働き方改革法が可決され、早くも5ヶ月が過ぎようとしています。
長時間労働の是正や働く環境整備にはじまり、生産性を高めるテクノロジー導入など、企業側でも働き方改善のために取り組むべき課題は山積みかもしれません。
しかし、今後の事業発展のためには、働く従業員が生産性高く、意欲を持って働けるかが重要なポイントとされています。
今回は、NTTデータと軽井沢リゾートテレワーク協会が主催するイベントで紹介された『働き方改革』につながるテクノロジーの実例や、今注目したいトレンドについてお届けしたいと思います。
目次
軽井沢リゾートテレワーク協会 第1回東京フォーラム@NTTデータ
主催者 | 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
(http://www.nttdata.com/jp/ja/index.html)
主催者 | 軽井沢リゾートテレワーク協会
今回のイベントは、2018年7月に設立されたリゾートテレワークを推進する軽井沢リゾートテレワーク協会により開催されました。
軽井沢リゾートテレワーク協会は、軽井沢観光協会、商工会、旅館組合及び主旨に賛同した首都圏の企業、団体によって構成されています。
正式な活動開始は来年4月からとなるのですが、それまでの期間に、軽井沢と東京にて『働き方改革』を推進する企業の取り組みを伝えるイベントを開催することが決定し、『働き方改革』だけの視野にとどまらず、新たなワークスタイル、ライフスタイルについて議論や検証をしていきます。
第1回となる東京フォーラムは、NTTデータ本社がある豊洲にて開催され、NTTデータが提供する『働き方改革』を促進する最先端の技術や、その活用方法などが紹介されました。
『リゾートテレワーク』とは?!
金山氏:
この軽井沢リゾートテレワーク促進への取り組みは、興味のある方が集い、今年の1月から6月にかけて4回ほど、実際に軽井沢でリゾートテレワークを体験することから始まりました。
ただ単にテレワークをするだけではなく、軽井沢のようなリゾートでおこなうことに効果はあるのかという実証実験的な取り組みでした。
通常テレワークと聞いてイメージする働き方は、日々の業務的な仕事をライフに近い場所でおこなうことで移動工数を減らし、生産性を高める働き方だと思います。
『リゾートテレワーク』が効果を生むとするなら、ゼロからイチを創り出すイノベーティブな企画や、事業展開などのビジョンワークに適しているでしょう。
軽井沢に代表されるようなウェルネス・リゾートで仕事をすることは、ある種のワクワク感を生み、ポジティブな視点で物事をとらえられるのではないでしょうか。
我々は、こうした意味合いも込めて『リゾートテレワーク』のことを、ワークとバケーションを合わせた造語で『ワーケーション』とも呼んでいます。
時を同じくして、鎌倉でも同じような取り組みが実施され、2つのブランド地域にて『リゾートテレワーク』の促進が始まっています。
ただし、働き方に多様性を付与し、労働生産性を高めていくテレワーク・リゾートテレワークを今後より一層促進していくためには、安全性の高いネットワークインフラやデバイスなど、ICTの活用度を高め、快適なワークエリアを提供するさまざまな企業の協力が必要不可欠だと思っています。
NTTデータの「働き方変革」の取り組みを解説!
