最近、「マインドフルネス」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
Googleやヤフーなどの有名企業が研修として導入しており、実際に効果の高い方法として話題になっています。
本記事では、マインドフルネスの基本概念や、研修で導入するメリット・デメリットをはじめ、企業の導入事例を踏まえたマインドフルネス研修のプログラム例などについてまとめました。
社員研修のプログラムに悩まれている方がいれば、この「マインドフルネス」を研修に取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか。
目次
1. 最近話題の「マインドフルネス」とは?
「マインドフルネス(mindfulness)」とは、心に偏りや乱れがない、整った状態を指します。
このマインドフルネスな状態になるための方法として、代表的なものに瞑想があります。自分の心の中の雑念や感情を知覚し、取り除いていく作業を通して、マインドフルネスを実践していくのです。
もちろん、個人で瞑想などの手法を使ってマインドフルネスを実践することも可能ですが、Googleやヤフーといった有名企業のように研修プログラムとして導入している企業も多くあります。
マインドフルネスが企業で注目されている背景
なぜ最近マインドフルネスが注目されているのかというと、実際のビジネスの現場において効果が高かった手法であることが大きな理由です。
社員の心の状態を整えることによって社員の幸福度が高まり、会社全体としても生産性が上がるので、さまざまな面でメリットがある方法として広まっています。
なんとGoogleでは、最長6カ月待ちという大人気講座になっています。
マインドフルネスを導入するメリット
それでは、実際にマインドフルネスを導入するメリットについてまとめたいと思います。
①ビジネスパフォーマンスの向上
マインドフルネスを企業で導入する一番大きなメリットは、社員1人ひとりのパフォーマンスを向上させることでしょう。
通常、人間が仕事をしている時は、「あの仕事も今日が締め切りだからやらなくては・・・」「取引先にメールを送らないと・・・」「仕事が終わったらスーパーに買い物に行かなくては・・・」といったように、さまざまなことで頭の中が支配されています。
そのため、目の前の仕事に集中できていないことも良くあるのではないでしょうか。
しかし、マインドフルネスを通じていったん心の中を整理して、ニュートラルな状態で仕事に望むことで、目の前の仕事に100%集中した状態で取り掛かることができます。
これにより、ビジネスパフォーマンスが向上し、生産性を最大限高めることができるのです。
②ストレスの低減
マインドフルネスには、ストレスを軽減させる効果もあります。
瞑想によって、自分の中のネガティブな感情に目を向け、それを知覚することで心を平静に保つことができるのです。
実際にワシントン大学で人事の管理職の人たちを3グループに分けておこなった実験では、瞑想を実施したグループが最もストレス値が低く、記憶力も向上していたという結果が出ています。
また、その他にも、ウィスコンシン大学の研究結果により、瞑想はストレス解消に効果があるということがわかっています。
③内発的動機付け
マインドフルネスを突き詰めていくと、自分の心の奥底の価値観まで深掘ることができます。
自分の根本にある価値観は何なのか、自分が本当にやりたいことは何なのかをマインドフルネスを通じて探っていくことで、自分の奥底にある感情と、今目の前にある仕事とがリンクして、それが内発的動機付けにつながります。
内発的動機付けは、お金やステータスというような外発的動機付けよりも強い動機付けができるため、社員のモチベーションに大きな影響を与えることができるでしょう。
マインドフルネスの注意点・デメリット
①不安が増大するリスク
マインドフルネスでは、自分の心の中の感情に着目することになるため、自分自身のネガティブな感情にも向き合う必要があります。
そういった感情との向き合い方を知らない人にとっては、逆に悪い感情に支配されて悪影響を及ぼす可能性があります。
正しい瞑想の方法や、ネガティブな感情への対処法を研修を通じて伝えていく必要があるでしょう。
②社員が辞めていくリスク
自分の隠れた価値観に気づくことで、目の前の仕事と自分の価値観との相違に気付く場合もあり、なかには転職に至るケースも考えられます。
マインドフルネスをおこなう際には、社員1人ひとりと向き合い、その価値観が自社で何に活きてくるのかということについて最大限フォローしていく必要があります。
2. 企業におけるマインドフルネスの導入事例
【導入事例①】Google
マインドフルネスの導入事例で最も有名なのは、やはりアメリカの大企業Googleでしょう。
