同社は、SNSを賑わせた「ポケモン自己分析」をはじめとして、オリジナルの採用企画に2019年から取り組んでいます。
そして、2020年は10月1日より「キミの進化大作戦」という企画をスタートしています。
しかし、「ポケモン」という知名度・魅力度ともに高く、求職者を惹きつける要素が数多くありながら、なぜポケモンセンターではこのような取り組みをおこなうのでしょうか。
そこで今回は、本企画のプロジェクトリーダーを務める岸田さんにインタビュー。
ポケモンセンター人事が採用企画に注力する目的や、そのための課題、6か月間かけて企画したというプロジェクトの背景についてお話を伺いました。
【人物紹介】岸田 類さん | 株式会社ポケモンセンター経営企画室 人事チーム
目次
ポケモンセンターが採用企画に注力する理由
ー昨年SNSで大きな話題になった「ポケモン自己分析」に続き、今年も特徴的な採用企画をされています。ポケモンセンターは十分な知名度があると思うのですが、なぜこのような企画をおこなっているのでしょうか?
さまざまなバックボーンを持った多様で素敵な方々と出会いたいというのが企画の背景にあります。
そうした出会いはポケモンらしさやエンタメらしさを活かしつつ、今までと異なる角度から求職者へアプローチし、採用方法もアレンジしていくことで実現すると考えています。
そのために、より「新しいこと・おもしろいこと」にチャレンジしていく必要がありました。
2019年7月にスタートしたポケモン自己分析。「#ポケモン自己分析」がTwitterトレンド1位になるなど、数多くの話題となった。
ー採用においてはどのようなチャレンジが求められているのでしょうか?
一言でいえば、「新しい求職者層へのアプローチ」です。
大変ありがたいことにポケモンセンターは多くの方に認知いただいており、求職者の方々も実際に店舗に足を運んでくださっている方が多く、業務イメージをしっかりと持っていただいた上でご応募される方も多いと感じます。
しかし、「ポケモンが好き」「ポケモンのビジネスに興味がある」という方々からの応募は多くいただける一方で、「ポケモン、ひいてはエンタメを仕事にしようと思っていなかった」という層からの応募はまだまだ少ないのが現状です。
我々としては、そうしたビジネスとしてのポケモンと接点が少なかった方にも、もっと多くの人々にポケモンセンターを知っていただき、応募のきっかけとなるタッチポイントを作りたいと考えています。
そのために、多くの方に関心を持っていただけるような採用企画をおこなっているのです。
“これからポケモン好きになる”方も大歓迎!新しく開始した「オープンポジション採用」
ー現在の採用活動について教えてください。
現在、募集しているのは主に店舗職です。ポケモンセンターやポケモンストアに配属され、店舗マネジメントをお任せます。
2020年12月時点で、ポケモンオフィシャルショップは国内に29店舗あり、安定的に店舗運営がおこなえている状態です。
そのような現状を踏まえ、私たちは「安定運営を目的とした人を増やす採用活動」から、「より魅力的な店舗づくりに繋がるユニークなおもしろい人材を発掘する」ための採用フェーズに切り替えました。
今までは、小売の接客販売スキルを持つ方を中心に即戦力として採用してきました。
しかし、人事チームとして次のフェーズに進むために、従来とは異なる角度から採用をおこなう必要を感じました。
そこで、特定のポジションに縛られず、フレキシブルに採用していくために、いわゆるオープンポジション採用を取り入れました。
採用企画を通じて、当社に興味を持っていただけた方とより多く出会う機会を設けるためにも入口をオープンにして、必要に応じてポジションを新設したり、ポテンシャル採用をおこなっていけることは企画の目的でもある「多様な方々に出会う」ことに繋がると考えました。
ー応募者の人柄・経験・スキルをもとに、新たにポジションをつくっていくのですね。
ポケモンセンターでの業務は、店舗運営・管理がメインとなるので、はじめはしっかり店舗での動きをマスターしていただく想定です。
お客様に最も近い店舗にて、そのニーズやオペレーションなどを習得していただき、個々のタレント性に合わせてプロモーションやマーチャンダイジング、また経営企画など、多様な配置転換をしていきたいと考えています。
ーオープンポジション採用では、具体的にどのような人材を求めているのでしょうか?
