
新卒採用市場において、エンジニア職以上に激戦区となりつつあるのが「ビジネス職における理系人材」の獲得です。
かつて外資系コンサルからの採用ニーズが高かった理系人材は今や、総合商社や金融・事業会社へと急速に波及しています。AIの台頭や事業構造の複雑化を背景に、理系院生特有の論理的思考力や高い専門性を「不確実な課題を解くための基礎体力」として再評価する動きが強まっているためです。
「外資就活ドットコム」での27卒における理系歓迎求人は前年比約2倍に急増しており、多くの企業が母集団形成に苦戦しているのが実態です。
本稿では、理系院生の潜在能力をどう引き出し、いかにして接点を持つべきか。独自の学会形式イベントで見えた最新動向と、採用成功を左右する「3つの要素」を解説します。

執筆者岡田 知樹氏株式会社ハウテレビジョン 外資就活ドットコム エンジニア採用事業責任者
2021年にハウテレビジョンへ新卒入社。プロダクトマネージャーとして新機能の企画・実装に従事。その後、外資就活ドットコムのマーケティング責任者を務め、戦略立案・実行、イベント企画などを通じてプロダクトグロースをけん引。2025年より新卒エンジニア採用サービスの事業責任者として、エンジニア志望学生のインサイトや採用市場動向を分析し、企業の採用課題解決と優秀エンジニア層のキャリア形成を両立するマッチングを推進。
目次
なぜ今、ビジネス職で「理系」なのか
昨今の新卒採用市場において、弊社が注力するエンジニア採用支援の枠を超え大きなトレンドとなっているのが「ビジネス職における理系人材ニーズの高まり」です。
この潮流は以前にもあり、外資系戦略コンサルティングファームが日本に上陸した際、彼らが真っ先にアプローチしたのが理系大学院の研究室でした。
企業の複雑な経営・事業課題に向き合うコンサルタント職には、大学院での研究活動に求められる「修士・博士課程まで根詰めて学ぶ経験」「自ら知識を取りに行くスタンス」「論理的思考力」が不可欠であり、理系大学院生が研究を通して身に着ける素養が非常に魅力的に映ったからです。
現在、このニーズが再び、そしてより広範囲に拡大しています。対象はコンサルタントにとどまらず、データアナリスト、M&A、事業開発、経営企画、マーケティングなど多岐にわたります。業界も総合商社、不動産、通信、金融と幅広く、「答えのない複雑な課題」に取り組むための基礎体力として、先ほど列挙した理系の専門性や素養が再評価されているのです。
弊社が運営する「外資就活ドットコム」においても27卒の理系歓迎求人は、26卒比で約2倍となっており、単なるエンジニア採用だけではなく、ビジネス職における理系歓迎求人が増加傾向にあります。2020年頃から顕在化したこのトレンドは、AIの台頭や溢れる情報の精査、経営課題の複雑化を背景に、新卒に求められる要件の高度化・複雑化は今後さらに加速していくでしょう。
初開催、学会形式の逆求人イベント「外資就活Conference」~浮き彫りになった高い理系ニーズ~
「外資就活ドットコム」では、2025年10月28日に理系院生と企業のミスマッチを解消することを目的とした、修士・博士課程の学生に特化したキャリアイベント「外資就活Conference」を初開催しました。


本イベントの最大の特徴は、大学院生が日常的に接する「学会」をトレースした点にあります。学生が自身の研究成果を企業側にアピールする「学会形式の逆求人イベント」として企画されました。
- 参加学生:全国の主要22大学から約50名(交通費・宿泊費を全額支給)
- 参加企業:エムスリー、大和総研、日本マイクロソフト、サイバーエージェント、PKSHA Technology等、約20社(人事・現場社員約50名)
- 満足度:学生満足度8.6/10段階中
- 形式:「ポスターセッション」を導入。A0サイズの研究概要を掲示し、企業の採用担当者や現場の技術者とディスカッションを実施。

