株式会社JAM主催のトークLIVE「アレすご!」。
今回は、新しい組織のあり方を考え実践している、株式会社アトラエ、株式会社CRAZYの2社を招き、組織づくりノウハウの裏側についてご紹介。
アトラエ新居さん、CRAZY森山さんの思想や取り組み背景、具体的な事例まで、非常に興味深いお話が満載です!
【ゲスト】新居 佳英 | 株式会社アトラエ 代表取締役
【ゲスト】森山 和彦| 株式会社CRAZY 代表取締役社長
【ファシリテーター】水谷 健彦| 株式会社JAM 代表取締役社長
目次
アトラエがつくりたい組織文化
「関わる人が幸せになる会社をつくる」
水谷:アトラエさんもCRAZYさんも事業をしっかり伸ばしながら、性善説で組織マネジメントをおこなっているということですが、性善説ではうまくいかないことが多くあると思うんですよね。そこで実際に、どのように組織運営をしているのか、お聞きしていきたいと思います。
アトラエさんは「関わる人が幸せになる会社をつくる」、CRAZYさんは「社員が健康で幸せに働けることが経営の第一優先順位」ということを掲げていますが、まずはアトラエさんからその背景を教えていただけますか?
新居:アトラエに限ったことではなく、株式会社という仕組み自体、関わる人が幸せになるために作り上げた仕組みだと思っているんです。
なのでこれは我々の組織だけじゃなくて、世の中の会社全てがこうあるべきだと思っていて、全ての会社に当てはまる前提条件だと思っているんですね。
稲盛さん(京セラ創業者)が「全従業員の物心両面の幸福を追求する」とおっしゃっていますが、あれとほぼ一緒の感覚ですね。株式会社の大前提だと思っています。
そして、我々はこのもう1つ下のレイヤーで、「大切な人に誇れる会社であり続ける」という行動規範を掲げています。
例えば「売上は伸びている方がいい、給料は高い方がいい、幸せでやりがいを持っていた方がいい、仲間同士も仲良い方がいい、社会から必要とされている方が格好良い」ということを全て含めてです。
これが我々の一番大事な会社運営の信念として持っているところです。
水谷:自社だけではなく、株式会社がそうであるべきだと。
新居:そうですね。僕が経営者として会社はこうあるべきだと思っている基本の「き」です。
水谷:逆に言うと、そうじゃない会社も多いかもしれませんね。
新居:そうですね。僕の考える「会社に関わる人」、すなわちステークホルダーとは、社員、またその家族、そして顧客、株主です。
この中で社員が少し置き去りになっているケースが、特にここ最近多いなと思って。昔の日本企業って、株主が置き去りにされていたケースが多かったんですが、最近は時価総額経営をアメリカから持ち込んだことによって、社員が置き去りにされているケースが多いと感じています。
水谷:社員ファーストで考えることが大事だということですね。そのあたり、森山さんにもお話お聞きしたいですね。
森山:基本的には同じですね。CRAZYでは経営の優先順位を定めていて、1番は健康、2番は人間関係、3番目に世界を変える仕事、いわゆるパフォーマンス、4番目に誠実な経済活動という、社会の循環を置いています。
僕の場合、これは企業経営って考えているわけじゃなくて、「地球経営」であり「人類を信じる」というすごく大事にしている考え方です。人間が脳科学的に、心理学的にも一番幸せなのって、まず健康と人間関係が満たされているというのが条件としてあるんです。
その土台があって初めて、仕事によって社会に貢献することができると思っています。そういう優先順位を掲げている会社もあるんですけど、本当に実行するのは相当難しいと思います。
アトラエの組織文化づくり①
「階層がないフラットな組織」
新居:フラットというよりは、意欲ある社員が無駄なストレスなくいきいきと働ける会社が良いと思っています。意欲があるのに無駄なストレスを感じる会社って、日本の企業にすごく多いんですよ。
部長がとか、派閥がとか、そういうのがいっぱいあってやる気がなくなるわけですよね。やりたいことをやれない会社、正しいと思っていることがやれない会社、正しいと思うことを言えない会社なんてあり得ないと思います。
例えば、部長を含めて30人が参加する会議とか、部長から発言しないといけないとか。そういう無駄なストレスがない会社を創りたいと思ってやっていったら、なんとなくフラットになっていったという感じです。
参考にしたのはスポーツのチーム、アーティストの集団、劇団です。ああいうところに行くと部長のような存在ってあんまりいないよなと思いながら創ったら、フラットになっていったという感じですね。
水谷:階層のないフラットな組織というと、人材育成は誰が担っているのですか?例えばサッカーの日本代表って、基本うまい人の集まりだから、サッカーのテクニックはあんまり教えないですよね?
新居:そんなことはなくて、おそらくテクニックに興味のある人間は本田圭佑にフリーキックのやり方をすごく聞くと思うんですよね。
例えばフィジカルが強い人間と弱い人間、僕が弱かったら、たぶんチームの中で一番フィジカルが強い人間に「その体どう作ったらいいのかな?」と、アドバイスを求めていくと思います。
場合によってはコーチや監督のところに行ってもいいですし、外部のチームの選手に「すごい体してるね、どうやってトレーニングしてるの?」と聞けばいいだけなので、それはあまり関係ないと思っています。
水谷:個人が自主的に自分の欲しいスキルを手に入れていく必要があるということですね。
新居:それがない人は、うちの会社では働けないと思います。
森山:ちなみに採用人数は最近どのくらいですか?
新居:年間10人ずつくらい採用してます。
森山:合わない人というのは、ちゃんと代謝していきますか?
新居:合わない人は基本的にはあまり入れてないと思います。退職も数は少なくて、年間1人辞めるか辞めないかくらいで、これは完全にカルチャーが合わない人ですね。僕らが見極め損ねた人、ミスマッチです。
森山:これからたくさん人が入ってきても、情報やスキルは自分で取りに行ってほしいじゃないですか。でもそれができなくなることって、予想してますか?
新居:そういう人は居心地悪くなっちゃうんで、たぶんいられなくなっちゃう。僕らは解雇基準を明確にしてるんですが、能力が低いとか、パフォーマンスが出ないというのは一切解雇基準にないんですよ。
水谷:どんなものが解雇基準になっているんですか?
新居:3つあります。1つは我々のやろうとしていることに対してちゃんと共感して貢献しようという意欲が持てない人。
もう1つはセルフィッシュな人。利他的ではなくて完全に利己的、自己中心的である。こういう発言、言動がある人というのは、基本的にダメだと。
もう1つは当事者意識を持てずに他責にする人、オーナーシップが持てない人。この3つがない人は、どんなに優秀で売上を上げていても、もしくはどんな技術を持っていても、僕らは解雇通知をします。
森山:何回くらい通知したことがあるんですか?
新居:ほとんどないですね。この基準を明確にしたのがここ最近なんですけど、今まではアバウトに曖昧ながらこういう基準を持っていて、2回くらいですね。
水谷:でも2回は出しているということなんですね。
新居:1回はイエローカードを出していますし、1回はレッドカードを出しています。そういうことはありますね。
水谷:採用のときに、さっき言った内容を見極めるのって結構難しいと思うんですけど、そこはどうやっているんですか?
新居:確かに難しいは難しいんですけど、過去に何をやってきたかというコンピテンシーにまつわることを徹底的に聞きます。
僕は、たまたまインテリジェンス(現パーソルキャリア)という会社で多くの採用に関わったり、コーチング研修とかアセスメント研修をいっぱい受けているんです。
その積み重ねがあって、年間何千人も面接とキャリアカウンセリングをしてきたので、人を見る目に関しては、経験上比較的優位性はあるかなと思ってます。
あとは正直分からないので、社員30名に対して、1人30分から1時間くらい、インタビューをしています。
3日間くらい、1日10名くらいずつ、なんでアトラエに入ったのか、なんの仕事をやっているのか、どう思っているのか、最近面白いことは何か、何でもいいから話してくれと言っています。
そして終わった後に「どうだった?」と聞いて、「もしこの会社と合わないんだったら辞めてもらっていい」と伝えています。ザッポスがやっているような、今辞めるようであれば、例えば給与6ヶ月分払う、でも継続したいと思ったら継続して欲しいというエントリーマネジメントをしています。
森山:入社してからやるんですか?
