人材マネジメントシステムとは、社員の労働意欲を高め、貴重な人材を有効に活用できる画期的なシステムです。近年は人材マネジメントシステムの導入を検討している企業が増えています。
労働力の減少や、一つの企業にしばられない働き方が浸透しつつあるなか、人材不足に悩んでいる企業は非常に多いです。人材の確保や育成だけでなく、離職防止にも努めなくてはなりません。
そこで人材マネジメントシステムが役立ちます。しかし「具体的にどういうものかわからない」「人事システムとの違いが知りたい」と疑問を持つ方もいるでしょう。
本記事では人材マネジメントシステムの基礎知識や、システムの比較ポイント、導入する際の注意点を解説しています。企業経営者や人事・労務担当の方は、ぜひご一読ください。
目次
1. 人材マネジメントシステムとは
人材マネジメントシステムとは、「タレントマネジメント」をサポートするためのシステムです。
タレントマネジメントとは、従業員のスキルを経営資源と捉え、戦略的に採用・育成・配置・評価するマネジメント方法を意味します。
システムの特徴は、人材に関する情報をシステム内に集め、会社全体で共有することです。人材情報が一元化されていれば、従業員の資質や特性を発揮できる部署に配属しやすくなります。
システムを導入すれば、場当たり的ではなく、個人に合った育成教育や総合的な評価をおこなえるようになるでしょう。
2. 人材マネジメントシステムと人事システムの違い
人材マネジメントシステムと人事システムは、使用目的が異なる全く別のシステムです。企業によって必要なシステムは異なるので、どちらか片方が必要な場合もあれば、両方とも必要な場合もあります。
人材マネジメントシステムと人事管理システムの違いはこちらです。
システムの種類 |
使用場所 |
業務内容 |
目的 |
人事システム |
労務担当 |
従業員の勤怠管理 給与計算 従業員の個人情報の管理 福利厚生制度利用の申請・手続き 人事・異動情報の管理 |
人事業務の効率化 正確な業務の遂行 人事情報の管理 |
人材マネジメントシステム |
企業全体 |
従業員の資質・特性・経験などの情報を一元化して管理 |
最適な人材活用・配置・育成を目指す |
このように2つのシステムは、全く別の性質をもっています。自社にはどのシステムが必要なのかを考慮してから、システムの導入を決定しましょう。
3. 人材マネジメントシステムの4つの目的
人材マネジメントシステムの目的は、最適な人材活用・配置・育成です。具体的には、以下の4つがあげられます。
- 評価業務を効率化する
- 効果的な人材開発をする
- それぞれの社員に適した人材配置をする
- 離職を防止する
それぞれの目的について、詳しく解説します。
3-1.評価業務を効率化する
まず、人材マネジメントシステムの使用で期待できるのは評価業務の効率化です。紙やExcelを使ったデータは、共有するために集約作業やコピー作業が必要となります。
しかし、人材マネジメントシステムでは、評価データを一元化して管理できるので、情報共有のための作業を必要としません。業務の進行が自動化できるワークフロー機能を活用すれば、評価のし忘れも防げます。
また集約した人材データは、グラフやチャートなどで確認可能です。したがって、さまざまな視点で分析ができます。
3-2.効果的な人材開発をする
人材マネジメントシステムは、人材開発面でも大きな効果が期待できるでしょう。
システムでは、能力の強みや弱みがスムーズに把握できます。自分がやるべきことがはっきりするので、従業員は迷いなくステップアップへ力を注げるようになるでしょう。評価の基準や理由が明確なので、従業員は評価に公平性を感じられるのもポイントです。
またシステム上では、個々の目標だけでなく、企業全体・部署などの目標も表示されます。自分と部署、企業全体のつながりを実感できることも、従業員のモチベーションアップにつながるでしょう。
3-3.それぞれの社員に適した人材配置をする
人材マネジメントシステムを使うと、それぞれの社員に適した人材配置がしやすくなります。
