【執筆者】川内 正直 | 株式会社リンクアンドモチベーション 取締役
大人気アニメ『鬼滅の刃』には、キャリアに大事なことが詰まっている!?
家族を鬼に殺されてしまい、唯一生き残った妹も鬼になってしまう…。そんな鬼と化した妹を人間に戻すための方法を探す主人公を描く『鬼滅の刃』。
家族の愛情・仲間との絆。過去の苦しみや未来への希望など、さまざまな感情を表現している今大人気の漫画です。
そんな『鬼滅の刃』には、「キャリアにおける大切な考え方が詰まっている」と言っているのが、株式会社リンクアンドモチベーションで取締役を務める川内正直さん。社内外問わず若手から管理職まで幅広い人材の育成に携わってきた人物です。
今回は、HR NOTEの連載企画『鬼滅の刃×キャリア論』と題し、『鬼滅の刃』の名場面を振り返りながら、キャリアにとって大事な考え方を川内さんから学んでいきます。
連載初回のテーマは、
「自分にとって“心を燃やせる仕事”とは」
まもなく22採用が本格化しますが、今年は新型コロナウイルスの影響で、思うように活動できなかった学生も多いのではないでしょうか。
今回はそんな学生の方々を対象に、就職活動で大事なことをお伝えしていきます。
「原体験」に目を向ける
今年は、新型コロナウイルスの影響で、働き方が大きく変わりましたが、採用活動においても、多くの企業でオンラインインターンやオンライン面接が導入されました。
学生にとっては、移動時間を考慮しなくて済むので、これまでよりも多くの企業に触れることができるというメリットがある一方で、「組織風土」や「人」といったオフィスに足を運んでこそ体感できる情報は、オンラインではなかなか受信するのが難しく、最終的にどこに入社をするかを迷っている学生は多いのではないかと思っています。
では、何を軸に企業選びをすればいいのでしょうか。
そのヒントが炭治郎の強さの秘訣に隠されていると思っています。
炭治郎は、家族を鬼に殺され、妹を鬼にされてしまったという強烈な体験をしています。その原体験が「妹を人間に戻す」という強い動機につながっているのです。
私は、この原体験に目をむけることこそ、入社する企業を決める際に重要だと思っています。
那田蜘蛛山(なたぐもやま)編でも、十二鬼月の累(るい)に遭遇した先輩の鬼殺隊員が、
「俺は安全に出世したいんだよ。出世すりゃあ上から支給される金も多くなるからな。隊は殆ど全滅状態だが、とりあえず俺はそこそこの鬼一匹を倒して下山するぜ」
と累に襲いかかろとした瞬間に、瞬殺されてしまったシーンがあったと思います。
対して炭治郎は、累との決戦で刀が折れ、明らかに不利な状況でも「妹を守るためにここで死ぬわけにはいかない」という想いから、新しい技“ヒノカミ神楽 円舞”を生みだしました。
結局累を殺すことはできなかったのですが、追い詰めることには成功しています。
強い鬼(敵)に瞬殺されてしまった先輩と、追い詰めることに成功した炭治郎、この2人の強さの違いは何か。それは、「原体験」からくる強い動機だと捉えることができます。
もし、何がしたいか分からないと悩んでいるのであれば、まずは自分の「原体験」に目を向けてみるのがいいのではないでしょうか。
その仕事は本当に心を燃やせるのか
水柱の富岡義勇(とみおかぎゆう)さんは、一番最初に炭治郎に出会った際に、泣いている炭治郎に対して
「怒れ。 “許せない”という純粋な怒りは、 手足を動かす原動力になる」
と言っていましたね。
このシーンからは、自分の原体験を思考することに加えて、自分自身を動かす原動力になるものは何かを見極めることも重要だというメッセージを汲み取ることができます。
原作の後半に入ってくると、鬼殺隊メンバーの様々な原動力も紹介されており、炭治郎の“怒り”以外の原動力も読み取ることができます。
下図は、当社が毎年実施している新入社員の意識調査の結果ですが、期待度の上位に経済報酬がランクインするなど、近年は安定を求める傾向が強くなっていることが分かります。
働く上では、鬼殺隊の先輩のように出世や安定を求めることはもちろんあると思います。
しかし、企業を選ぶ際には、出世や安定以上に、「何なら本気で取り組めるのか」を考えてほしいです。
煉獄(れんごく)さんの言葉を借りるなら「心を燃やせるか」を大切にしてほしいなと思います。
その強い想いは、時には自分を守り、共に戦う大きな武器となります。
「正解探し」ではなく「正解創り」をせよ
就活を続けていると、家族や友人、先輩などに意見を求めることもあるでしょう。
「この企業は良いよ」「ここは辞めたほうが良い」など様々な意見を耳にすると思います。
しかし、最も重要なのは決断そのものではなく、どのように自分の決断を「正解」にしていけるかです。
炭治郎も「妹を人間にしたい」との想いで、鱗滝さんの元で2年もの間修行し、何体もの鬼と戦ってきました。その道のりは、漫画でも描かれているように決して平坦ではなかったと思います。
途中で「やっぱり自分には鬼殺隊は向いていなかった」と辞めてしまうことも出来たでしょう。
物語としては、それでは成り立たちませんが、現実世界では一度想いをもって決断しても、うまくいかないとすぐに「自分には向いていない」と諦めてしまう人も多いのです。
『鬼滅の刃』には、炭治郎が次々と壁にぶつかりながら、それを乗り越えて成長していく様子が描かれています。
もちろん炭治郎自身、ポテンシャルもあったと思いますが、炭治郎の純粋でひたむきな「自分の選択を正解にする」という覚悟は、就職活動においても参考になると思います。
「どの企業にするか」という選択そのものがフォーカスされがちですが、より大事なのは入社後の行動です。
選んだ道を正解にするということを忘れずに、ひとりでも多くの方が自分自身に向き合い、悔いのない就職活動をおこなってほしいです。