労務トラブル発生を防ぐ|人事労務における『30人の壁』とは | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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労務トラブル発生を防ぐ|人事労務における『30人の壁』とは

  • 労務
  • リスクマネジメント

※本記事は、社会保険労務士の法人シグナル 代表の有馬美帆さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

有馬先生

こんにちは、社会保険労務士法人シグナル 代表有馬美帆です。

『30人の壁』とは、一般的にはマネジメントの壁といわれています。創業当初は、経営者が一人ひとりの従業員をマネジメントしており、一緒にいる時間に比例して、とくに意識しなくてもメンバーとのコミュニケーションは保たれ、情報も自動的に共有されています。

しかし、人数がさらに増えていき、30人近くに達すると、今までのように経営者が一人ひとりの従業員をマネジメントすることができなくなり、業務が滞り、機能不全を起こし始めます。

経営者が一人でマネジメントできる限界は30人といわれております。30人以上雇うのであれば、チームに分けリーダーを育成し、組織化する必要があります。しかしそれがうまくできないために『30人の壁』といわれています。

もう一つの30人の壁。『労務トラブル発生の壁』とは一体なにか

有馬先生1

もう一つの『30人の壁』

それは、労務トラブル発生の壁です。

スタートアップ時期においては、人事労務経験者がいないこともよくあり、人事労務業務を経営者自らがインターネットで調べたり、役所に電話をしたりしながら、情報を一つひとつ手探りで仕入れて、対応していることが多くあります。

立ち上げを一緒にしてきた創業メンバーも、まずは経営を軌道にのせることを共通の目標としているため、給与や保険証などの手続きの多少の間違いや遅れについては、許してくれる場合もあったりします。

ある程度の限られた人数、それもリファラル採用のメンバーで運営をしている時期は労務トラブルは起きにくいといえるでしょう。

企業成長していくにつれ、一般採用が始まり、さまざまな価値観をもつ人材が急激に入社をしてきます。しかし、適正な労務管理は後回しになっており、創業時のままの状態になってしまいがちです。そのため労務トラブルが発生してしまいます。

5%の問題社員

5%の問題社員とは何か?
これは、全社員の内、約5%が何らかの問題を抱えているということです。

30⼈の5%は1.5⼈。つまり、30⼈規模を超えると、どの企業も労務トラブルを経験する確率が高くなってきます。

30⼈前後の組織で労務トラブルが顕在化するのは、単純に確率論的な側⾯もあるといえるかもしれませんね。

労務トラブルの内容

有馬先生2

労務トラブルには、大きく分けて次の4つがあります。

  • メンタルヘルス不調者が出てくる
  • マナーやモラルがない社員が出てくる
  • 全てにおいて前職と同程度の水準を求める社員が出てくる
  • 創業メンバーから退職する者が出てくる

 

従業員数が30人規模になると、従業員の中でも日々不満が蓄積されています。不満の種類としては、採用時の企業説明にギャップや『業務内容』『人間関係』『給与』『長時間労働』などです。これらの不満が蓄積した結果、メンタルヘルスが不調したり、マナーやモラルがなくなったり、前職ではこんな福利厚生があったなどと求め出したり、見切りをつけて退職する従業員が出てきます。

そして、創業メンバーの中には、希望するキャリアの変化や結婚や出産などライフスタイルに変化が見られるのも30人規模の頃です。

経営者層は、労務トラブルが発生すると、現状を把握し、対応を考え、解決していかなくてはいけません。そのリソースが想像以上に大きく、経営者としての本来の業務をおこなう時間すら奪われ、企業成長が鈍化してしまいます。これが労務トラブルにおける『30人の壁』です。

企業によっては「当社は30人規模だけど労務トラブルなんて起きていないな」と感じておられるかもしれません。しかしそれは単に気が付いていない、見て見ぬ振りをしている、あるいは、問題とすべき段階ではないと軽視しているだけです。

売上は全てを隠すとも言いますが、売上が伸びていると労務トラブルが発生しないケースもあります。しかしそれは隠れているだけで何かのタイミングをもって爆発しますので、注意が必要です。

そして、労務トラブルは、トラブルになっているもの以外にも、将来の予備軍も存在していることを認識しましょう。

労務トラブルにおける30人の壁を乗り越えるために

有馬先生3

労務トラブルが発生すると、経営者として本来向き合うべき組織拡大や業績向上に注がれるべきエネルギーが奪われてしまいます。

経営者として対応すべきことは、現状把握し、対応策を練り、解決させることです。現状を把握するにも、関係する従業員から話を聞く必要があり、内容に相違があることも多く容易ではありません。対応策も、基本的に解雇はできない以上、慎重におこなわなくてはいけませんし、他の従業員へ影響が出る場合もあるので配慮が必要です。

解決といっても特効薬など存在しないことが多く、一定期間後に様子をみましょうなど長期化するケースも多々あります。

労務トラブルが起きないよう予防することも重要です。予防策としては、社内に『目配り』『気配り』『心配り』をし、不満の声を聞き出し、一つひとつ解決していくことを心がけましょう。今話題の1on1ミーティングも効果的だといえます。

次に法令を遵守しましょう。法令遵守されていないことは不満として蓄積します。「労働条件通知書の交付」「有給休暇取得」「健康診断の実施」「残業代の支給」などはできていますか。

そして就業規則の整備をあなどってはいけません。マナーやモラルのない社員やメンタルヘルス不調者の休職・復職対応で本人との対話とともに活躍してくれるのは就業規則です。就業規則は整備するだけではなく、なぜその内容になったかという背景まで含めて教育をおこないましょう。

この30人の壁を乗り越えても、労務トラブルは、従業員数に対して5%発生するので常に付きまとうことになります。早期発見・早期解決・早期整備を心掛けましょう。

【事務所の紹介】
社会保険労務士法人シグナル 代表 有馬美帆(特定社会保険労務士)【業務内容紹介】
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