新居:入社してからです。試用期間中にやってもらって、それで退職するという人は今のところないですね。
どっちかというと、全くギャップはありませんという社員が多くて、ある種エントリートレーニングみたいになっています。結構評判良いんですよ。
アトラエの組織文化づくり②
「ルールがない自己判断の職場」
水谷:次のテーマにいきます。「ルールがない自己判断の職場」ということで、これはどういうことでしょうか?
新居:基本的には意欲ある人が無駄なストレスなくいきいきと働ける会社をつくりたいので、あまりルールを作っていません。
ルールを守ればうまくパフォーマンスが出る世の中ではないと思っています。オペレーショナル・エクセレンスみたいな、例えばインフラビジネスで、水道・ガス・電車とか、ああいうものをきっちりとミスなく運営していくという会社においては、マニュアル化して、皆がルールをしっかりと守るということが大事だと思います。
でも我々は知識産業で、インターネットの世界というのは変化が激しくて、何かを守ったり、先輩の言う通りやればうまくいくとか、そういう話じゃないんですね。
とにかく全員が、若い人も先輩も、女性も男性も、エンジニアでもマネージャーでもマーケッターでも経理でも、とにかくチームとして運営していかないとビジネスの世界はやっぱり勝てないですね。
そういう意味ではルールを作って管理をするという発想は、今の時代に合わないと思って。あと僕は、ルールの中で働けと言われるのがすごく嫌なタイプなので、ルールなくやったほうが絶対いいよねと思ってます。
ただ規律は持たなくてはいけないので、行動指針みたいなものは全社で徹底しています。
価値観とか行動規範ということに関しては、何が正しくて正しくないかというのは、我々はすごく徹底したものを持っていて、それを1つにまとめたのが、「大切な人に誇れる会社であり続ける」です。
水谷:先ほどおっしゃっていたものですね。
新居:「この事業儲かるよね」と言って始めることはまずないです。自分の子どもとか奥さんとか親とか親戚とか友達に、自分のやっていることに本当に誇りが持てるかどうか、ちゃんと胸に手を当てて考えてくれと。
それがちょっとでもNOだと思うのであればやるべきじゃない、ということは常に言っています。
森山:最近考えていることは、「ルールを感じないことが大切だ」ということです。実はルールっていっぱいありますよね。一応服を着なきゃいけないとか(笑)
新居:それは法律ですね(笑)
森山:信号を守らなきゃいけないとか、ルールだらけなんですよ。
例えば「チャットワークを使わなきゃいけない」とかいろいろあるんですけど、それをルールと感じるか感じないかということが一番重要で、ルールだと感じてしまうことが多い会社は、エンゲージメントが低いはずです。
では、ルールを全部撤廃すればいいという発想もありますが、違いますよね。
水谷:ルールはたくさんあっていいんだけど、それを自然とやれるほうがいいってことですよね?
