「ブラックバイト」という概念の浸透や、少子高齢化による若手の人材不足などの影響により、アルバイトでも人手を確保することは難しくなってきています。コロナウイルスの影響で売手市場から買手市場へと変化してきていますが、物流や介護などの業界では慢性的な人手不足が継続しています。
人手不足の結果、営業時間の短縮を余儀なくされる店舗やサービスなどが深刻な問題となっています。
1|アルバイトの採用にはどのようなことが求められるか
アルバイトの採用面接となると、新卒採用や中途採用の採用面接とは、方法や目的が大きく異なります。
企業にとって、アルバイトを雇用するときに、応募者に求められる要素には一般的にどのようなものがあるのか、確認していきます。
1-1|アルバイトに求められる要素とは
仕事に意欲的に取り組めるか
アルバイトの雇用に関して、社員の採用と大きく異なることの一つは、「スキルや経験、ポテンシャルを問うことが少ない」ということが挙げられるでしょう。
それよりも、アルバイトの仕事自体にやりがいを持って取り組むことができるか(≒一定期間続けられるか)を、面接で見極めることが重要となります。
給料や地理的な条件を重視する応募者は、仕事自体へのモチベーションはそれほど高くないこともあるでしょう。そうした応募者は、採用後に「イメージと違った」とミスマッチを引き起こし、早期辞職につながる可能性も大きくなります。
採用や研修にかけた多くのコストが短期間で無駄になってしまうのは、会社にとって大きなリスクです。担当者にとっても耐え難いことではないでしょうか。
人柄は現場の雰囲気に合っているか
アルバイトの採用に関して、経験やスキルよりも「明るくハキハキとしている」、「自発的にコミュニケーションがとれる」といったように、選考で『人柄』を重視する採用担当者が多いようです。
また、上記のような広義の『人柄の良さ』に加え、既に雇用している現在のスタッフとの相性も重要になります。
面接を通して、現在雇用している他のメンバーとうまくやっていけるかどうか、判断する必要もあるのです。
自社が必要とするだけのシフトに入ることが可能か
採用担当者にとって、アルバイトが雇用後に活躍してくれることが、最も大切な要素ではないでしょうか。
いくら応募者の『意欲』と『人柄』がよくても、自社がアルバイトに最低限満たしてほしいシフト日数で勤務することができなければ、採用する理由には至らないでしょう。
安易に解雇することもできないので、さらに採用コストがかかったり、人件費がかさんだりしてしまいます。
面接を通して、週や月の勤務可能日数を応募者と明確に擦り合わせておくことが必要です。
1-2|アルバイトが会社に求めるポイントを理解する
採用担当者は、一般的にアルバイト応募者が、会社にどのようなことを求めているのかを理解することも必要です。その上で、お互いにとって有益になる関係性を築く必要があります。
応募者がアルバイトを希望する際に、会社に求める要素について、代表的なものを整理していきます。
必要な給料をもらうことが可能か
多くの人は、「何かの目的のために資金を稼ぎたい」、「貯蓄を増やしたい」など、金銭に関することを目的として、アルバイトに応募することでしょう。
つまり応募者は、『自分が稼ぎたい金額分、働くことは可能か』を、アルバイト先を決める上での重要な判断材料とします。
採用担当者は、相手がその目標金額分のシフトに入ることが可能かどうかを、あらかじめ応募者に伝えておく必要があるでしょう。
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シフトの柔軟性はあるか
『「大学生の実態調査2016」|株式会社リクルートキャリア』によると、約7割の大学生がアルバイトをおこなっているようです。このことからわかるように、アルバイト全体に関しても大学生の占める割合が多いと言えるのではないでしょうか。
学生のように、アルバイトの中には本業を別に持ち、副業として従事するケースが多く見られるものです。たとえば学生ですと、「試験期間はシフトをずらしてほしい」という希望が出されることも多いことでしょう。
このように、アルバイトの応募者にとって、他の活動に差し支えがないようにシフトに融通が効くか、柔軟性があるかは、非常に重要なポイントの1つとなります。