来間氏:
今、NTTデータでは、企業競争力を高める重要な経営戦略として、ダイバーシティインクルージョンを推進しており、『多様な人財の活躍』と『働き方変革』、この2つを主要なテーマとしています。今回は『働き方変革』のほうに集中してお話をさせていただきますね。
NTTデータの働き方変革への考え方とその軌跡
来間氏:
現在、IT業界においては、今後IT技術者が減り、技術発展に反して人材が不足するという課題があります。実際に様々なデータを見ても同様に予測されていて、すでに人材獲得競争はその激しさを増しています。
NTTデータにおいても、人は財産です。今後の持続的な企業成長、ひいては社会への新たな価値提供のためには、優秀な人材を集めることが求められているのです。
「働きやすさ」は、『労働市場で選ばれる』という観点からも非常に重要なポイントだと考えています。
働き方に多様な選択肢を設け、働く環境を整備し、優秀な人材がより活躍できる職場を実現するためにも、『働き方変革』は継続的に取り組むべき課題なのです。
実は、NTTデータでは、電電公社の時代から働き方改善への取り組みは活発にありました。
電話交換手として女性が多く働いていたこともあり、育児休業制度を整えたり、研究開発職の働きやすさを追求してフレックスタイム制度を先駆けて導入したりしています。
2005年には、『働き方変革』をテーマとして掲げ、ワークスタイルイノベーションを宣言しています。その頃から働きやすさを追求した様々な制度をつくり、テレワークや裁量労働、1時間単位の休暇の制度など、働き方の柔軟性を高めてきました。
最近では、総務省で実施されている「テレワークデイズ」を活用して、テレワークを促進したことが大きな取り組みです。
「テレワークデイズ」の活用と今後目指すべき『働き方変革』の形
来間氏:
「テレワークデイズ」とは、総務省をはじめとする各省庁が、東京都及び関係団体と連携し、働き方改革の国民運動として展開したものです。
今年のテレワークデイズは5日間ありましたが、NTTデータでは、のべ人数で42,600人がテレワークデイズに参加しました。内訳としてはテレワーク14,700人、8時以前か10時以降に出社する時差通勤が20,000人弱。このテレワークデイズの期間に休暇の積極取得も促進しており、8,000人もの社員が休暇を取得する結果でした。
NTTデータにはBizXaaS Officeというクラウドサービスがあり、社員・協働者も含め3万台自社導入しているので、テレワークもスムーズに利用できています。また、BizXaaS Officeのオプションであるモバイルアプリケーション管理(MAM)サービスを活用して、外出先でのメールチェックや予定表の確認、決裁、資料の確認などもスマホひとつで仕事ができる仕組みも取り入れています。
テレワークデイズを活用した社員の声としては、「作業に集中しやすい」という意見が圧倒的に多くありました。「集中し過ぎて疲れた」という意見もあって、労働生産性の観点からはあまり落ちない、むしろ良くなっているのでないかと感じています。
その他にもポジティブな意見が多く、こうした新しい取り組みが社員のモチベーション向上につながることもわかりました。
しかし、今回全社でテレワークデイズを実施してみて、開発現場などセキュアな環境を必要とする職場では、テレワークがしづらい環境がまだあることもわかりました。
開発環境もクラウド化していくなど、『働き方変革』に通ずる様々な施策を実施し、今後も継続的に取り組むべき課題として追求していきたいと考えています。
『働き方改革』を促進する最新技術|VR(仮想現実)会議システムを使ってテレワークを補助!?
今回会場では、実際にNTTデータ内でも使い始められているVR(仮想現実)会議システムのデモンストレーションがありました。
臨場感のあるバーチャル会議を実現し、テレワークでも同じ空間で顔を合わせているように感じられる仮想現実会議システムについてお話いただきました。
仮想現実会議システムが現実に。
山田氏:
今回、テレワークを促進するひとつの手法として、VR(仮想現実)会議システムを紹介したいと思います。
昨年、筑波大学と「ITを使ったテレワーク推進」というテーマで共同研究を実施していて、その研究過程で弊社社員にヒアリングをしたところ、テレワークに向いている業務とうまくいかない業務があるということがわかりました。
例えば、メールチェック・資料作成・技術調査等などのひとりで集中できる仕事(業務)は、テレワークでも支障はなく、むしろ効率よくこなせます。一方、会議やお客様との打ち合わせなどの仕事がある場合、テレワークだと進めにくく、こうした予定がある日はテレワークを避けているという声があったのです。
しかし、我々としては、Web会議や電話会議、テレビ会議など遠隔地でも会議ができる仕組みは十分に用意していると思っていました。
社員に聞いてみると、どうにも「画面越しや声だけの打ち合わせはやりにくい」と言います。そのため、「決裁者が国外にいるなど、どうしてもWeb会議を選択しなければいけないときにだけ利用している」と。
従来の会議システムの課題としては、「本当にその人が前にいて話をしてる感覚がない」もしくは「相手がどういう表情をしているかなどの細かいニュアンスがわからない」という、「臨場感が足りない」という点に集約されるように思いました。
現在テレワークを実施する社員は増えてきていますが、今後こうした障壁を取り除き、必要なときだけテレワークをするのではなく、日常のなかで当たり前にテレワークで仕事をする環境をつくりたいと考え、開発したのが「VR(仮想現実)会議システム」なのです。
VR(仮想現実)会議システムは、臨場感が違う!