Googleでは、”サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)”という、瞑想を含むマインドフルネスプログラムを会社設立9年目から実施しています。
1日30分のプログラムに社員が自主的に参加するプログラムで、参加した多くの社員が生産性の向上を実感しているといいます。
【導入事例②】ヤフー
ヤフーでは、前述したGoogleのSIYを参考にしたプログラムが実施されています。
ヤフーでは、リーダーシップを適切に発揮するためには「メタ認知」が重要だと捉えており、自分のことを客観視できるような研修を実施しているようです。
また、この研修は単にメンタルヘルスや生産性の向上だけでなく、「プレゼンティズム」を高めるという意味でも重要だとされています。(プレゼンティズムとは、その人の発揮できる力の最大値のうち、どのくらいの力を実際に発揮できているかという指標です。)
マインドフルネスを実施することで、社員が100%近くの力を出せるようにもなっています。
【導入事例③】メルカリ
日本最大のフリマアプリ「メルカリ」を運営する、株式会社メルカリでもマインドフルネスを導入しています。
もともとは部活動として有志で始まったものが広がったものでしたが、後にプロコーチを招いたプログラムを実施するなど本格的に社内研修としてスタートしました。
内容は、マインドフルネスの基礎を学ぶための講義の後に、エクササイズを通じた実践があるようです。
3. マインドフルネスの実践方法
マインドフルネスの実践方法について、具体的に解説していきます。
マインドフルネスの実践方法〈瞑想〉
マインドフルネスの基礎となるのは、「瞑想」です。
①姿勢を正す
まず、脳にしっかりと酸素を送り込むために、姿勢をただします。
②呼吸をゆっくりにする
瞑想時の呼吸はゆっくりと、10秒に1回程度が良いとされています。4秒間吸いこみ、6秒間で吐くイメージですると呼吸がしやすいです。
③注意のコントロール
呼吸に集中します。他のことに注意がそれたら呼吸に注意を戻すようにしてください。
目は、開けていても閉めていてもどちらでも良いです。
目を開けながらやる場合は一点を見つめて瞑想するように、目を閉めてやる場合は寝ないように注意してください。
また、テレビやYoutubeでマインドフルネス瞑想のやり方が動画になっている場合があるので、ぜひ探してみてください。
マインドフルネスの企業研修プログラム例
ヤフーで実際におこなわれているマインドフルネスの研修プログラムを参考に、社員研修として取り入れる場合の簡単な研修例を作成しました。
①マインドフルネスの概要や効果の説明 |
マインドフルネスについて、参加者に対して説明をします。実際に参加する社員自身が研修の意味を理解し、主体的に取り組んでくれるよう、マインドフルネスを実施するメリットや効果についてあらかじめ周知しましょう。 |
②瞑想 |
マインドフルネスを実践する上で基礎となる瞑想をおこないます。心の中を平静な状態に整えることで、全員の集中力が高まり、研修としての効果も高まります。 |
③セルフコントロール |
続いて、各個人のワークに移っていきます。このセルフコントロールでは、自分の中の様々な感情や奥底にある価値観を整理します。たとえば、「もっとお金を稼ぎたい!」と思っていたとしたら、どうして思うのか、その奥底にある自分の価値観は何か、ということを各々で探っていきます。 |
④価値観の整理と内発的動機付け |
次に、セルフコントロールで呼び起こした自分の価値観を整理します。先ほど見つけた自分の根底にある価値観と、仕事との結びつきを考えてもらいます。今の仕事との関連や、その先にある未来のキャリアとの関連を考え、今後どう行動していくかを考えてもらいましょう。これにより、個々人の目指すべき方向が明確になり、それが内発的動機付けとなって仕事のパフォーマンス向上につながります。 |
⑤チームでの共有 |
個人ワークで考えた自分自身の価値観と、それに基づく行動指針をチーム内で共有してもらいます。チーム内で各個人の根底の価値観を共有することで相互理解が深まり、チームワークが向上します。また、このワークを通じてわかった各々の指向性を元に、新しい仕事を任せていくのも効果的です。 |
上記のような研修を1回で終わらせるだけでなく、定期的に瞑想の時間を設けて、精神を整えて仕事のパフォーマンス向上を狙うのも良いでしょう。
4. まとめ
最近話題のマインドフルネスについて、企業の導入事例を踏まえながら説明してきました。
マインドフルネスは、社員の仕事のパフォーマンス向上に効果があるだけではなく、ストレスの軽減や内発的動機付けとしての効果が見込まれます。
ぜひ、マインドフルネス研修を自社に取り入れてみることを検討してみてはいかがでしょうか。