「ジェネレーションギャップ」はこうして乗り越えろ|組織人事コンサルタントApichat氏から見た「カイシャの人間関係」|HR NOTE

「ジェネレーションギャップ」はこうして乗り越えろ|組織人事コンサルタントApichat氏から見た「カイシャの人間関係」|HR NOTE

「ジェネレーションギャップ」はこうして乗り越えろ|組織人事コンサルタントApichat氏から見た「カイシャの人間関係」

  • 編集部より

※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

人事に携って約16年間。現在では組織人事コンサルタントとして「QGEN」「QElitez」のCEOとして活躍しているApichatさんに「組織内のジェネレーションギャップ」について取材。

Apichatさんは、約27万人がフォローするFacebookページ「HR The NextGen」を立ち上げ、人事だけでなく、働く人が抱える多くの悩みについても解決策などを共有し、多くの方に支持されています。

今回は数多くの組織課題に向き合ってきたApichatさんが考える「組織内で起きているジェネレーションギャップ」についてお話をお伺いしました。

人事の方はもちろん、部下のマネジメントや従業員の関係性に悩まれている方は是非参考にしてみてください。

Apichat Khantavithi | QGEN Consultant and QElitez Managing Director

約16年間、タイをはじめ海外でもHR領域にて活躍。約27万人がフォローするFacebookページ「HR The NextGen」を立ち上げる。シンガポールと共同企業で組織人事コンサルティング会社「QGEN」「QElitez」のCEOを務める。

大学卒業後に日系自動車メーカーに就職。
人事として多くの経験を積んだ後、「HR The Next Gen」を立ち上げる

日系自動車メーカーにて5年間人事として活躍

大学卒業後、私は日系自動車メーカーに就職し、その会社で約5年間人事を担当しました。

一般的に社会学部を卒業した人が人事配属になりますが、当時その日系自動車メーカーは経済専攻の学生を人事として採用していたこともあって、当時経済学部であった私はその自動車メーカーに就職を決めました。

入社当時は、従業員の退職金積立に関わる業務を担当し、そこから人事業務全般に携わるようになりました。

2015年に「HR The Next Gen」を立ち上げる

Facebookページ「HR The Next Gen」を立ち上げる前は、3年間ほどジャカルタをはじめ、海外を舞台に人事として働いていました。

再びタイに戻ってからも、海外のHRに関する情報を収集する目的で、海外メディアなどをよく読んでいました。

一方で、タイの人事にも有益な情報をさらに広げていきたいという思いから「HR The Next Gen」を立ち上げたんです。

最初は海外のHRに関する情報をシェアしていただけでしたが、人事に向けた内容だけでなく、「ワークライフバランス」に関する情報など、会社で働く従業員にとって役立つ情報も発信し始めました。

そういった投稿も次第に読者の方にシェアされるようになり、「HR The Next Gen」を多くの方に知ってもらえるきっかけとなりました。

人事の本質的な魅力に多くの人事は気づいていない

本来、人事は従業員の能力やスキルを最大限に引き出し企業の成長に貢献することが仕事であり、それが人事の仕事の本質でもあります。

しかし、多くの方が人事の仕事は「採用や給与計算、労務などがほとんど」というイメージを抱いており、本質的な部分を理解されていません。

実際、タイで人事として働いている人でも、人事の本当の目的を理解している方はまだまだ少ないのではないでしょうか。

人事の本当の目的は、例えば「人が辞めたら新しい人を採用する」だけではなく、その原因を分析し、それらの改善点を採用プロセスに組み込んでいくことが重要になります。

従業員が辞める際に打ち明けた理由が「上司とうまくいかない」というのであれば、その従業員や上司と実際に話し、「どういった関係があったのか」「関係性が悪化した原因はなにか」を把握する必要があります。

原因を把握し、解決するために行動することまでが人事の本来の役割といえるのではないでしょうか。

それが実際にできる人事がいる企業は、会社から優秀な人材が辞めることもなく、それができることで人事としての価値も高くなります。

人事の本質的な部分をもっと認識してもらうためにも、「HR The Next Gen」を通して人事の本当の価値を伝えていきたいと思っています。

組織内で最も大きな課題の一つは「人間関係」。乗り越えていく秘訣とは

人事業務の中で、採用や労務なども組織において重要な業務ですが、「従業員同士の関係改善」もまた重要になります。

組織内で従業員が抱える最も多い悩みの一つは「従業員同士の人間関係」で、その原因は「世代間の価値観の違い」から起こることが多くあります。

また最近では企業もグローバル化しつつあり、お互いの「違い」から生まれる人間関係のトラブルはあとを絶えません。

「トムヤムクン経済危機」が激しいジェネレーションギャップを生み出す

どの国でもジェネレーションギャップは当然起こりうる問題ではあると思いますが、タイではそれが顕著に現れています。

原因は大きく2つあり、1つ目は経済危機「トムヤムクン危機」が大きなジェネレーションギャップを生み出しました。

トムヤムクン経済:タイ通貨バーツが1997年に固定相場制から変動相場制に移行した際に、急激な通貨下落に伴う通貨危機。タイでは、この影響で多くの金融機関、民間企業が倒産。

