インターンシップを導入する企業は増えつつありますが、母集団形成がうまく進まず採用に苦戦するケースも少なくないでしょう。
今回は、採用担当者が頭を悩ませる母集団形成の方法について、インターンシップ時期に絞って実施方法やサービスを比較していきます。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
1. 新卒採用におけるインターンシップ市況
現在のインターンシップの市況やスケジュールはどのようになっているのでしょうか?ここでは、「企業」と「学生」に分けてそれぞれのスケジュールや動向を確認していきます。
1-1. 企業動向
企業のインターンシップスケジュールや動向はどのようになっているでしょうか。
インターンシップスケジュール
株式会社ディスコの企業調査(キャリタスリサーチ 2024年卒・新卒採用に関する企業調査・内定動向調査)により、インターンシップが実施される時期の傾向がわかってきました。
2024年のインターンシップにおいては、8月にピークを迎え、その後はやや落ち着くものの2月まで多くの業でインターンシップが実施されていることがわかります。
実施企業は年々増加
経団連が17年卒採用から設定した「広報活動の開始が3月、選考活動の開始が6月」のスケジュールによって、企業がおこなうインターンシップは広報活動開始前の2月までに実施されるようになりました。
このスケジュールに従ってインターンシップで自社の認知度を高め、志望度が上がるように動く企業が一気に増えました。これは掲載企業数の年度別の推移をみても明らかです。
※マイナビ掲載社数推移、ネオキャリア調べ
短期インターンシップが増加傾向
インターンシップの実施期間ついてもみていきましょう。
株式会社ディスコが実施した「2024年卒業調査- ・新卒採用に関する企業調査-採用方針調査」 では、プログラム1回あたりのインターンシップ実施期間に関する質問の回答として、半日がもっとも多く57.9%でした。
一方で2~4日以上の複数日程のものは、高くても2割程度の実施率でした。前年度もほぼ同じ数値となっており、24年度は1日以内のものが多くなっています。
このような調査からも実施企業数が増えるほど、短期のものが主流となっているようです。これは、採用難が続くほどインターンシップを採用活動、とくに母集団形成の一部として運営する企業が増えていることが予測できます。
1-2. 学生動向
次に学生の動向をみていきましょう。企業動向に対して、学生のスケジュールや動向はどのようになっているでしょうか。
学生側のインターンシップスケジュール
学生が就職活動を意識し始めるのは大学3年次といわれています。大学3年次までにインターンシップを経験する学生は合計して11%程度です。
やや古いデータではありますが、マイナビが実施したアンケートによると、インターンシップに初めて参加した時期について、大学3年生6月以前ではわずかだったところ、3年生の8月に一気にピークを迎えています。夏季休暇期間は、学生が一番動き始める時期となっているようです。
出典:マイナビサポネット 2020年卒マイナビ大学生広報活動開始前の活動調査
インターンシップ参加学生は増加傾向
マイナビの2024年卒マイナビ学生就職モニター調査(2月の活動状況)によると、81.8%の学生がこれまでにインターンシップに参加したと回答しています。前年までの実績と比較するとやや減少傾向にあるものの、依然として高い水準を維持しています。また、1人当たりの平均参加社数は増加しています。
出典:マイナビサポネット 2024年卒マイナビ大学生広報活動開始前の活動調査
企業選びと参加目的は就活を意識したものになっている
参加インターンシップを選ぶ際の基準は、「志望業界」がもっとも多く68.7%、「志望企業」が50.4%、「志望職種」が47.5%の順になっています。
この結果から、インターンシップに参加する目的、「特定の企業のことをよく知るため」「自分が何をやりたいかを見つけるため」「志望企業や志望業界で働くことを経験するため」などが考えられます。
つまり、学生は「インターンシップ=就職活動」と捉えているのでしょう。
企業側としては、上記のような企業・学生動向をもとに、インターンシップの母集団形成をおこなう必要が出てきます。
2. 採用における母集団形成とは
では、採用において母集団形成にはどのような役割やメリットがあるのでしょうか?
2-1. 母集団形成とは?
