成長企業で組織づくりへのこだわりを持つ社長に、同じく成長企業で組織づくりにこだわりを持つ社長をご紹介いただく「組織のDNA」。
Vol.5は株式会社ディ・ポップスグループ 後藤社長からご紹介をいただき、株式会社ポジティブドリームパーソンズ 杉元社長に組織づくりのこだわりをお伺いいたしました。
1|求心力と遠心力を使い分ける組織づくり
ポジティブドリームパーソンズは、ホテル・レストラン・ウェディング施設などの企画・運営事業をおこなっているのですが、その事業をおこなう上で一番大切なのはお客様に直接サービスを届ける「人」だと思っています。だからこそ、創業当時から特に人を大切にして事業・組織づくりをしています。
そのために、求心力と遠心力を使い分けるような組織づくりをすることにこだわっています。具体的にいうと、求心力はビジョンや理念という会社が向かうべき方向を示しながら、HRM(ヒューマンリソースマネジメント)を1つ1つ作戦を立ててつくっていくこと。
一方で遠心力は、任せられる人にある程度権限委譲をして、自分以外の責任者が自分で判断して動ける状態をつくることです。
そのためには、社長である自分が現場に入るのではなく、いかに「監督」の役割に持っていくかが大切だと考えています。
起業の初期段階は、監督がほとんどプレイングで動きながらマネジメントをおこなうと思いますが、経営ステージが進んだ段階になって「(ミドルマネジメントに)コーチをさせるにはまだ不安があるから任せない」と考えると会社が伸びないと思っています。
創業社長が1つ1つ指示をすると、一見スピーディーにものごとが進んでいくように見えますが、一定のサイズになるとミドルマネジメントに任せてレバレッジをかける必要があります。
そこは、かなりこだわりを持って任せています。そうしないとミドルマネジメントが大成しません。
そして、求心力を形成するHRMの中でも特に人事評価、そして遠心力を形作る上で大切なマネジメント層の育成においても、「人として」という人格や人望を大切にしています。
2|「人格」「人望」がなぜ組織において大切なのか
この考え方に至った転機は、30歳で起業して10年が経った40歳手前くらいの時です。
遡ると、30歳で起業しようという思いに至るきっかけをいただいたのは、20歳くらいの時に私がアルバイトで働いていたバーにいらしていた方です。
その方がライフミッションを持つことが大切だとおっしゃっていて。それを成し遂げるためにただ朝起きて、電車に乗って…と何となく過ごすのではなく、明確な目標を持って生きることが大切だと徹底的に教えてくれました。
そして、30歳で起業する時に自分のライフミッションを1泊2日で考えました。
その時に、30代は多くの人たちに夢や可能性を与えられるような人になって、たくさんの感動を世の中に提供できる自分やチームをつくっていくと決めました。
そして、起業して10年。10年で売上100億を達成すると社内外で公言していたのですが、結果10年で到達したのは60億。
100億と宣言して60億の売上になっていれば十分ではないかという見方もありますが、100億達成するといったら達成すべきは100億なんです。
有言実行ができなかったことが本当に納得できなくて、これが非常に大きな転機でした。
そこでその原因を考えたときに、もしかすると自分が思っている以上に僕自身の人望が揺らいでいて、ちゃんと信頼してついてきてくれている社員は多くないのではないかと感じました。未達成は自分の責任だと。
事業も社員数も伸びているものの社員の離職が多く、なんだか人がついてきてくれている感じがしなかったんです。
会社は大きくなっているものの、社員1人1人の会社に対するコミットメントが高まっていないように感じて、積み上げているのに足元が緩い気がするという感覚が非常に気持ち悪く感じたのを覚えています。
「僕としては伝えたのに、なんで社員は覚えていないんだ」「なんでこれをやっていないんだ」と社員に対して違和感を感じることがありましたが、それを実行できるチームにできていないのは自分の責任だと。
自分に矢を戻していかないと、結果的に人がついてくる、素晴らしい会社にはなっていかない。組織をつくるには、人格や人望こそが大切であると感じました。
自分が人としてもっと成長しないと、社員も人として成長しようという気持ちにはならないと改めて考えるようになったのが40歳手前の時でした。
よく言われることですが、経営者の器以上に会社は大きくならないんですよね。
同時期に、仕事で海外に行った時に、海外の方の経営能力や交渉能力の差を知り、自分に足りないものが見えました。
それを最短距離で埋めたいと思い、経営と組織について学びを深め、そこで学んだHRMの6つの型(採用・評価・配置・報酬・育成・出口)を使ってもう一度組織づくりをおこないました。その時、大切にしたのが人格形成の観点です。