自分が望む経験は得られるか
近年ではアルバイトを趣味と同一に捉えたり、将来のキャリアにつながるスキルアップの場として臨む若者も増えてきている印象です。
そのような応募者に対しては、自社がアルバイトとして雇用することが、本人が求める経験につながるかどうかを明確に伝えておく必要があるでしょう。
アルバイトは特に、お互いにとって納得感のある採用をしない限り、応募者の長期雇用にはつながりません。
2|アルバイトの採用面接で重視すべきポイント
新卒採用や中途採用の面接とは区別して、アルバイトの面接ならではの重視すべきポイントが存在します。アルバイトを募集する際に、参考になれば幸いです。
2-1|アルバイトの面接はどのような点で特徴的か
事前の書類選考、複数回の面接を重ねる新卒採用や中途採用とは異なり、多くのアルバイトの選考は面接当日に書類を持参し、一度の面接で合否を決めることに特徴があります。これはアルバイトが従来、「現場の人手不足を解消する」という役割を担うためであることが多いからということができるでしょう。
面接以外にも、採用から実際に出勤するまでの期間が短いことや、実際に現場に入りながら研修をおこなう「*OJT」が基本となるといった特徴があります。
中には、「採用だから、明日から来て」と面接の場で伝えることも。
初期は業務の専門性も高いものが要求されることは少ないため、『スピード感』がアルバイトの採用・面接のフローで重視されていることがわかります。
職場の上司や先輩が、部下に対して具体的な仕事を与えることでおこなう職業訓練。
2-2|アルバイトの面接で聞くべき質問事項
これまで述べてきたような、アルバイトを雇用するにあたって検討すべき大切な要素を判断するために、具体的にどのような質問をすれば良いのでしょうか。
効果的な質問内容と、その具体例を取り上げますので、参考にしていただければと思います。
仕事自体への意欲とやる気を判断する質問
業務自体にどれだけやりがいを持って取り組めるのか、面接を通して判断する必要があります。
その際、以下のような質問が効果的です。
- 「このバイトに応募した理由は何ですか?」
- 「どうしてウチを選んだんですか?」
- 「(ホール作業や営業などの場合)人と接することは好きですか?」
このような質問を通して、仕事自体への応募者の考えを聞き出すことができます。
ここで給与や、地理的に職場に近いなどの理由が回答だと、仕事に対する個人の意思は比較的弱いものだと判断できるでしょう。
しかし、単純に金銭や交通の便の良さが最上位のモチベーションというだけで、業務に対する意欲も十分という場合もあるので、質問に対する深堀りも随時必要でしょう。
自社と応募者が求める条件の整合性を確かめる質問
アルバイトの雇用は、会社と応募者それぞれに目的があっておこなわれます。
双方にとって最重要な条件については、面接の場で擦り合わせておく必要があるでしょう。
- 「いつから、週(月)に何日働けますか?」
- 「月にいくら稼ぎたいなど、給料の希望はありますか?」
- 「シフトに入れないことが決まっている期間はありますか?」
このような質問を通して、応募者は現場が求めるだけのシフトに入ることができるのかを見極める必要があります。学生の応募者ですと、試験期間や長期旅行の日程を把握しておくことで、事前に安心してシフトを組む準備ができるでしょう。
同時に、相手が月にいくら稼ぎたいのかを確認しておくことも、シフトを組む際の参考になります。これらの質問は、お互いに納得感のある雇用関係を結ぶ上で、必ず必要なものでしょう。
短期でやめてしまわないかを判断する質問
先ほども触れたように、多くのコストをかけてせっかく採用し、研修や教育までおこなったスタッフが短期間で辞めてしまうことは、企業にとって大きな痛手です。
このような最悪な事態を防ぐためにも、採用担当者は応募者が「すぐに辞めやすいか」を、面接で判断する必要があるのです。
- 「以前のバイトを辞めた理由は何ですか?」
- 「他に検討しているお店(会社)はありますか?」
- 「仕事での目標や、やりたいことはありますか?」
