株式会社ZENKIGEN主催の「テクノロジーを駆使した採用」をテーマに次世代のHRについて話し合うイベント「NEXT HRカンファレンス」。
ソフトバンク株式会社・株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS・株式会社サイバーエージェントの3社の人事が登壇し、自社の採用の取り組みについて紹介。その中で今回は、サイバーエージェント曽山哲人氏の登壇内容を記事にしてまとめました。
サイバーエージェントでは、地方学生の時間とお金の負担をなくすことを目的に、リアルの場の会社説明会を廃止し、オンライン上での会社説明会に切り替えています。
また、「YJC」という事業部の壁を取り除いて、さまざまな社員を巻き込んで採用活動にも取り組むなど、サイバーエージェント流の採用ノウハウが満載でした。
【人物紹介】曽山 哲人 | 株式会社サイバーエージェント 取締役
サイバーエージェントの採用事情
曽山氏:サイバーエージェントでは現在、新卒と中途どちらも採用しており、新卒はグループで300名程度の採用をしています。男女比は男性7割・女性3割で管理職だけで見ると2割が女性となっています。
ちなみに、サイバーエージェントは新卒採用を会社設立1年目から実施しており、学生から「新卒に何を期待してるのか」とよく質問されるのですが、常に言っているのは「次のサイバーエージェントつくってほしい」ということです。
ですので、面接でも「みんなが経営陣になったら、どんなサイバーエージェントをつくりたい?」という質問をしています。
2. サイバーエージェントの動画活用事例
曽山氏:動画を使った面接は大事ですが、動画を使った情報発信もすごく重要だということが、今年1年やってみてわかりました。その詳細を本日はご紹介したいと思います。
思い切って、会社説明会をやめた
曽山氏:まず会社説明会を基本的にやめました。会社説明会ってものすごく工数がかかりませんか?
テーブル出し、椅子出し、書類配りなどの会場設営、実際の会社説明会、片付け。仮に60分の会社説明会であっても、準備と片付けにそれぞれ60分くらいかかって、1回の会社説明会で180分くらいの工数となります。
サイバーエージェントは年間で50回ぐらいの会社説明会をやってきたので、年間でみると多大な時間をかけていました。それを思い切って会社説明会をやめたことで、その分の時間をほかの業務に使うことができるようになりました。
会社説明会をおこなわない代わりに何をしているのか。さまざまな切り口での会社説明会をオンライン上で見れるようにしました。
実際に、学生の皆さんはしっかりとオンライン上での説明会を見て、面接に来てくれます。また、IRや決算発表を結構見てきてくれるので、IR情報でも動画を使用しています。
さらに、会社説明会をオンラインでおこなうことは、地方学生にとっては負担の軽減につながります。
1時間の会社説明会のために、夜行バスや飛行機を使って往復5時間かけて東京まで来る地方学生もいます。時間だけでなく、交通費や滞在費として多大なお金もかかります。
曽山氏:こうした状況を踏まえ、4年前から社員が地方学生に会いに行く「FLAT」を始めました。
FLATを実施した結果、新卒採用者の中でも地方学生の割合が増えたのですが、それでも地方学生からは「説明会の負担が大きい」という声があったので、「それならいっそ、会社説明会をオンラインでおこなってしまおう」となりました。
「サイブラリー」動画を活用して、社員一人ひとりが自分の言葉で会社説明
曽山氏:オンライン会社説明会の開始にともなって、「サイブラリー」というWEBページを立ち上げました。「サイバーエージェントのライブラリー」を略して、サイブラリーです。
オンライン会社説明会では、社員一人ひとりに自分の言葉で会社を語ってもらっています。職種や事業で並べ替えができるようにしているので、女性の学生の皆さんであれば、女性だけを見ることができたり、エンジニア採用であればエンジニアの動画が見れるようになっています。
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曽山氏:実は、サイブラリーの前身となった取り組みがありまして、それが「就活チャンネル」という生放送番組です。
サイバーエージェントのサービスで「FRESH LIVE」という生放送の配信ツールがあるのですが、これは就活活動に限らず、誰でも使うことができるもので、これを実験的に1日1本30分生放送で、私が「ソヤマン」というキャラになりまして番組制作を実施しておりました。
サイバーエージェントの先輩社員に横に座ってもらって、生放送で質問を受け付けたり、「今どんな仕事してるの?」ということを聞いたりしてました。
1日1本で3ヶ月くらいやったところ、視聴合計数が50万回ぐらいになりました。「どんな質問も受け付ける」ということをやって非常に反響がよかったので、この経験からサイブラリーができました。
サイバーエージェントでは、このような取り組みをやるときにネーミングをすごく大事にしています。
ネーミングがよければ何が起きるかというと、学生が最終面接の際にアピールしてきてくれるんです。「曽山さんサイブラリー見てきました」って。
良いネーミングをつけると学生間で流行るので、この意識がすごく大事なんです。採用はマーケティングです。それがすごく大事だと感じています。
「マルチエントリー採用」入口を増やして、興味を持つ学生を増やす
曽山:入口をたくさん設けたほうが、学生はいろいろな切り口でサイバーエージェントに興味を持ってくれると思っています。
そこで、私たちは「マルチエントリー採用」を、3年前からやっています。これはどのようなものかというと、40種類にもおよぶさまざまなインターンを企画し、1年間の中でやっているんです。
「新規事業」や「ゲーム」という切り口を用意して、インターンを実施していますが、その中でも今、力入れているのは就業型です。
実際にオフィスに席を用意して、夏休みの1ヶ月間就業してもらっています。絶対にそっちのほうがミスマッチも減るので、なるべくそうしていきたいと思っています。
サイバーエージェントってなんの会社かわからないっていう方が当然いるので、入口をたくさん設け、多くの学生との接点をつくることはすごく大事だと思います。
3. 今、サイバーエージェントが注力していること
曽山氏:最後は、サイバーエージェントが現在、力を入れていることをご紹介します。
それは、採用の民主化です。どういうことかというと、YJC(良い人材を自分たちでちゃんと取る)という取り組みです。YJCの略し方がちょっとベタなのですが(笑)。
人事だけでなく、社員みんなの力を借りています。会社全体で採用に取り組むということが、これからは絶対に必要になります。
現場の社員の採用力をどれだけ借りられるかがポイントです。サイバーエージェントでは、各部署でAチームBチームCチームとチーム編成をしています。
これを各役員や幹部が10人~20人のチームを持って、チームごとの採用の承諾目標を設定します。他のチームと競争させることで、チームでの活動を活発化させています。
社員総出で採用に活動に取り組むと、私たち人事だけでは思いつかなかったアイディアが出てくるんです。YJCでは本当に多種多様な企画が出てきます。それが学生の入口を広げることにもつながります。
4. まとめ
いかがでしたでしょうか。
動画を活用した情報発信は、いつでもどこからでも確認することができます。地方学生にとって大きなハンデだった時間と距離の問題を解決します。また、社員にとっても、年間で会社説明会の膨大な時間が削減されます。
また、いろいろな切り口でインターンをおこなうことで、固まった母集団ではなく、多種多様な学生と出会うことができます。YJCのように社員総出で採用活動に取り組むことで、企画の幅が広がり、結果的に、多種多様な切り口のインターンをつくることもできます。
採用担当者だけではなく、どれだけ会社全体を巻き込めるかが、これからの時代の採用成功の一つの鍵になるのではないでしょうか。
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