こんにちは!HR NOTE編集長 根本です。
今回、株式会社デジタルガレージのマーケティング事業にて人事・広報に携わっている、坪井氏にインタビューの機会をいただき、「働きがいのある組織づくり」に向けてチャレンジしている内容に関して記事にまとめました。
坪井氏はマーケティング事業における『カンパニーロイヤリティー』を高めるために、一人ひとりと面談をする『ジョブコン』という取り組みをはじめたり、(おそらく)国内初の社内報アプリ『エムツウ』をつくったりと精力的に活動されており、その結果として社内コミュニケーションの活性化や事業内の離職者数の減少などを実現しています。
本記事では、坪井氏がマーケティング事業の活性化に向けて具体的にどんな取り組みをしているのか、また『ジョブコン』『エムツウ』に関して詳細を紹介していきます。
坪井 一樹(つぼい かずき)|セグメント戦略室 グループマネージャー
目次
組織の活性化に向けて『カンパニーロイヤリティー』を高めるための取り組みを実施
-坪井さんの業務についてお伺いさせてください。
坪井氏:デジタルガレージのマーケティング事業における人事・広報面での課題に対し、さまざまな取り組みを通じて解決していくことに携わっています。具体的には「組織の活性化」というテーマに対して、どんな取り組みができるのかを模索しています。直近でいうと社内の情報共有や、組織からの発信をどう高めていくか、社員に会社への理解をより深めてもらうためにはどうしたらいいのかなどを考えています。
重要視しているのは、「カンパニーロイヤリティーを高める」ことです。これは、何かしら会社に愛着が持てて、居心地がいい環境の中で働けるような状況をつくろうというものです。経営課題に合わせて、人事・広報での取り組みを通じて課題解決に貢献していきます。
-マーケティング事業のカンパニーロイヤリティーを高めるために、どのような取り組みをされているのでしょうか。
坪井氏:最近ですと、『ジョブコン』という取り組みをおこなっています。
「100点中何点ですか?」社員の声を拾い上げる『ジョブコン』とは?
-ジョブコンとはどのようなものでしょうか。
坪井氏:『ジョブコン』は、ジョブコンディションの略称のことです。「仕事に関して何でも話せる場づくり」ということで去年から取り組み出しました。年に1回、私がマーケティング事業の社員と1対1の面談をおこなっていきます。
事業が拡大し社員も増え、以前は数十人規模の体制でしたが、今では250人ほどの規模感になってきています。その中で、「社員とのコミュニケーションが以前より減ってきてしまっているのではないか」という懸念が出てきたんですね。「現場の社員一人ひとりの声にもっと耳を傾けて、普段感じていることやアイディアなどをうまく組織の取り組みに活かせるような機会が必要ではないか」と、マーケティング事業を管轄している役員陣が感じるようになりました。
そこで、社員の仕事の状況や、組織に対する期待、課題に感じているところを聞くような場をつくろうということでジョブコンがスタートしました。
-ジョブコンでは、1対1の面談をどのような感じで実施するのでしょうか。
坪井氏:1回、30〜40分程度の面談をおこなっています。その人自身のジョブコンディションに対して「100点満点でいうと何点ですか」という感じで話を聞いていきます。人によっては100点という人もいれば、0点という人もいます。「なぜその人はその点数だと今思っているのか」をより深掘りして聞いていくイメージですね。それが点数として、昨年よりも上がっているのか、下がっているのかなど、ジョブコンディションの動きを聞くように心がけています。
-「100点中何点ですか」という聞き方をするのは、どのような意図があるのでしょうか。
坪井氏:その人自身が自分をどう捉えているかを定量的に把握することが大事だと思っています。別に0点だからといって悪いわけじゃない人もいるんです。聞いてみると現状に満足せずに改善するにはどうしたらよいかきちんと考えていて、その中でストイックに0点という表現をしているだけでモチベーションが高い人もいます。
