タイムカードの電子化とは?関連する法律やデメリット・メリットも説明 |HR NOTE

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タイムカードの電子化とは?関連する法律やデメリット・メリットも説明

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タイムカードの電子化(デジタル化)とは

タイムカードとは、始業や終業の時刻を記載する紙媒体のカードのことです。タイムカードをタイムレコーダーに挿入するだけで簡単に打刻できます。

そして、タイムカードの電子化とは、勤怠管理をデジタル化することであり、紙を使用した勤怠管理を廃止することを指します。たとえば、勤怠管理システムを導入すれば、スムーズに勤怠管理の電子化を実現することが可能です。

タイムカードを電子化する方法とは

タイムカードを電子化する方法は、1つは勤怠管理システムを導入して打刻方法を電子化するもの、もう1つは、紙のタイムカードを電子化する方法です。

勤怠管理システムを導入する方法

一般的に、タイムカードの電子化といえば勤怠管理システムへの移行を意味します。勤怠管理システムの場合、PCやスマホ、ICカード、生体認証など、さまざまな方法を活用して打刻することができるため、タイムカードそのものを廃止できます。

また、勤怠管理システムには、自動集計・ワークフロー・スケジュール管理・外部連携・アラートなど、勤怠管理をおこなう際にあると、便利な機能が豊富に備わっているのも特徴です。

紙のタイムカードを使用している場合、給与計算を手作業で集計しなければならないため、人的ミスが起こりやすくなります。

勤怠管理システムなら、勤務記録をデータとして出力したり、給与計算ツールと連携させたりするなど勤怠管理を一元化できるため、人的ミスが生じにくく、業務の生産性向上が期待できます。

タイムカードを無料で電子化する方法

もう1つの方法は、紙のタイムカードをスキャンしてデータ化する方法です。この方法なら、タイムカードの保管場所の確保が不要になり、紛失のリスクなども軽減できます。また、労働基準監督署の調査が入った場合なども、必要なデータをすぐに探し出すことが可能です。

ただし、注意点もあります。万が一、電子機器が故障した場合に備え、データを外付けディスクやクラウドシステムにも保存するなどの危機管理が必要です。また、データ化する際にミスが起こる可能性もあるため、一定期間は紙のタイミカードも保管するなどの対策が求められます。

スキャンによるタイムカードのデータ化は、一見すると無料でできるようにも見えますが、データ化の作業にはそれなりの時間や労力が必要です。タイムカードの電子化は、無料という理由だけで選べるものではありません。

タイムカードの電子化が進む理由

社会の変化に伴い、タイムカードを電子化する企業が増えています。

ここでは、タイムカードの電子化が進む理由について詳しく紹介します。

法改正に対応しやすいため

紙のタイムカードを使用して勤務状況を管理している場合、勤怠管理における法律の改正が実施されると、会社規定の変更など、法改正のたびに自社で対応しなければなりません。そのため、業務負担の増加や、給与計算のミスなどのトラブルが発生する恐れがあります。

たとえば、2019年4月施行された働き方改革関連法では、残業時間の上限や有給休暇の取得義務が定められました。紙のタイムカードでは、残業時間や有給取得状況の把握が難しく、タイムカード電子化の流れが一気に加速しました。

勤怠管理システムを導入した場合、一般的にシステムを提供しているベンダーが法改正に対応するために、ソフトウェアのバージョンアップを実施します。

多様化する働き方に対応するため

近年では、働き方改革の影響を受け、テレワークや時短勤務など、働き方の多様化が進んでいます。たとえば、在宅勤務やサテライトオフィスなどを導入する企業も増加しています。

紙のタイムカードによる勤怠管理は、オフィスへの出社を前提としています。テレワークを導入するには、出社しない従業員も適切に勤怠管理をおこなえるよう、管理方法を変える必要があります。また、勤務形態が多様化すれば、労働時間の集計も複雑になるため、手作業のままでは集計作業の負担が大きくなるばかりです。

このように、従業員の多様な働き方に対応するために、タイムカードを電子化して管理する企業が増えています。

工数削減につながるため

タイムカードを電子化すれば、データで勤怠情報を管理できるため、業務効率の向上が期待できます。また、ITツールを活用して、打刻する仕組みを構築すれば、自動でシステムに勤怠情報が取り込まれるため、集計や給与計算にかかる工数を削減することが可能です。

タイムカードを使用する場合、全国に複数の支社があると、タイムカードを本社に収集するためのコストがかかります。

また、集計や給与計算に関する業務は、手作業でおこなう必要もあるため、転記ミスや計算ミスが発生すると、誤った給与計算をおこなってしまう恐れや、業務負担が増加してしまう可能性もあります。

このように、タイムカードを電子化すれば、勤怠管理の業務にかかるコストを削減することが可能です。

タイムカードの電子化に関連する法律とは

タイムカード電子化の流れを加速させている法律は「労働基準法」です。多様化する働き方に対応するため、労働基準法は繰り返し改正されています。しかし、改正の度に勤怠管理が複雑になるため、企業はタイムカードのデジタル化を検討せざるを得ません。