母集団形成を「母集団」と「形成」に分けて考えてみましょう。
採用において母集団とは「自社の求人に興味を示す応募者の集団」です。形成とは「整ったものを形作ること」であるため、母集団形成は「自社に興味を持つ求職者を集め、形を整えるための活動」ということになります。
つまり、応募者の数の多さを意識しつつも、自社が必要とする人材を確保する「質」も高めなければなりません。母集団形成は採用のファーストステージとなる重要なフローであり、採用成功の鍵となるポイントであることを認識しておきましょう。
2-2. 母集団形成が重要視される理由
母集団形成が重要視されるようになった最大の理由は、少子高齢化により生産年齢人口が減少しているためです。この問題は企業の大小や業種を問わず、どの企業にも共通する課題と言えます。
これまでのように、求人を出せば応募者が集まってくるという採用は難しいため、母集団形成によって人を集めて必要な人材を獲得することが当たり前になりつつあります。今後、生産年齢人口はさらに減少すると考えられているため、自社なりの母集団形成のやり方を構築しておくことが大切です。
2-3. 母集団形成のメリット
母集団形成の主なメリットは以下の4つです。
- 計画的に採用活動を進められれる
- 採用活動のコスト負担を軽減できる
- 採用後のミスマッチが起こりにくくなる
- 生産性の向上や企業の成長につながる
特に、採用後のミスマッチのリスクを減らせることは母集団形成の大きなメリットです。母集団形成では、はじめからターゲットを意識した採用をおこなうため、採用後に社風と合わない、価値観が違うなどの理由による早期離職を減らすことができます。
また、スキルや経験が自社にフィットする人材を採用できれば、即戦力として生産性の向上や企業の成長に貢献してくれるでしょう。
2-4. 効果的な母集団形成を実現するためのプロセス
母集団形成を成功させるためには8つのプロセスがあります。実施する際のポイントも紹介するので、参考にしてみてください。
プロセス | 実施のポイントや注意点 |
目的を明確にする |
|
ターゲットを設定する |
|
採用人数を決める |
・会社の事業計画 ・現状の人員構成 ・現場の採用ニーズ ・経営における採用ニーズ ・過去の採用実績 |
母集団の目標値を決める |
|
採用スケジュールを決める |
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ターゲットに合わせてアプローチ手法を決める |
・募集する職種や雇用形態 ・新卒採用か中途採用か ・年齢 ※アプローチの手法については後ほど解説 |
求人原稿の作成と採用の実施 |
|
採用活動の課題を洗い出し、対策を講じる |
・アプローチ手法ごとの応募者数 ・内定者数 ・内定辞退者数 ・発生コスト |
2-5. 母集団形成における課題と解決策を紹介
母集団形成において起こりやすい2つの問題と解説策を紹介します。
母集団の数が増えない
母集団の数が増えない主な要因として以下の2が考えられます。
- 求人を募集していることが認知されていない
- 認知されているものの、企業の魅力が伝わっていない
そもそも、求人を募集していることが認知されていない場合は、求人情報の露出度を上げる必要があります。露出度を上げる対策には以下のようなものがあります。
- 就職サイトの企業情報や会社説明会の情報をこまめに更新する
- ダイレクトメッセージの対象者や配信時刻、配信内容などを見直す
- 合同会社説明会など、集客が見込めるイベントに参加するなど
また、企業や求人情報が認知されていても、求職者にとって魅力的な情報がなければ応募者は集まりません。ターゲットにとって魅力のある会社であることを伝えるために、以下の工程を見直しましょう。
- ターゲット設定は適切か
- 求人情報やダイレクトメッセージがターゲットに響く内容になっているか
- 応募資格に曖昧な点や制限がないか
ターゲット層からの応募が集まらない
応募者の数が増えても、ターゲットとかけ離れた人材ばかりが集まれば採用に繋がらなかったり、採用しても早期離職してしまう可能性があります。自社の採用したい人物にマッチしない応募者が集まってしまう要因としては、求める人物像が正確に伝わっていないが考えられます。
そのため、以下のポイントをもう一度見直し、必要であれば募集要項やダイレクトメッセージの内容を修正しましょう。
- 自社にマッチする人物像が明確になっているか
- 訴求メッセージに統一性があるか
3. 母集団形成の方法
