人手不足から新卒採用も売り手市場が続き、より一層採用が難しくなってきています。また、経団連の「採用活動に関する指針」の撤廃により通年化の動きも出てきており、市場の変化が加速度的に進んでいます。
今回は、新卒採用市況と採用活動に多くの企業が利用している就職サイト4つの比較と特徴をご紹介します。自社にあったサイトにお悩みのご担当者様はぜひ比較検討にお役立ていただければと思います。
目次
1.新卒採用の現状
新規学卒者有効求人倍率
24年卒に対するワークス大卒求人倍率調査(リクルートワークス研究所)によると、全国の民間企業の求人総数は77.3万人に対して、民間企業への就職を希望する学生は45万人となっており、求人倍率は、1.71倍と高い状態にあります。
従業員規模別の求人倍率については、従業員規模の小さい企業の方が高い傾向にあります。23卒と比較した際に、全ての従業員規模で求人総数、倍率共に上昇しました。23卒ではコロナ禍直前の20卒以来3年ぶりに~4999人規模の企業で求人倍率が1倍を超え、24卒でも同様に数値が維持されています。
コロナ禍の影響により、数年低下していた水準もコロナ前の水準に回復してきており、採用に慎重であった中小企業の採用意欲が回復傾向にあることが明らかになりました。
従業員規模 | 2023年3月卒 | 2024年3月卒 |
300人以下 | 5.31倍 | 6.19倍 |
300~999人 | 1.12倍 | 1.14倍 |
1000~4999人 | 1.11倍 | 1.14倍 |
5000人以上 | 0.37倍 | 0.41倍 |
23年卒と24年卒の内定率
新卒者の採用が困難になっている現在、新卒学生の就職活動の現況を把握し、適切な対応をおこなうことが新卒者獲得のためには欠かせません。
内々定率については、学生が初めて内定を獲得した時点でアンケート回答するように調査しており、今回はリクルートの就職みらい研究所が調査している、「就職プロセス調査2024年卒(2023年10月1日時点内定状況)」をみていきます。
調査結果によると、22年卒学生から24年卒学生におこなった内定率の調査結果は下記のようになります。
引用:就職プロセス調査(2024年卒)「2023年10月1日時点 内定状況」
24卒は10月1日時点で92.0%(前年度93.8%)の学生が内定を獲得しています。10月時点で比較すると22卒、23卒と内定率にあまり差は見られませんが、半年前の4月1日時点で比較すると、22卒が28.1%、23卒が38.1%、24卒が48.4%と直近3年で10%ずつ上昇しており、早期選考の実施・早期内定出しをしている企業が増えてきていることが考えられます。新卒採用の早期化がさらに進んでいるといえるでしょう。
今後新卒採用市況で予測されること
企業側の動き
21年卒採用から経団連の「就職活動に関する指針」は撤廃され、政府主導へと変わりました。よって多くの企業では従来までの広報・選考の解禁日より前倒しのスケジュールで動くようになりました。求人サイトにはこれまで通り大学3年の3月から広報を解禁している企業であっても、それ以前に開催したインターンシップに参加した学生には情報を解禁、早期選考を実施し、大学3年の2月~3月に内々定を出すところが多い傾向にあります。
学生側の動き
企業の採用選考の早期化に伴い、学生側も就活を意識し始めるタイミングが早くなっています。大学1・2年次のときからインターンシップに参加したり、情報収集をし始める学生が増えている傾向にあります。また、採用直結型のインターンシップに積極的に参加し、大学3年の夏以降から内々定をもらい始め、内々定の企業数を増やしつつ、第一志望の選考に備え多くの採用選考に参加しています。採用直結型のインターンシップに参加している学生であっても志望度が低い可能性があるため、企業側は辞退率を減らすためにも志望度の高い学生を見極める力が必要となりそうです。
双方に見られる動き
企業側と学生側の双方に見られる動きとして、AIの活用が挙げられます。ここ2、3年で注目度が高まっているAIですが、採用選考の場でも使われ始めています。
