三井不動産株式会社は2024年8月5日、新たなDX方針「DX VISION 2030」に関する記者説明会を開催。
説明会では、執行役員DX本部長の古田 貴氏をはじめとする登壇者が、三井不動産グループの新たなDX戦略と具体的な取り組みについて詳細な説明をしていきました。
本記事では、同社のDX戦略の全体像や、「リアル×デジタル」の組み合わせによるビジネス変革の現状と将来像、そしてDX人材育成の新制度などを紹介していきます。
三井不動産のDX戦略『DX VISION 2030』の全体像
三井不動産は、2030年に向けた新グループ長期経営方針『&INNOVATION 2030』において、戦略を支えるインフラの1つに“DX”を位置付けています。
そして、長期経営方針に基づいて策定されたのが『DX VISION 2030』です。
「DX VISION 2030」の特徴は以下の3点です。
1、リアル×デジタルビジネス変革
- デジタルを活用し、リアルの“場”の価値を最大化
- 顧客の解像度向上、データ活用の打ち手増
- 共創により自社の枠を超えたサービスを展開
2、AI/デジタル人材変革
- AI活用によるナレッジの集積化、人が得意な領域へのマンパワーシフト
- DXビジネス人材の育成/採用強化
3、デジタル基盤変革
- 計画的かつ安定したシステム開発
- グループ統一化へ向けた仕組みの標準化・高度化
三井不動産これまでの10年の遷移と主な成果
三井不動産は、デジタルの力を活用してリアルの価値を高めるとともに、新規サービスの開発も進めています。
そのために、DX人材の育成と採用を強化し、AIの活用によって業務効率化と高度化を図り、また、グループ全体でのデジタル基盤の標準化と高度化を進める計画を実行してきています。
実際に、2015年時には「情報システム部」だった部署が、現在ではDX本部と変貌を遂げており、プロパー・出向を含む本部人員は2009年では15名だったのが140名超に、DXエキスパート中途社員も80名超いる状態にまで拡大しています。
「AI/デジタル人材変革」制度の概要と仕組み
三井不動産では、DX推進のために「ビジネス人材(総合職)」と「DXエキスパート人材」の両面から人材育成を強化しており、そのために「能力越境」という形をとっています。
ビジネス人材向けには、実践型の「DXトレーニー制度」を新設。事業部門から選抜された人材がDX本部に1年間異動し、座学と実践を通じてデジタルスキルを習得していきます。
また、7ヶ月が経過した際は、自部署の課題をもとにDXエキスパートと伴走しながら、実際の事業変革を体験していく流れとなっています。
DXトレーニー制度では、3〜5年後を目途に、不動産ビジネスとしての日々の業務にDXスキルが溶け込み、無意識に活用できる人材になることがゴールです。
プログラムの修了後は、自部門での継続的な活動により、基本の「型」から自身の業務や自社・自部門に最適な「型」を見つけていくことが期待されます。
デジタル知見を活用したDXプロジェクトを企画・推進し、DXエキスパート職や外部ベンダーと協働しながらDX推進を担う人材へと成長することを目標としています。
一方で、DXエキスパート人材に対しては、「ビジネスインターン制度」を導入。
DX部門のエキスパート人材が事業部門に約半年異動し、現場業務を通じて同社のビジネスへの理解を深める取り組みです。
社内外で活用!三井不動産の生成AI活用の取り組み
三井不動産は、生成AI活用の取り組みにおいても、社内独自の生成AI環境の内製開発により、業務特化の活用を加速させています。
例としてあがっていたのは、会計理解度テスト作成における効率化で、生成AIに会計処理マニュアルを学習させ、理解度テストを自動生成するというもの。
これにより、従来メンターが毎週3時間かけてテストを作成していたところ、わずか10分で作成が完了。3か月の教育期間で50時間の削減につながったとのこと。
また、社内独自のデータと連携した生成AI環境を構築しており、様々な業務のユースケースにおいて、AIに質問すると回答できる生成AIチャットアプリの内製にも取り組んでいます。
さらに、社内だけでなく、社外のお客様向けにも「すまいのAIコンシェルジュ」「AI東京ドームシティ新聞」といった形で、積極的に生成AIを活用しています。
今後も三井不動産は、「DX VISION 2030」のもと、リアルとデジタルの融合による事業変革を加速させていくために投資を拡大。
デジタル人材の育成と活用、データとAIの戦略的活用を通じて、不動産デベロッパーの枠を超えた価値創造を目指していきます。