こんにちは!ヒトテク研究所の村山です。
今回は、ピアボーナスを簡単に実現するサービスである、『Unipos』についてご紹介。
「ピアボーナス」は、評価指標のひとつとしてGoogleが導入していることでも知られており、組織活性化・組織変革を目的に、日本でも取り入れている企業が増えてきています。
※ピアボーナスとは?
「Unipos」は、そんなピアボーナスの仕組みづくりを支援するツールで、すでに多くの有名企業が導入しています。
本記事では、Unipos株式会社の代表取締役社長である斉藤さんに、ピアボーナス導入のメリットや、「Unipos」の特徴、導入事例と効果などをお伺いし、その魅力についてまとめています。
【人物紹介】斉藤 知明|Unipos株式会社 代表取締役
目次
「Unipos」が生まれたきっかけとは?
エンジニアの離職率が0に!良い行動をしたメンバーを表彰する「発見大賞」
村山:まず、「Unipos」が生まれたきっかけについて、どのような背景があったのでしょうか?
斉藤氏:もともとは、自社のエンジニア・バックオフィス部門のメンバーが、もっと活き活きと働ける環境をつくるために何ができるのかを考え始めたのがきっかけですね。
セールス職などと違って定量評価が難しい職種ですし、何か良い方法はないか探していたんです。
その中で、「お互いの仕事内容を褒め合う体験をしているほうがモチベーションが上がるのではないか」という仮説を立て、最初は1ヶ月に1回、周囲のメンバーに対して「ありがとう。こういうところがよかったです」というコメントを紙で送るようにしました。
これが「発見大賞」という制度の始まりです。
[初めて発見大賞を実施した時に使用していた箱]
その結果、コメントをもらったメンバーがすごく喜んでくれていたんです。
実際に発見大賞を導入してから4年が経ちますが、その間のエンジニアの離職率が0なんですよ。
[発見大賞の表彰風景]
発見大賞とピアボーナスを組み合わせて「Unipos」が誕生
村山:離職率0はすごいですね!
斉藤氏:ただ、それでも改善の余地が多く残っていました。
たとえば、表彰者を多数決で決定していたのですが、そうすると、多くの人と関わる仕事で目立つ行動をしているメンバーに票が集まりやすくなります。
また、表彰を月末に実施するため、どうしても月初の行動は忘れがちになってしまうのです。
さらに、会社の成長とともに社員数や部署が増えてきたタイミングでもあり、マイクロマネジメントが難しくなってきていました。
「もう少しシステム化できないか」「常日頃から投稿することはできないか」「もっと投票しやすくするためにはどうしたらいい」と、懸念材料を解消するためにさまざま考えていく中で、従業員同士で報酬を送り合うピアボーナスという手法にたどり着きました。
褒め合ったところで「それが評価につながってるのか」「何のために実施しているのか」といった声に対して、「報酬までワンストップでやる」ことで、より多くの従業員が活用してくれるのではないかと思ったんです。
発見大賞にピアボーナスがついてきたら、もっと嬉しいですよね。こうして生まれたのが「Unipos」です。
村山:「Unipos」のはじまりは、自社内で活用するツールとしてつくられたんですね。
斉藤氏:そうですね。当初は「発見大賞をもっと洗練させていこう」と、自社内だけで実施する目的で開発していきました。
そこから、開発を重ねていく中で、「この称賛文化を他社に輸出していけば、より多くのビジネスパーソンが生き生きと働けるようになるのではないか」と思い、外部に提供をしていくことを決めました。
「Unipos」の特徴とその機能とは?