企業側:採用選考(書類・面接)でのAIの導入
学生側:ChatGPTをはじめとした生成AIを使用したESの作成
現時点で多くの企業が生成AIを利用する学生への対応に関して「様子見」の姿勢を見せており、規模別に見ると大企業では既に対策を始めている企業もあるようです。
企業側における学生のAI活用に対策に関して慎重になっている一方で、学生側の生成AIの活用は増加傾向にあります。学生側は就活期間中に何十社ものESを作成しなければならないため、効率化を図る目的として生成AIを活用しているようです。よって企業側は鵜s腰でも早くAI活用への対策について検討する必要があるといえるでしょう。
2.新卒求人サイトのメリット・デメリット
企業目線で見た場合、就職サイトを使うメリット・デメリットはどのようなものがあるでしょうか?就職サイトにはさまざまなものがありますが、大手サイトとその他に分けて、それぞれの特徴とメリット・デメリットをご紹介します。
大手新卒求人サイト
大手新卒求人サイトというと、企業掲載社数・学生登録数のどちらも業界最大規模のリクナビやマイナビが該当します。特徴としては、企業掲載のページと特集ページなどがあり、オプションなども豊富にあるということがあげられます。
企業掲載のページは、会社の基本情報や募集要項などを掲載できる仕様となっており追加費用をかけるとより多くの情報を掲載できるようになっています。
メリット
- 大手媒体のため、広告や大学周りなどをおこなっているため学生登録人数が多い
- オプションが豊富
- サイト上で学生とのやり取り(応募~選考の案内など)をおこなうことができるため、管理がしやすい
デメリット
- 大手企業も多数掲載しているため、中小企業は埋もれてしまうことがある
- 画一的な掲載内容になりがちなため、差別化が図りにくい
その他新卒求人サイト
掲載可能な情報は大手就職サイトと大きく変わりはありませんが、オプションが特徴的だったり、中小企業に特化していたりするものが多くなっています。
メリット
- 特徴的な機能や大手就職サイトと異なったオプションが使用可能
- 企業側から直接アプローチをして応募をしてもらえるような機能が多い
- ターゲットをあらかじめ絞ることができる場合がある
デメリット
- 特徴的な機能の反面、人的工数が必要なサイトもある
- 大手就職サイトと比べて、登録学生数が少ない
3.主要新卒求人サイトの特徴
学生、企業双方の利用率が高い、4つの就職サイトについて特徴や料金をご紹介します。
マイナビ
- 学生登録者数・企業掲載社数ともに就職サイトとしては、業界トップクラス
- サイトと連動した全国開催の合同企業説明会を展開
- さまざまなオプションの利用が可能
マイナビの特徴
最も多くの学生が活用している就職サイトの1つです。24卒版(2023年3月1日時点)では登録会員数が約62万人、掲載企業社数は約28,000社となっています。その中でも特に従業員300人未満の企業が全掲載企業の約60%を占めています。全国49拠点にネットワークが展開されているため、首都圏の企業だけでなく、地方エリアの採用もサポートが充実しています。幅広い業界の企業が掲載をしていますが、保育や薬学などに特化した企業向けにはサイト内に特集ページを用意しています。また、サイトと連動しているイベントを全国でインターンシップ期間から継続的におこなっています。
毎年6月から翌年2月末までは採用活動の前段となるインターンシップの掲載をすることもでき、母集団形成に役立ちます。掲載している企業数も多いため、オプションやその他の手法も含めて工夫する必要があります。
マイナビの料金
基本掲載料はインターンシップで定価30万円から、3月以降のプランについては定価80万円からとなっています。ただし、多くの企業がただ掲載するだけではなくオプションを活用しています。
オプションについては学生へダイレクトメールを送付できるものや、サイト内で上位に表示されるようにするものなど非常に多くあります。自社に合ったプランにするためにも、さまざまなプランの組み合わせを検討されるのがおすすめです。
