こんにちは。HR NOTE編集部の藤本です。
2020年卒採用も、3月に広報解禁をむかえました。企業の成長戦略のひとつとして、積極的な新卒採用を展開する企業も多いのではないでしょうか。
今回は、17年卒から本格的に新卒採用に着手し、「会社の未来を創る採用」という強い想いを持ちながら採用活動に注力する株式会社SOUの人事部のお二人にお話を伺いました。
人事部メンバー一人ひとりが事業と人の架け橋となり成果を生み出し、強い組織づくりを牽引するSOU人事部の秘密に迫ります。
株式会社SOU|https://www.ai-sou.co.jp
SOU人事部が大切にするのは、「人が組織を創っている」というシンプルな考え
SOU人事部はどんな組織なのか?
ーーSOUの新卒採用に関わる外川さんと大森さんは、どんなご経歴なのですか?
私はファーストキャリアで入社したのが国内大手の電機メーカーで、新卒で人事に配属されてから、ずっと人事領域の仕事に従事しています。
次に転職したのは外資のアパレルメーカー、その後内資のベンチャー企業に転職したので、大手からベンチャーまで、また外資から内資まで、幅広い業態の人事領域に携わってきました。
今はSOUの人事部長として、採用や労務を担う人事課と、教育研修を担う人材開発課の2つをマネジメントしています。
また、従業員の「働きがい」や「やりがい」を追求していく組織エンゲージメントに関しても注力しています。
私は、学生のキャリア支援や新卒採用・中途採用の企業支援を事業として展開する人材系のベンチャー企業に新卒で入社しました。
ですが、5年ほど企業の採用支援・学生支援をしながら、困った時にスポットで関わるのではなく、しっかりと一つ一つの施策を効果検証しながら、その会社独自の正攻法を開発していくような仕事がしたいと思うようになったんです。
支援する側ではなくて、採用そのものにもっと関わっていきたいという気持ちが強くなって、転職を決意し、SOUに人事として入社しました。
ーーSOU人事部はどんなチームなんですか?大切にしていること、これだけは譲れないというような想いなどはあるのでしょうか?
企業が人を採用し、育成していくのは何のためかと考えると、それは事業を創り、発展させていくためだと思うんです。
SOUで働く「人」に関わる人事だからこそ、「人」が会社の事業を牽引し、支えているということを真摯に考えなければいけないと思っています。
自分たちの仕事が、会社の成長そのものを左右すると言っても過言ではありません。
人事は、経営と事業と三位一体。会社が「こう成長していきたい」と思う方向に向かって、具体的な人事戦略を描くのが人事の仕事なんです。経営メッセージの具現化が人事戦略施策ですね。
今、SOUはまだまだ成長過程にあり、事業の成長スピードに合わせ、積極的に採用活動を行っています。
その中で、一般的には「必要人数を採用しなくては」という気持ちになりがちなのですが、忘れてはいけないのは「SOUの成長にはどんな人が必要なのか」というポイントです。
人数だけではなく、会社が大切にする理念に共感して、組織全体で相乗効果を生めるような「人」を採用することが人事部のミッション。
「この方は、どう事業・組織に貢献してくれそうか」「この方が入社したら、会社は前に進めそうか」と、事業目線で考えることを大切にしています。
マーケティングを繰り返し、満を辞して臨む新卒採用
ーーSOUさんは、今度の20年卒採用が4期目の新卒採用だと伺ったのですが、どんな風に進めてこられたんですか?