3|HRMの6つの型と人格形成
HRMは、6つの型(採用・評価・配置・報酬・育成・出口)を使って組織づくりをしています。
そして、そのHRMの型をつくる際には、自分が40歳の時に大切だと痛感した人格形成の観点を大切にしました。
3-1|採用
スキルセットをみる採用から、理念型採用に変え、新卒採用を開始しました。
それまでは、経営の軸足を全部中途でカバーするという考えで新卒採用を一切おこなっていませんでしたが、新卒採用を軸足に持っていくという形態にガラッと変えました。
3-2|報酬
金銭報酬と非金銭報酬の仕組みを整えて、金銭報酬はもちろんですが、働きがいにつながるための文化形成に力を入れました。
3-3|評価
MBOのような形式に加えて、マネジメント層には360度評価を導入しました。当社でマネジメント層になる人は、この人の元だから頑張れるとか、あの人だったら推薦できると思われるマネジャーが伸びる。
そして、メンバーもマネジメント層の人格や人望をリスペクトする傾向が高いですし、会社としてもそこを重視したい。
そのため、評価制度の骨子は、人間力をつけるために中国の儒教の教えにある「仁義礼智信」という考え方でつくっています。
【仁義礼智信】
仁 他人に対する思いやり、従順、仁愛、愛情。また惻隠(そくいん)の情。
義 正義、平等、公正、清廉、義理、不善を恥じにくむこと。
礼 尊敬、礼儀、礼儀正しさ、権威に服従すること。
智 善悪を弁別する是非分別。
信 信義、誠、誠信、人間の交際における信義と誠実。
引用:Wikipedia
3-4|育成
PDPカレッジという仕組みをつくって、これでもかというくらいちゃんと学ぶ3つの仕組みを考えています。
①PDPビジネスカレッジ
ビジネスパーソンとしての基礎を習得するものです。ロジカルシンキングやプレゼンテーションスキルなど、成果を出すための基礎的なスキルを学ぶ構成になっています。
②PDPマネジメントカレッジ
マーケティングやリーダーシップなど、マネジャーに求められるスキルを学びます。
ビギナーコースは内製でおこなっていて、初めは顧問で関わっている方に講師を担っていただきましたが、今は受講したマネジャーが講師になって、次の受講者に伝えるという流れを作っています。
プロフェッショナルコースは、グロービス経営大学院の単科を受講し、クリティカルシンキングなどを学んでいます。
③PDP大学院
企業家に必要な力を育成するために、次期幹部候補として任命された社員がグロービス経営大学院に通学しています。
他社の方と一緒に学ぶことで自分たちの位置付けが見えるので、他流試合をすることを大切にしています。
3-5|配置
当時、店舗への帰属意識はあるものの会社への帰属意識が薄く、異動がおこないにくいという問題がありました。
そこで、理念を反映させた評価システムをつくり、店舗ではなく会社に属している一体感を感じられるよう、僕が社内のメンバーと飲みニケーションを始めました。
飲みニケーションの頻度は、経営チームとは年12回、マネジメント層とは年12回、現場のメンバーとは年14回飲みに行っています。
マネジメント層に関しては、タモリさんがやっていたテレビ番組「いいとも!」のテレホンショッキングのように、飲み会に参加したマネジャーが次のマネジャーを紹介するシステムにしていて、僕から次のマネジャーに電話をして「飲みに来てくれるかな?」「いいとも!」というスタイルにしています。
会社が大切にしている理念や、みんなにも忘れてほしくないというテーマがあるのですが、それを食事をしながら伝えて話し合う場にしています。
3-6|出口
出口戦略は、最近はあまりおこなっていませんが、理念や文化と合わなかった場合はお互いのために「違うかもしれないね」ということをお互い伝えやすくする文化形成をしています。
そして、今はおこなっていないのですが、人格形成のために「心門塾」という、人としてどうあるべきかを考える学びの場を設けていました。
それに替わって今は、マネジメントメンバーへの課題図書とそのレポートの共有をおこなっています。
2ヶ月に1度、マネジャーに読んで欲しい本を僕から伝えて、A4用紙1枚でまとめたものを名前を伏せて共有し合っています。
そうすることで、自分とは別の視点の感想をお互いに知ることができ、学びにつなげていくことができるのです。
株式会社ポジティブドリームパーソンズ
代表取締役社長
杉元 崇将
設立
1997年7月1日
事業内容
- ホテル施設の企画 、運営事業
- レストラン施設の企画 、 運営事業
- ウェディング施設の企画 、 運営事業
- バンケット(宴会)施設の企画 、 運営事業
- フラワー施設の企画 、 運営事業
- コンサルティング事業