新型コロナウイルスの影響により、やむを得ずリモートワークに切り替える企業が増える一方で、リモートワークへの完全移行を検討している企業も出てきています。
そんな中、創業当初からリモートワークで経営をしてきたシングラー株式会社と、株式会社overflowが、コロナ時代の「採用」と「組織」について語るセミナーを実施。
新たな生活様式への移行とともに、企業の働き方や、採用面接もリモート化へのアップデートを余儀なくされています。
- withコロナにおける採用面接の変化
- オンライン面接を成功させるポイント
上記について、シングラー株式会社 代表の熊谷さんに詳しく解説していただきました。
【人物紹介】熊谷 豪 | シングラー株式会社 代表取締役CEO
①コロナの影響で、採用面接はどう変化するのか
低次面接はオンライン、高次面接は対面の「混合型」へ移行
熊谷さん:withコロナ、afterコロナの面接は、オンライン面接と対面面接の混合型になっていくと考えています。
コロナにより、候補者が企業へ来社しておこなう面接が「不要不急」だということが証明されました。
候補者からすると、「こんな状況下でも来社させるのか」となりますし、企業側としても、「無理して来社させてよいのか」という問題があるため、現在数多くの企業で面接が停止している状態です。
そんな中、一部の会社ではすでにオンライン面接を導入し、内定を出し始めるなどの成功事例もでてきています。
さらに、オンライン面接に切り替えることにより、
- 時間が有効的に使えるようになり、面接担当の面接回数が10%近くアップした
- 選考から内定までの期間が、従来の1か月から約2~3週間で内定を出せるまでに短縮できた
- 面接に出席するハードルが下がり、選考進捗留まり率が50%から70%に改善した
といった効果もでています。
また、面接では候補者に心を開いてもらうために話しやすい雰囲気を作るなど、信頼関係を築くための”場づくり”が大切です。
しかし実は、オンラインの方が対面に比べて圧迫感が伝わりにくく、安心感を与えやすくなるなど、オンライン面接にはメリットが多いのです。
一方で、新卒の面接では、46%の学生が「対面の面接には参加したい」意思があるという調査結果もでています。
おそらく、企業の人事採用担当者側としても「1度は会いたい」と考えている方が多いのではないでしょうか。
このことから、afterコロナの採用面接は、オンラインと対面の混合型に移行していくことが予測できます。低次面接はオンライン、高次面接は対面に移行してくるというのが自然の流れでしょう。
オンライン面接は導入するのが難しそうにみえますが、文字入力に例えると「スマホのフリック入力」みたいなもので、慣れるとその良さを上手に引き出せして使えるようになります。
熊谷さん:そのため、早期にオンライン面接に慣れていくことで採用の選択肢が増え、企業としての採用力がより高まります。
「オンラインでも対面でも耐えうる採用を作っていく」ことを意識するとよいでしょう。
面接内容の変化|面接の4ステップにおける変化を理解することが重要
熊谷さん:実際にオンライン面接へ移行した企業では、現場で面接をする面接担当者から、このような声が出てきています。
- ウェブ面接で候補者に深い質問ができない
- ウェブ面接で会社の魅力を伝えられない
- リモートに合わせた面接官教育ができない
- 面接官ごとに面接力にばらつきがでる
これらの課題を解決してオンライン面接を成功させるには、まずは面接の中身を以下の4つのステップに分解し、オンラインになることによる各ステップの変化について理解することが大切です。
1 ヒアリング
熊谷さん:従来の対面の面接では、面接官は手元の候補者の事前情報をもとに、候補者とコミュニケーションを取りながら「この候補者にはこのような事項をヒアリングをするとよいのではないだろうか」という”当て勘”でヒアリングをしていきます。
対して、オンライン面接では、双方向のコミュニケーションがしづらく反応がわかりにくいため、当て勘でのヒアリングの難易度が上がります。
この当て勘を外し続けると、信頼感がどんどん低下してしまい、候補者の心は閉じてしまいます。この現象は対面でも同様です。
2 セレクション
熊谷さん:オンライン面接では、感情や機微な表情が受け取りにくいため、コミュニケーションの難易度が上昇します。
この特性から、構造化面接(質問が定型化された面接)や、一問一答方式の面接の効果が発揮されやすくなります。
3 アトラクト
熊谷さん:オンラインでは、面接に限らず、人のもつ「熱量」や「人間性」が伝わりづらくなります。
オンライン面接の際は、このような”人間力”で勝負するのではなく、相手のニーズに合わせた的確な情報を提供することでアトラクトしなければなりません。