「おもしろいことを考えて、ビジネスにすること」が好きな人に来てほしいですね。さまざまなジャンルから多くの背景・経験を持った方々の応募をお待ちしております。
私たちは常に新しい体験を提供することで、さまざまなお客様にポケモンをもっと好きに、もっと長く楽しんでもらいたいと考えている会社です。
そのため、会社に「新しい風」を運んでくださる新たな人材を採用したいと考えています。
具体的に、今求めているのは「ビジネスリーダータイプ」の人材です。
「昔からポケモンでずっと遊んでいました」「ポケモンが大好きです」という方はもちろん、「ポケモンは詳しくないけど興味がある」「ポケモンセンターのビジネスに興味がある」という方も大歓迎です。
優しくて真面目、組織適合性の高い人材だけではなく、より面白くて尖った人材かつ、変革型のビジネスリーダーを採用できたら嬉しいですね。
繰り返しになりますが、多様な人材にリーチし、より新しいこと・おもしろいことを企画する起爆剤になるような方と出会うことが今回の採用企画のねらいです。
2019年「そんなキミにきめた!プロジェクト」、2020年「キミの進化大作戦」の裏側
ーあらためて2019年の採用企画「そんなキミにきめた!プロジェクト」と、今年の「キミの進化大作戦」について、企画の詳細をお伺いできますか?
2019年の「そんなキミにきめた!プロジェクト」も、今年の「キミの進化大作戦」も、先ほどお話したような「多様なバックボーンを持った人材」にアプローチするために企画したものです。
ポケモンらしさを活かしつつ、人事チームの企画力でより話題を作り出し、今まで出会えていない新たな人材にリーチしていくことがねらいです。
ポケモンは2020年現在で、800種以上が発見されているのですが、一匹一匹さまざまな特徴を持つポケモンたちのように、多種多様な個性ある人材を迎え入れていきたいですね。
2019年「そんなキミにきめた!プロジェクト」と「ポケモン自己分析」
昨年の「そんなキミにきめた!プロジェクト」は、人材の多様性をポケモンになぞらえて表現するコンテンツになっています。
ポケモンセンターが掲げる「個性を尊重する採用方針」を、多くの人々に親しみを持ちながら知っていただくための採用強化プロジェクトでした。
メインコンテンツは、16個の質問に答えて、自分はどのポケモンの要素を持つ人材なのか診断をする「ポケモン自己分析」です。
大変光栄なことに、非常に多くの方にポケモン自己分析をおこなっていただき、ポケモンセンターという会社を知っていただくきっかけになったと思います。
2020年「キミの進化大作戦」と3つの施策
そして今年は、当社の企業としての認知拡大をより意識し、さらに幅広い求職者層にアプローチしたいという思いで新たな採用企画「キミの進化大作戦」を打ち出しました。
「キミの進化大作戦」は、一人ひとりが自分らしい成長を目指して、自らの未来に対してポジティブに向き合うための 道標となることを目的としたコンテンツです。
「進化」を共通のテーマにして、次の3つの施策を実施しています。
①WEBコンテンツ「キミの進化ずかん」
「キミの進化ずかん」は、人それぞれの目指す姿をポケモンにたとえて紹介するコンテンツです。
自分がどのように成長していきたいか、将来どのような人物になっていたいかを前向きに考えるヒントになってもらえればと考えています。
▼ポケモンやキーワードを軸に、自分の目指す姿をポケモンにたとえて紹介
②採用施策「キミの進化採用」
これは、当社へ応募する際のエントリーシートのようなものです。
応募者には、自分自身のキャリアアップや目指す姿をポケモンの進化(成長)の特徴になぞらえて表現していただきます。
ポケモンの特徴のひとつである進化を通じて、よりその方の個性やポテンシャルを感じ取ることができれば、と考えています。
[進化宣言書のフォーマット]
そして、実際の選考では「進化宣言書」を参考にその進化を選択した理由も踏まえて面接などをおこなっていきます。
③メッセージ新聞広告「今日からまた、進化をはじめよう」
10月1日の本採用企画スタートに合わせ、読売新聞に「キミの進化大作戦」のメッセージ広告を掲載しました。
多くのビジネスパーソンが経験する「キャリアアップへの悩み」や「将来への不安」に対して、このような状況でも、できるだけポジティブに、今日からまた成長=進化できるのだと考えてもらえるよう、「今日からまた、進化をはじめよう」をテーマに発信しています。
このメッセージ広告は、地域ごとに異なったデザインにして制作しています。
というのも、それぞれのデザインの違いから、より話題性を高めてSNS上での二次拡散も意識していたからです。
昨年は、人々の「個性」にフォーカスしようと考え、ポケモン自己分析というコンテンツを中心に展開しました。
これは、ポケモンの性格や個性になぞらえて自己分析の診断をおこなうことで、より人々の個性を尊重し合おうというメッセージも込めています。
一方今年は、人材の成長や進化に焦点を当てています。
企画の段階でメンバーから「人のキャリアアップってポケモンが進化する姿と重なるよね」というコメントがあり、その親和性に気づいたことで、企画が形になっていきました。
「キミの進化ずかん」のWEBコンテンツページにアクセスしていただくと「キミはこれからどんな人になりたい?」という設問が出てきます。
案内に沿って図鑑を見ていくと、ご自身がどのような成長過程を描いていきたいか、ポケモンの進化になぞらえて確認することができます。
ー非常に細部までこだわってつくられていますね。
そうですね。これらの企画を考える際は常に、どうやったら「ポケモンならではのことができるかな?」と考えていました。
個人的には昨年の企画を絶対に超えるものをつくりたいと思っていたので、企画から制作まで6か月かかっていますが、時間がいくらあっても足りなかったですね…。
今回の「キミの進化ずかん」は、コクーン、トランセルといったさなぎの段階のポケモンや、世界でいちばん弱いポケモンといわれるコイキングが、ギャラドスというとても強いポケモンに進化する特徴をうまくとらえて、人々のキャリアアップや成長と重ねることができた企画だと思っています。
ー採用企画をつくるうえでのこだわりの部分は他にもありますか?
