勤怠表とは、従業員の出勤・退勤・欠勤・有給などの勤怠状況をまとめて記録した書類のことで、「勤怠管理表」とも呼ばれます。近年では、働き方改革や労働基準法の改正などの影響もあり、企業は従業員の労働時間を適切に把握し、管理することが求められています。
当記事では、勤怠表の意味や種類、必要性、書き方などについて詳しく解説します。勤怠管理における知識を深めたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
タイムカードや出勤簿などで勤怠管理をしている場合、以下のような課題はないでしょうか。
・タイムカードの収集や打刻漏れ、ミスの確認に時間がかかる
・労働時間の集計に時間がかかる/ミスが発生しやすい
・労働時間をリアルタイムで把握できず、月末に集計するまで残業時間がわからない/気づいたら上限を超過していた
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、勤怠管理システムです。システムであれば工数・ミスを削減して労働時間の集計ができるほか、リアルタイムで労働時間が把握できるため、残業の上限規制など法律に則った管理を実現できます。
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目次
1. 勤怠表とはどんな意味?読み方は?
「勤怠表」の読み方は「きんたいひょう」で、辞典には「毎日の出欠を記録する表。」とあります。また、英語の表記は、「attendance record」です。
そして、業務で使用される場合の勤怠表とは、従業員の出勤・退勤・欠勤などの状況をまとめた書類のことであり、企業によっては「勤怠管理表」とも呼びます。
1-1. 勤怠表と勤務表との違い
勤怠表と似た書類に勤務表がありますが、こちらは、出勤日や所定労働時間など、従業員の勤務予定を記したものです。
「シフト表」などと呼ばれることもあり、実際に働いた内容とは異なります。
1-2. 勤怠表と出勤簿との違い
勤怠表と出勤簿に違いはほとんどなく、同じものと考えてよいでしょう。
ただしそれぞれの厳密な定義は企業によって異なることが考えられます。例えば、出勤簿は勤怠の確認に、勤怠表は残業の計算に使用する企業なども存在するでしょう。
2. 勤怠表はなぜ必要?
ここでは、勤怠表が必要とされる理由について詳しく紹介します。
2-1. 労働基準法上記録が必要なため
労働基準法第108条では、賃金台帳の調製が義務付けられています。
同法によると、賃金台帳は「賃金計算の基礎となる事項」を記載しなくてはならないとされていますが、これは実労働時間、時間外労働や休日労働、深夜労働などの項目に分けて記載しなくてはならないということです。
これらの項目に分けて記載するには、勤怠情報を適切に記録しておかなければならないため、勤怠表の作成が必要になるのです。
同法に違反した場合、労働基準法上の罰則として30万円以下の罰金が課される可能性もあります。
2-2. 正しい給与計算のため
勤怠表を使用して給与計算をおこなっている企業は少なくないでしょう。給与の支払いは、企業側と従業員の信頼関係に大きな影響を与えます。
特に、割増賃金の支払いは労働基準法37条に規定されており、違反した場合6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科される恐れがあります。(労働基準法119条)
勤怠表で適切に従業員の勤怠管理ができていれば、実労働時間にもとづき、正確な給与計算を実施することが可能です。逆に、勤怠表を適切に管理できなければ、給与の未払いなどが生じて会社の信用が失墜する可能性もあります。
近年では、働き方改革や労働基準法の改正の影響もあり、複雑な給与計算を求められることがあります。しかし、勤怠表で給与計算に必要な情報を記載するようにしていれば、事実にもとづき給与計算をおこなうことが可能です。
2-3. 有給休暇を正しく付与・取得させるため
条件を満たした労働者には、雇用形態にかかわらず年次有給休暇を付与しなければいけません。(労働基準法第39条)
有給休暇の付与では「全労働日の8割以上の出勤」という条件があり、正しく付与するためには、出勤状況の確認が不可欠です。
また、1年に10日以上の有給休暇を付与された従業員に対しては、年5日の有給取得が義務化されました。同法の違反には罰則も設けられており、使用者は違反者1名につき30万円以下の罰金が課される恐れがあります。
2-4. 従業員の健康管理・コンプライアンス遵守のため
働き方改革関連法によると、年次有給休暇の時季指定や、時間外労働の上限制限、同一労働同一賃金など、多様な働き方を選択できるように、企業が守らなければならない項目が規定されています。
また、労働基準法では、労働時間や休憩、休日、年次有給休暇など、企業が遵守すべき項目が規定されています。
勤怠表で従業員の出勤日や実労働時間が可視化できると、残業時間や休日出勤数などを把握できるため、働きすぎによる心身の健康被害を未然に防ぐことに役立ちます。