出展企業へのアンケートでは、理系採用を「増やす」と回答した企業が約半数となりました。注目すべきは、募集コースとしてビジネス職(「ビジネス職のみ」または「ビジネスとエンジニア両方」)をあげた企業が約5割を占めたことです。ビジネス職における、理系の基礎スキルが求められている現状が見て取れます。
今回のイベントでも、コンサルタント、データアナリスト、営業などのビジネス職で理系院生を採用したいという企業が目立ちました。AIの進化によって求められる仕事のレベルが上がっており、それが新卒採用の要件にも波及していると考えられます。
理系院生が抱える「就活の壁」と企業の課題
また一方で、理系採用においては学生・企業双方が抱える課題があり、本イベントを通してそれらを再認識することができました。
学生側の悩み:研究と就活の両立
参加学生の58.8%が「研究が忙しく、就職活動の時間がとりにくい」と回答。
大学院入学直後の春からサマーインターンの募集が始まる現在の早期化モデルは、研究に没頭する院生にとって極めて大きな負担となっています。
企業側の悩み:母集団形成の限界
企業側の最大の課題は「対象学生にリーチできない」点です。理系院生は全国の国公立大学に分散しており、物理的に接触する機会が限られています。学会に参加しても、学術的な議論に終始してしまい、採用文脈での深い対話が難しいという課題がありました。
今回の「学会形式」は、研究内容を軸にコミュニケーションをすることで学生が本領を発揮しやすく、企業側も「この知見がどう社会に役立つか」という実用的な視点で議論ができるため、スムーズな相互理解と高い満足度につながりました。
また、学会へ足を運べばたくさんの学生に会えなくはないですが、アカデミックの場では研究の妥当性や新規性といった専門的な話になりがちで採用につながりにくいという課題があります。
そうなるとやはり「出会う文脈」は非常に重要で、本イベントは「キャリアを研究で切り開こう」というコンセプトのなかで一定数の理系院生と話をできる点が、スムーズな相互理解につながったと考えられます。
ビジネス職における理系採用を成功させる3つの要素
「外資就活Conference」の開催実績を通しても、ビジネス職における理系人材の採用ニーズの高さがうかがえます。しかし、エンジニア採用との重なりを考慮すると、理系人材獲得競争は今後も激化が予想されます。
私が理系採用に5年携わってきた中で、企業の人事担当者が挙げる一番の課題は良質な母集団形成です。課題の約7割が母集団形成と言っても過言ではありません。私は良質な母集団形成を阻む要因を以下の3つに分解しています。
- 打ち出し:ビジネス職において、理系の素養がどう活きるかを言語化できていない
- 接点:物理的に分散している理系学生に対し、適切なチャネルで自社情報を十分に露出できていない
- 見極め:専門性の高い学生を評価するために、解像度の高い現場社員を巻き込んだ協力体制が乏しい
「外資就活Conference」は、これらへの最適解を探る実験的な試みでもありました。外資就活ドットコムでは、全国各地の優秀な理系人材のプールはあるため、上記3要素への最適解となるようなイベントや取り組みを今後強化していきます。
今後の展望:多様化する就活手法への対応
弊社は、2026年1月18日に東京国際フォーラムにて、28卒向けの大規模合同企業説明会を開催します。ここでは初の試みとして、エンジニアの未来をつくる文化祭「EngineerGuildFes」を併催します。
競技プログラミング大会や技術セミナーを通じ、単なる「就活」に留まらない、エンジニアリングに関わる全ての人が交流する場を提供します。昨今、理系・文系を問わず就活手法は多様化しています。
弊社はプラットフォームとしての知見を活かし、企業の持続的な成長に寄与する新しい新卒採用の形を提起し続けてまいります。
- 開催概要:28卒向け合同企業説明会
https://event.gaishishukatsu.com/expo
- (上記イベント内開催)エンジニアの未来をつくる文化祭「EngineerGuildFes」
https://event.gaishishukatsu.com/engineer_guild_fes
- 出展企業問合せ先:
