こんにちは!HR NOTE編集部です。
2016年3月の末に『人事において「見るべき」データとは?』というセミナーに参加させていただきました。
どういったデータが人事において重要なのか、様々な新しいデータポイントを人事に活かそうとされている事例をもとに「見るべきデータ」を考える内容となっております。
主催は、株式会社ミライセルフの表 孝憲氏。ゲストスピーカーとして、以下3名の方に講演いただきました。
- リンクトイン・ジャパン株式会社 杉本 隆一郎氏
- 採用学研究所コンサルティングフェロー 杉浦 二郎氏
- 株式会社FiNC 岡野 求氏
今回は採用学研究所コンサルティングフェロー 杉浦氏の講演内容をもとに、「人事が見るべきデータとは何か?」を皆様にお伝えできればと思います。
【セミナー主催者紹介】
表 孝憲| 株式会社ミライセルフ 代表取締役
【スピーカー紹介】
杉浦 二郎 | 採用学研究所コンサルティングフェロー 採用プランナー
目次
新潟のお菓子メーカーが挑む、データを活用した採用の事例 杉浦 二郎:採用学研究所コンサルティングフェロー
【採用学研究所とは】
採用学研究所は、横浜国立大学の服部泰宏氏をリーダーに、採用を科学するということをテーマとして、さまざまな採用を調べながら、日本企業の採用・就職活動上の課題に対して、科学的なアプローチによる解決を目指す組織です。
【採用学研究所ホームページ】
http://saiyougaku.org/
杉浦氏は、三幸製菓という新潟のお菓子メーカーの新卒採用の事例をもとに、以下のお話を中心にされていました。
三幸製菓の現状
三幸製菓ホームページはこちら
三幸製菓は本社が新潟の老舗のお菓子メーカーで、あられ・おかき・せんべいの製造販売を事業としています。
日本一短いESやカフェテリア採用など、新卒採用においてさまざまな施策を行ってきており、日々改善を繰り返しています。
新卒採用において話題となるような施策を実施している三幸製菓ですが、地方にある企業ということもあり、三幸製菓への就職に対する学生の人気という点ではそこまで高くなく、そのほか採用に関していくつか課題をもっていました。
杉浦氏:三幸製菓として我々は、採用を非常に感覚的に行っている、採用担当者が変わる度に採用のやり方が変わっていく、判断基準がとても曖昧であるといったことが課題としてあると考えています。
結果として、何が良くて何がダメなのかわからないという現象がずっと起きていたなと感じています。面接に関しても同様で、そうなると面接そのものが意味ないなと思ってきちゃったんですね。
自社にとって優秀な学生の定義が他社と同じもので一般化していたり、明確に言語化できずに、なんとなく「こういう学生を採用しよう」という話になっていたり、また知見が共有されずに各々の感覚で実行していたりと、採用に関するノウハウがブラックボックス化している現状がありました。
採用設計力を高めるためにデータ分析と効率化を目指す
そこで杉浦氏は、三幸製菓の採用をより良いものにしていくために、以下のことを実行しています。
・採用における自社ポジショニングを把握する
・自社にとって優秀な学生とはどのようなものか定義する
・適性テストを用いて分析を行う
・学生との合意形成に向けた工夫
杉浦氏:まずは自社のポジション二ングをちゃんと考えることをはじめました。
三幸製菓という会社は、知名度だけでは競合にほとんど勝てない、と考えると強者と戦うのはそもそも無理だと。
じゃあ何をしないといけないかとなると、採用力って僕の中では、企業基礎力×採用設計力だと思ってまして。企業基礎力では、知名度や規模が該当しますが、そこが大きい会社というのは、圧倒的に採用強者だと思ってます。
三幸製菓では、知名度や規模といった企業基礎力はすぐには変えられないことから、採用設計力を高めるために、採用プロセスの可視化と効率化を重要視するようになり、データを使いながら採用を進めています。
その中で効率的に選抜し、ピンポイントで求める人物像の学生に会えないかを考えるようになりました。
杉浦氏:私たちも陥った罠として、データというとエントリー数や、その後の歩留まり、最終的にどれだけ残ったかとか、そういう数字はデータとして押さえるんですけども、果たしてそのデータって意味ありましたっけというところを、個人的には思いましてですね。そもそも考え方自体がダメじゃんと。
じゃあどうなっているかというと、人物像を特定してそこにピンポイントで採りに行く、ダイレクトリクルーティング的な発想が少しずつ生まれてきてて。
さらに杉浦氏は、自社にとっての“優秀”とは何か、どのような適性が必要なのか、自社の求める人物像を理解し、見極めに工数をかけずに効率化をしていきたいと述べています。
そして、そのための方法のひとつとして適性テストを挙げています。
