Yahoo!やLIONなど、大手企業による副業・複業人材の活用がニュースとなり、副業・複業人材の活用におけるハードルが下がってきています。
そんななか、エンジニア・デザイナーに特化した副業・複業のマッチングサービス『Offers』を運営する株式会社overflowは、働きながら相互理解を深めていく「複業転職」を推進しています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、オンラインでの対応を余儀なくされている人事担当者や、先行きの見えないなかで正社員雇用に足踏みしている経営者にとって、この「複業転職」は、計画的な採用成功の一助になるかもしれません。
今回は、コロナ禍における転職市場の変化や複業転職の魅力、それを推進するOffersの工夫などについて、overflow代表の鈴木さんに伺いました。
【人物紹介】 鈴木 裕斗 | 株式会社overflow 代表取締役CEO
Beforeコロナ・Afterコロナによる転職市場の変化
ー新型コロナウイルスの感染拡大は、転職市場にどのような影響を生んでいると考えていますか?
鈴木さん:3つのキーワードがあると思っています。
1つ目は「DX」です。今までオフラインでおこなっていた仕事をリモートに置き換えざるを得なくなり、企業のデジタル化が一気に加速しています。
それにより、IT企業だけでなく、レガシーな企業でもデジタル化の先にある「DX」に当事者意識を持つ人が増え始めています。
それによって「エンジニアの採用需要」が増えると思います。これが2つ目のキーワードです。
コロナ禍で全体の求人倍率はガクッと落ちましたが、エンジニアだけは高い数値を保っています。エンジニア採用は、より一層加速していくと予測しています。
3つ目は、リモートワーク普及による「働き方の変化」です。
リモートワークだと、今までのように社員が膝を付き合わせて仕事を進めることができません。
そうすると、もはや会社の外と内を分ける必然性が下がってくるので、外部の専門性の高い人材に仕事を依頼する機会も増えます。
それによってジョブ型雇用も進んでいくと思います。
ー確かにリモートワークをする人が増えたら、アウトプットを基準に働くスタイルが加速しそうですね。
鈴木さん:はい。ご存知の方も多いと思いますが、「2030年には、640万人程度の労働人口が足りなくなる」と言われています。
そうした将来的な労働人口減少の問題を、私たちは副業・複業人材を活用したDXで解決したいと考えているんです。
高齢者や女性、外国人の雇用、AIの活用など、労働力を確保する策はさまざまにありますが、副業・複業人材の活用は特に大きな可能性を秘めているんです。
というのも、労働人口の減少によって必要な人材の確保はどんどん難しくなっていきます。
そうなったときに、1人の人材が1社ではなく、2社、3社と跨って働くことができれば、社会全体に良い効果を生みます。
しかも、転職だと働いている会社の契約内容や引き継ぎによってタイムラグが生まれますが、副業・複業やフリーランスの方の場合、明日からでも働ける方が多く存在します。非常にフットワークが軽いわけです。
それに、正社員を募集する場合、例えば求めるチェックポイントが10個あるうち1、2個でも合わないと採用になりにくい。
でも、複業であれば、フィットしている部分だけを切り出して依頼できます。減点方式ではなく、加点方式で採用を行えるわけです。
結果、お互いの希望を相談したうえでwin-winな形で働くことができるんですね。
一緒に働いてみて、双方の相性を見た上で正社員採用に至ることもあります。これを私たちは「複業転職」と呼んでいて、ニューノーマルにおける転職のスタンダードになればいいなと考えています。
overflowが考える、これからの転職の在り方
ー複業転職は企業側にどういったメリットがあるのでしょうか。
鈴木さん:これまでの転職と比べて、退職リスクと採用コストを減らすことができます。
複業転職の場合、企業は求職者と数ヶ月の複業期間を共にするので、従来より相互理解の時間を十分に確保できます。
働きながらスキルとコミュニケーション、人間性を確認した上で入社することになるので、ミスマッチによる退職リスクを減らすことができます。
また、複業から入社につながる場合、通常であれば高額になりやすいエージェント費用や、人事担当者の人件費は抑えられ、採用コストはおおよそ1/4程度になります。
ー合理的に考えるとメリットが非常に大きいですね。一方、求職者にとってのメリットはあるのでしょうか?
鈴木さん:複業を通して、企業の中身を体感値レベルで理解できることが、求職者にとっての最大のメリットです。
会社が目指すビジョンなどは、美しく飾り立てられた言葉を読むより、一緒に働いてみる方が実態を掴めると思います。
本気で目指しているのか、どのようなプロセスで歩んでいるのか。それを確かめてから意思決定できるので、求職者にとっても心理的安全性が高くなります。
また、複業をするなかで、チームメンバーの指向性を鮮明に知ることができます。
休日はガッツリ休むのか、チャットが飛ぶのか、バーベキューなどのオフ会を開催しているのか。そうした指向性は、自身のライフスタイルに影響が及ぶので、意外にも重要な観点だと思います。
サービス開始から平均12日で採用が決まるOffersの仕組み
ー実際に実績も出ているのでしょうか?
鈴木さん:私たちが運営している『Offers』では、エンジニアやデザイナーのマッチングを主としているのですが、実際に複業を前提にご利用いただいていて、なかには利用開始から1週間で2名の複業人材の採用に至っているケースがあります。
ー1週間で2名ですか。それは驚きです。
鈴木さん:通常、転職のダイレクトリクルーティングサービスは、最短3ヶ月で決まるくらいのスピードが一般的です。
ですが、Offersは複業を前提にしているので、採用が決まるまでが圧倒的に早くなります。現時点で、利用開始から採用までの平均日数は12日。ニーズにフィットしている実感があります。
ーどうしてそのような短期間での採用が実現できるのでしょうか?
鈴木さん:Offersではカスタマーサクセスのチームづくりに力を入れていて、メンバーはエンジニア経験あるいはプロダクトをつくった経験のある人だけに絞っているんです。
ーそれはなぜでしょうか?
鈴木さん:というのも、人事担当の方や総合職の方が、エンジニア向けにメッセージの文面を一生懸命書いて掲載しても、候補者目線に立ってみると観点がズレていることは往々にしてあります。それはどちらにとっても残念ですし、もったいないですよね。
ーそういったアドバイスは、エンジニアとしての経験や知識がないと簡単にはできないですよね。
鈴木さん:だからこそ、弊社CTO・CPOを含むOffersのカスタマーサクセスチームは、自社の知見や過去のケーススタディをもとに、複業メンバーの組織構築をハンズオンでサポートしています。
例えば「エンジニアがほしい」というニーズがあったとします。でも、それがフロントエンドなのかバックエンドなのかによって、求められる能力は異なりますよね。場合によっては、複数の人材を採用しないといけない場合もあります。
ー専門知識のあるカスタマーサクセスがサポートに入ることで、ミスマッチを減らすことができると。実際に「Offers」を導入する企業も増えているのでしょうか?
鈴木さん:8月にスタートアップ限定の月額無料キャンペーンを実施したのですが、この1ヶ月弱で30社以上の採用支援を新たにスタートしています。
また、エンジニアやデザイナーの新規登録ユーザー数もコロナ渦にも関わらず333%増と大きく伸びています。
本当に多くの方々にOffersを利用していただいているので、これからも経営リスクの最小化と働き手のチャンスの最大化を実現できるように頑張っていきます。