同一労働同一賃金では、就業規則の見直しが必要です。正社員と非正規社員の格差を埋め、働きやすい環境を整えるためにも、会社の実態に沿った就業規則にしましょう。
しかし、なかには「就業規則のどこを見直せばいいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事は、同一労働同一賃金における就業規則の見直しの必要性や見直すべき項目を解説します。見直しのポイント・注意点も解説するため、ぜひ参考にしてください。
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同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。
自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 同一労働同一賃金では就業規則の見直しが必要
同一労働同一賃金で働き方改革を実現していくには、就業規則の見直しが必要です。
同一労働同一賃金とは、同じ場所・仕事内容で働く正社員と非正規雇用者の間に生じる、不合理な待遇差を禁じる考え方を指します。どういった内容が「不合理な待遇差」であるのかは、企業の主観ではなく、客観的な基準に基づいて判断されなければなりません。
厚生労働省では、その判断基準として「均等待遇」と「均衡待遇」とよばれる2つの考え方を示しています。それぞれの内容は以下の通りです。
均衡待遇 |
業務の内容、職責の程度、人事異動の範囲、そのほかの事情(能力・経験)を踏まえ、不合理な待遇差を設けない |
均等待遇 |
業務の内容や職責の程度、人事異動の範囲が同じ場合は差別的扱いを禁じる |
つまり、正社員と非正規雇用者で働き方が違う場合は相対的に待遇を決め、同一の場合は同じ待遇にする必要があるということです。
賃金をはじめ賞与や福利厚生などの待遇については、多くの場合、就業規則で定められています。全従業員が働きやすい職場環境にするため、企業では、今一度、法令を遵守した就業規則になっているかの確認が必要になるでしょう。
2. 同一労働同一賃金で見直すべき就業規則の7つの項目
同一労働同一賃金で見直すべき就業規則の項目は次の7つです。
- 基本給
- 各種手当
- 福利厚生
- 賞与
- 休暇
- 退職金
- 教育訓練
厚生労働省が開示する同一労働同一賃金のガイドラインでは、賃金や賞与などの待遇に関する、基本的な考え方を示しています。どのような待遇差が不合理であるのか、そうでないのかについての具体例も記載されているため、必ずチェックしてください。
それぞれ詳しく確認していきましょう。
2-1. 基本給
基本給は、労働者の能力や業績、勤続年数などから総合的に判断して、合理的に決める必要があります。能力または業績、勤続年数に違いがない場合は、正社員・非正規雇用者ともに同一の基本給を支払わなければなりません。
基本給とは、時間外労働手当や通勤手当などの割増賃金・手当を除いた、給与のベースとなる賃金のことです。同一労働同一賃金ガイドラインでは、基本給の待遇について、以下のように解説しています。
基本給が、労働者の能力又は経験に応じて支払うもの、業績又は成果に応じて支払うもの、勤続年数に応じて支払うものなど、その趣旨・性格が様々である現実を認めた上で、それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。
昇給についても、勤続年数や能力が同程度の場合は、同等の昇給をおこなう必要があります。
2-2. 各種手当
各種手当で見直すべき項目は、次の4つです。
- 役付手当
- 資格手当
- 精皆勤手当
- 時間外労働手当
手当は、非正規雇用者にも当てはまる部分が多いため、しっかりと確認しましょう。
2-2-1. 役付手当
正社員と非正規雇用者が同じ役職、または同じ役割を担っている場合は、同額の役付手当を支給する必要があります。
役付手当は、役職や職責に応じて支払う給与であり、対象となるのは、主に重要なポストを担う主任・部長・課長などの管理職です。そもそも非正規雇用者と正社員では、労働条件に違いがあるため、非正規雇用者を役職に就かせないケースは多いでしょう。
ただし、非正規雇用者を店長やリーダーに就任させる場合は注意が必要です。職責が同等の場合は同額、労働時間が異なる場合はその時間に応じて手当を支給する必要があります。
就業規則を見直す際は、従業員の昇進に関する事項も参照して、内容の食い違いがないようにしましょう。
2-2-2. 資格手当
資格手当は、特定の資格を保有する全従業員が支給対象であるため、有資格者の非正規雇用者にも同様に支給しなければなりません。
資格手当の有無や支給条件(毎月一定額か資格取得時か)は、企業の裁量によるものの、雇用形態で差がないように注意しましょう。
2-2-3. 精皆勤手当