森山:そうです。自然にできると、ルールから文化になります。身についてますから。
新居:うちの場合はルールを勝手に変えられる。おかしい、足りないと思ったら自分で変えて、勝手に作って、それがおかしいと思ったらまた変えるし、ということの繰り返しですね。
ただ、いわゆる世の中の会社的なルールはすごい少ないと思います。
例えば、アトラエは2018年の10月24日で15周年だったんですけど、たまたま15周年のやり取りをしているチャットを見つけて、「そういえば15周年だなぁ」なんて思っていたら「15周年のコースターの発注が終わりました」っていうやり取りがあって。
「あれ?コースター作っていたの?」と社員の会話で初めて知りました(笑)。どんなコースターを作ったか知らないし、何個発注して、いくらかかってるかも知らないし、誰が企画者なのかも知らないんですよね(笑)。
水谷:自分たちで判断しているということですね。
新居:せめてデザインくらいちょっと見せてよ、と思いますけどね(笑)。
そういうのは本当にどんどん自由に決まっていきます。会社でやっているイベントとか交流会も僕が全く知らないところでおこなわれていますし。
アトラエの組織文化づくり③
「等級はない、評価は360度評価」
水谷:アトラエさんの評価制度についてです。人事制度には等級がある会社が多いですが、等級がない、かつ評価は360度評価でやっていると。
新居:もともと360度評価が良いかどうかっていう概念は、僕の中で疑問もたくさんあるので、360度評価が良いですよというわけではないんです。
ただ上下関係がないので、評価者と被評価者という区分は、あまり僕らの会社においては正しくない。「結局評価者って上司でしょ」となるので、そこに目線がいっちゃうと、やっぱりアトラエらしくないよねと。
じゃあどうするっていうと、まず周りの人に評価してもらえばいいんじゃないかという話になりまして。「それっていわゆる360度評価だよね」と決まっていきました。
被評価者が評価者を5人選んで評価をつけてもらっています。5人というのは、そのくらいがいいんじゃないかというだいたいの感覚です。
その評価者は全員後輩にしたらバランス悪いよね、でも全員先輩だと重いよね、うちの社長はエンジニアの技術分からないから社長に評価されるのはなぁということであれば社長を外してくれと。
それでいいなと思っています。評価してほしい、自分のことをちゃんと見てくれているだろうという人に評価してもらえばいいんじゃないかということで、5人選んでその人から評価をしてもらう方法にしました。
どういう人を評価すべきかという評価の軸はちゃんと持っておかないといけないので、技術力が高ければいいのか、技術は低いけどプロセスに注力しているから評価すべきなのかなど意見が割れちゃうので、会社としての評価軸はそろえています。
それに基づいて、この人はどこに当てはまるのかということを皆が評価しています。今それをちょっと進化させようと、社員でワーキンググループをつくって、もっと良い方法がありそうということを前提に今作り替えようとしています。
水谷:このプロジェクトは誰の発案なんですか?
新居:僕がそもそも評価制度を変えたいと言いました。今まではプロジェクトリーダー会議で評価を決めていたんですけど、社員から「納得感が薄い」という声がありまして。
それで「全部のバジェットを決めて伝えるから、自分たちで給料を決めてくれ」と社員総会で提案したんです。
そうしたらすごいブーイングで、、、(笑)。人の給料を自分たちで決めたら気持ち悪くて働きづらくなるから社長に決めてほしいと。それで、最初は僕や役員が中心になって評価と給与を決めていたんですね。
ただ50人になってきて、これが100人になってくると、ちょっとやっぱり社長や役員が評価するのは限界があるよねと。だからどうしたらいいかとなり、360度評価が作られて1年くらい運用しました。
でも、これも全然まだまだだよねという話になり、「誰か作り替えて」と言ったら、立候補した社員がいて、今は彼らを中心にやっています。
水谷:今の360度評価の仕組みの良くないところってありますか?
