の大きな関心であり、課題となっているようです。
仕事で求められる「能力」は、個人差はあっても、入社後に伸ばせる可能性が高いものです。しかし、個人の価値観や性格は、本人が気を付けることはできますが、ある程度年を重ねていれば、なかなか変えられないものです。
そして、会社(組織)は、それぞれ個性(文化)があるもの。会社の個性に合う候補者をしっかり見極める必要があるのではないでしょうか。
最後に
企業によってはSPIなどの指標を元に、「●●波形」など、会社独自の傾向を定め、見極めをおこなっています。この辺りの見極め方法については、また別の機会に書きたいと思います。
以上、3回に分けて書いてきましたが、自社の採用計画を見直す際には、ぜひ確認してみてください。