まずは、労働基準法改正の変遷を紹介します。

労働基準法改正の変遷

労働基準法とは、1947年に制定され、労働条件に関する最低基準を定める法律です。労働者の生存権の保障を目的に、雇用契約・労働時間・給与・有給休暇・災害補償・就業規則・解雇など、さまざまな項目について基準を定めています。

2019年4月には、人手不足や長時間労働問題、柔軟な働き方に対応するために改正がおこなわれています。勤怠面においては、時間外労働の上限規制や、労働時間の客観的な把握、年次有給休暇の年5日取得の義務化、フレックスタイム制の清算期間の延長などが当てはまります。

また、2023年4月には、1カ月で60時間を超える時間外労働に対して、法定割増賃金を50%以上とすることを、中小企業に対しても適用することが決定されています。

このように、労働基準法の改正は繰り返しおこなわれてきました。それに伴い、企業には、法改正に迅速かつ適切に対応することが求められています。労働基準法の改正は今後も実施されると考えられるため、タイムカードの電子化問題に直面する企業が後を絶ちません。

タイムカードの電子化は法律に違反しない

タイムカードを電子化するにあたり、違法性を心配する人もいるのではないでしょうか。労働時間の記録方法として、タイムカードの使用を禁止する法律はありません。そのため、タイムカードの電子化が違法と解釈されることはないでしょう。

勤怠管理で重要なのは、労働時間を正確に記録できているかという点です。電子化によって勤怠を正しく把握できなくなる場合は違法性が高まります。しかし、勤怠管理システムの導入により勤怠記録の正確性・客観性を維持、あるいは向上できるのであれば、紙によるタイムカードよりも電子化するほうが、より勤怠管理方法として適切と言えるでしょう。

タイムカードの電子化に伴うメリット

タイムカードを電子化すれば、人事担当者と従業員ともに、さまざまなメリットを得ることができます。まず、従業員が打刻した情報を自動でシステムに取り込めるため、人事担当者の業務負担の軽減につながります。また、勤怠データを活用し、時間外労働や休日出勤数の多い従業員を分析し、働き方の改善につなげることも可能です。

さらに、タイムカードの場合、従業員本人以外の人物が代理で打刻する不正打刻や記録の改ざんなどが起きる可能性がありますしかし、生体認証やPC・スマホを使用した打刻方法を採用すれば、不正打刻を未然に防ぐことが可能です。そして、従業員にとっても、外出先での打刻がしやすい、有休の申請などを簡単におこなうことができるなどのメリットがあります。

タイムカードの電子化に伴うデメリットと注意点

タイムカードを電子化するにあたって、勤怠管理システムの導入・運用に関する費用や、会社規定の変更など、時間や手間がかかるというデメリットがあります。また、導入するシステムによって、費用形態やサポート体制などは異なるため、十分に比較して選ぶことが大切です。

打刻方法においては、スマホ、ICカードを採用する場合には、紛失の恐れがあります。クラウド型の勤怠管理システムの場合、セキュリティ面でのリスクもあります。指紋や顔などの生体認証を採用する場合では、システムの不具合や反応速度などの懸念もあるでしょう。

このように、タイムカードを電子化するにあたっては、デメリットもあるため、事前に目的を明確化し、注意点を洗い出すことが重要です。たとえば、システムの費用対効果を計測したり、自社にあう打刻方法を検討したりすることが必要になります。また、運用方法をマニュアル化し、従業員への周知にも徹底しましょう。

タイムカード電子化のベストなタイミングとは

紙のタイムカードによる勤怠管理は、法律上、何も問題はありません。そのため、現状のままタイムカードを使用することも可能です。しかし、だからこそ、電子化のタイミングが難しいという声も少なくありません。

ここでは、タイムカード電子化の最適なタイミングを紹介します。電子化のタイミングで迷っている場合は参考にしてみてください。

過重労働を防止したいとき

タイムカードでの勤怠管理では、労働時間を月末に集計するのが一般的です。そのため、集計してはじめて残業時間の規定をオーバーしていたことに気づくケースも珍しくありません。

労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働は認められていません。これを超える労働をさせる場合には労使協定を締結し、残業時間や休日労働を規定の範囲内に収める必要があります。

残業時間などを法定内に収めるためには、まずは従業員の労働時間を正確に把握することが重要です。勤怠管理システムなら、リアルタイムで労働時間を管理できるため、超過労働の防止につながります。

過重労働は従業員の心身にも影響を与えるため、労働時間の管理とともに働きやすい環境作りにも取り組みましょう。

複数拠点の勤怠管理にかかるコストを削減したいとき

複数の拠点の勤怠管理を一括でおこなっている場合、拠点先とのやり取りにかなりの時間や労力を割くことになります。タイムカードを回収するのにもコストがかかり、タイムカードに不備があればその確認作業も必要です。