その際に、候補者のニーズから外れた情報を伝え続けると相手の心は離れていくので注意が必要です。
4 クロージング
熊谷さん:クロージングも同様に、双方向のコミュニケーションが難しいため、適切な情報を用いた形であれば意思疎通が可能でしょう。
②面接のアップデートポイント
オンライン面接を成功させる5つのポイント
熊谷さん:オンライン面接でも面接を成功させるためのポイントを、弊社での取り組みとあわせてご紹介します。
1 候補者に対する事前理解を。候補者がパフォーマンスを出せる信頼関係を構築する
熊谷さん:面接は、いかに候補者と面接官との信頼関係を構築できるかが重要です。
そのため、弊社では、”他人に関心を持てる人”を面接官にアサインするよう心がけています。また、面接の重要性を理解できない人もアサインしません。
2 できる限り構造化された面接へ移行する必要がある
熊谷さん:オンライン面接では、その場の当て勘だけで深堀していく面接ではなく、構造化された面接でどの候補者にも同じ質問を投げかけ、その質問に対する回答に対してどう評価するのかという判断をすることで面接の精度が高まります。
3 熱量や人間力で押し切るより、的確なヒアリングをもとにした情報提供が重要になる
熊谷さん:候補者へのアトラクト(動機づけ)として、いつでも候補者の知りたい情報を提供できるように、僕らのバリューやミッションがどういうものなのかを紙にまとめて面接官に読み込んでもらっています。
また、弊社では「こういう人材は求めていないよ」ということをはっきり伝えることも、双方のために大切だと考えています。
4 ニーズを取り違えると合意形成が水の泡になりやすい
熊谷さん:弊社では、できる限り候補者や社員の「選択」を大切にしています。
面接においても、候補者に働き方や仕事に対する考えを提示してもらうことで、自社の制度や風土を柔軟にすり合わせて合意形成をおこなっています。
5 人事以上に面接官のケアが重要になる
熊谷さん:面接を成功させるには、面接官のマインドセットと事前情報の準備が全てです。
内定辞退の多発する企業の面接をうけた候補者に「なぜそこの企業の内定を辞退したんですか?」と質問すると、「面接官がやなやつで」という回答が返ってくることが多くあります。
採用面接は、人事以上に、面接官のケアが非常に重要なのです。
③採用面接における候補者体験(CX)
「候補者体験」とはなにか?
熊谷さん:私たちは、採用面接の際に候補者に対し、「目の前の人は未来の仲間か未来の顧客である」というポリシーをもって採用に臨んでいます。
これは弊社の開発している人材分析サービス「HRアナリスト」のサービス思想でもあるのですが、企業が候補者に対して「良い候補者体験」を提供できないと、結果としてお互い不幸であるという思想です。
候補者体験とは、候補者が企業の採用において応募から内定までの一連の流れでする体験のことを言います。
圧迫面接や、的外れな質問をし続けるなどをして、候補者にとっての候補者体験が良いものではなかった場合、入社意欲が下がり内定辞退が多発し、結果的に採用に失敗する可能性が高くなります。
そのため、弊社の面接は、意気込んで候補者を「見抜く」のではなく、候補者について「理解する」というスタンスでおこなっています。
面接成功のカギは「事前準備」
熊谷さん:面接をおこなう上でとても重要なのが、事前に資料を準備することです。
弊社の採用では、「HRアナリスト」を使い、その準備をおこなっています。
HRアナリストは、候補者へ面接の前にアンケートをうけてもらうことにより、その回答結果を元に、候補者の性格や価値観、仕事へのニーズやおすすめの質問項目などが記載されている面接マニュアルを出力できるサービスです。
HRアナリストを使い、事前に候補者のニーズや性格を認識しておくことで、ヒアリングに長い時間を割かず、セレクション以降の時間を有効的に使えるようにしています。
また、HRアナリストが出力する結果に、「候補者にニーズのある情報はこんなものです」という項目があるのですが、それをもとに、どのような情報を出さないといけないのかをあらかじめ資料にして面接官に渡す、という準備をおこなっています。
このように、事前に候補者の情報をなんらかの形にまとめて準備しておくことで、対面でもオンラインでも耐えうる面接を実現することが可能です。
オンライン面接に適合するためには、必然的に自社の採用を見直す必要があります。
見直すということは、より採用に強くなる、ということでもあるので、ぜひこのタイミングでオンラインでの採用に切り替えてみてはいかがでしょうか。
【候補者体験(CX)向上に役立てるのがHR Analyst】