杉浦氏:ほとんど適性検査で判断をする。そういう世界が生まれれば、企業・学生がお互いを評価するっていう工数自体が減っていきますし、何千人何万人エントリーがあろうとも、適性検査だけである程度選抜ことができれば、恐らく我々にとっても学生にとっても、非常に効率的な世界だなと。
杉浦氏は、適性テストのようなデジタルなジャッジも、もちろん精度がかなり高いとは言い切れないが、後でPDCAを回しやすく、ブラッシュアップもしやすくなると述べています。
実際、面接がその後どうパフォーマンスに結びつくのか相関のデータがあまり取られていないのが現状で、実際に面接時に優秀だと言われていた学生が、後でパフォーマンスが上がらないというケースがいくらでも出ているとのことです。
また、杉浦氏は、採用の前半を適性テストで選抜を行い、その後は企業と学生の合意形成の場にしていこうと考えています。
杉浦氏:基本的な考え方として、前半は適性検査を行い、そこからは合意形成だろうと考えています。面接とは言わず、合意形成の場。例えば10分15分の適性テストで合格不合格を伝えられた人間としては、なかなか納得できないところがあると思うんですね。そこに対してどう合意形成していくのか。恐らくこれは回数もあり、4回から5回の回数を重ねて会うことが、合意形成に結びつくこともあると思います。
あともう一つは、どういう言葉を使っていくのか。例えばメール一本書くにしても、どれくらいの文量でどんな言葉を使って、どういう文章を作るとその人に刺さるのかということを、こういうタイプにはこの言葉と文字数で、こんな文体でいきましょうとか。例えば100パターンくらい用意してですね、上手く可視化をしてジャッジメントすれば採用というものが、極めてデジタルに比較的工数をかけずにできるだろうなと思っております。
自社に合う人材を見極めるためにハイパフォーマー及びローパフォーマーを分析する
三幸製菓では、新卒採用の場合、ポテンシャルを重視した採用を行っています。
縦軸を行動特性、横軸を性格特性でマトリクスを作成し、求める人物像のポジショニングを明確にしており、そこにあてはまる学生を採用するといったやり方になります。
杉浦氏:能力は我々の中では先天的と後天的の2つに分けられるかなと思っています。先天的及び後天的でありながらも能力開発が自社ではできないが必要な要素、ここを選抜の段階でみていきましょうと。逆に、後天的に自社で能力開発できる部分に関しては、採用後でも補えるため、はっきり言って見る必要が無く、選考の観点から外しましょうということで切り分けをしています。
さらに行動特性、性格特性の基準を作成するために、三幸製菓では入社2年後の社員のパフォーマンスを分析しています。
杉浦氏:自社にとってこれらの能力がどのくらいの高さで、もしくはどのくらい低さで持つべきなのかということを、可視化をしていきながら評価表を作っていくというのが、私たちのトライです。そのために入社2年後のパフォーマンス分析を全部してます。私たちの採用のゴールは、採れればいいという話ではなく、入社2年後のパフォーマンスが上位であるということを常に置いてます。
入社2年前後の人達を、ハイパフォーマー、ローパフォーマーすべて分析しまして、かつハイパフォーマーだった人がどうだったか分析をします。その人達へのインタビュー調査を全部して、どういう適性があるのか、当時どういう経験をしたのか、その時どういうことを把握してるのか、そういうことを引き出して、それぞれの社員がどういう能力を持っているかというのを、一回全部分析をしていくんですね。
ただ、ときには内定辞退が生じることもあり、引き続き改善が必要であると杉浦氏は述べています。
特に求める基準を大きく超えている、いわゆる優秀すぎる学生ほど、内定辞退の傾向があるとのことです。
杉浦氏:しかしながら反省点もありまして、やっぱり辞退が生じたりですとかあったんですね。それで分析を進めていった結果として、ある一定以上の点数を取っていれば、みんな合格みたいなやり方をやっぱりしちゃったんですね。辞退した人ですとか、そういう人達を分析していくと、点数が高過ぎるというのもどうやらマイナスだということに気付いたんですね。能力を持ち過ぎるというのも会社とフィットしないということを、常に意識する必要があります。
三幸製菓は2017年度卒の新卒採用も実施していますが、今までのトライ&エラーの内容をもとにより効率的でマッチング精度の高い採用にするべく、日々学生と向き合っています。
最後に
採用に関してデータを用いて分析を行う際は、まずは自社でどんなデータがあるか、とにかく現状出せるあらゆるデータを収集してみることからはじめることがよいのではないかと、杉浦氏は述べていました。
そうすることで、何かしらの相関性が見えてきて、数字のつながりをもとに、課題発見や改善につながっていくことができるのではないでしょうか。