以前のバイトを辞めた原因を聞くことで、その理由が自社でも当てはまりうることなのかを判断することができます。また、エピソードによっては、応募者の課題解決能力や忍耐力も評価することができるでしょう。
アルバイトも売り手市場であるため、より良い条件の現場を求めて簡単に辞めてしまう人が増えてきています。面接に合格を出したら、しっかり自社で働いてもらえるかを確認しなけれればなりません。
現場や他のメンバーと、うまくやっていけるかの確認
応募者の人柄で、現場や既にはたらいている他のメンバーとうまくやっていけるかを確認する必要があります。
- 「趣味はなんですか?」
- 「○○(具体的な状況)な場合、どうしますか?」
応募者の趣味や志向性を把握することで、既にいるメンバーの中で合いそうな人はいないかを事前に把握し、初期は同じ勤務時間でシフトを組むなど、現場になじませるための取り組みをすることができます。
新人の業務フォローを充実させるために、重要な質問項目の1つではないでしょうか。
非言語コミュニケーションに着目する
「はっきりと挨拶はできるか」、「身だしなみは整っているか」、「態度は適切か」、「しっかり目を見て話しているか」など、面接の際に非言語コニュニケーションに着目することも重要でしょう。
特に接客業ですと、自分が応募者に対して抱いたものと同じ第一印象を、お客様にも与えることになります。採用の判断基準の一部として評価し、改善の余地があるものは素直に伝えるのが良いでしょう。
2-3|応募者が離れていく、面接でのNG質問
逆に、質問することで応募者に不信感や不快感を与えたり、聞くことで何のメリットもない質問も存在します。
- 「どういうバイトがブラックだと思う?」
- 「彼氏/彼女はいるの?」
- 「両親は何やってる人なの?」
両親についてなど、本人に関係のない質問をすると、こうした内容も評価されているのかと誤解を与えることがあります。
恋人の有無や結婚しているかといった内容は、アイスブレイクの方法として使うこともあるかもしれませんが、相手によってはセクハラに捉えられてしまうこともあるため、面接の場では聞かないでおくことが妥当でしょう。
3|応募者が面接に来ない?面接辞退を防ぐためのポイント
アルバイトの面接の特徴の1つとして、面接の事前キャンセルや、場合によっては連絡なしのドタキャンをされることが多いということがあるのではないでしょうか。
せっかく応募をしてくれたのに、面接に来てくれない理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
大きな理由の一つとして、応募後の会社(店舗)からの対応があるようです。
応募後、面接までの日程調整がいいかげんで、対応が遅く期間が空いてしまったり、態度が高圧的だったりすると、応募者は他の職場を検討したり、対応が良いところに惹かれたりするのはもっともです。
また、必要書類やエントリーシートなど、面接の際に持参する応募書類の準備にかかる時間や労力のコストが大きいと、その手間を嫌がって辞退するケースが目立ちます。
口コミをもとに再検討した結果、辞退した方が良いのではないかと思ってしまうことも多いようです。
それでは、面接辞退を防ぎ、効果的に面接につなげるための取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。これまで述べてきた理由を克服するために、有効なものを紹介します!
3-1|応募後には迅速な対応を!すぐに日程調整に移る
求人へ応募をした後に期間が空いてしまうと、応募者にとっては「忘れられている」、「この店はしっかりしていない」という印象を与えるでしょう。その間に別の求人へ応募し、丁寧な調整をする会社へと惹かれていきます。
採用担当者は、応募が来た場合、すぐに応募者とコンタクトをとって日程調整を進めなければいけません。またその際、業務が忙しくても高圧的にならず、丁寧に対応することが重要です。
面接などの採用活動は、通常の業務とは切り離した第一義的なものとして考えるのが良いでしょう。
3-2|面接までに必要なコストを最小限に
アルバイトの面接の際、志望動機を書かせた履歴書などを持参させるケースも多いかと思います。しかし、記載してもらう項目は、すべて必要であると言えるでしょうか?