新居:売上でも何でも、とにかく会社のビジョン実現のための貢献に対して評価するんですが、その貢献を因数分解するとちょっとイマイチなんですよね。
2軸で評価しているんですが、貢献の因数分解になっていないんじゃないかという議論が今勃発しています。
水谷:なるほど。評価軸をどうするかという問題ですね。ちなみに、CRAZYさんだと「本人自身の評価」を大事にしているんですよね。
森山:そうですね。やっぱり大事なのは評価制度って評価するためにあるわけじゃなくて、成長していくためにあって、自分が納得感を持ってそれを手に入れていくっていうことがすごく大事です。
自己評価というのは引き続き大事にするんですけど、今は「給与がどうやって成り立っているのか全員が知る」ということに取り組んでいます。
最終的には自分で決めるようになったほうがいいと思っています。全社にPLとBSと社員の名簿を配って、自分が経営者だったら誰にどのくらい給与を払うか決めてくれと。
新居:それいいですね。
CRAZYがつくりたい組織文化
「社員が健康で幸せに働けることが経営の第一優先順位」
CRAZYの組織文化づくり①
「Visionへのアラインメント」
水谷:では、CRAZY森山さんの組織づくりの話にいきましょう。
森山:そろそろこれから社員数100名を超えるのですが、役員会議があったときに、「うちのビジョン分かりにくくない?」と言われたんです。でも、ビジョンって創業者がつくったすごく大事なことじゃないですか。
僕としては本当にこの会社を100万人規模にしたいと思っていて、地球全体を経営していこうということを考えています。
ビジョンって何のためにあるのかという話をしたときに、ビジョンは1つのツールでしょうと。それぞれ社員が語ったり、ビジョンにアラインすることで発揮する力があるよねと。それができているかというと全然できていないよね、というダメ出しをいただきまして。
確かにそうかもしれないと思いました。1日くらいかけて自分を納得させて「分かった、じゃあロケットペンダントにしまうよ」という話をして、ロケットペンダントにしまう会というのをやったんですよ。
水谷:本当にしまったの!?
森山:ただロケットペンダントというのは古いんで(笑)、一応ペンに書いて持っておくことにしました。
で、ビジョンを変えました。このビジョンを変えるプロセスも独特な方法でつくりました。結局ビジョンって社員の熱量の総和なんですよね。
社員が熱量を持っていない限り、ビジョンって意味がないと思っているんです。
ビジョンをすり合わせるプロセスでよくある皆でワークショップをするというのはやめて、僕に対し一人ひとりの社員に、「会社の」ではなくて「自分の」ビジョンをプレゼンしてもらう「Co-visionning session」というのをやったんですよ。
僕はこの会社の仲介役なんで、約80人のビジョンを僕に語ってもらって、それを統合して、会社のビジョンをつくりました。
水谷:Co-visionning sessionの結果、このビジョンが生まれたんですね。
森山:そうです。結局皆のビジョンのテーマは何かっていうと、人間とか愛情だったり、自分の人生を承認することだったり、”人の人生”に興味があるんです。CRAZYは結婚式の会社でもありますし、それを最大化するとどうなるかということで、「世界で最も人生を祝う企業」と決めました。
水谷:80人の社員と森山さんが、1対1でプレゼンしたの?
森山:1対10人くらいでホテルで朝食をとりながらとか、屋形船でも話しましたね。
水谷:1対10だとして、それは1枠何分くらい?
森山:たとえば、2時間の屋形船の中で10人にプレゼンしてもらいました。
空間的には説明しづらいですけど、なんていうんですかね、皆がそれぞれの話に親身に耳を傾け、良かったね、本当によく話せたね、という感動的な空間なんですよ。
「聴く」っていうことが、今の世の中って本当にできていないと思うんです。心の底から聞く、アテンションする、その5分~10分ってすごいパワーがいるんですよ。超疲れるんですけど、メモしまくるんです。
社員全員分のメモを並べながら言葉を抽出したりして、皆はどういう言葉になるといいかな、ということを考えるわけです。
このプロセスの面白いところが、僕が作ったビジョンじゃないということですね。
だから、このビジョンに対して僕がアライメントする時間をすごく取りました。アラインメントとは、自分の中に深く落とし込み、合意することです。
水谷:これをやっているときは、社員は当然この完成形は見えていないから、ひとりひとりが自由に本人たちのやりたいこと、願望を話したんですよね?極端に言ったら「私はロックスターになりたい」という人もいるわけでしょう?