山田氏:
外から見ると不思議な感じになるのですけれども、「VR(仮想現実)会議システム」はVRのヘッドセットを用います。会議に参加する方全員がVRのヘッドセットを装着し、IT空間の中につくられた仮想的な会議室に入室します。
仮想空間につくられた会議室へ…!
「VR(仮想現実)会議システム」の一番の特徴は、参加者がCGでつくられたアバターという仮想的なキャラクターで参加することです。
最近、YOU TUBEでもバーチャルユーチューバーがいますよね。男性がかわいい女の子になって動画放送をすることもあるですが、ちょっとそれに似ているかもしれません。本人とは似ても似つかないようなキャラクターになって参加することもできますし、本人に似たアバターで参加することもできます。
会議室は仮想ですが「空間」ですので、距離感もつかめます。体の方向、うなずきなどのボディーランゲージ、視線などもリアルと同じです。声も仮想空間上の発せられている方向から聞こえますので、参加者が一斉に話したとしても誰の言葉かがわかります。
また、VRのヘッドセットをしているとメモが取れないという問題が起きますが、これはコントローラーを操作して音声録音でメモを取れます。この時の言葉は仮想空間上では聞こえません。
ここまでは、現実の会議でできることを仮想空間で再現したという内容です。
もうひとつ、現実での会議を超える機能も搭載しました。
AI機能を使って、音声認識や翻訳をおこなう機能もあります。会議で話している内容はテキストになって、アバターの頭上に表示される吹き出しに可視化されます。言葉は話すとすぐ文字になるので、例えば耳が不自由な方でも簡単に会議に参加することができます。
ちなみに、発した言葉が英語の場合、話している間は英語で表示されますが、ワンセンテンス話し終わると、それが即座に日本語に翻訳されて表示されますので、海外の方を含めた会議は現実よりもスムーズになるかもしれませんね。
会議を中継する機能もあるので、仮想空間の中で表示した資料や可視化されている会話テキストも、Web画面で確認することもできます。あとから抽出することもできるので、何もしなくても議事録ができあがります。
また、この機能は面白いと思っているのですが、内緒話をする機能があります。
実際の会議でも、ちょっとした耳打ちのように隣の人に話しかけることもあるかと思いますが、この仮想空間では、隣の人だけではなくて、任意の方を選んでその人とだけ内緒話をすることができます。
- アバターで会議に参加できる!
- 体の方向や視線、ボディーランゲージなどもリアルそのまま
- 声の方向も現実世界同様
【リアル会議を超える機能】
- AI機能で音声を即時テキスト化、同時通訳も可能に!