インターンシップサイトオープンの6月1日と広報解禁の3月1日に掲載したい企業が集中するため、この日程で掲載をしたい場合は1ヶ月以上前に発注や原稿の準備をおこなうことをおすすめします。
リクナビ
- マイナビ同様、学生登録者数・企業掲載社数ともに就職サイトとしては、業界トップクラス
- サイト連動の合同企業説明会がある
- オプション利用については、掲載プランにより使用可否が分かれるものがある
リクナビの特徴
マイナビと並んで多くの学生が活用している就職サイトの1つです。24年卒版(2023年3月1日時点)では、会員数が約48万人、掲載企業社数は約19,000社となっています。中小企業に強く、掲載企業の65%が従業員規模300名未満の中小企業です。全国各地で合同企業説明会やインターンシップ向けイベントもおこなっています。
面接の日程調整など業務を支援してくれるサービスや学生データ管理システムがあり、情報サイトや大学経由の学生データを取り込むことも可能です。
リクナビの料金
基本掲載料については、インターンシップが30万円から、3月以降のプランについては40万円からとなっています。
オプションについてもインターンシップ期間から豊富にありますが、基本情報のプランによっては使用できるオプションと使用できないオプションがあります。
マイナビ同様に、インターンシップサイトのオープンの6月1日と広報解禁の3月1日に掲載したい企業が集中するため、この時期からスタートする場合には早めのご準備をおすすめします。
あさがくナビ
- 他社サイトとの差別化のため、ダイレクトリクルーティングを押し出している
- プランと掲載期間に応じて金額を選べる
- 他社にはあまりない、オプションを選ぶことができる
あさがくナビの特徴
前述の2つのサイトと比較すると、中小企業志向学生が登録者のほとんどを占めているサイトがあさがくナビです。学生登録者数は約40万人となっています。母集団の「数」ではなく「質」にこだわっており、志望度の高い母集団の形成を支援しています。学生の登録エリアは関東は47%、関西は28%、それ以外は10%以下となっており、二大都市圏に強みがあるといえます。
あさがくナビの料金
基本掲載料は他社サイトが通年掲載の中で複数あるのに対して、掲載期間でも選択できるようになっています。最低定価は、12週間35万円からとなっています。
オプションについては、他の就職サイトと同じようにさまざまなものを組み合わせて使用することが可能です。
キャリタス就活
- 積極的な外部連携により、早期学生のアプローチを強化
- イベントは全国で開催しているが、業種ごとの区分けやテーマにするなど工夫をしている
キャリタス就活の特徴
キャリタス就活は、株式会社ディスコが運営する就職サイトです。学生登録数は約40万人、掲載企業社数は約20,000社となっています。オリジナル機能としては、「気になる」という企業から学生へ自社を見てもらえるようにアクションを取ることで、早期からアプローチを可能にしています。「キャリタスUC(求人票配信システム)」を利用した求人票配信実績を所属大学ごとに表示し、学生に新しい企業発見の軸も提供しています。
また、国内最大級のOB・OG訪問プラットフォームである「HELLO,VISITE online」とサービス連携も開始し、OB・OG訪問を接点にインターンシップや早期学生アプローチからファン層形成にも力を入れています。
キャリタス就活の料金
価格に関してはインターンシップ期間は60万円~、3月以降に関しては50万円~となっています。
3つのプランから選択することになりますが、他のサイト同様豊富なオプションを選ぶことができます。利用企業の要望や目的に合わせて使い分けをおこなうことで、効果的に活用することが可能です。
サイト連動型のイベントも開催しておりますが、他社と異なり業種ごとのブース区分けをおこなうなど工夫を凝らしたものを実施しています。
4.主要就職サイト特徴・料金比較