森山:います、それでいいんです。
水谷:そこもうちょっと語ってください、普通はそれでよくないですから(笑)
森山:大事なことは熱量がまずあるということなんです。会社に熱量があってもダメで、まず個人の熱量を前提にするんですね。重要なのは、この熱量をビジョンに自分で乗せていくということです。
水谷:メンバーそれぞれが乗せていくと。
森山:そうです。でもこの前提となっている熱量って、なかなか企業は扱わないんですよ。
ビジョンの形はそれぞれ違うけど、ただ掲げればいいというわけではないのです。何よりも個人の熱量が大切です。どんなビジョンでもいい、在り方でもいいし、ビジョンという言葉は曖昧なので、夢でもいいです。
水谷:80人くらいだからこそできたし、社員はビジョンができたときに、「自分の言ったことも含まれているな」という感覚になるわけですよね。
森山:そうですね。人数が多くて1,000人いたらやり方を変えなきゃいけない。ただ、いろいろ考えられそうですね。
CRAZYの組織文化づくり②
「本質的で、美しく、ユニークな制度・カルチャーづくり」
水谷:あとは80人とはいえ、自分の夢を語れる人たちを採用して集めているという事実はありますよね。この「LIFE PRESENTATION」にも繋がってきますか?
森山:そうですね。社員が入社したら必ず全社員がライフプレゼン(LIFE PRESENTATION)をします。これ結構ユニークな制度で、何かというとTEDをするんです。入社をすると毎回全員で1時間取るんですよ。
水谷:1人で?
森山:1人です。入社したらその人のために1時間取って、全社員が聴きます。さっきのインタビューと同じなんですけど、自分の人生をプレゼンするんですね。それを15分くらいやって、皆からフィードバックをもらう。なので実は全員の人生の背景を知っています。
水谷:ちょっと抵抗あるみたいな人はいないですか?
森山:「世界で最も人生を祝う企業」というビジョンを掲げているのに、自分の人生を語れないっておかしいでしょ?と思ってます。
プレゼン前には、バディという人がついてサポートするんですよ。ちなみにバディは人事担当者などではなく、仕事で関わるチームメンバーだったりします。そこでプレゼンのトレーニングを2週間徹底的にやります。
昔はそれを入社する前にやっていたんですよ。でもちょっと「出落ち」するんですよね。入社する前に気持ちがめっちゃ上がるんですけど、そこから仕事に慣れていくのに大変で気持ちが徐々に下がってしまう。
なので、最近は入社して3ヶ月以内にやるようにしています。これくらいがすごく良いタイミングです。
水谷:ある程度仕事が分かってきた段階でやると?
森山:はい。そこでビジョンにまつわることも出るし、すごくいいですね。
CRAZYの組織文化づくり③
「Core Valueを日常で体現する」
水谷:あとは「Core Valueを日常で体現する」というのは、どういうことをやっているんですか?
森山:健康にはこだわっています。31歳以上全員人間ドック必須で会社負担ですし、41歳以上は精密ドックまで全部会社負担で、健康で生きるための仕組みを作っています。あと一番語れるのは、ランチですね。
創業したときからずっと食事にはこだわっています。創業当時の僕の最初の仕事は、食事づくりでした(笑)
水谷:今も食事は、50~60人の社員が毎日同じ時間に集まって、一緒に食べてるんですよね。
森山:食べてます。
水谷:作る人が専属でいるんですか?
森山:専属です。
水谷:いわゆる化学調味料とかあまり使わずにしてるということですよね。全く使わずに?
森山:化学調味料は全く使わないですね。
やっぱり今回も日本初の「睡眠報酬」という制度をやってみて思うんですけど、まず会社として本気でやることが大切なんですよね。結局本気じゃないものって成り立たないと思うんです。
もしくは社員がめちゃくちゃやりたいと思っていることが大切ですね。例えば託児の制度って、社員が自分で作ったんです。金額でいうと年間で1,000万くらい、ランチの制度は年間に数千万かかるんですよ。
これって社員で本気でじゃなくて、やらされてるようだったら、それだけの金額をかけてるのに意味がないですよね?
なので考え方を皆でちゃんと共有して、本当にそれはやるべきだとならない限り、やっちゃいけないと思っています。