- 仮想空間に参加しなくても、Web上で会話や共有資料を確認できる
- 内緒話も自由自在
山田氏:
この仮想空間の会議室は、会議室デザインも選べるので、プールサイドでバーチャル会議をするなど、リアルにはない体験ができることもメリットです。天井に空がのぞく開放的な会議室だったら、議論も活性化するかもしれませんね。
とはいえ、デバイスの使い勝手が良くないなど、まだまだ改善余地はあります。
実用化にむけての見通しは明るいと思っています。データ量は数100kbps程度であり、LTE回線でも十分対応可能です。今後5Gの回線が普及していけば、より通信速度は上がり、快適さは増していくだろうと想定しています。
『働き方改革』を促進する最新技術|RPAを使って組織内生産性アップ
RPAをご存知でしょうか。これはロボットによる業務自動化の取り組みのことです。
テレワークなどの働き方の多様化だけが『働き方改革』なのではなく、組織全体の業務を見直し、効率化を進め、労働生産性を高める取り組みも重要なポイントです。
今回のイベントでは、組織全体の生産性向上の一手としてRPAの活用も紹介されました。
ここからは、RPAの概念や利用事例をまとめてみます。
RPAとは
RPAは、Robotic Process Automationの略。ロボットによる業務自動化の取り組みのことです。
バックオフィス業務などのホワイトカラーの間接業務を自動化するテクノロジーとして期待されており、海外ではデジタル・ワークフォースとも呼ばれている分野です。
人間の知能をコンピューター上で再現しようとするAIや、AIが反復によって学ぶ「機械学習」といった技術が用いられています。
RPAの利用事例
RPAに業務代行させるものとして、有効度が高い業務は、下記のような特徴のある業務です。
- 情報が電子化(構造化・正規化)されているもの
- 定常的に発生するもの(大量な反復操作を伴うもの)
- 処理方針や判断ルールが明確なもの
例えば、新旧の差があるシステムを利用していて、一方のシステムからダウンロードしたExcelデータに、もう一方のシステムからの情報を追記して完成データをつくっていたとします。
この業務を自動化させ、対応していた社員工数を削減することができるのがこのRPAサービスです。
NTTデータが提供するRPAツール「WinActor」
RPAツール「WinActor」は、NTTグループで研究・利用を続け、技術とノウハウが詰まった、業務効率を支援するソフトウェア型ロボットです。
Windows上で操作可能なアプリケーション、個別の業務システムを利用した業務をシナリオ(ワークフロー)として学習し、ユーザーのPC業務を自動化します。
現在は1,500社に導入されているようで、情報システム部門をはじめ、人事部や総務部など、スモールスタートから社内の各管理部門に導入が派生しているケースが多いようです。
組織内での業務を棚卸しし、自動化できるものは自動化を進めることで『働き方改革』『労働生産性の向上』を実現する取り組みも、検討してみてはいかがでしょうか。
11月は『テレワーク月間』!各省庁も推進する『働き方改革』の一手
きたる11月は『テレワーク月間』です。
テレワーク月間とは、テレワーク推進フォーラム(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、学識者、民間事業者等による構成)によりおこなわれるテレワーク普及推進施策のひとつです。
2020年に開催されるオリンピック東京大会では、大きな交通混雑が予想されています。
しかし、ロンドン大会においては、このテレワークの導入によって混雑が緩和され、後のレガシーとして働き方改革につながった例もあります。政府としても、こうした『テレワーク推進』の取り組みを通じて、積極的に導入を図っていきたいという想いがあります。
今年7月に開催された『テレワークデイズ』では、昨年度に比べ約2倍近くの1,682団体、延べ30万人以上の方々が参画しました。
11月に設定されている『テレワーク月間』にも、引き続き注目するとともに、働き手である私たちもひとりひとりが働か方を見直すきっかけにしたいですね。
編集部より
いかがでしたでしょうか。
今回は、『働き方改革』をテーマとしたイベントの様子をご紹介させていただきました。
『働き方改革』には、従来の働き方への考え方を見直すとともに、仕組みとして根気強く導入・運用をしていくことが大切です。
現在、テクノロジーの発展により、新しいプロダクトやサービスを活用して実現できる世界観も広がっています。
これまで様々な企業事例をご紹介してきましたが、どの事例でも、会社で働く社員の声を丁寧に集め、ひとつずつ実行していった積み重ねが結果につながっていると感じています。そこにはたくさんのストーリーがあり、また社員を想う気持ちがありました。
第4次産業革命を背景とした加速度的に発展するビジネス市場において、より多くの企業成長のためにも、引き続き『働き方改革』に注目したいと思います!