みなさんは、ミーティングの中で合理的な意見を出し合うことができているでしょうか?また、出てきた意見を整理することに困っていないでしょうか?
せっかく良い意見が出たとしても、行動に移せないと意味が無く、様々な意見をまとめて整理する収束技法は普段の業務において欠かせないでしょう。
この収束技法の中でも、今回はKJ法(ケージェイほう)についてご紹介していきたいと思います。
KJ法は、さまざまなアイデアを効率よくまとめることができるだけでなく、アイデア同士の関係性が見えてくることで、今まで自分が考えられなかった思わぬ発見に繋がる可能性もあります。
出てきた良いアイデアがイメージのままで終わってしまわないように、本記事でKJ法のやり方について確認してみてください。
目次
1. KJ法とは
まずは、KJ法がどのようなものかを紹介します。
1-1. KJ法は簡単に言うと「情報を効率的に整理する方法」
KJ法とは、付箋などの紙に自分の思いついたアイデアを書いていき、それをグループ化していくことで、脳内で思いついたアイデアを言語化していく手法です。
それぞれのグループの関係性を図解などで分析することで、出てきたアイデアを効果的にまとめていくことができます。
1-2. KJ法は川喜田二郎教授によって考案された
考案者は、東京工業大学の名誉教授である川喜田二郎さんで、そのイニシャルから「KJ法」と名付けられました。
KJ法は、基本的にホワイトボードなどのアイデアをまとめられる場所、紙、ペンさえあれば実施することができます。
しかし、最も大切なことは、アイデアを出すチームメンバーの動き方であり、メンバーを上手く進行するリーダーの存在もKJ法で得られる成果に大きく関係してきます。
2. KJ法と関係の深い「ブレインストーミング」とは
KJ法についてご紹介する前に、1950年ごろのアメリカで考案された「ブレインストーミング」という集団で多様なアイデアを出す発想法についてご紹介します。
ブレインストーミングは、アイデアを一人きりで出すことが難しい場合に、職場仲間や友人と一緒に意見を出し合うことで、クリエイティブな良いアイデアを引き出すことができるようになる手法です。
ブレインストーミングは、統一性無く無秩序に意見を出し合っていけば良いわけではありませんので、まずは基本的なルールについて見ていきましょう。
2-1. ブレインストーミングのやり方
ブレインストーミングは、基本的に10人以下のグループでおこないます。
実施するメンバーの立場や性格が異なると多角的な意見が集まりやすいでしょう。
また、事前に決められた時間内で終えるようにすることで、より高い効果を発揮することができます。
そのため、話し合いの進行をサポートする司会と書記の存在が大切になってきます。
2-2. ブレインストーミングのルール
ブレインストーミングを実施する上では、以下の4点のルールを守っておこなわなければなりません。
①アイデアを批判してはいけない
参加者が出したアイデアの中には、とても価値のある意見も失笑を買うような意見もあることでしょう。
しかし、どのような意見であってもアイデアを批判してはいけません。
参加者が自由に発言できる環境を作ることで、さまざまな新しい価値が生まれる可能性があるからです。
②アイデアの質にこだわる必要はない
「ミーティングの中で、誰よりも良い意見を言いたい」と考えることは、とても良い事だと思います。
しかし、ブレインストーミングにおけるミーティングでは、質にこだわりすぎる必要はありません。
さまざまなアイデアを組み合わせることで新たなアイデアを生み出すことが目的であるため、アイデアは大量に必要となるためです。
前述のように、意見を否定されることはないため、質より量で発言することを心がけましょう。
③アイデアをまとめる
ある程度のアイデアが出た段階では、それらを放置することなく、様々な角度から関連付けてまとめていくようにしましょう。
一見、よくわからないようなアイデアでも、後々に意外な形で役に立つことがあります。
④最終決断以外で判断はしない
最終的にアイディアを判断することは大切ですが、ブレインストーミング中におこなってはいけません。
ブレインストーミングの途中で出てきたアイデアを判断すると、偏った意見や新たな発見が生まれにくくなります。
2-3. ブレインストーミングを実施する順序
以上を踏まえた上で、ブレインストーミングの具体的なやり方について簡単にまとめていきます。
- 司会進行や書記を決める
