ソフトバンク人事に聞く、エントリーシート選考にAIを導入した背景と今後の展望 |HR NOTE

ソフトバンク人事に聞く、エントリーシート選考にAIを導入した背景と今後の展望 |HR NOTE

ソフトバンク人事に聞く、エントリーシート選考にAIを導入した背景と今後の展望

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※本記事は、ヒト×テクノロジー研究所 所長の村山雄二さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

2017年5月、ソフトバンクがエントリーシートの判定にAIを導入するというリリース情報が出て、大きな話題になりました。徐々にではありますが、採用領域にもAIの波がきているように感じます。

しかしなぜ、ソフトバンクは採用にAIを導入しようとなったのでしょうか。そこで今回はヒトテクノロジー研究所より、ソフトバンク人事である源田さんに、その導入に至った理由や、活用方法、苦労したポイントなどをお伺いしてきました。

源田様

源田 泰之(げんだ やすゆき) | ソフトバンク株式会社 採用・人材開発統括部長

1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。新卒および中途採用全体の責任者。ソフトバンクグループ社員向けの研修期間であるソフトバンクユニバーシティ、後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(ソフトバンクイノベンチャー)の事務局責任者。ソフトバンクユニバーシティでは、経営理念の実現に向けて社員への研修を企画し、社内認定講師制度などのユニークな人材育成の制度を運用。また、大学でのキャリア講義や人材育成に関する講演実績など多数。

採用の効率化のためにAIの導入を検討

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-新卒採用のエントリーシート選考にAIを導入しましたが、どのような背景があったのでしょうか。

源田氏:もともとは、テクノロジーを活用して採用の効率化に向けて何かできないかと考えたのがきっかけになります。

現在の新卒採用は売り手市場なので、年々採用難易度があがってきているように感じています。そういったこともあり、弊社も2018年度の新卒採用に関して早い段階から準備をしてきましたが、大きく2つのことをおこないました。

1つ目は、大量の母集団形成を控えたことです。その代わりに、ソフトバンクの求める人材に対して、こちらからアプローチをしていくための仕掛けをいくつか実施しました。ピンポイントに研究室や学生団体などに接触し、そこにいる方々と接点を持つための仕組みをつくっていきました。

2つ目は、採用ブランディングの強化です。「学生から見たソフトバンク」を意識することを徹底しました。学生から見たときの憧れの企業となるようなブランディングをしていきました。

そうすると、意外なことが起きました。ソフトバンクの求める人材に対して効率的にアプローチしたかったにも関わらず、逆に母集団が増えてしまったのです。

多くの母集団が集まったこともあり、2018年度の新卒採用はうまくいきましたが、結果としてその分の業務がアドオンされてしまったため、採用担当の負荷が増えてしまいました。

そういった背景から、効率化に向けて何かできないかという話になり、そこでエントリーシート選考にAIを導入する案が出てきたのです。

ソフトバンクはITの会社なので、HRTechといったIT領域に関しては、新しいものをまず試してみようという社風があり、すぐに「やってみよう」となりました。

AIにより、従来の4分の1の工数でエントリーシートの選考が可能に

-どのようなフローでエントリーシートの合否判定をおこなっているのでしょうか。

源田氏:まず、AIに関してはIBMが開発した「Watson(ワトソン)」を用いています。Watsonに応募者のエントリーシートを読み込ませると、その内容を自動認識で合否を判定するようになっています。判定結果が合格基準を満たした場合は選考通過。合格基準に届かない場合は、私たち人事で内容を再度確認し、最終判断をしています。

-実際にAIと人事の間で「ズレ」は生じていないのでしょうか。

源田氏:今は大きなズレはないように感じています。いくつかのエントリーシートのデータに関して、あらかじめ人事で評価を出したものをWatsonで判定してみるなどさまざまテストをしていますが、そこから出てきた判定を比較すると、ほぼ同じだったんです。

-それはすごい!そこまでのレベルまでAIを学習させるのは大変だったんじゃないですか?