また点数が80点の人だと、「ほぼ100点に近いんですけど、100点にすると自己満足して終わってしまうので、80点にしています」というスタンスの人もいます。「周りの環境に恵まれて楽しみながら仕事ができているので100点です」といった人もいます。面談で直接話しながらやっていくことで、その点数の背景を聞くというのが重要だと思って意識をしています。
-なかなか本音を出せない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
坪井氏:全社員と深いコミュニケーションをとる機会がなかなかありませんでしたし、はじめてジョブコンで顔をあわせる社員もいました。そうなるといきなりオープンに全部言えるかというとそうではありません。
そのため、ジョブコンが出来上がった背景や、経営陣がどうしていきたいと思っているのかを初めに伝え、ガイドラインとして「ジョブコンで聞いた内容は役員のみにしか共有しないので、安心してほしい」「ポジティブ、ネガティブなこと含めて話せる場にしたい」という、前提条件をしっかりと伝えるようにしています。
-ヒアリングした情報はどのようにまとめていますか。
坪井氏:まずは組織として期待されていることや課題に対して、どんな声があがっているのか、それに対してどう動いていけばいいのかをまとめています。次に部署単位でまとめています。やはり部署ごとに特徴的な声もあるので、それをまとめます。あとは、個人単位でまとめていくのですが、個人に関しては、さまざまなカテゴリーを組んでいて、たとえば「新卒入社のメンバー」「中途採用で入社して1年以内の社員」といったイメージです。入社後のギャップがないかなど、いろいろな切り口で見ています。
-社員の方々の声を聞いて何か気づきはありましたか。
坪井氏:部署ごとにはもちろん特有の傾向があるんですけど、組織全体としては、組織や人に関する情報共有をすることで事業が活性化されるのではないかという声が多かったことです。
たとえば、中途採用で入社の方は、自分の部署のことは理解していても、マーケティング事業の中だけでもさまざまな分野のマーケティングをおこなっているにも関わらず、他部署のことを知る機会がどうしても少なくなってしまいます。また、会社内での人とのつながりが自部署だけという方も多くいます。そうなると、新しい社員が毎月入社する中で「この方は前職にどんなことをやっていた人だろう」「この部署では具体的に何をしているのだろう」など、組織や人に対する興味があるのに知る機会がないので、もっともっと共有があってもいいんじゃないかという声が面談で頻繁に挙がっていました。
-情報発信が足りないとのことですが、どのようなことをされているのでしょうか。
坪井氏:まず、月に1回、事業内で全体朝礼をするようにしました。また、全社での表彰制度はもともとあったのですが、マーケティング事業の中だけでの表彰制度もスタートしました。活躍している人がどんな人なのか、何をしているのか、どのチームなのかがわかるようにすることを心がけています。
あとは定期的にリアルタイムな情報を発信したかったので、『エムツウ』というマーケティング事業部の情報を共有する社内報アプリをつくりました。情報の発信をどんどん増やしていこうと、今年からさまざまな動きが出ています。
国内初!?社内報アプリ『エムツウ』で組織の情報発信を強化
-マーケティング事業部で展開している社内報アプリ、エムツウとはどのようなものでしょうか。
坪井氏:画面をお見せしたほうがわかりやすいですよね。起動するとこのような画面が出ます。これは、『エムツウくん』というキャラクターです。「愛着のもてる社内報でありたいよね」という親しみやすさを込めて生まれました。
坪井氏:エムツウを開くとまずこのようにTOP面がでてきます。TOPは新着記事が載っているのですが、TOP以外にカテゴリーが6つあります。
1.インタビュー
坪井氏:インタビュー対象は、社員とクライアント様の2つがあります。社員が対象の場合は、役員から組織としての今期の戦略や中長期的なビジョンのような会社として決めた考え方をヒアリングします。その他に、新卒入社のメンバーに座談会という形でインタビューなどもしています。
社外のクライアント様にインタビューさせていただく時は、「デジタルガレージと一緒に仕事をしようと思ったきっかけ」「何を期待しているか」「仕事を実際にされてどんなことを感じてくださっているか」などを記事にさせてもらっています。