おもしろいコンテンツを展開するだけでなく、実際の採用選考につなげるために「進化宣言書」というものを採用選考に盛り込んだ部分ですね。
ただコンテンツとして完結するのではなく、選考も「キミの進化大作戦」の一環として捉えていました。
ご自身の成長をポケモンと重ねて「リザードンのように進化していきたいです。具体的には…」というようにお話いただくことで、候補者の皆さんの自己分析やアイスブレイクに役立てていただくだけでなく、「ポケモン」を共通言語として、ご自身の成長象という概念的な物を私たち採用担当者に具体的に伝えていただける、というねらいもあります。
その他、企画の過程でこだわったのは、紙媒体だけでなくSNSでの二次拡散をねらったことです。
紙媒体だからこそリーチできる層もありますが、SNSを活用することで、より情報を届けたい人にしっかりと届けることは意識していました。
また、1番気を付けていたのは、攻めと守りのバランスでしょうか。
ポケモンセンターはお客様に「ポケモンをもっと好きに、もっと長く楽しんでいただく」ことをミッションとしています。
そのため、「これらの採用企画はポケモンらしいのか?」「本当にポケモンを好きになってもらえるのか?」「企画をローンチすることで、ポケモンブランド全体にどのような影響を与えるのか?」といった点を考えることはとても重要です。
「ポケモンらしさ」を追求することは攻めにも守りにも繋がると信じていますが、「企画として成り立ち、コンテンツとしておもしろいものを提供する」ことと、「ポケモンの世界観を大事にすること」の、双方のバランスを保つことが、もっともこだわった点だと思います。
ー実際に企画を実施してみて、応募に変化はありましたか?
現在はまだ絶賛採用活動中ですが、確実に今までとは異なる人材からご応募をいただけていると実感があります。
「おもしろいコンテンツをやっているね」だけではなくて、会社のネームバリューそのものに良い影響をもたらすことができたと感じています。
「前回超えの企画」を常に生み出し続けていくのが、ポケモンセンター流
ーポケモンセンター人事として今後チャレンジしていきたいことはなんですか?
今後も引き続き、いろいろなバックグラウンドを持つ人にお会いしたいなと思っています。
業界が全く違う人、持っているスキルも知識も異なる多様な人材が一緒になるからこそ、ポケモンセンターがより新しいことやおもしろいことにチャレンジできると思っています。
初期配属としては店舗運営業務になりますが、店舗運営のご経験がない人もどんどん受け入れていきたいと思います。その中で、今後の展望としては大きく2つあります。
1つ目は採用ブランディングの強化です。ブランディングは継続がもっとも重要だと考えているので、去年より今年は少しでも良いものを、今年よりも来年は1つでもチャレンジをしようと前向きに取り組み続けたいと思います。
2つ目は、採用ブランディングの受け皿の部分となる、実際の採用手法の改革です。
今回の企画で新たな求職者層にリーチできたので、それに伴って採用手法も変えていく必要があると考えます。
今後は新しい採用手法を積極的に取り入れ、おもしろい人材にもっともっとお会いしたいと思っています。
ーありがとうございます。最後に採用企画へのチャレンジに関して、人事の方にメッセージをいただけないでしょうか。
こういった採用企画は業界や規模を問わず、取り組む価値があると私は考えます。
もちろん、労力がかかりますし、実際の効果が見えにくいこともあります。私も失敗や挫折を多く経験しました。
一方で、いままでの慣習にとらわれず、人事が自らチャレンジし、発信していくことが求められている時代になってきているとも感じています。
特に若い世代の人材を対象にした場合は、従来のやり方だけでなく、SNSなどをうまく活用したアプローチが必要になってきていると思います。
求職者が自身の個性をうまく表現でき、また採用企業がそれをしっかりと受け取り、生かせるような…そんな採用にさまざまな企業がチャレンジできるようになったら素敵だと思います!