源田氏:そうですね。本当にたくさんパターンを試しました。ただ単純に、多くのデータを読み込ませれば良いというわけでもないので、そこは本当に苦労しました。

過去に人事が評価済みのエントリーシートをWatsonに学習させるのですが、どういったデータを読み込ませると、判定の精度が向上するか仮説を立てながら、Watsonを学習させる必要があり、読み込ませるデータの選定はものすごく慎重におこないました。

たとえば、人事がエントリーシートのチェックをしっかりやっても、人によるバラツキはどうしても出てきます。また、エントリーシートの文量もバラツキがあるので、さまざま試行錯誤しました。

Watsonにどういうデータを入れるべきか、それがどのような学習につながるのかという部分が、1番悩みましたし、ノウハウとして身につきました。

そうした結果、判定の精度はかなり高まりました。Watsonの活用により、エントリーシートの選考時間を従来の約75%に削減できています。

そしてその分、応募者とのコミュニケーションに時間を割くことができるようになります。

人事に詳しい人間が、ITにも積極的に関わらないとスムーズに進まない

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-今回の開発に携わった方は何人くらいいらっしゃるのでしょうか。

源田氏:人事側で開発に携わってやってくれたのは1人ですね。もともと、技術職のアシスタントをしてた方で、統計学の知識も持ち合わせていました。

-Watsonがいくら優秀でも、学習のさせ方次第ではうまくワークしないかもしれません。今回のような取り組みにおいては、人事側のデータリテラシーもある程度必要になりますね。

源田氏:そうですね。実はWatson導入の際に、他にもいろいろ検討したんです。

例えば、ソフトバンクで活躍している社員との相関をエントリーシートから導き出すようなことができないか。そういったことをさまざま検討していく中のひとつとしてWatsonのプロジェクトも進んでいったのですが、HRTechといっても魔法のようなツールはありません。

統計・分析などのデータの扱いに関する知識がないと、「とりあえず全部のデータをAIに読み込ませたけど、なぜかうまくいかない」となっていた可能性が十分にありました。

「なぜこれを合格にするのか」「なぜこのような判断をするのか」という、人事領域のことを理解している人間がテクノロジーをうまく使った結果が、3カ月程で運用を開始できた理由だと思います。

-それは早いですね。

源田氏:こんなことなら、もう少し早くから実施しておけばよかったなと思ってしまいました(笑)。

-人を増やすか、テクノロジーの導入を模索してみるか、どっちを取るか悩みますよね。必ずしも上手くいくとは限らないですし。

源田氏:そうなんですよ。テクノロジーを活用した採用活動を模索することに大きく人員を割いた結果、通常の採用活動に支障が出てしまっては元も子もありません。

ですので、少数のチームに分かれてさまざまな可能性を模索していましたが、想像以上にスムーズにできてしまったので、振り返ると1年前からやればよかったなと感じています。

面接のAI化はありうるのか

-今後、AIの活用に関して、エントリーシート以外でお考えの部分はありますか?

源田氏:面接でAIを活用できないかどうかは考えています。

面接官には、ソフトバンクにマッチするかどうかを見極めることに加えて、ソフトバンクはどういう会社かを知ってもらい、それによって志望度を上げるという2つの役割があります。

後者はAIに置き換えることが難しいと思うんですよ。志望度を上げるという惹きつけについては、ヒトによる面接官としての役割としては必ず残るのではないでしょうか。

しかし、エントリーシートと同じ理屈で、面接官がすべて正しいジャッジができるかどうかはわからないため、ジャッジメントの部分ではAI活用の可能性は十分にあると思っています。

面接官も人間なので、自分との波長の合う内容だったり、もしかしたらビジュアルであったり、自分のコンディションの不調であったり、さまざまな要因で正しいジャッジができないことがあると思います。そういった部分でAIがサポートしてくれるといいですよね。

-選考ルートで、どの候補者にどの面接官をアサインして、そこでどういった質問をさせるか、そのようなこともAIによってできそうですよね。

源田氏:面白いですよね。ソフトバンクとして、適切な選考フローを踏んでいるかどうかといった判断もできるかもしれないですね。面接の難しさは、一期一会の中でどのぐらいフィット感を見極められるかなので、少しでもその精度を高めていきたいですね。

「ソフトバンクだから・・・」ではなく、まずはとにかく行動してみることが大事

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-「ここまでできるのはソフトバンクさんだから」という声も聞こえてきそうですね。

源田氏:そうなんですよ。それはたまに耳にします。他社様がお伺いにきてくださったときや、HR系のイベントなどで登壇した際など、弊社の取り組みについてさまざま話す機会はあるのですが、そこで言われたり、アンケートに書かれたりすることが、「ソフトバンクさんの取り組みは本当にすごいのですが、弊社では難しそうです」という内容です。

-人事が最初に諦めてしまってはダメですね。たとえば、経営陣もチャレンジしたい、現場もやりたいとなっているのに、どうしてもチャレンジに踏み切れない。

源田氏:とりあえずやってみればいいだけだと思うんですよね。できるか、できないかはその後考えればいい。とにかく失敗してもいいからチャレンジする姿勢が重要だと思っています。

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