製造業の勤怠管理は他の業種と異なり、独特です。工程管理との連携や、さまざまな時間帯の勤怠管理といった課題がある中で、製造業に適したシステムを選ばなければシステム導入費用が無駄になってしまいます。
今回はそんな製造業の勤怠管理システムについて解説していきます。
数多くある勤怠管理システムの中から、自社に見合うシステムを探す際、何を基準にして選べばいいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
そのような方のために今回、社労士監修のもと、「勤怠管理システムの比較表」をご用意いたしました。資料には以下のことがまとめられています。
・勤怠管理システムの5つの選定ポイント
・社労士のお客様のシステム導入失敗談
・法対応の観点において、システム選定で注意すべきこと
お客様の声をもとに作成した、比較表も付属しています。これから勤怠管理システムの導入を検討されている方はぜひご活用ください。
1. 製造業の勤怠管理における課題とは
製造業における勤怠管理は一見、一般的な勤怠管理と同じように見えますが、実は全く異なる形態をとっているのです。「勤怠管理はどこも同じようなものだろう」と思っていると、いざ実務で製造業の勤怠管理を実施しようとすると思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
ここでは、そんな製造業に特有な勤怠管理の課題を紹介します。
1-1. 製造業における、工数管理と勤怠管理の連携の煩雑さ
製造業においては、数多くの工程に対してさまざまな職種の正社員・パートスタッフが関係します。その中で「どの工程で」「誰が」「何時間」関わったかを正確に把握しなければ、勤務時間や給与の算出が困難になってしまいます。
しかし、工場の場合、3交代などの時間交代制度をとり、さらに職種が細かく分かれていると、工数管理部分と勤怠管理の連携がおろそかになります。その結果、工数管理と勤怠管理をそれぞれ独立して管理した上で組み合わせをおこなうため煩雑なものとなり、工場の管理部門を泣かせる原因となっています。
原価の中にどれだけの人件費が含まれるかは製造業においても重要なキーファクターとなってくるので、連携していないと正確なコスト管理が出来なくなってしまうでしょう。
1-2. 製造業における、打刻の管理
製造業においては、生産現場の中に数多くの職種、雇用形態の従業員・パートスタッフなどが存在しています。
従業員が少ない工場では10人以上となりますが、大規模工場ともなると、数百人単位の従業員・パートスタッフが働いています。たとえば、トヨタの田原工場では8,000人近くの従業員が働いています。
このような大規模な人数の勤怠管理は、煩雑なものになりやすいといえるでしょう。数百人規模での交代と勤怠把握、勤務時間の正確な把握ができなければ、人件費の管理などもずさんになってしまいます。
また、タイムカードで打刻するならば、数百人単位で用意する必要があります。勤務時間帯に応じて、誰がいつどのタイミングで打刻したかが分からなければ、タイムカードの意味がなくなるでしょう。誰が打刻したのか正確に把握できなければ、なりすましの温床となる危険もあるのです。
1-3. 集計業務の効率の悪さ
最後に、勤怠管理はある程度自動化されているものの、最後には総務や人事の担当者が手集計で、月末月初に集計している姿が見られます。入力ミスや追加事項など、集計後に手書きでの修正になってしまったりと、集計後の追加手続きが面倒だという声もあります。
以下の意見にも見られるように、自動化しているとはいえども、集計は面倒なようです。
【参考】いまの勤怠管理システムで困っていることは?
