今回は世界11カ国に13の拠点を構え、AIを活用したクラウドソリューションを提供しているAnyMind Group(以下、AnyMind Group)が実践する、従業員エンゲージメントを高めるための施策をご紹介。
AnyMindでは、従業員エンゲージメントを高めるために「カルチャー推進室」という部署を社内に設けており、そこでは入社から退職に至るまでの「エンプロイージャーニー」の最適化を目標に、日々さまざまな施策を実行しています。
では、AnyMindがそこまでしてエンゲージメントを重要視する理由は何か。また、実際に実施しているエンゲージメント向上の施策やその効果について、カルチャー推進室の方々にお話を伺い記事にまとめました。
Chris Lu| AdAsia(Thailand)Limited, Regional Head Communications, Culture Development
AnyMind GroupのCommunications(マーケティング・広報)およびCulture Development(カルチャー推進室)の責任者。アジア11市場13拠点で、組織内外のあらゆるコミュニケーション活動を統括している。
Pratan Thinsomchaisin | AdAsia(Thailand)Limited, Senior Executive Culture Development
AnyMind GroupのCulture Development(カルチャー推進室)のシニアエグゼクティブ。HR出身のPratanは現在、Chrisの指揮のもと、カルチャーに関わる施策の戦略立案をサポートする。
目次
AnyMindが従業員エンゲージメントを重視する理由
個人の人間性の成長が、会社の成長につながる
Pratanさん:私たちは、「個人の人間性の成長」が会社の活性化につながると考えており、そのために従業員エンゲージメントを重視しています。
そもそも従業員エンゲージメントとは、従業員が会社に対して、どれだけ愛着を持っているか、信頼しているか、また逆に貢献したいかを示すものです。
私たちが考える「個人の人間性の成長」とは、会社と従業員の価値観やカルチャーとのすりあわせをおこない、その共感度を高めていくことです。
すなわち「従業員エンゲージメントが高い状態になる」ことにつながります。従業員が会社にいる理由は、仕事をすることだけではありません。
従業員が「この会社が好きであり、所属することで幸福感を得られる、だからこの会社に来ている」といった状態が重要で、そのためには各従業員の価値観や、将来の方向性に焦点を当てる必要があります。
エンゲージメントが高い社員は、仕事へのモチベーションが向上し、またリテンションにもつながります。その結果として、個人・チームとしてのパフォーマンスが向上し、会社全体がどんどん活性化していきます。
そのためAnyMindでは、仕事におけるスキル向上はもちろんですが、「個人の人間性の向上」を大事にしています。
11カ国に展開している企業だからこそ「価値観の浸透」が重要
Pratanさん:AnyMind Groupは11カ国に展開しており、短期間で会社の規模が大きくなっています。
各国に展開されている支社同士の連携は主にリモートでやり取りをしていますが、オンラインだけのコミュニケーションでは、どうしても会社から発信する価値観や文化が行き届きにくくなります。
そのような状況であるからこそ、従業員のエンゲージメント強化が重要になります。
企業の文化や価値観の浸透をいかにして強化していくか、優秀な人材が離職しないために何をすべきか。
そのために、従業員の個人の人間性の変化や成長にフォーカスした施策を生み出す必要があります。
エンゲージメントを向上させるために具体的に取り組んでいることとは?