- ホワイトボード、または大きな紙を用意する。また、たくさんのカードを用意する。
- 挙手性か順番で意見を出し合う
※様々な人が平等に意見が言い合えるため順番で出しあうことががおすすめです - 出たアイデアを書記が整理し、まとめていく
また、もしアイデアが出ない時には「なぜなぜ分析」をおこなうと良いでしょう。
「なぜなぜ分析」とは、WHYを5回繰り返すことで根本となる問題点を見つける手法となります。ブレインストーミングをする中で活用してみると良いかもしれません。
3. KJ法のやり方・手順
ここまで、さまざまなアイデアを出すための手法として、ブレインストーミングについてご紹介しました。
KJ法とは、これまでに解説したブレインストーミングで出たアイディアを広い視点から整理していくことで新しい発想や意見を得ることができるものです。
本章では、ブレインストーミングをおこなって出た意見について、KJ法でまとめるやり方について解説していきます。
3-1. アイデアをまとめて付箋やカードに記入する
まず、ブレインストーミングなどを実施して出た意見をカードなどに書き出します。
- テーマを決め、参加者にそのテーマを明確に伝える
- そのテーマに沿って司会者を中心に様々な意見を出しあう
- 出た意見を簡潔な表現でカードに書き出す
3-2. カテゴリをグループ化する
ブレインストーミングで出た意見のカードを各グループに整頓していきます。
カードを一度バラバラにし全体を眺めて広い視野で分類をしていくことが大事になります。
- カードに記載された内容が似ているもの同士を集めグループを作る。(見当違いな意見から新しいものが見えてくる可能性があるため、無理にグループを作る必要はなく仲間外れを作ってもよい)
- 共通しているカードのグループに見出しを付ける
- グループ数が10個以上だった場合はさらに関連性のあるもの同士をまとめて大グループをつくる(10個未満になるまで繰り返す)
3-3. 位置関係を並び替える
その後、各アイデアの関係性を見出すための論理的整序をおこない、図解化していきます。
- 各カードのグループごとに関連性が有るもの同士を近づけて配置する(これを“空間配置”といいます。)
- カード同士を線で繋いだり囲んだりして関連性がわかりやすいように図解化し、因果、相互、対立、原因、結果などの関係性を表す。
3-4. 全体を文章化する
上で図解化した関係を言語化してまとめていきます。
- それぞれのグループのカードに書かれている言葉をできるだけ多く使いグループごとに一つの文章を作っていく
- グループ同士で関係性がある場合は、大きいグループから小さいグループへと関連性を探っていく
- 図解からどのグループが一番重要かを考え、それを参加者で共有し議論をおこない、全体で理解と共有を図る
4. KJ法のメリット
KJ法の具体的なやり方についてご紹介してきましたが、本章ではKJ法を実施することで得られるメリットについてご紹介します。
KJ法を扱うメリットは、以下の3つです。
- アイデアをロジカルにまとめられる
- アイデアが可視化される
- 問題の特定や新しい意見の創造が可能
それぞれについて、詳しく解説します。
4-1. アイデアをローカルにまとめられる
ロジカルシンキングとは、複数の要素が複雑に絡み合った問題を分解・整理し、それぞれの関連性を踏まえながら論理的に結論を導き出す思考法です。
多くの情報を分解・整理することによって、自分のアイデアを論理的に処理し、わかりやすく伝えることができるようになります。
4-2. アイデアが可視化される
様々な意見を目に見える形で言語化することができます。
意見が見える形にすることで、参加者に情報が共有されやすくなり、お互いに新しいアイデアのイメージも湧きやすくなります。
4-3. 新たな問題の特定や意見の創造も可能
ロジカルシンキングをおこない、そのアイデアをグループ別に分けることができれば、良い点や改善点も明らかになります。
様々な目線からの意見をまとめることで、より良いアイデアが生まれてくるでしょう。
5. KJ法のデメリット
ここまでご紹介してきたKJ法は、アイデアの整理に非常に便利な手法です。
しかし、KJ法にはデメリットもあるため、しっかりと検討した上で導入を決定しましょう。
5-1. 参加者に多くの工数と手間がかかってしまう
KJ法は参加者が意見を出し合うだけで成り立つため簡単に意見をまとめることが可能な手法です。
