2020年10月5日に可決されたオムニバス法こと「2020年法律第11号」は、2020年11月2日より有効とされていますが、施行規則詳細は2021年2月までに公布するとされていました。
そして2021年2月21日、インドネシアのアイルランガ調整相(経済担当)は「2020年法律第11号」に関する45の政府規則と4つの大統領規則で構成されている49の施行規則の内容を国民に対し正式に交付しました。
しかし本内容には「2021年2月2日より有効」という明記があるため、多くの国民が困惑することとなりました。そのため人事や労務ポジションの方の多くは、今もなお内容の確認に追われることとなったのではないでしょうか。
今回は、NNA、KOMPUS.COM、TEMPO.COMやGajian等の現地メディアが公開している記事をもとに、主に雇用創出法に関する変更点をご紹介します。
雇用創出法に関する6つの変更点
今回公布された内容の中で、最低賃金・残業・契約社員の雇用に関し、新たな規則が規定されました。
(1)外国人労働者の雇用
従来、外国人労働者を雇用する場合、労働省からの外国人雇用許可(IMTA)と外国人雇用計画(RPTKA)を用意する必要がありました。しかし今回の変更により、RPTKA文書のみで十分となりました。
このライセンスの簡素化により、企業は特定の職位および特定の時期に外国人労働者を雇用することが容易になるでしょう。 しかし従来同様、外国人労働者が人事職につくことを禁じています。
内容確認 ⇒ PP NOMOR 34 TAHUN 2021 TENTANG PENGUNAAN TENTANG KERJA ASING
(2)契約社員の期間
従来、契約期間は最長2年と定められており、その後1回に限り、最長1年の期間の延長が可能、そして2年の契約期間終了後に、30日以上の期間をおいて、最長2年の契約更新が1回限り可能でした。
しかし今回、 契約社員との雇用契約は最長5年という期限が新たに規定されています。そのためもしも1度契約が満了し、実行中の作業が完了していない場合は、雇用主は労働者との合意に従って契約期間をを再度延長できることになります。
従来のような延長回数の制限はなくなっているため、1年の契約であれば単純計算で5回更新することが可能となりますが、延長期間の合計は、5年を超えてはならないとされています。
仮に5年を超えた場合は、自動的に正社員契約に切り替えられるとされているため注意が必要です。
参考記事:PP Turunan Ciptaker: Jangka Waktu PKWT Kini Paling Lama 5Tahun
(3)契約社員が対象の補償
従来の労働法には、雇用主が契約社員に対し補償金を支給することを義務付ける規制はありませんでした。これは正社員に対する退職金のようなイメージです。しかし今回の新たな規制により、1か月以上継続して勤務をした契約社員に対し、契約終了時に補償金を支給することとなりました。
この補償金の額は、12か月間の雇用契約の場合は1か月分の基本給+固定手当を含めた賃金の支払いが必要になります。また1か月以上、12か月未満の労働契約の場合、労働期間を1か月の賃金の12で割って求められます。もしも手当額が変動する場合は、基本給のみの金額が基準となります。
(4)退職金(自主退職)
退職金、長期勤続年数(UPMK)、および解雇となった従業員への補償金を支払うという雇用主の義務については大きな変更はありません。 しかし従来は解雇の場合、2倍の退職金の支払いが必要でしたが、今回その規定がなくなり下記の退職金規定と同じとなりました。退職金の金額詳細は下記にてご確認ください。
- 労働期間が1年未満、1ヶ月分の賃金
- 1年以上2年未満の労働期間、2ヶ月分の賃金
- 2年以上3年未満の労働期間、3ヶ月分の賃金
- 3年以上4年未満の労働期間、4ヶ月分の賃金
- 4年以上5年未満の労働期間、5ヶ月分の賃金
- 5年以上6年未満の労働期間、6ヶ月分の賃金
- 6年以上7年未満の労働期間、7ヶ月分の賃金
- 7年以上8年未満の労働期間、8ヶ月分の賃金
- 8年以上の労働期間、9ヶ月分の賃金
そのほかにも、企業が合併・統合・買収などを行ったことにより労働環境が変わり、雇用関係が継続されず解雇となった場合、また企業が倒産した場合は、規定の退職金の50%の支給になるなど、企業サイドに有利な内容が多く含まれているように見受けられます。
参考記事:Aturan Baru, Pesangon Pekerja Bisa Lebih Kecil
参考記事:UU Cipta Kerja Disahkan, Aturan Ketenagakerjaan Apa Saja yang Berubah
(5)最低賃金
従来「物価上昇率」と「経済成長率の前年比」を考慮した市・県別の最低賃金(UMK)が発表された後、県・市によってはさらに産業別最低賃金(UMSK)が決められていました。しかしUMSKはUMKより高い賃金で設定されるだけでなく、確定時期が不明瞭なため社内の昇給額の確定時に困惑された方も多いのではないでしょうか。
このように今までは下記の3つの最低賃金の賃金額の高い数値が適用されるため、その会社が所在する地域にUMSKがあればそれを適用し、UMSKがなければUMKを適用、UMKがなければUMPが適用されていました。
- 業種別最低賃金(UMSK)
- 県・市別最低賃金(UMK)
- 州別最低賃金(UMP)
しかし今回新たに決まった規則には、UMSK(Upah Minimum Sektor Kabupaten)の文面がなく、UMKもしくはUMPにより確定されることとなります。(ジャカルタはUMKがないため、UMPが基準となります。)
そのため、特に工業団地がある地域にいる人にとっては、いままでの賃金より低い額になってしまう可能性があることから、今回の規制内容に関してもいまだ反発している方がいるようです。
また2022年の最低賃金(UMP)は、2021年11月21日までに発表予定です。
参考記事:Tamat! Upah Minimum Sektoral Tak Ada Lagi, Buruh Menjerit
参考記事:Jokowi Teken PP, Atur Formulasi Penetapan Upah Minimum Buruh
(6)残業
今までは、1日最大3時間・週14時間とされていましたが、今回の変更により1日最大4時間・週18時間へと引き上げられました。
また残業が4時間以上発生する場合、企業は残業代とは別に十分な休息と1,400キロカロリーの食事を提供する必要があります。この食事は金銭に置き換えることはできないとされています。
そして今回から残業代の規定が定められることになります。本規定によると残業時間にあわせ時給の1.5倍や2倍の残業代の支払いが求められることになりますので、残業代の計算方法や発生条件の詳細は事前に確認するようにしてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回発表がありました規則に関して、いつから有効になるのか等詳細が不明な点もあるため、現在多くの人事担当者・労務担当者がそれぞれ内容の確認されているかと思います。
特に解雇・退職金に関しては、有効日時により確認事項が増えてしまう場合もあるでしょう。後々トラブルにならないよう、直近の事例に関しても確認しておくほうがいいかもしれません。不安な点に関しては、提携している弁護士・コンサルティング会社へお問い合わせください。