- タイムカードのため、管理しにくい(30代・男性/運輸・運送業)
- タイムカードは打刻間違いの訂正が手書きで面倒(40代・女性/社労士)
- パッケージソフトは時間帯によってトラブル復旧に時間がかかる(50代・男性/総合商社)
- クラウド型だが、うっかりミスの入力忘れがある(50代・男性/公共サービス業)
勤怠管理の課題についてのアンケートより一部抜粋
2. 製造業専門の勤怠管理システムとは
製造業特有の勤怠管理の課題についてまとめてきましたが、それらの課題に対応する製造業専門の勤怠管理システムが存在します。
確かに、汎用性のある、いわゆる一般的な勤怠管理システムは存在していますが、汎用型のものでは製造業特有の工数管理と勤怠管理との連動や、原価計算などの領域に対応しきれないことが多いです。
ここでは、製造業に向いている勤怠管理システムについて紹介します。
2-1. 製造業専門の勤怠管理システムの特徴
勤怠管理システムの中にも、製造業専門のものがあります。一般的な勤怠管理システムと異なる点は、工数管理と勤怠管理が連動している点や、早朝・昼間・深夜といった3交代制など、複数の勤務体系に対応可能で、数百人の勤怠管理にも耐えうる仕様となっている点です。
汎用型では工数管理まで対応しているものが少ない反面、製造業向けのものでは、誰がどの工程にどれだけ関わったのかを確かめることができるのです。
そして、時間帯に応じた管理もできるようになるので、誰がいつ出勤したのかも分かりやすくなります。何よりも大規模な人数への対応が可能なため、なりすましなどの不正も未然に防ぐことができます。
2-2. 勤怠管理システムを選ぶ際のポイント
工数管理と勤怠管理の連携、複数勤務体系との親和性、大人数対応可能といった特徴を持つ製造業向けの勤怠管理システムではありますが、自社と合わないシステムを導入してしまっては、意味がありません。自社に合った勤怠管理システムを選ぶポイントを紹介します。
【勤怠管理システムを選ぶポイント】
- 業種に合ったモデルか
- 予算に合った仕様となっているか
- 自社の規模感と合っているか
- 自社従業員に使ってもらえそうか
これらのポイントからそれぞれのシステムを俯瞰すると、自社の業態や規模に合ったものかどうかが明らかになります。
システムの導入ありきで考えるのではなく、システムを導入することでどれだけ効率化ができるのかを重視しましょう。
3. 製造業専門の勤怠管理システムまとめ
製造業向けの勤怠管理システムの特徴を紹介したところで、具体的な製造業専門の勤怠管理システムを、いくつか紹介していきます。製造業特有の課題解決に向けたシステムとなっているとはいえ、各社それぞれが異なる特徴を持つ機能を導入してきているので、自社のニーズに合ったものを選ぶとよいでしょう。
3-1. ジンジャー勤怠
ジンジャー勤怠は、PC、スマホ、ICカードなどの複数の打刻方法があるため、各企業や従業員にあった方法で打刻が可能です。
GPSの記録もできるため、不正打刻を防止したり、打刻できる範囲を制限することもできます。
従業員一人ひとりがデバイスを持っていない・職場に持ち込めない場合でも、タブレットやICカード打刻機を設置することで、打刻ができます。 また、複数の離れた事業所がある場合、複数の事業所の勤怠データをジンジャー勤怠でまとめて管理できます。
本部に勤怠データを送ったり、郵送する手間がなくなり、情報の連携がスムーズにできることで人事労務業務を楽にします。
製造業界の勤怠業務効率化についてはこちらのページからもご確認いただけます。
3-2. MosP勤怠管理
様々な業種の工場から、勤怠管理システムのニーズを引き出して生まれたシステムです。工場の各工程、各場所で、誰が、何時から何時まで、どれだけ働いているのかを把握できます。
また工数管理にも優れています。例えばある商品を生産する際に、その商品を100個生産していくには何人の従業員が何時間働かなければいけないのかが簡単に計算できます。
価格帯も98万円からとなっており、工場の規模や従業員数によって変動します。オープンソース形式を採用しているため、低コストかつ様々な組み合わせでのシステム作成が可能となっています。
3-3. ビズワークプラス
さまざまな業界に適応可能なシステムを展開しているビズワークプラスには、工場に特化したモデルも存在します。
工場にありがちな、インターネット回線が存在しない、手書きでの管理がやむをえないといったケースに対応して、パッケージで勤怠管理システムを導入すると、勤怠管理システムを自分で立ち上げることができるという形態をとっています。
ネット回線や他の機器は購入する必要がなく、ビスワークプラスのシステムだけを導入すればいいので、効率的といえるでしょう。予算は数百万円をみればよく、オーダーメードでの提供も相談可能となっています。
3-4. Touch On Time
クラウド型の勤怠管理システムの中でも、各業界からの支持が高いタッチオンタイムです。クラウドとタイムレコーダーを連結させることによって、工場にも対応可能なシステムとなり、24時間対応や、細かな仕様修正にも対応できるモデルとなっています。
料金も1人当たり月300円と安価な価格設定となっており、コスト削減も期待できそうです。
3-5. Sociaクラウド
勤怠管理、人事給与の業務クラウドサービスであるSociaクラウドでは、複数の場所で工程を経る製造業に対して、一貫した人員配置・シフト作成ができる点で特に優れています。人材の転籍、出向などの管理にも、柔軟に対応することができます。
4. おわりに
製造業の勤怠管理は、製品を作り出す工程に連動しているものになっているため、逆にその過程に合わせることができなければ、システムとして通用しないでしょう。工程との連動はもちろん、大人数への対応、複数の職種への対応が可能なものを、自社の状況やニーズに合わせて検討することが重要です。
システム導入ありきで話を進めても、結局費用を無駄にしてしまいます。自社の課題と照らし合わせ、何のためにシステムを導入するのか検討した上で、勤怠管理システムを選んでいただければと思います。