これまでの新卒採用を振り返ってみると、毎年いろいろな挑戦をして、少しずつブラッシュアップしてきた感じです。
SOUが新卒採用を始めたのは、17年新卒からです。現在、新卒採用の手法も実に多岐にわたりますが、当時は本当にオーソドックスな形でスタートしたんですよ。
就活サイトに求人を出して、説明会で社長が話して、そのあと選考が3回、一次面接は採用担当、二次面接は担当部長、最終面接が社長です。
17年卒採用においては、結果、5名の採用目標に対して、3名入社だったんですね。
掲げた目標を達成できなかったことが、個人的には全然おもしろくありませんでした。(笑)
学生に対する知名度も何も無いSOUが、何万社の採用情報が掲載されている就職サイトで説明会の告知をするくらいでは、学生は集まらなかったんです。正直なところ、採用活動をしながら「もっと、私たちから学生に会いにいかなければ、会社の存在に気づいてもらえない」と思いました。
18年卒採用においては、大きく採用の入り口を変えました。
まずは、積極的に学生に会いにいこうと、スカウト型の就活イベントとダイレクトリクルーティングを軸とした母集団形成方法にシフト。
その場でコミュニケーションをとり、SOUに興味をもってもらって、気軽に来社してもらえるようなアプローチを心がけました。説明会もスクール形式の講義型ではなく、徹底的に1on1で対話をする個別の面談形式に変えたんです。
就活相談なども受けながら、学生の「個」に向きあう面談を繰り返して、最後に2回の選考の場につなげるフローに再設計しました。
17年卒採用までおこなっていた、ある意味スタンダードな説明会や座談会は、全てやめたんです。
またリユースという事業を営んでいるSOUならではの自社採用イベントとして「就活フリマ」というイベントを開催しました。
様々な企業から内定を貰っている4年生には、使わなくなった就活グッズを持ち寄ってもらい、それぞれのグッズに想いや就活の思い出を書いて貰いました。
そのグッズを通して3年生は初対面でも4年生に就活のアドバイスを貰いやすくなり、私たちが入り込むことができないくらい話が盛り上がりました。(笑)
そして「就活フリマ」の文字通り、欲しいグッズを価格交渉しながらフリマスタート。就活のアドバイスを貰っている内に「この人が使っていたこのグッズが欲しい!」という場面もたくさん生まれました。
このイベントを通じてリユースの楽しさを知ってもらい、私たちは就活中の3年生にアプローチできるという、開催者側も楽しんで実施したイベントを通して、1名の内定者を出すこともできました。
このようにSOUと学生の出会う入り口部分を変えたことで、17年卒採用では出会えなかったような学生も、SOUに興味を持って選考を受けてくれるようになりました。
ただ、18年卒採用の課題は、最後の最後に入社を決めてくれるところまでは至らず、内定辞退がものすごく多かったことです。結果的には10名の目標に対して、入社は3名でした。
結果だけ見ると大失敗なんですが、私的には、「もう少し工夫すれば、結果を出せそうだな」という小さい手応えがあったんです。
そこで、次年度の19年卒採用は、18年卒採用で結果を出せた母集団形成の入り口部分は大きく変えずに、選考と選考の間に面談を入れていくなど、より一人ひとりの学生の進捗に合わせたフローにカスタマイズするようにしました。
人材開発課と連携しながら、自社の面接を控える学生に対して、自己分析を軸とした面接対策などもおこなっていたので、学生にも驚かれましたね。
結果、19年卒採用の結果としては、10名目標に対し個性豊かな10名が入社してくれました。前年の小さな手応えが、しっかりと結果として形になったので、達成感がありました。
ただ、現在進めている20年卒採用では、目標を達成することができた19年卒採用の選考フローを踏襲することはせず、ガラリと内容を変えています。
理由は3つです。
- 1、人事として人に関わる部署である以上、選考の中でも成長を感じて欲しい。
- 2、SOUのビジョンである「 好きに、しあがれ。」を自分に置き換えて考えてもらいたい。
- 3、毎年同じ選考フローではやる側もおもしろくない。(笑)
まず1つ目と2つ目については、前職で就活生と関わっている時から感じていたことですが、就活期間中の1年間でも伸びる子は本当に伸びるんですよ。
ただ、それと同様にポテンシャルは持っているのに、就活での動き方や考え方の面で「勿体無いと感じる子」も多くいました。
「勿体無い子」の共通点としては、自分自身のビジョンが描けていないがために、就活をして「内定を取る」ことがゴールになってしまっていることでした。
