人手不足や国際化が進むいま、専門的なスキルや知識を必要とする仕事に就くことができる「高度(外国)人材」に、日本企業からの注目が集まっています。
今回は、「高度(外国)人材」の採用をしている企業に、外国人採用の方法や、採用後の課題と乗り越え方についてお伺いする企画、「外国人財採用虎の巻」第4弾をお届けします。
第4弾では、HENNGE(ヘンゲ)株式会社(以下:HENNGE)で執行役員をされている汾陽(かわみなみ)さんにお話を伺いました。
HENNGEは、「テクノロジーの解放」を掲げてデジタル製品の開発・販売をしている東証マザーズ上場企業で、社員全体の約20%が外国人社員です。
本記事では、外国人採用の契機や、採用後の課題と解決法、そして日本のグローバル化についてのお話も伺いました。
外国人採用を検討されている方や、採用後の定着や育成に悩みを抱えている方に、参考にしていただけますと幸いです。
目次
外国人採用のきっかけはガチャバブル?!
ーはじめに、HENNGEが設立されたきっかけを教えてください。
汾陽さん:当社は現社長の小椋と、副社長の宮本、永留の3名がインターネットを介して知り合ったことをきっかけに、第1期ITバブルの流れに乗る形で1996年にホライズンデジタルエンタープライズ(旧名)として創業しました。
現在国内は東京、名古屋、大阪、福岡に拠点があり、海外は台湾に拠点があります。
創業からずっと、ITの力を使って少しでも世の中を良くしていきたい、という意味を込めた「Revelation of Technology(テクノロジーの解放)」というスローガンのもと、IT関連ビジネスを展開してきました。
主にBtoB向けの事業をおこなっており、現在の主力商品は2011年からスタートした「HENNGE One(ヘンゲ ワン)」というクラウド向けのセキュリティーサービスです。
社用PCなど、特定のデバイスからしか社用メールや情報管理ツールなどにログインできないようにしたり、ログインをしたデバイスを特定できるようにしたりすることで、セキュリティ保護をするツールです。
―まさに時代をとらえたITシステムを開発されてこられたのですね。
汾陽さん:HENNGE Oneの開発をはじめた2010年頃は、ちょうどクラウドが登場した頃で、その登場は僕らにとって衝撃的なものでした。
これまでシステムは何年もかけて開発した商品をお客様に購入してもらい、5年間くらい使っていただいて、また買い替えてもらうという約5年周期の購買サイクルでした。
しかしクラウドが登場してからは、月々いくら、年間いくらと継続的に売上があがるようになったんですね。
そして、このクラウドを利用して急速な成長を見せたのが、ソーシャルゲーム市場でした。
2012〜14年頃にいわゆる「ガチャバブル」が到来し、多くのソーシャルゲームのプレーヤーが課金をして、開発側も新機能の追加に追われるようになりました。
その結果、新たに出てきた課題がエンジニア人材の採用難でした。
ー外国人採用をはじめられたのもその時期でしょうか?
汾陽さん:はい。実はこの採用難で、エンジニア候補として期待していた若手社員が、大企業の引き抜きにあいました。
そのタイミングで、当社にメシア(救世主)のように現れたのが、ベトナム人大学生のNさんでした(笑)。
彼はシンガポールでトップクラスの大学でコンピュータサイエンスを専攻している学生で、当社にたまたまインターンの応募をしてきました。
恥ずかしいことに、それまで僕らは海外のことを一切知らなくて。
「聞いたことがない大学名だけど、面白そうな人材だ」という理由で採用することにしました。
Nさんは日本語を話すことができないので、コミュニケーション方法を探していたところ、帰国子女の社員に英語の仕様書を作成してもらうことができました。
それから早速Nさんを迎え入れたのですが、まさかの「超」優秀な方で…(笑)。
調べてみると、彼の通う大学は、アジアで世界ランキング1位の理系大学だったのです。
しかし、彼に正社員のオファーを出してみると「国から奨学金をもらっているので、シンガポールで働いて返さなければならない」と言うのです。
さらにNさんが言うには、シンガポールだと新卒エンジニアの年収は900万円で、GAFA*に就職すると年収1,800万円がもらえるそうです。これにはさすがに驚きました。
汾陽さん:ところがよく聞いてみると、もしもシンガポールで就職できなかった場合、在留資格の関係でベトナムに戻って働かなければならならないとのことでした。
当時のベトナムは新卒エンジニアの年収がわずか60万円。Nさんの話を聞いて、「彼のような人材がアジアにはもっといるのでは?」と思うようになりました。
そこで実際に、東南アジア諸国のトップ工科大学に行ってみることにしました。
汾陽さん:すると、予想通り各国で非常に多くの優秀な工科大学生たちに出会えたのです。
嬉しいことに、東南アジアの理系学生たちはアニメやゲームなどの日本文化を通して日本が大好きな方ばかりで、いまどきの日本のアニメもよく見ているようでした。
また、シンガポールを除く東南アジア諸国では、エンジニアの年収が日本より低いこともわかりました。
そこで各国のコンピューターサイエンスを学ぶ大学生たちに声をかけていったのですが、学生から言われたのは「僕たちは日本語を話すことができないので、日本で就職することを諦めている。」ということでした。
社長にそのことを伝えると、当時社員が100名程だったこともあり、「日本人社員たちが英語を話せるようになった方が早い」ということで、各国の工科大学生たちの採用と社内公用語の英語化に踏み切ることにしました。
採用はインターンシップとテックカンファレンスを活用
―外国人採用の方法は、大学訪問がメインになるのでしょうか?