従業員が楽しめる多様な社内イベントを開催
Chrisさん:まず、私たちの企業ではアクティビティを積極的に実施しています。
例えば毎月従業員の皆でスポーツを楽しむ「マンスリースポーツ」というイベントや、代表の十河をはじめマネジメントクラスのメンバーが主催する「CEOランチ」を実施しています。
それぞれのアクティビティを通して、実際会社で働いてどのように感じるのかを従業員から話を聞くことで、彼らのモチベーションやエンゲージメントの実態を把握するようにしています。
他には「All Hands」という全社総会を半期に1回実施しており、良い成績を残した従業員などには賞を贈与するほか、Face to Faceのマネージャー研修も実施します。
カジュアルに、自社の文化や価値観について学ぶ
Chrisさん:また毎月金曜日の夜に、TGIF(=Thanks God It’s Friday)といって、普段関わりのない他部署の従業員と交流ができるイベントを実施しています。
単純に他部署の人と飲み会をするのではなく、カジュアルに会社の文化や歴史について学ぶことができるコンテンツも作成しています。
例えばクイズ大会では「うちの会社が設立したのはいつですか?」といった質問を投げかけて従業員が答えます。楽しみながらも、会社の歴史、文化や価値観について深く学べるように意識をしながらイベントを企画しています。
従業員の悩みを早期発見・解決。エンプロイーフィードバックチャンネルとは
Chrisさん:従業員のエンゲージメント向上を図るために、「エンプロイーフィードバックチャンネル」を作っています。
「エンプロイーフィードバックチャンネル」は例えば、アクティビティを実施した際にどのような感想をもったかなどを、匿名で意見できるシステムです。
仕事をする上で、言いづらいことや、不快に思うことなどがあった際、システムを通して、それらの従業員の負の感情に素早く気付いてあげることで早期解決につなげるようにしています。
チャットツール、メール、Googleフォームを用いて、企業文化、価値観などを全体に発信していく役割を持つ私たち「カルチャー推進室」に宛ててフィードバックが届けられる仕組みになっています。
従業員の多くの悩みは、人間関係、つまりはコミュニケーションの問題などです。例えば「このマネージャーとあわない」といった悩みがあったとして、実際はそのマネージャーのやり方が正しい場合もあります。
もちろん悩みを打ち明けてくれた従業員の話も聞きますが、マネージャーの意見なども聞いて、中立な立場として、適切なフィードバックを1on1形式でおこないます。
上司の言い方が気になるときでも、直接言いにくいことがほとんどだと思います。そういう悩みなどをなるべく早期に気付いて解決できるよう意識しています。
施策において重要なポイントは「企業と従業員の相互理解」
Pratanさん:「離職率の低下」における正確な割合を測定しているわけではありませんが、肌感としては従業員がやめなくなったという実感もありますし、従業員のモチベーションも上がっているなと感じています。
また実際、「離職率はあまり重要ではない」と思っています。というのも、離職はどうしても出てしまうものですし、例えば離職率10%といっても、「どこの層の10%なのか」が重要で、いてほしい従業員が辞めないことが大事です。
なので、施策を実施していく上で、また離職を防ぐために一番重要視していることは、労働条件を良くするというよりも、文化浸透や、企業と従業員の相互理解ではないかと思います。
相互理解をより推進することで得られる効果としては、従業員のモチベーション向上や従業員が抱える悩みに早期に気付くことができ、問題解決につながります。
今後の展望|最適な従業員体験の仕組みを作りたい
エンプロイージャーニーを最適化したい
Chrisさん:エンプロイージャーニー、つまり入社から退社まで「従業員が自社で働く体験」をもっと良くしていきたいと考えています。
エンプロイージャーニーの入り口の部分でもある入社前においては、YouTubeなどで各部署のビデオなどを配信して、様々なところで会社の雰囲気を知ってもらうような取り組みを実施していきたいと思っています。
また入社後に関しては、研修の段階でどういう方向性でこの会社が進んでいくのかという点を、企業文化や事業内容も踏まえて説明をします。そして1週間後に新入社員から感想をもらい、それをもとに入社後研修の改善・最適化を図っていく予定です。
やはり第一印象は重要だと考えていますので、入社前や入社直後は今後も注力していきたいです。
そして、入社してから重要なのがリテンション。さきほどエンゲージメント向上の施策で、イベントを積極的に開催しているとお話しましたが、こうしたイベントを通して、従業員がその会社にいることを楽しいと次第に感じるようになると思います。
また、従業員の将来のビジョンやキャリアプランに関しても、2年後なりたい姿に近づけるよう、我々がしっかりと向き合っていきます。リテンションにおいて、従業員に適切な機会や環境を与えられているかは重要なファクターだと考えています。
退職時のフォローも入社時と同様に重要視している
そして、エンプロイージャーニーの出口である退職時も我々は重要視しています。
退職の理由はネガティブであることがほとんどですが、退職前にヒアリングをおこない、ネガティブな理由もできる限り拾い上げます。その対話のなかで一つ一つフィードバックを実施していくといったやり方を丁寧に行うことで、率直な意見が伝えやすくなるのです。
会社に入る前から退職までのエンプロイージャーニー、いわばこの会社で働くことが従業員にとってより良い経験になるように、我々は常に努力していますし、今後も従業員が幸せに働けるような環境づくりを意識していきたいと思います。