現状の勤怠管理に苦戦している場合は、電子化に移行するタイミングと言えるでしょう。

テレワーク等を導入するとき

コロナの流行をきっかけに働き方の多様化が加速し、テレワークやサテライトオフィスなど、会社に行かなくても仕事ができることが当たり前になりつつあります。

しかし、タイムカードは会社に出勤することを前提とした勤怠管理方法であるため、多様化する働き方に対応しきれません。多様な働き方には、電子化による勤怠管理が不可欠と言えるでしょう。

業務改善やペーパーレス化に取り組むとき

タイムカードの電子化で勤怠管理システムを導入すると、さまざまな機能により勤怠管理以外の工数も削減できます。たとえば、有給休暇などの申請を紙でおこなっている場合、勤怠管理システムのワークフロー機能を利用すれば、申請から承認までをシステム上で完結させることが可能です。

勤怠管理システムを導入すれば、紙ベースでの業務が減るため、ペーパーレス化や作業効率の向上につながります。勤怠管理システムなら、タイムカードの電子化という目的以外にもさまざまな効果を得られるでしょう。

タイムカードと勤怠管理システムを比較

タイムカードと勤怠管理システムには、それぞれメリットやデメリットがあります。

コスト面で比較すると、タイムカードの場合、カードとタイムレコーダーを用意すれば、素早く導入できるため、コストを抑えられるメリットがあります。

一方、勤怠管理システムの場合、料金プランや導入形態、サポート体制、セキュリティ体制などによって、料金は大きく異なり、費用負担が大きくなる可能性があります。

法律の改定への適用しやすさの観点から比較すると、タイムカードの場合、法改正のたびに自社で対応しなければならないため、管理の手間がかかります。

一方、勤怠管理システムの場合、ベンダーによる機能のアップデートがある場合が多く、管理の手間を省くことが可能です。

運用方法について比較すると、タイムカードの場合、紙を使用しているため、誰でも簡単に打刻できるというメリットがあります。

一方、勤怠管理システムの場合、パソコンの操作が初めての従業員に対して、きちんと使い方を周知しなければならないため、導入や運用に一定の時間や手間がかかります。

このように、タイムカードと勤怠管理システムのそれぞれの特徴を把握し、自社の状況やニーズに応じて、勤怠管理の方法を見極めることが大切です。

勤怠管理システムを導入する際の注意点

タイムカードの電子化で勤怠管理システムを導入する際の注意点を紹介します。事前に確認しておくことでスムーズな移行につながるでしょう。

従業員の理解を得る

従業員の中には、打刻や各種申請フローが変わることに抵抗感を持つ人もいます。誰でも簡単に使える紙のタイムカードに比べ、勤怠管理システムは業務フローやルールを覚え直さなくてはなりません。

そのため、従業員に対し、勤怠管理システムを導入する理由やメリットなどを事前に説明して理解を求めましょう。この際、従業員にとってのメリットもしっかりと伝えることが大切です。

また、電子化移行による混乱を最小限に抑えるために、勤怠システムの操作マニュアルや運用ルールなども作成して周知します。操作に手間取ったり、ミスが生じたりすることも承知の上で運用を開始しましょう。

職場環境や勤務形態にあう打刻方法を選ぶ

一口に勤怠管理システムといっても、打刻方法はさまざまです。顔や指紋による生体認証やスマートフォン・PCでのGPSで打刻する方法などがあります。

打刻方法は勤怠管理システムのスムーズな運用に大きく関係するため、自社の職場環境や勤務形態、従業員数などに合わせて最適な打刻方法を選びましょう。

例えば、生体認証は読み取りにやや時間がかかるため、従業員の人数が多い企業や同じ時間に一斉出社する企業には不向きです。このような場合は、スマートフォンやPCから各人が打刻できるシステムを選ぶとよいでしょう。

勤怠管理システムでカバーする業務範囲を決めておく

勤怠管理システムにはさまざまな種類があり、機能も異なります。そのため、事前に勤怠管理システムでカバーしたい業務範囲を決めておきましょう。

具体的には、勤怠の記録のみに限定するのか、ワークフロー機能も必要なのか、給与計算システムと連携するのか、などが挙げられます。また、現状の勤怠管理方法と適合しそうか?という視点で検討することも大切です。

勤怠管理システムの導入・運用にかかる費用も比較しながら、自社にあう勤怠管理システムを選びましょう。ただし、自社のニーズを大幅に上回る多機能なシステムを導入しても、コスト以上の効率化・成果は得られないので注意が必要です。

タイムカードの電子化で勤怠管理を効率化しよう!

タイムカードを電子化すれば、働き方の多様化や、業務負担をの軽減実現できます。また、勤怠管理システムを導入すれば、法改正に対応しやすいというメリットもあります。

ただし、タイムカードを電子化するにあたっては、コスト面や従業員への周知の徹底など注意点があります。そのため、タイムカードの電子化が本当に必要かを明確にしましょう。そのうえで、自社のニーズにあった勤怠管理システムを導入することが大切です。

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