あまりに勤務時間が長い従業員に対しては、業務量を調節するなどの対策を講じることが大切です。
3. 勤怠表がない場合のリスク
ここでは、勤怠表がない、つまり適切に勤怠管理をおこなっていない場合、どのようになるかについて詳しく紹介します。
3-1. 法令違反となる
労働基準法により、企業は従業員の勤務状況を適切に管理することが求められています。規定に違反すると、労働基準監督署による調査や是正勧告が実施されたり、罰金などのペナルティが科されたりする可能性もあります。場合によっては、企業の社会的な信頼を損なうことがあります。
そのため、法令順守の観点から、従業員の労働時間を客観的かつ適切に把握できるような勤怠表を用意し、きちんと勤怠管理をおこなうことが大切です。
3-2. トラブル時に対処できない
勤怠管理をきちんと実施していないと、労働に関するトラブルが発生したときに、適切に対処できない恐れがあります。
たとえば、給与の支払いが正しくおこなわれていない場合には、訴訟問題につながる可能性があります。そのときに、客観的に従業員の勤務状況を把握できる証拠書類があれば、実労働時間にもとづき、給与の支払いをおこなったことを証明することが可能です。一方、勤怠管理をおこなっていないと、企業にとって不利にはたらく可能性があります。
このように、勤怠に関するトラブルに対応するために、適切に勤怠管理をおこなうことが大切です。
4. 勤怠表に必要な項目・書き方
勤怠表は従業員の勤務状況を把握するための重要な書類です。そのため、手書きの勤怠表である場合にはボールペンなど簡単には書きかえられない筆記用具で記入させるようにしましょう。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」や「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を踏まえたうえで、勤怠表に必要な項目は、下記の通りです。
- 始業時刻と終業時刻
- 実労働時間数
- 休憩時間
- 実労働日数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
- 休日労働時間数
- 年次有給休暇の取得日数
4-1. 始業時刻と終業時刻
勤務を開始した時刻と、終了した時刻を記録します。会社に到着した時間や、出た時間ではないため注意しましょう。
なお、記録の際は客観的に労働時間を証明できる、改ざんできない方法が必要です。
4-2. 実労働時間数
始業から終業までの時間(就労時間)から、休憩時間を引いた時間です。
例えば、9時始業18時終業の就労9時間の場合、1時間の休憩を引いた8時間が実労働時間です。
4-3. 休憩時間
勤務時間のうち、何時間休憩したか記録します。休憩時間の取得は労働基準法第34条で下記のように義務付けられています。
- 6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分
- 8時間を超える場合は、少なくとも1時間
休憩は時間を与えるだけでなく、労働から完全に離れられる状況でなければいけません。
4-4. 実労働日数
実際に会社に来て働いた日数が実労働日数で、1時間でも働けば1日として数えます。なお、有給休暇などを取得した日は実労働日数には含まれません。
ただし、所定労働日数はあらかじめ定められた労働日数のため、有給休暇などを取得しても変動しません。
4-5. 時間外労働時間数
1日に8時間、1週間に40時間の法定労働時間を超える残業は、法定外残業(時間外労働)といい、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
なお、法定労働時間は超えないものの、就業規則の所定時間を超える残業は、法定内残業といい、割増賃金の支払いは企業により対応が異なります。
4-6. 深夜労働時間数
労働基準法で定められた深夜業に該当する22時から翌日5時までの間にした労働で、25%以上の割増賃金が必要です。
4-7. 休日労働時間数
法律上、使用者は少なくとも毎週1日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えることが義務付けられており、これを法定休日といいます。法定休日の労働では、35%以上の割増賃金の支払いが必要です。
4-8. 年次有給休暇の取得日数
2019年4月の労働基準法改正により、使用者は、有給休暇が年に10日以上付与されている従業員に対し、5日間取得させることが義務付けられました。(労働基準法第39条7)
取得日数と合わせて残日数も管理すると分かりやすいでしょう。
5. 勤怠表を取り扱う上での注意点
ここからは、勤怠表を取り扱う上で注意すべき点を解説します。労働基準法により、労働者の勤怠に関する取り扱いや管理方法は明確に規定されています。
無自覚に法律に抵触してしまうことのないよう、以下のポイントを確認しましょう。
5-1. 客観性のある記録でなければならない
厚生労働省が公表しているガイドラインでは、以下の2つが原則的な方法として規定されています。