システム上では、現在いる従業員のスキルや経験年数などの情報を検索機能で抽出が可能です。また、それぞれの従業員の能力や特徴、経験した業務内容なども簡単に把握でき、どのような業務が適しているか見極めるのが容易になります。
配置前のシミュレーションや配置後の分析もすべてシステム上でおこなえるので大変効率的です。それぞれの人材に適した配置ができれば、企業全体の生産性がアップする可能性が高まるでしょう。
加えて、自分の能力に合った業務に携われた従業員は、仕事への意欲が高まりやすくなります。
3-4.離職を防止する
人材マネジメントシステムによる育成や人材配置は、従業員も業務への満足度アップにつながります。仕事にやりがいを感じられる環境であれば、離職を考える可能性は低くなるでしょう。
システムを使って、仕事への満足度調査やアンケートを実施すれば、現在のコンディションの把握も可能です。不調や不満を感じている従業員へのフォローが実施できれば、さらに離職を防止できる可能性が高まります。
4. 人材マネジメントシステムの4つのタイプ
人材マネジメントシステムは、大きく4つのタイプに分けられます。それぞれの特徴をまとめたので、自社に合うシステムを選ぶ際の参考にしてください。
システムのタイプ |
適している企業・システムの機能 |
目標管理と得意とする |
人材育成に力をいれたい企業に適している 従業員の目標達成のサポートができる 進捗管理・タスク共有・1on1ができる |
人事評価が効率化できる |
評価業務の運用を効率化させたい企業に適している 人事データを一括管理できる データの集約・分析ができる |
人材活用の支援を得意とする |
限られた人材を効果的に活用したい企業に適している 育成・配置・昇格などのサポートができる |
人材の管理・育成・活用を総合的にサポートする |
幅広い用途でシステムを使用したい企業に適している 目標感知・人事評価・人材活用などさまざまな機能を網羅している |
システムのタイプによって、できることや得意とすることが異なります。自社の目的や課題を分析してから、システムを選びましょう。
5. 人材マネジメントシステムを比較するポイント
人材マネジメントシステムを比較するポイントはこちらです。
- 自社で求める機能が搭載されているか
- 導入支援はサポートサービスが充実しているか
- セキュリティがしっかりとしているか
- コスト面で問題がないか
システム導入のコストや、必要としている機能が搭載されているかはもちろん重要なポイントです。
しかし、導入時の支援や導入後に問題がおきたときのサポートも忘れてはいけません。どのような方法で実施されるのか、また有料なのかもチェックしておきましょう。
加えてシステムは多くの情報を管理するので、セキュリティ面の充実度も重要視すべきです。どれか一つのポイントに注目するのではなく、これらの情報を総合的に見てシステムを比較しましょう。
6. 人材マネジメントシステムを導入する際の注意点
人材マネジメントシステムを導入する際には、以下の注意点を押さえておきましょう。
- 多言語対応しているシステムは少ない
- システムの活用・メンテナンス方法などを学ぶ必要がある
- 従業員に教育しなければならない
国内外に拠点を置いている場合や、外国人従業員を雇用している場合には、多言語に対応したシステムを導入する必要があります。しかし現在多言語に対応しているシステムは少なく、選択肢が限られている状況です。
また人材マネジメントシステムを導入しただけで、効率化が進むわけではありません。システム担当者は、システムの活用法やメンテナンス方法を学ばなくてはならず、導入直後は負担が増える場合が多いです。
さらに各従業員にも、システムを理解してもらうための教育をおこなう必要があります。
7. 人材マネジメントシステムを効果的に活用してタレントマネジメントを実施しよう
いかがでしたか。人材マネジメントシステムは、導入するだけで効果はあがりませんが、うまく活用することができれば社員の生産性を最大化することができます。
ぜひ、自社にあった人材マネジメントシステムの導入を検討してみてください。