クライアント様からこのような声を改めていただく機会はなかなかないと思うので、実際に担当している社員は嬉しいと思うんですよね。他部署の人からしても、「こういう価値を提供できている部署があるんだ」ということがわかってすごくいいと思います。
2.トピックス
坪井氏:トピックスでいうと、たとえばマーケティング事業の社内表彰について受賞イベントを行うのですが、受賞式までの準備の様子や、去年受賞した社員の話、今年受賞された社員がどんな理由で受賞されたのかなどを配信しています。
あらためて受賞理由などをコンテンツとして残し、「この人のこういうところが評価されているんだ」と周りにも伝わるようにしています。これは人気で結構見られていました。みんな活躍した人が誰で、どんな人で、どんな写真を撮られていて、って気になるじゃないですか。
3.ワークス
坪井氏:ワークスは、弊社はいろいろな事業をおこなっているので、他事業やグループ会社の紹介を発信しています。
あとは、このエムツウができた誕生秘話も載っています。エムツウの名前の由来が「マーケティングの通になる」からきているのですが、最初はそのままアルファベットの「M」に通信の「通」だったんですけど、「ちょっと柔らかいほうがいいんじゃないか」となり、カタカナのエムツウになりました。
4.ニュース
坪井氏:マーケティング事業から毎月1,2件のプレスリリースを配信しているので、こちらで共有します。新サービスのスタートや様々な企業との協業など、アプリならば身近にリリースをチェックすることができます。
5.ピープル
坪井氏:ピープルは社員の方の人となりが分かる記事をあげており、中途採用で入った社員の紹介があります。「前職力」といって、「この人は前職どんなことやっていたのか?」「どんなスキルを持っているのか」などを配信しています。
それ以外にも「働くママ特集」といったような、社員それぞれにフォーカスを当てた記事コンテンツを載せています。
6.コラム
坪井氏:コラムは社員の熱心な趣味や興味関心ごと、仕事に対するこだわりなど、さまざまな切り口の内容を書いてもらっています。
たとえば、グルメという切り口でいえば、恵比寿でのおすすめランチスポット書いてもらう。音楽ですと、iTunesに37,000曲入っている人がいて、その人がおすすめの音楽について発信していく。この人は熱すぎて、記事にしたら1万字を超えていました(笑)。
あとはクレジットカード業界に詳しい人が仕事にまつわるコラムを書いたり、データサイエンティストの方もいるので、データに関するコラムを書いてもらったりしています。ライトからディープなものも含めて発信しているのがコラムですね。
-記事のクオリティがすごいですね!私がよくみているメディアと変わらないように感じました。
坪井氏:ありがとうございます。ちなみにエムツウは、ちょうど7月22日。ポケモンGOと同じ日にリリースをしました。まったくの偶然なんですけどね(笑)。
どのくらい見られているかというと、全記事のトータルPV数は社員数の約12倍となり(2016年8月時点)、社員にとって身近な社内報となっています。そこからスタートしてだいたい毎週水曜日に記事をアップしていて、今は、トータルで64記事上がっていますね(11月21日時点)。
-なぜ社内報をアプリにしようと思ったんですか。
坪井氏:いろいろと社内報について情報収集をしていたときに、「紙からWebの社内報にうつってきている」という話を聞いていたのですが、「そこからまた紙に戻ってきている」という話がありました。なぜかというと、Webはあまり見られない。紙だと手元に残った感もあって見られやすいため、とのことでした。
ただやはり、今のデジタルの時代にあったコミュニケーションのかたちや、弊社のような変化のスピードの速いIT業界ということを考えると、紙だと企画や印刷で1〜2ヵ月かかるため、どうしてもタイムリーな情報を届けることができないと思ったんですね。そこで今の時代にあったコミュニケーション方法を考えたときにスマホでアプリだという話になりました。
-エムツウでこだわった部分はありますか?