インターンシップ参加学生の母集団形成の方法としてはインターンシップサイトが一般的となっていますが、その他にもさまざまな方法があります。
3-1. インターンシップ(就職)サイト
例えば、リクナビ・マイナビなど就職情報サイトは、インターンシップ期間中からの活用が可能です。インターンシップ実施時期には、情報サイトのトップページもインターンシップ専用となっています。
企業紹介のページの他に、複数のインターンシップをコースごとに掲載することが可能となっているサイトが多くあります。
サイト上では、「職種」「業種」「実施地域」「実施日数」「体験内容」などからインターンシップを検索できるようになっています。多くの学生は興味のあるインターンシップを探すために、上記条件を複数かけ合わせて使用しています。
多くの企業の掲載があるため、その中から選んでもらうには学生の目的にあった、特徴のあるインターンシップ内容にすることが重要です。
3-2. イベント
インターンシップイベントには、「マス型」と「スカウト型」があります。
マス型イベント
マス型の例としては、インターンシップサイトが提供するイベントがあります。多くのイベントでは、会場にインターンシップ実施予定の企業がブースを構えで自社のインターンシップについて説明をおこないます。
大型のものは大都市で開催される傾向がありますが、各都道府県の主要都市での開催もあるため、地方募集の企業も活用が可能です。
スカウト型イベント
スカウト型は、5~10社程度の採用担当者が参加する中で学生がビジネスゲームなどをおこない、自分のスキルをアピールします。ゲーム終了後、企業からフィードバックをもらったり、スカウトされて座談会に参加するなどの形式があります。この後、インターンシップへ誘導することが可能になっています。
3-3. 送客サービス
送客サービスとは、企業に代わってインターンシップ学生を見つけて送り込んでくれるサービスです。自社の求める人物像に合う学生をインターンシップやインターンシップ説明会に動員してもらうことができます。
事前に、大学や学部、学科、現住所などの希望する学生の情報を伝え、その希望に合致した学生をスクリーニングした上で動員することが可能となっているサービスが多くなっています。そのため、特定のターゲットに効率的に接触することができます。
また、成功報酬型のものが多いため、学生が集まらなかった場合は費用がかからないというのもメリットです。
3-4. スカウトサイト
通常は企業が募集告知をし、学生が応募するという母集団形成方法が多いと思います。しかし、スカウトサイトは学生が登録サイトへ自己PRなどプロフィールを記載し、そのプロフィールをみて企業側がメールを送るなどして接触を図ります。
企業としては、事前に学生の情報を入手することができるため、自社にあった人材を選んでスカウトすることが可能です。
4. 母集団形成ができるサービス10選
母集団形成の具体的サービスはどのようなものがあるでしょうか。それぞれの手法で9つのサービスをご紹介します。
4-1. キャリアチケットスカウト|価値観によるマッチングを実現
【サービスの特徴】
- 条件や資格ではなく価値観でマッチングするため、自社に合う学生にピンポイントで接点を持てる
- 企業ページの作成、オファー文書の添削、定期お打ち合わせ、レポートの共有など企業ごとのサポートが充実
- 企業の知名度に左右されない採用活動が可能で、平均オファー承諾率が20%と高いのが特徴
- サービス名:キャリアチケットスカウト
- 運用会社:レバレジーズ株式会社
- URL:https://careerticket.jp/partner/lp/200aa/00/00/00/
4-2. paiza|独自テストで学生の技術レベルを可視化できる
【サービスの特徴】
- ITエンジニア業界を志望している、IT素養の高い学生だけが登録・応募している
- paiza独自のコーディングテストを受けてもらうことで、学生のスキルレベルを可視化。応募者のスキルをみて安心してアプローチできる。
- 初期/掲載費用は0円。成果費用も40万円〜。
- サービス名:paiza新卒
- 運用会社:paiza株式会社
- URL:https://paiza.jp/pages/recruiters/student/service
4-3. CaLin|タレントプール採用プラットフォーム
【サービスの特徴】
- 意識の高い就活前の学生を早期からタレントプールできるサービス
-
企業情報を掲載するだけではなく、会社説明会のスライド掲載やインターンシップなどの募集、個別メッセージ機能なども可能
-