しかし、簡単な作業ではあるのですが、参加者を収集したり、出た意見を付箋やカードに書き出したり、それをまとめたりする作業は手間がかかってしまうことが予想されます。
フリーソフトやアプリケーションといったツールを活用することで、効果的に実施するようにしましょう。
5-2. 参加者によって意見が偏ってしまう可能性がある
KJ法は、広い視野からたくさんの意見を引き出すための手法です。しかし、根本となるアイデアは参加者に依存してしまいます。
そのため、もちろんグループで多くの意見を出しあっても、参加者の考え方によって集まる情報も偏ってしまうため、完全な意見に必ずしもたどり着くとは限らないでしょう。
6.KJ法を取り入れる際の注意点
KJ法を取り入れることになった場合、できるだけスムーズに運用するためにはいくつかの注意点があります。
6-1. 参加者の同意を得ながら進める
KJ法の場合、できるだけ多様な意見を取り入れることが大切です。
しかし、プロセスの途中で参加者のいずれか1人の意見だけで進めてしまい、意見に偏りが生じることがあります。
このような事態を防ぐためには、プロセスの途中で参加者全員の同意が得られているかを確認することが大切です。そして、参加者全員が納得できるまで議論を続けると、より精度の高い情報整理につながることが期待できます。
6-2. グルーピングを強要しない
グルーピングの際、いかなるグループにも所属しないアイデア・意見が出てくることがあります。この際、無理やりグルーピングしてしまうと、せっかくの斬新なアイデアが意味をなさなくなってしまう可能性があります。
独立したアイデア・意見は強引にグルーピングせず、1つのアイデアとして最後まで残しておきましょう。このようなアイデア・意見こそ斬新なアイデアとして大いに役立つ可能性があるのです。
6-3. 文章化までおこなうのがポイント
グルーピングや図解化が終われば情報の整理が終わったと勘違いしてしまう人も少なくありません。しかし、文章化までおこなわなければ十分な整理がなされず、新しい価値を生むこともできないでしょう。
グルーピングや図解化した内容をアウトプットできるのが文章化です。文章化することで新たなアイデアや解決策が生まれるので、文章化までを徹底しておこなうようにしましょう。
7. 人事労務におけるKJ法の活用事例
KJ法は人事労務においてどのような活用方法があるのか、2つの事例を挙げて紹介します。
7-1. 採用の要件定義
企業が求める人材を採用する場合、要件定義は非常に重要なポイントです。
KJ法を使って人材に求める要件をブレインストーミングし、優先順位をつけながら整理していくと採用基準が明確になります。人材要件が文章化されれば、採用担当者同士で共有でき、人材採用における社内のズレが生じにくくなります。
7-2. 研修計画の立案
最近は、外部サービスを利用した研修を取り入れる企業も増えています。しかし、研修サービスは多岐に渡るため、受講者に対してミスマッチな研修を実施してしまうこともあるようです。
この課題を解決するのにKJ法が役立ちます。広くアイデアを求め、整理することで、自社にとって今本当に必要な研修を見極めることができるようになります。
8. KJ法と合わせて利用したいツール・アプリ
近年では、KJ法の実践に役立つ専用のツールやアプリが数多くリリースされています。KJ法ツールは、アイデアや情報をグループ化したり、情報の相関関係を表示したりと便利に使えます。ツールが自動で情報を整理してくれるので、アイデアのまとめ方がわからなくなる心配もありません。
KJ法を実践する際には、ブレインストーミングができるツールやマインドマップツールを活用するのもおすすめです。多くのアイデアや情報をブレインストーミングツールやマインドマップに登録すれば、アイデアの選定や情報の整理がしやすくなります。
ツールを活用する際には、チーム内で使えるものを選びましょう。複数人の共同編集に対応しているオンラインのツールは、社内でのアイデア出しに活用できます。
9. KJ法を活用して人材育成や企業成長につなげよう!
KJ法は、自分一人だけでは気付くことができなかった発見をすることができるため、今もなお多くの企業で使用されている手法です。
少し時間がかかるというデメリットもありますが、適当な分類をおこなったり、途中で作業をやめたりしてしまうことは、新しいアイデアの発見につながりません。
アイデアをまとめたい時、アイデアを深めたい時などにKJ法を正しく活用し、アイデアを整理整頓してみてください。