事前提出ならば必要かと思いますが、当日持参となると、面接の際に直接うかがえば済む項目も多いのではないでしょうか。最近では、面接の際に自社独自の履歴書を記載してもらうことも多いようです。
また履歴書だけでなく、面接会場(職場)までの詳細な道順を事前に連絡しておくなど、応募者のコストとなりそうなことをできるだけ解消しておくことも有効でしょう。
3-3|応募者に安心感と親近感を!こまめなリマインド連絡
日程調整の結果、面接日時が2週間後になった場合、長い期間連絡が途切れてしまうことになります。応募者は、より魅力的な選択肢を見つけたり、だんだんと億劫になってしまったりするかもしれません。
この場合は、面接1週間前、3日前、前日というように、こまめにリマインド連絡をすると良いでしょう。メールやショートメッセージで、「楽しみにしている」旨を伝えることで、応募者にも面接官への親近感と、自分の面接がちゃんとおこなわれるということへの安心感を得ることができます。
また、日程調整は電話での連絡が好ましいでしょう。調整をスムーズのおこなうことができるだけでなく、会話を通して応募者に安心感を与えることができます。
その際、業務中でいくら忙しくても、丁寧な言葉遣いと態度を心がけてください。
4|面接後の辞退を防ぐためのポイント
アルバイトには、せっかく面接通過の連絡をしても、初出勤を前にして辞退するケースも多いかと思います。
これは、面接を通過したものの、業務を前にして不安から逃げてしまったり、もっと楽な選択肢を選んだりしてしまうことがあるのではないかと思います。
新しいことを始めるのは、誰でも労力が必要となるものです。せっかく採用した人材が逃げてしまわないように、面接後から業務開始までをフォローする取り組みも必要でしょう。
4-1|面接後の連絡は迅速に!丁寧に!
面接後の合否連絡は、その場ですることもあれば、後日連絡することもあるかと思います。
いずれにせよ、面接後はすぐに当日のお礼と、合否結果が後日の場合はその旨も改めて連絡する必要があるでしょう。
それによって、応募者に「自分を見てくれている」という安心感や、業務に対するモチベーションを与えることができます。
たとえば、初出勤が面接合格の1週間後だった場合、3日前や1日前に再度コミュニケーションを取ることも有効です。
新しい組織に入るのは、誰でも不安を感じるものです。メンバーの一員として受け入れる姿勢を伝えることが、直前の辞退を減らすことにつながります。
4-2|仕事の醍醐味やおもしろさを伝える
面接では、実際におこなってもらう業務内容の簡単な説明で完結しがちです。その際、自身が思う仕事のやりがいを伝えてみるのはいかがでしょうか。
現場の社員という立場から仕事のおもしろさを伝えることで、業務自体へのモチベーション向上につながったり、より明確に働くイメージを持たせたりすることができます。
面接後辞退の防止だけでなく、継続してはたらいてもらうための取り組みにもつながるでしょう。
4-3|教育・研修制度の充実をアピール
その業種の経験が皆無な場合、応募者は勤務初日まで不安を感じ続けることでしょう。
その場合、面接時に、現場の研修制度や教育体制が充実していることを伝えてあげるのが効果的です。
未経験でもしっかり教えてもらえる環境が整っていることは、応募者にとって大変心強いのではないでしょうか。
おわりに
いかがでしたでしょうか。アルバイトの採用面接を効果的に進める上で、重要なポイントをまとめてみました。
企業がアルバイトに求める要素もそれぞれで、中には時給の高さをひたすら求人として訴求している企業もあるかと思います。
自社に適したアルバイト採用面接を実現するために、この記事を役立てていただければと思います。