坪井氏:誕生秘話でもお話したように、組織からの情報発信を増やしていくことはもちろんですが、それだけだと堅苦しくなってしまうのではないかと思い、もう少しライトな親しみやすいコンテンツとなるよう社員自身の得意分野を活かしたコラムや社員のプライベートが垣間見えるような記事を掲載し、親しみやすい社内報にしようとしました。
-運用して4ヵ月経過しましたけど、社内の評判はどうですか?
坪井氏:PV数でみると8月時点でマーケティング事業の社員数の12倍の閲覧数でしたし、「楽しく見ているよ」という反響が結構あったので、出だしとしてはよかったかなと感じています。
-これらの取り組みで、実際にプラスの効果などはありましたか。
坪井氏:ジョブコンやエムツウ、事業での社内表彰の仕組みなど、いろいろなことを実施した1つの結果としていい影響を与えられたのではないかと感じていることは、離職者数が前年に比べ30%減少したことです。
もちろん、事業が伸びているときのサイクルもあると思うのですが、前年対比で見たときに減少したというのは何かしら貢献ができたのではと思っています。
会社に愛着を持ってもらい、いかに仕事に挑戦できているか、成長できているかを実感できる組織にしていきたい
-その他、カンパニーロイヤリティーを高めるために何かされていますか?
坪井氏:デジタルガレージのマーケティング事業としてのビジョンとフィロソフィーをつくり、浸透させていこうとしています。
これもジョブコンからの流れで、「社員数が増えているからこそ、マーケティングの事業として大事にしている価値観や未来への方向感を発信していったほうがよいのではないか」、という声がありました。
そこで、マーケティング事業としての中長期的なビジョンを策定し、さらに今まで強みとしてやってきたもの、これからも継続していきたいフィロソフィー(事業哲学)をつくろうとなりました。「今までやってきたことをどう言語化するのか」「現在を踏まえた上でどんな未来を目指すのか」の2点について多くの時間を要して議論してきました。
-ビジョンとフィロソフィーはどのように浸透させていくのでしょうか?
坪井氏:これはもう継続して発信していくしかないと思います。社員総会で発信する、エムツウで配信する、ポスターにして社内に貼る、そういうことを継続していくことが大事だと思っています。
今年のジョブコンでは「ビジョンとフィロソフィーに対してチームとして実現できていると思いますか?」と聞いていますが、質問されることによって深く自分事化してとらえてもらっているようにも感じます。
ビジョン、フィロソフィーに対して向き合えているのか、できているのか、ここを常に見てもらうきっかけづくりを続けていきたいと思います。
-最後に今後の展望をお伺いさせてください。
坪井氏:目指しているのは一人ひとりの個性が出せて、働きがいを持って仕事ができる組織づくりです。カンパニーロイヤリティーという話をしましたが、会社への愛着や居心地の良さがベースにあって、その中でいかに仕事に挑戦できているか、成長できているかといったところを実感できるような組織にしていきたいと思っています。
もちろん、これは私一人ではできないことなので様々な人と連携しながら、私自身も組織づくりにおいて新しいことにチャレンジして成長したいですね。
最後に
いかがでしたでしょうか。
デジタルガレージのマーケティング事業の組織を活性化に向けて、社員の声を拾うための『ジョブコン』や組織の情報発信をしていく『エムツウ』など、さまざまな取り組みをされている坪井氏。それらの取り組みとして離職者数が30%減少するなど、確実にプラスの効果を生み出してきています。
「社員が働きがいのある環境をつくる」ことも人事の重要な役割になります。社内活性化に向けてやれることはまだまだたくさんありそうです。是非、参考にされてみてはいかがでしょうか。