村山:「Unipos」とは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか。
斉藤氏:「Unipos」はピアボーナスを簡単に実現するためのWebサービスです。
Uniposのシステム上で、各メンバーの日頃の仕事の成果や良い行動に対して、メンバー同士が感謝の言葉と一緒にボーナスを送り合うことができます。
まず、Uniposのピアボーナスは3つの特徴があります。
- 従業員が「誰に」「いくら」送るか、成果給の対象と金額を決めることができる
- 成果給とともに、感謝の言葉を添えて送る
- リアルタイムに成果給と賞賛の言葉が送られる
仕組みとしては、毎週月曜日に400ポイントが各従業員に支給され、感謝の言葉とともに投稿してポイントを送り合います。
ちなみに、この400ポイントはその週で使い切らないと、翌週には失効してしまいます。これは、習慣的に使ってもらうように意図しています。
感謝の言葉とポイントは、スマホやチャットツールから簡単に投稿することができます。さらに、誰が誰に何ポイント送ったのかが全公開になっており、それらはタイムラインで確認することができます。
さらに、タイムラインを見た第三者が、「拍手」という形で投稿者と投稿された人にそれぞれポイントを送ることができます。素敵なやりとりだな、と思った時は、便乗して称賛の気持ちを伝えることができるのです。
このポイントの合計が成果給として給与に反映されるのですが、「1ポイントを何円にするのか」という設定も自由にできます。
ちなみに当社では、「1ポイント=3円」にしています。1000ポイントであれば、1000×3円=3000円が給与に反映されます。
これがピアボーナスの一連の体験になります。仕事で助けてもらったときに「ありがとう」と一緒にコーヒーをあげたりするじゃないですか。そういった感覚で使ってもらいたいですね。
ときには、「直接感謝を伝えるのが恥ずかしいな」という場合もあるかもしれません。でも、Uniposがあれば、感謝の気持ちを伝えやすいと思うんですよね。
村山:しかも、「拍手」の仕組みがあると、関わっていないメンバーでもポイントを付与することができますね。
斉藤氏:そうですね。「拍手」があることで、部署を超えて賞賛が届くんですよ。自分が普段関わってない人からも拍手がもらえることもあります。これは、モチベーションアップに大きく貢献します。
現在、当社は120人でUniposを運用しているのですが、実際にUnipos上でどのくらいの人数が関わっているかデータを分析してみました。
120人の中で、「投稿した・されたの関係性」だけで平均40人とつながっています。さらに、「拍手した・された」まで拡張すると、120人中80人がつながってやりとりをしていました。
村山:それはすごいですね!ここまで参加してもらえるものなんですね。
斉藤氏:従業員がどれだけ積極的に参加してくれるかはかなり意識してつくっています。
ポイントを週単位での使い切りにしてみたり、給与に結びつけたりと、さまざまな試行錯誤を繰り返しています。
その中でも、給与に反映したことが大きくて、それまでは30〜40%ぐらいのメンバーしか活用していなかったのが、約90%が使うようになったんです。
その理由を簡単にヒアリングしたところ、「賞賛を報酬までワンストップで実施する」「給与の1%分をピアボーナスとして権限移譲します」となったときに、「これはやらないといけない、もったいない」と、責任感、義務感が芽生えたとのことでした。
「Unipos」を活用することでわかる、組織・個人のコンディション
組織・個人の活用頻度から、どのような傾向が見えるのか?
村山:「Unipos」は、ただ報酬を送り合うだけでなく、その一連の行動をさまざまな角度からデータ取得できると聞きました。分析の結果、見えてきたものはありますか?