トムヤムクン経済をきっかけにタイの景気が著しく悪化し、多くの企業が新しく人材を採用することを取りやめました。

経済危機の影響は約10年間続き、やがてタイの経済は回復し始めましたが、企業が改めて新しい人材を採用し始めた際には、新入社員の直属の上司が10〜20歳以上も離れているという状況が起きました。

年齢が10も20も違ってくると、当然ジェネレーションのギャップは生まれますよね。

また二つ目のジェネレーションギャップの要因が、テクノロジーの進歩です。

いまやスマートフォン、SNSの普及などで価値観やライフスタイルに大きな変化を与えています。

そういった環境の中で育ってきた20代と他の世代の間では行動パターンや思考が大きく違うのはいうまでもありません。

経済の急成長やテクノロジーの進化によって世代間のジェネレーションギャップは非常に激しいものとなりました。

今後社会で活躍するZ世代。
彼らを理解することが今後重要になる

X世代1960年代初頭または半ばから1970年代に生まれた世代
Y世代1980年代から1990年代に生まれた世代
Z世代1990年代後半から2000年代に生まれた世代

これからどんどん社会にでてくるZ世代を理解することは、今後組織に求められる重要な課題ではないでしょうか。

Z世代はX世代、Y世代とはまた考え方や価値観が違う世代になります。

例えばX世代は「大企業で働くこと」が重視されていました。また「家族」についても優先的に考えるので、安定した企業で働くことが重要とされていました。

またY世代は良い景気の影響のおかげか、「自分で何かを成し遂げたい」という考え方を持つ方が多く、自分でビジネスを始める人が比較的多い印象です。

一方、Z世代は「社会を変えたい」「社会に貢献したい」と考える方が多いです。

例えばGoogleのようなテクノロジーを駆使して、世の中に大きなインパクトを与えているような企業に対して強い憧れを持っています。

自分が関わる仕事によって、社会に影響を与えたいと常に思っているので、この仕事がどのように組織や社会の貢献に繋がっているのかを深く考える傾向にあります。

そのためZ世代の従業員が多い企業では、彼らに仕事を任せるとき、ただ仕事を任せるのではなく「目的はなにか」「その仕事が何につながっているのか」を伝えることが重要になります。

確かに毎回仕事の目的を伝えることは手間がかかることではありますが、そうすることで彼らの能力を最大限に引き出し、パフォーマンス向上に繋がるのではないでしょうか。

Z世代はマルチスキルな人が多い

これは私個人の見解にもなりますが、20代の方は他の世代にはあまり見られないポテンシャルを秘めているのではないかと思います。

例えば、いまのZ世代の方はマルチタスクな人が多い印象があります。

というのも普段、彼らは同時に複数のSNSを器用に使い分けています。Facebookであれば、自分の近況について投稿し、LINEやインスタグラムでは違った目的で使用しています。

それらを当たり前のようにこなしている世代だからこそ、同じことを同時に実施することに長けているように感じます。これは他の世代には見られない特徴ではないでしょうか。

一方で弱点もあります。普段やることが増えてきたからこそ、一つの物事に対する集中力が弱くなっている傾向にあるのではないかと思います。

しかし、たとえ集中が続かなかったとしても、すぐに注意するのではなく、こういった弱点も「特徴」として理解し、相手の背景について考えることが重要になります。

Z世代から、Y世代、X世代はどのように見えているのか

30代の方はそこまでZ世代と年齢が離れているわけではなく、日常生活でSNSを頻繁に使うなど、ライフスタイルや仕事のやり方において共通する部分もあるので、比較的お互いに理解しやすい世代同士でもあります。

一方でX世代は仕事のスタイルやワークスタイルも大きく違います。

そのため、X世代からZ世代に仕事を頼む際に、お互いの認識がずれることも多々あります。

先ほどZ世代は「仕事に対して目的を求める傾向にある」と言ったように、「なぜをそれをするのか」という内容を十分に伝える必要があります。

お互いが理解しあうためには「個人」に焦点を当てることが重要

仕事をスムーズに進めていく上で「各世代の特徴や背景」を理解することは非常に重要になります。彼らの特徴を理解しそれを活かすことで彼らの能力が存分に発揮できるからです。

ただ、従業員同士のトラブルやコミュニケーションに関する問題に対して、ときに世代のせいにしたくなるときもあります。

「この世代は〇〇だからダメだ」などつい言ってしまう方も多いのではないでしょうか。

ただ、こうした人間関係につまずいたときには、まずその人個人の特徴や性格、思考などを深く考える必要があります。

自分の世代の価値観を当たり前と思わず、「彼らにも彼らの当たり前がある」と一旦相手の立場でたち、そこから個人の事情について深く考えることがトラブルの早期解決につながるのではないでしょうか。

人事こそ時代の変化に敏感になるべき

時代の変化とともに世代の価値観が大きく変わってきます。そのため、先ほど述べたように時代の変化やその世代の背景を知るべきです。

一方で、時代の変化とともにテクノロジーは大きく進歩しています。

人事はテクノロジーの変化にも常にアンテナを貼り、人事の仕事を効率的にするためにいかにテクノロジーを活用するかについても考えていく必要があるでしょう。

人事は現状に満足せず、常に考え方や状況をアップデートし、従業員が働きやすい環境を創り出していくべき存在なのです。

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