そういった観点から、「成長」と「ビジョン」をテーマに選考フローを構築できればおもしろいなと思ったので、20採用では、面接は最終面接のみ。
それまではひたすらにSOUのビジョンである「好きに、しあがれ。」を自分に置き換え、好きを追求したその先のしあがった状態(ビジョン)を描くワーク形式に変更することにしました。
毎年、出会える学生は変わりますし、今年のトレンドがいつまでも同じということはないと思いますが、学生からすれば、「人生の目的を達成するため」に仕事という領域で最善だと思う会社を選ぶことが就活であるということは変わらないと思いますし、私たちとしては、そのビジョンがSOUで実現可能かを一緒に考えることも変わらないことだと思いますので。
まだ結果は出ていませんが、20採用で実施しているワークでの経験は来期以降の採用にも間違いなく生きるものになっていると思いますね。
3つ目についても個人的には大事だと思っていまして、やる側が「おもしろい」「やりたい」と思ってやっていないと何も伝わらないと思うんですよ。
なので選考フローも自分たちが「おもしろい」と思えて、かつSOUに興味を持ってくれた学生に対して、「提供できる価値」のバランスを考えた結果がこの形になりました。
実際にワークを受けた学生からの評判もかなり高いもので、「仕事だけでなく、自分の人生を見つめ直す機会になった」とか「好きを追求する大切さに気づいた」など嬉しい言葉をもらうことや、「なんでこんなにしてくれるんですか?」「こんな選考フロー聞いたこともありません」と驚かれることも多いですね。(笑)
そういった反応を見ていると自社の採用活動ではありますが、「やっていてよかった」と思えることも多いですね。
ーーすごいですね。毎年ちゃんとチャレンジをして、それに対して成果を振り返る。当たり前のことですが、この3年でしっかりと結果につなげられていることに、SOU人事部の組織の強さを感じます。
この3年間の新卒採用で目に見える結果が出せたのは、私自身がオーナーシップを持って取り組んでこれたから、というのも要因のひとつだと思っています。
前年に試してうまくいかなかったことをすぐに辞める判断ができたのも、自分自身で意志を持って取り組んで、効果検証をした結果なので、後ろめたいこともありません。
「もっとこうしてみよう」「ここを変えたら成果が出そうだから試してみよう」と、前向きな仕事ができるのも、会社に意見を尊重してもらえるカルチャーだからこそかなとも思っています。
従業員が350人ほどのこの規模だからこそ、変革においても迅速ですし、やるやらないの判断も早いのだと思います。
仕事を任せていくカルチャーは、私たちのこだわりですね。一人ひとりがイキイキと仕事をして前向きに捉えることができなければ、組織は機能しないと思うんです。だからこそ、任せられることはしっかりと任せます。
かといって、役割や責任範囲を固定化するつもりもなく、できれば大森さんには次の後任採用や育成を頑張ってもらいたいと思っているところです。(笑)
組織の中でもローテーションしていくなど、一人ひとりの成長に合わせて、人事領域であっても仕事の幅が広がるようなキャリアパスを一緒に考えていけたらと思います。
採用は組織づくりの入り口。その先の事業と個人の未来を一緒に創る。
入社後のフォローアップにもSOUのこだわりがある
ーー新卒採用において、入社後のフォローにも工夫があるのですか?
一昨年に17年卒として入社してくれた現在の2年目メンバーについては、入社して1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後など、節目節目で面談をするようにしました。
メンバーたちとの1on1も大切にしているのですが、人事部としては、そのメンバーの上司や組織とのコミュニケーションも大切にしています。
入社1年のタイミングでは、17年卒メンバーは全員店舗に配属されていたので、彼らが関わった店長、その上席のスーパーバイザー、そして課長、部長にもヒアリングを行いました。
「期待値はどうだったか」「実際の働き方はどうだったか」「本人はどういうキャリアをイメージしていたか」など、1から10まで細かくヒアリングします。(笑)
メンバー本人たちとも面談をしているので、「この先のキャリアとしては何をしていきたいのか」「どう成長していきたいのか」という点を尊重しながら、このままの組織でいいのか、それとも別の上司の元に異動させるべきかを検証していきます。
異動するにしても、事業側や異動先の上司になる可能性のある社員にも相談しながら、少しずつすり合わせて、最適解を探していきます。