4つの就職サイトの特徴について見てきましたが、自社にあったサイトがなかなか選べないとお悩みの採用担当者様も多いのではないでしょうか。
就職サイト比較表
先程ご紹介した、マイナビ・リクナビ・あさがくナビ・キャリタス就活を一覧にして見比べてみましょう。
マイナビ | リクナビ | あさがくナビ | キャリタス 就活 |
|
基本プラン 料金(通年) |
160万円 | 110万円 | 100万円 | 90万円 |
サイト 連動イベント |
・大型は主要都市開催 ・小規模は全国で開催 |
・大型は主要都市開催 ・小規模は全国で開催 |
・東名阪を中心に開催 | ・大型は主要都市開催 ・小規模は全国で開催 |
DM機能 | ⚫ | ⚫ | ⚫ | ⚫ ※機能が2種類に 分かれている |
スカウト機能 | ⚫ | ⚫ | ⚫ | ⚫ |
原稿修正 | 基本無料 ※企画により 有料 |
基本無料 ※企画により 制作費が発生 |
無料 | 無料 |
特徴 | 学生登録数1位 | 企業掲載数1位 | ダイレクトリクルーティング型スカウト |
大学求人票と連携した 情報 |
お悩み別おすすめサイトの選び方
それぞれの特徴や使用したい機能とあわせて、どのサイトを使うのがおすすめかをまとめました。参考にしていただければと思います。
はじめて掲載するならマイナビ・リクナビがおすすめ
これまで採用活動を実施したことがない、実施していたけれど就職サイトを活用したことがないという方もいるでしょう。
まずは、掲載をスタートしてみようという企業様にはマイナビ・リクナビがおすすめです。
- 学生登録数が多いうえにサイトの認知度も高いため、リーチできる数も多い
- 全国に向けて告知をおこなっているため、広い範囲での採用活動が可能
- ブログ等が充実しているため、学生へのアピール導線が複数ある
イベントと組み合わせて活動するならキャリタス就活がおすすめ
早期と言われるインターンシップ時期からイベント開催が活発なキャリタス就活。イベントでの活動が強い・好きという企業様にはおすすめです。
- 全国の学生を採用しやすい
- 時期に合わせ志望学生別なども開催している
- イベント会場が業種ごとに分かれているため、業種志望が明確な学生と接点を持てる可能性が高い
2つ以上のサイトに掲載する場合にはあさがくナビがおすすめ
登録学生数が他のサイトと比べるとやや少ないですが、中小企業に特化しているという特徴があるため、2つ以上のサイトの掲載を検討している企業にはおすすめです。
- 中小企業の採用支援に強いため、学生への打ち出し方が明確
- ダイレクトリクルーティングを意識した設計により、スカウト配信など学生へのアプローチの工夫が可能
- 掲載企業数が他社よりも少ないため、掲載情報が埋もれにくく、他の企業との差別化がはかりやすい
インターンシップサイトからの継続活用を希望するならマイナビがおすすめ
インターンシップ期間から継続的に母集団を形成し、採用活動をされている企業様もここ数年は多いと思います。マイナビは、インターンシップ期間からOB・OGを活用したコンテンツや仕事理解のためのコンテンツが充実しているためおすすめです。
- 学生が求めている先輩社員やOB・OG活用コンテンツ、情報が豊富
- インターンシップサイトと通常サイトのつなぎ期間として、2月の1ヶ月が準備期間となっている
- インターンシップサイトから就職サイトまでの移行がスムーズ
5.まとめ
いかがでしょうか。新型コロナウイルスによる影響も徐々に緩和され、コロナ前の就活市場に戻りつつあります。
25卒の採用活動は、コロナ禍で一般化したオンラインと対面の開催割合を上手く調節することと、AIへの対策がカギといえます。
就職サイトそのものはとても似ている形ですが、コンセプトや強みとしているところはサイトによって異なっています。
自社の採用活動に合っているかという点も重要ですが、学生の利用状況や企業が求める人物像に応じて上手く使い分けすることも必要です。
また、費用に関してもオプションや採用活動終了までにかかる工数なども加味して考えていくことが重要です。