精皆勤手当は、期間内に欠勤が少ないまたは無欠勤の従業員に支給する手当で、非正規雇用者にも適用されることが一般的です。
正社員と同一の働き方をする非正規雇用者には、同額が支給されるよう、就業規則を整えましょう。
2-2-4. 時間外労働手当
時間外労働手当は、同じ業務内容を担う従業員には、同じ割増率で支給すべきです。
時間外労働の割増賃金率に関する法律は、令和5年4月1日から、一部内容を変更して施行されています。月の時間外労働時間が60時間を超えた場合は、割増率が50%を上回るようにしなければなりません。
就業規則で時間外労働の割増賃金率を見直す際は、最新の法律に沿っているかも併せて確認しましょう。
参照:同一労働同一賃金 割増賃金率引き上げについて|厚生労働省
2-3. 福利厚生
福利厚生は、職場の働きやすさや従業員の満足度にも関わる大切な要素です。同一労働同一賃金では、次の3項目を重点に就業規則の見直しをおこなうとよいでしょう。
- 家族手当
- 住宅手当
- 通勤手当・出張旅費
2-3-1. 家族手当
家族手当は、扶養家族のいる従業員が支給対象であることから、非正規雇用者にも当てはまるのが通常です。ただし、子どもがすでに独り立ちしている、定年後に再雇用した嘱託社員などについては、この限りではありません。
2-3-2. 住宅手当
住宅手当についても、正社員と非正規雇用者で転勤の有無や範囲に違いがない場合は、同一に支給します。
一方、正社員だけに全国転勤を命じるケースでは、非正規雇用者に住宅手当を支給しなくても問題はありません。
2-3-3. 通勤手当・出張旅費
通勤手当や出張旅費も、正社員・非正規雇用者とも平等に支給すべきです。正社員は全額支給して、契約社員やパートには上限額を設定するといった差が生まれないように注意しましょう。
2-4. 賞与
賞与は、会社への貢献度に応じて支給するものであることから、非正規雇用者も支給の対象です。貢献度が同程度であれば同一の、異なる場合は相応の額を支給しなければなりません。
したがって、法令上は、雇用形態を問わないのであれば、一定の業績目標を達成した従業員にのみ賞与を支給することも可能です。賞与は従業員のモチベーションにも影響するため、明確な基準・仕組みのもと、自社の実態に合った待遇をとりましょう。
2-5. 休暇
勤続期間にもとづいて決まる法定外の休暇は、同一の勤続期間に対し、同一の付与をおこなう必要があります。有期雇用労働者の場合は、契約初年度から通算した勤続期間が付与の対象です。
また、病気休暇や特別休暇に関しても、公平に与えることが望まれます。
2-6. 退職金
退職金の有無については、正社員と非正規雇用者で勤務条件や働き方が違うことから、一概に不合理とは判断できないのが現状です。しかし、今後退職金の有無や差が理由で違法とされる可能性は十分にあります。
そのため、就業規則では、以下の2点をポイントに見直しをおこなう必要があるでしょう。
- 正社員登用制度を導入し、非正規雇用者が働き方を柔軟に選択できる機会をつくること
- 非正規雇用者の待遇について労使間で定期的に話し合い、格差を固定化させないこと
2-7. 教育訓練
同一労働同一賃金ガイドラインでは、教育訓練の機会も正社員と同様に与えることが定められています。職務に必要な知識や技能を得てもらうためにも、同一の業務内容をおこなう従業員には同一の教育訓練が必要です。
3. 同一労働同一賃金で就業規則を見直す際に注意したい3つのポイント
同一労働同一賃金で就業規則を見直す際は、次の3点に注意が必要です。
- 必ず正社員を比較対象にする
- 正社員の待遇を変える際は従業員の同意が必要
- 人件費の負担が増す可能性がある
それぞれ詳しく確認しましょう。
3-1. 必ず正社員を比較対象にする
従業員間の待遇差が合理的かどうかを判断する際は、必ず正社員を基準におこなわなければなりません。有期雇用労働者同士やパートタイム労働者同士で比較しないようにしましょう。
3-2. 正社員の待遇を変える際は従業員の同意が必要
正社員の待遇について、就業規則の内容を変更する場合は、労使で話し合い、従業員の同意を得る必要があります。しかし、従業員によっては、賃金の減額に不満や負担を感じるケースも少なくありません。
正社員の待遇を大幅に引き下げることは避け、変更する場合は合理的な説明をおこなうことが大切です。
3-3. 人件費の負担が増す可能性がある
就業規則を見直す際は、手当や賞与を支給する対象が増えることで、人件費が増加する点にも注意しておきましょう。新しく手当を支給したり、大幅に待遇を変えたりすると、人件費の負担が大きくなり、経費を圧迫するおそれがあります。
資金を効率的に運用し、よりよい働き方改革を進めるため、今後企業では、業務自動化やシステム化などの対応が求められるでしょう。
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