斉藤氏:そうですね。まず「Unipos」は管理者画面があり、個人・組織単位など、その活用頻度を見ることができます。
たとえば、どの部署がよく使っているのか、使っていないのか。この差は明確にでます。これは、業績と連動しているのではないかと考えています。
同僚を賞賛する余裕があるというのは、自分の中での心理的安定性が確保されている状態であることが大きいですから。「Unipos」の活用頻度が少ない部署は、あまり良い雰囲気ではない可能性があります。
村山:組織の状態がなんとなくわかると、経営陣も組織運営で役立てることができますね。
斉藤氏:また、個人単位で見ても、使用頻度が高いメンバーと、そうでないメンバーで差は出てきます。
たとえば、10%ぐらいしか使ってないメンバーがいたとします。その人はどのような状況なのか。最近見えてきた傾向としては、離職が関係してきそうだなと。
頻繁に拍手をしていたメンバーが、突然しなくなったりすると、「何かあったのではないか」と、ある意味アラートの指標にもなり得るのではないかと思います。
村山:そのような指標があると、人事も早いタイミングで動き出すことができますね。
どんな行動が評価されるのか、理解することができる
斉藤氏:また、どういう内容が賞賛されているのか、行動指針ごとにランキングを見ることもできます。
なぜこの投稿内容が賞賛されているのか、どのような行動が評価されるのかが理解することにつながります。
村山:「みんなが良いと思っている行動」がわかるのは良いですね。意外に経営者の考えてる良いと思う行動様式と、メンバーが良い思ってる行動様式がずれていたりするので。
斉藤氏:おっしゃる通りですね。
そういうときは、実際に投稿するときのやり方なんですけど、「ハッシュタグ機能」が役に立ちます。これは、当社の行動指針を示している内容のタグになっています。
たとえば、「#まずやる」。当社では、行動からしか未来は創れないという考えのもと、勇気を持ってアクションする文化を醸成するため、「まずやる」を行動指針として定めています。
ただ、浸透がイマイチだったり、ちょっと間違った使われ方をされたりという場合もあります。そこで、Unipos上で「#まずやる」というハッシュタグを設置しておくことで、投稿する度につけるかつけないか、選択肢として出てくるようになります。
そうすると日常的に意識をするようになり、さらに「#まずやる」のハッシュタグがついた投稿に対して、経営陣が拍手をするんです。「あ、うちの行動指針はこれで合ってるんだ」と認識するようになります。
「Unipos」を導入する4つの理由と、導入による効果とは?
村山:各企業が導入を検討する背景はどのようなものがあるのでしょうか。
斉藤氏:大別して4つになると考えています。
1、賞賛文化をつくりたい
1つ目は賞賛文化をつくりたいという背景です。
面白いのは、実際にUniposを導入していただいた後、「思ったよりもうちは賞賛文化ありました」「見えていなかっただけでした」という声がチラホラあがってくることですね。
また、「ありがとうを言いやすくなった」「感謝を伝えるための建前ができた」という声もあります。
普段から感謝を伝えることが恥ずかしくてできないという方も、Uniposをきっかけに賞賛を送ることができます。
2、エンゲージメントを高めたい
エンゲージメント、ロイヤリティもっと高めたいという理由で、Uniposを活用している企業様もいらっしゃいます。
賞賛文化はあるけれど、エンゲージメントを高めるための施策でしっくりくるものがない。サンクスカード、360度評価などを実施してみたものの、イマイチであった。
そうしたときにUniposに興味をもってくれ、導入を考えてくれます。
実際に、お客様が導入している組織サーベイのエンゲージメントスコアが急上昇した事例もあります。
「成果に対する承認」「部署間での協力」「事業やサービスへの誇り」といったスコアの改善にUniposをお役立ていただけています。
3、クレドを浸透させたい
クレドの浸透に向けて、メンバーが普段から意識して行動してもらい、かつ自主的に自然に使えるようになってほしいという企業様にもおすすめです。
たとえば、働き方改革の文脈で、新しくクレドを定義付けしたとします。
自然に使うために一番大事なことは、なるべく多くのメンバーが数多く使うことです。そういう意味でUniposのハッシュタグが使えると、検討してくださっています。
4、良い行動を強化したい
素晴らしい成果を見つけたら、すぐにポジティブなフィードバックをリアルタイムに返すことで、良い行動を強化したいという企業様もいます。
良いことをしたらその都度、すぐに「いいね」を送ることで、「あ、これはやっていいんだ、挑戦していいんだ」という認識を持ちます。
プロセス自体を評価してあげることで、良い行動の理解促進につながり、挑戦を後押しできるといった理由からご活用いただく事例もあります。
村山:当たり前に実施するようになる。いつのまにか理解している。そういう状況をつくれるのは、非常に良い浸透策ですよね。強制されることはみんな嫌ですからね。
ちなみに、導入した企業様で実際に起きた変化はどのようなものがありますか?