汾陽さん:各国の大学でジョブフェアを開催したり、インターンシッププログラムを活用したりしています。
インドネシア人、台湾人、中国人のメンバーからなる外国人採用専門のチームがあるのですが、海外の大学に連絡を取って大学のポータルサイトなどに当社のインターンシッププログラムを載せてもらったりしています。
あとは社員がテックカンファレンスに参加する際、いい人材がいたら声をかけるように頼んでいます。
ー具体的な人数だと、現在外国人社員はどのくらいいらっしゃいますか?
汾陽さん:全体に占める外国人社員の割合は20%くらいです。
出身国、性別、年齢、宗教が自分の中ではあまり関係なくなってしまったので、全体の正確な数値をとることは諦めました(笑)。もちろん人事はきちんと把握していますが。
ただし把握している範囲でいうと、出身国数が18カ国くらいで、地域もさまざまではありますが、インドネシアが一番多いです。
社内の様子
―基本的に外国人材については正社員採用でしょうか。
汾陽さん:インターンとして来てくれている外国人社員もいますよ。
いま僕のアシスタントをしてくれている方も日本の大学に通っているベトナム人の学生です。
当社では海外にいる学生向けにインターンシッププログラムを提供しているのですが、日本に2カ月滞在できて、渡航費と月15万円程の実費を会社が負担します。
このプログラムに応募するには、「アドミッションチャレンジ」と呼んでいるプログラミングの試験を合格しなければならないのですが、それでも毎年2,500名〜5,000名の応募が世界中から集まります。
受け入れ人数は1回につき4名で、それを1年間に6回おこなっているので、最大でも年間約30名弱のインターンを受け入れています。
さらにその約30名の中から、毎年5名くらいが当社に入社しています。
インターンシップの参加者たち
ー倍率でいうとすごいですね。まさに選ばれし人たちが採用されているんですね。
汾陽さん:本当にそうですね。だからこそ、彼らが快適に働けるようにいろいろ工夫しています。
オフィスから席をなくしてどこで働いてもいいようにしたり、コミュニケーションランチといって、月2回会社がケータリングの方にお願いして、みんなでご飯を食べる取り組みをしたりしています。
イスラム教徒の社員向けに、「プレイヤールーム(祈祷室)」をつくったりもしました。
あとは、居酒屋での飲み会を辞めました。
はじめてイスラム教徒の人を採用した時に居酒屋に連れていったことがあるのですが、出てくる料理すべての材料や調味料を調べはじめて…。
こちらも気を遣うのが面倒くさくなってしまって(笑)、会社で飲み会をするようになりました。
ハラル料理(イスラム教徒の教えに則った料理)のデリバリーを頼んで、お酒も買って、飲みたい人は飲むという形にしたら、居酒屋に行くよりもコストが安くなって結果的に良かったです。
多国籍チームでつくりあげてきた働きやすさへの取り組み
ーHENNGEでは「コーヒータイム」などの取り組みもあると伺いました。
汾陽さん:文化行事はいろいろしています。
コーヒータイムは、自発的につくられたコーヒータイム用のSlackグループがあって、ボットが「あと10分でコーヒーができあがります」とお知らせしてくれます(笑)。
僕らは出張に行ったらお土産でコーヒー豆を買って帰るのですが、「今日は誰々が買ってきたコーヒー豆だ」「酸っぱいね〜」なんて会話をしながら一緒に飲んでいます。
それからもう1つ自発的にはじまったことで、毎週水曜夜に英語でおこなうボードゲーム会があります。
いろいろなボードゲームを会社のお金で買って、外部ゲストを呼んだりしています。
毎回会社から1人あたり1,500円支給されるので、そのお金でピザを頼んで食べたりゲームで遊んだりしながらいろいろな話もします。
社内の様子
ーご紹介いただいたような社内の取り組みは、どのようにして現場の声を集めて、企画に落とし込んでいるのでしょうか?