ものすごく時間はかかりますが、これが働く社員一人ひとりのためですし、もちろん事業のためだと思うんです。
昨年入社の18年卒メンバーもこの形を踏襲しています。
組織の課題解決のための採用を。
ーー会社としての想いを伝えながら、一人ひとりをちゃんと見て、採用を進める。そして最後はお互いの絶対値評価で納得して入社をしてもらう。でも事業としては、採用はスタートラインですよね。
そうですね、採用は組織づくりの入り口です。冒頭でもお伝えしたように、経営と事業、そして人事は三位一体。採用したそのあとに、入社した方々が100%・120%の力を発揮してもらえるようにフォローしていくことも、SOU人事部として大切にしていることです。
新卒入社の場合、4月に入社して6月に一通りの研修が終わります。その間、本人の適性、事業部からのフィードバック、人事部の想いをまとめて配属プランを考えて、ものすごい時間をかけて議論をして配属を決めます。
私が、新卒で入社して、いきなり人事に配属されて、ずっと人事の仕事に携わっているように、最初の配属がその人のその先のキャリアまでも決めるかもしれません。
配属された後も、入社前と変わらずワクワク感を持って働けるかどうかも、その先の成長を左右すると思います。
事業の成長を考えても、新しくSOUにジョインしてくれるメンバーの配属はとても重要なポイントです。
大切にしている想いは「人が事業を創る」ということ。初回の配属だけではなくて、部署間の異動もそうなのですが、人事戦略は事業の成長を左右します。
そう思えば、人事部は事業と人をつなぐ懸け橋であり、両者の相乗効果によって成長を促進するクロスセルの役割もあると思うんです。
だからこそ、役員や部門長とは、日頃から常にコミュニケーションを取ることにより、事業側の現状や課題感なども把握するように心がけています。
全体の組織設計に関しても、事業部からの変革要望と経営者の想いをクロスして創り上げていきます。「来期の事業を促進させるための人・組織はどうしていこうか」、会社全体の想いを聞きつつ、抜擢人事や組織編制の提案をしていきます。
新しい組織づくりの場合は、人事部は検討段階から議論に参加する事が多いです。事業部の中で組織編制を変える場合も相談を受けますし、日々のコミュニケーションの積み上げですね。
――人と事業のクロスセルを生み出せるのは、人事部の一人ひとりが、事業部の状態やメンバーの状態を把握しているからなのですか?
その通りだと思います!私が把握できていないことも、人事部の誰かしらが関わっているんです。「来週○○部でこんなことやるみたいですよ」「このメンバーが活躍しているみたいですよ」という情報も、人事部にはたくさんあります。
こうした地道なコミュニケーションの積み重ねが、新卒の配属や採用手法に至るまで、あらゆる場面で活きてくるんですね。
「あの事業部、こんな課題感があるから、これだったら解決できるんじゃない?」というような人事的なソリューションを提案できるようになるんです。
SOUが目指すこれからの新卒採用、そして組織づくりとは
――どうしても人事部って影の存在だと思われがちですが、人事戦略を提案していくSOU人事部は経営のセンターピンのようですね。今後は人事部としてどのような取り組みをしていきたいですか?
採用においては、新卒採用であっても、中途採用であっても、一緒にSOUの未来を創っていけるような人たちにジョインしてもらいたいですね。
会社全体を見渡しても、経営の意思決定の速さが事業の成長スピードを底上げしているので、その分、その成長を牽引し、支えてくれるようなメンバーは、まだまだ必要です。
社員の育成にも力を入れていきたいですし、成長のためにもっと抜擢がスタンダードな組織にしていきたいですね。SOUの未来を創る新卒採用も、どんどんブラッシュアップしていきたいと思っています。
人事が「縁の下の力持ち」のようなプレゼンスの会社も当然あると思うんです。その方たちがやりたいと思ってなくても、きっと会社の長い歴史の中でそうなってしまっているんです。
でも人事部は、もっと経営に近い存在にならなければならないと思っています。会社の、事業の、人の実態を一番理解している部署であり、それぞれを掛け算して、新しい価値発揮の形を生み出していくべきだと感じています。
データドリブンな人材戦略がトレンドのようにも思いますが、私たちとしては、「人」に関わる組織だからこそ、データに表せない情報もあると思っています。
私たち人事部の一人ひとりが、SOUの人事データの集約形として、会社の成長につながるクロスセルを生み出し続けるチームでありたいと思っています。