一度登録した候補者データは新卒採用が終わっても残るため、そのまま企業のタレントプールとして活用でき、中途採用の際にも活用することができる
- サービス名:CaLin
- 運用会社:キャリン株式会社
- URL:https://company.calin.co.jp/
4-4. ビズリーチ・キャンパス|出会いたい学生に出会える
【サービスの特徴】
- スカウト機能・イベント開催・社員訪問受付機能など、新卒採用ツールとして必要になる機能を網羅
- 企業が出会いたい優秀な学生のデータベースに直接アプローチ可能
- ダイレクトリクルーティングに関する確かな実績で、これまでにKDDIやアサヒビールなどの導入実績
- サービス名:ビズリーチ・キャンパス
- 運用会社:株式会社ビズリーチ
- URL:https://site.br-campus.jp/company/
4-5. マイナビ|インターンシップサイト
就職サイトとしても利用している企業が多いマイナビは、インターンシップサイトとしても活用することが可能です。
6月から9月のサマーインターンシップと10月から翌2月のオータム・ウィンターインターンシップに分けての掲載となっています。21年卒向けサービスから2月中旬より、就職準備期間としてさまざまな新しいオプションも投入され、インターンシップから3月以降の活動にスムーズに移れるよう工夫されています。
4-6. キャリタス就活|インターンシップサイト
大学への求人票配信システム大手の株式会社ディスコが運営しているサイトです。就職サイトとしては、日経就職ナビから17年卒向けサービスよりキャリタス就活にリニューアルしています。
学生登録数はマイナビに比べると少なくなりますが、その分学生とのつながりを持てるような機能に注力しています。LINE@と連携できるキャリタスcontactというオプションや、DM機能も複数プランが用意されています。
4-7. あさがくナビ|インターンシップサイト
株式会社学情が提供している就職サイトです。20年卒向けサービスより大幅にリニューアルし、ダイレクトリクルーティングよりのコンセプトを打ち出して他のサイトとの差別化を図っています。
学生登録数はマイナビやキャリタスと比べてもやや劣りますが、その分マッチング度を高めるような仕様に設計されています。インターンシップ時期から適職診断を促したり、AIマッチングをおこなって学生に合う企業をピックアップされるようにもなっています。
4-8. マイナビインターンシップEXPO・セミナー|イベント
マイナビが就職サイトと連動しておこなっている、主要都市開催の大規模イベントのインターンシップEXPOと地方都市開催の中規模イベントのインターンシップセミナーです。
会場地域と規模によって、料金は異なります。6月開催の東京会場のインターンシップEXPOでは約1.8万人の来場学生数を記録したこともあり、大人数の学生に集中的に接触したい企業にはおすすめです。
4-9. キャリタス就活フォーラム|イベント
キャリタス就活と連動したインターンシップイベントです。マイナビ同様全国で実施していますが、業種ごとにまとめたブース運営などマッチ度を重視したものや時期に合わせたテーマを設定したイベントとなっています。
費用については、地域と会場によって異なります。イベントによっては、ソーシャルパーティーという個別対応が可能なエリアを設けている会場もあるため、学生とじっくりと対話することも可能です。
4-10. ジョブトラ|イベント
リアライブ株式会社が実施しているスカウト型のイベントです。6社合同型の選考会となっており、参加学生は4種類のビジネスゲームのうち1つを実施、参加企業は学生がビジネスゲームをおこなうのを見て評価します。
イベントは通年で東京を中心に、大阪・名古屋でも開催しています。参加学生の6割がGMARCH以上となっており、優秀層が集まりやすいといわれる学群へアプローチができます。インターンシップへの誘導だけでなく、すぐの選考へ案内することも可能です。
5. 母集団形成は採用成功の第一歩
いかがでしょうか?母集団形成のために、就職サイトやマス型イベントを使用している企業も多いことでしょう。自社にあったサービスをうまく掛け合わせて使用することがこれからのインターンシップでは重要になりそうです。インターンシップ中に母集団形成をおこなう場合は、目標や採用スケジュールを立て、自社に合うアプローチ方法で数・質ともに高い母集団形成につなげましょう。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。