汾陽さん:最初はGB(グローバル)チームというものをつくりました。
そのチームには、社内のIT部門の社員や社長、あとは外国人社員や英語を話すことができる社員が入っていて、会社の課題を集めながら週1回ミーティングをして、改善策を考えていました。
社長が開発者なので、開発者に寄り添うような改善がされていましたね。
例えば、満員電車を避けるために出勤時間を変更したり、自分のパソコンで仕事ができるようにしたり。
使いたいツールや技術書も経費で購入できるようにして、大きいモニターも一人一台用意しました。
エンジニアは、理不尽で理由のない制約や効率が悪いものが嫌いなので、そのような会社の決まりを押し付けるのではなく、なくしていく方向で動いていました。
だから一時は「開発者天国だね」と話したりもしていました(笑)。
外国人採用自体もそうですが、いまお話しした改善策の実装も、最初は開発畑からはじめています。
それから徐々に現場やバックオフィスでも外国人社員を採用するようになり、さまざまな施策も横展開していきました。
ー外国人採用をして社内にどのような変化がありましたか?
汾陽さん:実は、1番はじめにベトナム人のNさんを採用した時から、外国人採用の良さを実感していました。
2つポイントがあって、1つ目は偶然でもあるのですが、社内に元々いた人材の才能を発掘するきっかけになりました。
Nさんを採用したときに、社内に帰国子女がいた話をしましたが、正直彼はそれまで注目される機会が少ない社員でした。
ところが、外国人採用をきっかけに社内公用語の英語化がはじまると、彼の英語のプレゼンなどが群を抜いて上手く、それを機に頭角を表すようになりました。
いまでは彼が台湾拠点の社長をしています。これはまさに外国人採用をはじめたからこそ開花した才能だと思います。
2つ目は、社内に異文化の人たちがいると純粋に面白くなりますよね。
普段からいい意味でのカルチャーショックをお互いに感じながら、そこから学びを得ることができています。
エンジニアの採用からはじまった外国人採用でしたが、いまでは人事、営業、SE、経理など大体どの部署にも外国人社員がいるようになりました。
もはや開発チームは、ほぼ全員外国人社員です。
それでもまだ役員には外国人社員がいないので、早く役員に上がって欲しいなと思っています。
公用語英語化までの苦悩とその乗り越え方
ー日本語を話すことができる外国人社員はどのくらいいらっしゃいますか?
汾陽さん:当社は日本語を一切使わずに入社試験が受けられるので、入社当時まったく話せなかった人もいます。
それでも3年くらい日本にいると、ほとんどの外国人社員が日本語の聞き取りはできるようになっていますね。
当社の公用語は英語ですが、当社のマーケットで一番大きいのは日本なので、実は日本語も主要言語として位置づけています。
そのため外国人社員が、日本語能力試験で最高レベルの「N1」を取得して、さらにスピーキングテストに合格したら給料を50万円アップする制度を設けています。
―日本人社員の英語スキルの方はどのようにして上げていったのでしょうか?
汾陽さん:当社は社長からのトップダウンで社内公用語の英語化がはじまりました。
そこでまずは社員全員にTOEICを受験してもらい、みんなでいろいろなツールを使って英語の勉強を開始しました。
全体のTOEICの点数を集計して、3年間でここのラインまでみんなで到達しましょうという目標点を提示しておこなっていたのですが、その結果全体の平均点が760点くらいになりました。
いまでは若手だけではなく古株社員も、みんな英語を話せるようになっています。
あとは「CEFR(セファール)」という、ヨーロッパを中心に使われている外国語の語学力を表す国際標準規格があるのですが、その指標で役員は「B2」、マネージャー、リーダーは「B1」を取ることが昇格条件になっています。
(CEFRのレベル表:文部科学省資料を参照)
汾陽さん:B2の1つ上にあたる「C1」が、海外で4年間学んでいた人や高校まで海外にいた人であれば取ることができるレベルです。
語学レベルに応じた年収アップもあって、上から2番目のレベルであるC1を持っていると年収50万円アップします。
また、日本人への英語学習支援として、Skype英会話やスタディサプリを受け放題にしたり、成績優秀者にセブ島留学をプレゼントしたりしています。
外国人社員には日本語の先生を会社に呼んだり、Skypeの日本語学習支援を使ったりしています。
社内の様子
ー英語化に対する社内の反応はいかがですか?