斉藤氏:9か国のメンバーが働くホステルを運営している企業様では、「Unipos導入が、互いの働き方の違いを理解し合うきっかけとなった」とおっしゃっていました。
ホステルのようなサービス業は24時間365日誰かが働いているので、見えない活躍も多くあったそうですが、Unipos導入をきっかけに陰ながら大きな貢献をしている“サイレントヒーロー”にスポットライトが当たったそうです。
また、飲食系のメディアを運営している企業様では、「コミュニケーション活性化に役立った」と聞いています。
社内の多くの方が、エンジニアやマーケティング、カスタマーサポート部門に所属しているのですが、仕事の成果が見えにくいこともあり、感謝の気持ちを伝える機会がそこまで多くなかったとのことです。
そんな中、Uniposを導入したことによって、普段感謝の言葉をもらったことがない人から、感謝の気持ちとともにポイントが送られてくる。あまり関わりがない方から「拍手」が送られてくる。そのような変化が起きました。
「この人なりに感謝しようとしているんだ」「普段何も言わないけど感謝してくれてるんだ」という新しい気付きが生まれ、「この人は口ベタなだけで気難しい人じゃないんだ、じゃあ話しかけにいってみようかな」という動きにつながります。
「Unipos」があることでシャイな方でも感謝を伝えるようになり、結果としてコミュニケーションが深まります。自分の褒め方も上達していくと思います。
あるエンジニアの方は、「新しい建前ができた」と、おっしゃっていました。「Unipos」という建前があるから、感謝の気持ちを伝える必要性ができたと。
村山:「新しい建前」っておもしろいですね。「Unipos」を言い訳にして感謝するようになるんですね。
斉藤氏:別の企業様からは、「Uniposを通してフィードバックがうまいメンバーを見極めることができ、将来のマネージャー候補として、実際に配属の検討で役に立った」という声もいただいています。
そのマネージャー候補の方は、見た目はすごく口下手な感じで、いつも怖いオーラを放っているらしいのですが、「Unipos」を導入したら、すごくエモーショナルな投稿をメンバーにしているなど、新しい発見があったとのことでした。
村山:「Unipos」を活用することで、今まで見えていなかったものが見えてくる。そういった効果もあるのですね。
「Unipos」を通して、個に焦点を当てた組織づくりを
村山:今後、Uniposを通して実現していきたいことはありますか?
斉藤氏:もっと多くのデータを取得・分析することで、組織コミュニケーションの活性化に役立てていきたいと考えています。
たとえばこれは、実際にUniposで投稿した・されたのメンバー間で、誰と誰がつながっているのかを表したものです。
多くの線を持っているメンバーは、コミュニケーションのハブになっているんです。このような抽出をすることもできます。
村山:ピープルアナリティクスの領域ですね。
斉藤氏:今は平面上のものですが、これを立体的に見えるようにして、どこにその人がいるのか、誰がハブになっているのかなど、さまざま分析していきたいですね。業種や職種によってもいろいろな傾向が出ると思っています。
この部署でキーパーソンになっているのは誰なのか。その人をちょっと元気のない部署に異動させてみると、底上げになるんじゃないか。キーパーソンになっている人の特徴・傾向は何か。
そのようなタレントマネジメントにも貢献できる、新しい感謝のプラットフォームとしてUniposを確立させていきたいですね。
村山:業績が良い部署とそうでない部署と比較したときに、さまざまなギャップを見つけることもできそうですね。
斉藤氏:また、非常に優秀なのにあまり目立つタイプでないため、評価される機会がなく、結果として昇進もできていないなど、そのような方にもっとスポットを当てられるようにしていきたいですね。
組織に依存する時代から個に依存する時代だと言われている中で、その個に焦点をあてないと組織としてもうまく回らないと思っています。
個にスポットライトを当てていくとなった際に、それを無理くりではなくどれだけ自然な風土として根付かせていけるかが、これからの日本企業において課題になってくるのではないでしょうか。
そこに対する解決手段として「Unipos」が貢献できるのではないかと考えています。そのためにまずは、ピアボーナスという発想を日本中に広げていきたいですね。