- 使用者が、自ら現認することにより確認すること
- タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
やむを得ずに従業員自身が労働時間を記入する自己申告制の方法で勤怠管理をしている企業では、ガイドラインに基づく措置などについて十分な説明、実態調査などが求められます
5-2. 勤怠表は5年間の保管が必要
勤怠表は一定期間の保管が必要であるため、従業員が退職した場合でもきちんと法にしたがって管理することが大切です。
労働基準法第109条では、「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」と記載されています。
そのため、勤怠表は、原則として5年間保存する必要があります。なお、労働関係に関する重要な書類には、勤怠表以外にもタイムカードや賃金台帳も含まれるので注意しましょう。
起算日は、基本的に最後に勤怠表に記録をおこなった日です。ただし、派遣社員の場合、起算日は派遣契約終了日となるため、注意する必要があります。
以前の保管期間は3年間でしたが、法改正にともない、5年間に変更されました。そのため、3年よりも前の勤怠表を破棄しないように注意しましょう。なお、保管期間が過ぎた勤怠表は廃棄が必要となるため、社内の保管・処分ルールを改めて見直しておくことが大切です。
6. 勤怠表の作り方
勤怠表の作り方には、紙の出勤簿から勤怠管理システムなどまでさまざまな種類があります。どの媒体にもメリットデメリットがあるため、法律や自社の条件に沿ったもので作ることをおすすめします
6-1. 勤怠表の無料テンプレートを利用する
紙やエクセルなどの勤怠表のテンプレートは、ウェブ上で検索すると数多く見つけることができます。手軽さが魅力的ですが、手計算によるミスや不正打刻を見つけにくいデメリットがあります。
労務管理担当や使用者は、毎日従業員の出退勤の記録を承認・把握をすることが求められ、長期的にみると工数がかかってしまう傾向にあるでしょう。
6-2. エクセルで勤怠表を作成する
エクセルで関数やマクロを使用して、勤怠表を作成することも可能です。コストがかからず、一度関数を組めば自動計算することもできるため、紙管理と比較すると効率的でしょう。
ただし、度重なる法改正への対応や、不正打刻、テレワークなどの従業員に対しては、別途対応が必要であるため注意が必要です。
6-3. 勤怠管理システム
勤怠管理システムとは、PCやスマホ、タブレットなど、さまざまなデバイスを使用して、従業員の勤務状況を管理できるサービスのことです。
スマホ・ICカード・生体認証などで打刻できるため勤怠表が不要で、勤怠情報をデジタルデータとして扱えるというメリットもあります。
勤怠管理システムを導入すれば、法令を遵守した勤怠管理が可能です。また、ワークフロー・シフト管理・有給管理・予実管理・外部システム連携など、システムによってさまざまな機能が備わっているので、勤怠管理の徹底につながります。
手書きの出勤簿やエクセルを使用した勤怠管理では、改ざんや不正申告、集計ミスなどのリスクがありますが、勤怠管理システムは自動で集計をおこなうため、それらのミスや不正を防止することが可能です。
また、労働時間などをデジタルデータとして扱えるため、集計作業などの業務負担を削減することができます。さらに、アプリで勤怠管理をおこなえるため、テレワークにも対応することができます。
ただし、自社にあう勤怠管理アプリではないと、コストがこれまで以上にかかったり、アプリが社内に定着しなかったりする可能性もあります。そのため、勤怠管理アプリを導入する目的を明確にし、必要な機能の搭載されたアプリを選ぶことが大切です。
7. 勤怠表を適切に管理しよう!
「勤怠表」とは、従業員の出勤・退勤・欠勤などの状況をまとめた書類のことです。勤怠表は、適切に従業員の労働時間を把握して、給与計算をおこなうために必要とされます。なお、きちんと勤怠管理をおこなっていないと、法令違反となったり、トラブルに対処できなかったりする可能性があります。
また、勤怠表の保管期間や記載する項目は、労働基準法など法律に遵守することが大切です。また、近年では、勤怠管理アプリも普及しているため、自社のニーズにあった方法を選択して、適切な勤怠管理をおこないましょう。
タイムカードや出勤簿などで勤怠管理をしている場合、以下のような課題はないでしょうか。
・タイムカードの収集や打刻漏れ、ミスの確認に時間がかかる
・労働時間の集計に時間がかかる/ミスが発生しやすい
・労働時間をリアルタイムで把握できず、月末に集計するまで残業時間がわからない/気づいたら上限を超過していた
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、勤怠管理システムです。システムであれば工数・ミスを削減して労働時間の集計ができるほか、リアルタイムで労働時間が把握できるため、残業の上限規制など法律に則った管理を実現できます。
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