汾陽さん:いろいろありましたが、社内の日本人社員もいまは英語化に納得してくれている様子です。
僕個人の話になるのですが、はじめての海外出張で取引先企業と商談した際に、自分の言いたいことを他の社員に訳してもらったところ、伝えたいこととずれているなと感じたことがありました。
そこで知っている単語と、世界共通言語でもある専門用語を使って、不足分は図を描きながら説明したところ意外に通じた。
この経験から、異文化の相手とのコミュニケーションは言葉だけによらないと学んで、英語に対するハードル自体も下がりました。
その後担当した当社の海外進出では、英語を使うことで世界中の人と仕事をすることができ、かけがえのないつながりもつくることができました。
だからこそ、もっと多くの社員にもその経験を伝えたいなと思っていますし、実際に他の社員が僕と同じような経験を社内でしたことで、いまでは英語化に理解を示してくれています。
現在は経理やバックオフィスでも外国人を採用できるようになったという話をしましたが、それを実現できたのも、会社が社内公用語の英語化を3年計画で進めていたからです。
社員全員がある程度英語を話すことができるようになったことで、開発以外の部署でも優秀な外国人を採用できるようになりました。
ー外国人採用や英語化で何か課題やトラブルなどはありませんでしたか?
汾陽さん:僕が海外勤務から帰国したのが、ちょうど英語化や外国人採用がはじまったあたりで、その頃には全員が把握しきれないほど社員が増えていました。
そしてこの状況で、人事が全員辞めてしまいました。
ー全員辞めてしまったんですか?!
汾陽さん:そうなんです。外国人社員の受け入れがもう大変で。
就労ビザの申請に加えて、健康診断や避難訓練の案内など英語化に係る業務に追われていました。
そうしたら「もう無理です」と、人事の人たちが1人、また1人と辞めていってしまったのです。
そのため、別の部署にいた何人かが集められて急遽人事担当になったのですが、その時に僕も人事に配属されました。
ーそれは大変でしたね…新しい人事組織ではどのようなことを変えていったのでしょうか。
汾陽さん:行政書士の良い先生が見つかって、いまは就労ビザの申請をその方に申請代行をしていただいています。
それから通年採用に変えることで、兵役がある国の人たちや就労ビザの申請に時間がかかる人たちも柔軟に採用できるようにしました。
完全にはわかりあえない相手とルールをつくることの重要性
ー言語の壁や就労ビザ申請以外にも、外国人採用では外国人社員の離職率がよく話題にのぼりますよね。
汾陽さん:僕は3年いてくれたら良いと思っています。
他の国ではもっと高い給料で働けるような優秀な人が3年も働いてくれるわけですから。
エンジニアだと、5年間ずっと同じところで働くのはスキルアップも考えると微妙だなと考える方は多いですよ。
反対にシンガポール人で、当社で働いてからシリコンバレーに行って、あまり合わなくて帰ってきた人もいます。
ミーティングの様子
ー離職率とならんでよく聞く、外国人社員と日本人社員間での情報格差についてもお聞きしたいです。
汾陽さん:その課題も大変ですよね。
やはり情報格差はあると思いますよ。ちなみに当社は会社の書類は徹底して英語です。
今度ある避難訓練も、すべて英語でおこないます。
会話は何語でもいいことにしているので、日本人同士は日本語で話していますし、中国語を話す人たちは中国語で話していますが、書き言葉は必ず英語にするように会社で決めています。
文章の場合そのままコピー&ペーストして共有することもありますからね。
それから輪の中で1人でも日本語を話せない人がいたら、共通言語である英語で話すことにしています。
それでも役員は全員日本人なので、そこには情報格差があると思います。
伝えていると思っていても、日本人が思っている以上に外国人社員には伝わっていないこともありますので。
ーその他に、現在課題に感じられていることはありますか?
汾陽さん:日本人社員や外国人社員の中に役員やマネージャーに上げていきたい人たちもいるのですが、一筋縄ではいかないことです。
たとえば、日本人社員の中には英語がハードルになってマネージャーになれない方もいます。
一方で、当社の売上の9割が日本で、顧客も日本人のIT部門のトップであることが多い中、外国人社員が急に行っても難しいことがあるため、そのようなポジションに外国人社員たちをつかせにくいということがあります。
あと僕は普段外国人社員たちと接する機会が多いのですが、現場に出て営業をしている日本人社員たちは外国人社員とあまり接点がないので、お互いそこまで知り合えていないところがあります。
いくらコミュニケーションランチを開催しても、表面上のことがわかるだけで、一歩踏み込んでお互いに理解するところまでいけるかというと、難しい部分もあります。
外国人同士の中でも、アジア系と欧米系で文化も違いますし、時間に対する考え方も違いますよね。
グローバル化にどのように適応していくかは会社ごとだと思いますが、「ダイバーシティ」について一度日本人社員と外国人社員がお互いに理解し合うことが大切だと思っています。
その上で、お互いにここまでは守っていこう、とすり合わせて会社のルールをつくっていかないと、今後国籍関係なく人を採用しにくくなると思います。
日本企業のグローバル化は必然
―完全にはわかりあえない相手でも、話し合ってルールをつくりあげていくことが、グローバル化への対応や人材の確保で必要になるということでしょうか。
汾陽さん:そうです。というのも、いま日本の人口はとても減っていて、働き手も減っていますよね。
この10年間で、東京のコンビニとカラオケと牛丼屋は、現実問題外国人の力がないと成り立たなくなっています。
先日会った京都の和菓子屋さんも、売り子がいないのでお菓子をデパートで売ることができないと言っていました。
その一方で、もっと稼ぐことができる国や地域をインターネットで簡単に調べられるようになった今でもなお、日本で働きたいと言って来てくれるエンジニアの人たちもいます。
これはきっと、エンジニアに限らず他の部門でも起こるだろうと思っていて。
例えば観光名所や地方で、自分の親世代がはじめたコンビニは、日本人の息子や娘が後を継がないのでどんどん潰れていっていますが、コンビニで働いている外国人スタッフはよく見かけますよね。
―まさにその状況は、いま外国人採用が注目されている理由でもありますよね。
汾陽さん:ただ、せっかく日本に憧れて来たのに、日本式のコンビニで上からいろいろ言われて、働いてみたらこんなひどい国はないと思って帰ってしまうことにもなり得ます。
それこそ地方で、介護や建設の現場で働いている、高度人材ではない外国人の方たちの中には搾取をされている人もいて、下手したら月10数万円で働いている。
でももうすでに、エンジニアでなくても彼らは自国で働いたら同じ給料を稼ぐことができるようになってきています。
―今までのやり方では、外国人材も日本に来なくなるのでしょうか…?
汾陽さん:そう思います。外国人材が、同じ給料なら自国の方が快適だから実家に近いところで働こう、となってしまえばそれこそ日本は立ち行かなくなってしまいますよね。
だからこそ、僕は日本の企業は早めに外国人採用をはじめた方がいいと思っています。
早めに多様性を受け入れることで、文化を受け入れ合って、新しい基準を会社で一緒につくることができます。
外国人社員と働くことができる新しい体制にしないと、今後は会社が成り立たなくなるとも考えています。
確かに、外国人採用の課題は何かと言われると、課題だらけです。でも課題って、どこにでもあるものですよね。
だからこそ、特に外国人採用の課題というのは、早くはじめることで早いうちに乗り越えていった方がいいと思っています。
ー最後に改めて、外国人採用を検討されている日本の企業へのメッセージをお願いします。
汾陽さん:外国人採用は、遅かれ早かれやらなければならなくなるはずなので、早くやったほうがいいと思います。
難しいとは思います、急にやれやれと言われても。それでも、やらざるを得ないのではないかと思います。
僕が個人的に良いと思うのは、社員を海外に送ることです。
海外でマイノリティの経験をして、言葉が通じない苦労や海外の不便さを知ってはじめて、日本の良さもわかると思います。
急に外国人が職場に入ってくると、はじめはうまく意思疎通が取れないがゆえに、いろいろ大変なこともあるかとは思います。
ですが、海外から来た外国人社員の方々は本当に優秀ですよ。
これからの時代生き残っていくためにも、外国人採用は早めにはじめて損はないと思います。
社内公用語が英語の日本企業は少ないなか、今回は英語化を進めていたご本人からそのお話をお伺いできる貴重な機会となりました。
「言語の壁は、高いようで意外と低い」。
だからこそまずは、外国人採用をはじめて少しずつコミュニケーションを取って、互いに働きやすいルール作りをしていくことが重要なのかもしれません。