社員の成績やスキル、課題を把握し、適切な人事評価に役立つ書類が人事評価シートです。多くの企業で導入されているものの、部下をどのように評価してよいか、悩む上司の方も多いでしょう。
目標は努力して達成できる範囲で定める、評価ではプラスとマイナスの双方の内容を盛り込み部下の成長を促すなど、書き方にはいくつかのポイントがあります。
本記事では、人事評価シートを書くときのポイントを解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人事評価とは?
人事評価(パフォーマンス評価)は、従業員の業務遂行能力、成果、行動、態度などを評価するシステムやプロセスを指します。人事評価は、個々の従業員が組織内でどのように働いているか、その貢献度を測定し、把握するためにおこなわれます。
人事評価シートを作成し、評価内容を客観的に見返すことが出来る記録として残すことが大切です。
1-1. 人事評価の目的
人事評価の目的は以下の通りです。
- 公平な評価により昇給や昇進をおこなうため
- 社員のモチベーション向上のため
- 会社が目指す方向性を認知させるため
明確な評価基準を設けることで、社員一人ひとりの頑張りが適切に評価されます。社員は努力の方向性が理解でき、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
また、人事評価制度は、企業の進む方向を社員の認識と一致させる効果もあります。目指す方向の一致は組織形成を進めるうえでも必要です。
1-2. 人事評価に必要な要素
一般的に、人事評価では実績だけでなく、社員のスキルや意欲を含む下記の3つの要素により多角的に評価します。
- 成果評価:目標達成度などの実績を評価する
- 能力評価:実行力や改善力など仕事上の能力を評価する
- 情意評価:責任感など勤務態度を評価する
成果評価では一定期間中の達成目標を定め評価します。新規顧客の獲得数など数値で管理するため、透明性の高い基準です。
能力評価では、社員が業務にどの程度能力を発揮したか、また、どのような能力を身に付けたかを評価します。
情意評価では、協調性や積極性、責任感、規律性など、勤務態度や業務への姿勢を評価します。
1-3. 人事評価シートを作成する目的
人事評価シートを作成する目的は以下の3つです。
- 評価が適切か確認するため
- 自己の成長を振り返るため
- 人材管理のため
人事評価シートは3カ月~1年に一度、社員と上司の双方が記載し作成します。事前の面談時に目標を設定し、期間終了後、再度面談をおこない評価することが多いでしょう。
上司と社員、双方が評価シートへ記入するため、評価が適切か確認でき、社員は成長を振り返る機会にもなります。
また、会社に人事評価シートがあれば、管理者候補の決定など人材管理を実施するうえでも有効な資料となります。
2. 人事評価を書くときのポイント
人事評価シートは目標設定時から評価時まで、書き方があります。ここでは、上司が部下の人事評価シートを作成するときのポイントを解説します。
2-1. 経営方針に基づいた目標を設定する
社員が立てた目標は、事業方針に基づいているか、経営目標の達成に貢献できるか確認しましょう。優れた目標を設定しても、それが事業と関係なければ意味がありません。
目標設定が事業方針と食い違う社員がいれば、説明のうえ、修正を指示しましょう。
2-2. 努力して実現可能な目標を設定する
社員が設定した目標は仕事に励むことで、実現できるレベルか確認しましょう。なかには、よい評価を得るため、容易に達成できる目標を設定する社員もいます。
また、目標が高すぎる場合、達成できないだけでなく、自己の能力を客観的に認識できていない恐れもあります。社員のキャリアプランも考慮し、努力して達成できるレベルに設定しましょう。
2-3. 具体的な期日を設定する
人事評価の目標設定には具体的な期日の設定が不可欠です。いつまでに何を達成すればよいのか、目標に対して明確な期日を設けましょう。
期日は次の人事評価までとするのが一般的ですが、最終目標のみならずステップごとに期日を刻んで、その都度フィードバックをおこなうのも効果的です。
2-4. 目標の達成条件を明確にする
目標は可能な限り数値で設定しましょう。また、定量化が難しい目標は達成条件を明確にして設定します。「勤務態度を改善する」のように漠然としていては評価も難しくなるためです。
「自ら率先して挨拶し、同僚と良好な関係を築く」のように、行動や目標を明確にさせましょう。
2-5. 達成できた点と改善点の双方を評価する
評価の段階では、社員が達成できた点と問題点、さらにその改善方法まで明記しましょう。人事評価シートは成長につなげる目的もあるため、達成できた内容を評価するだけでは足りません。
そのため、評価の際は部下の失敗点や問題点も記入し、その改善方法も合わせて記載します。
日本人は謙遜して自己評価を低く設定することも多々あります。その場合、自己評価よりも一段高く評価するとよいでしょう。
なお、社員の自己評価は、本人の性格によっても大きな差があります。なかには自己評価が高すぎるケースもあるため、一人ひとりの性質も考慮しましょう。
3. 人事評価を書くときの注意点
人事評価シートは公平な人事評価だけでなく、人材管理や社員の成長も担う書類です。また、労働基準法によって3年間の保管が義務付けられているため、後から見返したときにもわかりやすいように記載しましょう。
3-1. 内容は簡潔に記載する
結論から先に記載し、簡潔でわかりやすい内容を心がけましょう。簡潔な記載が必要な理由は2つあり、ひとつは、上司と部下の理解を一致させるためです。
もうひとつは、人材管理の資料として、後から見返したときも内容を把握しやすいためです。
3-2. 偏見や先入観を捨て第三者目線で書く
社員の評価では、付き合いの長さやひとつの高い業績などに惑わされず、第三者目線で客観的に評価しましょう。
これらの先入観や偏見は「評価エラー」とも呼ばれています。評価ではイメージではなく事実のみを確認するほか、可能であれば評価者の人数を増やすなども対策のひとつです。
3-3. 社員のモチベーションを下げない
人事評価シートのフィードバックは、社員の成長を促すのが目的です。そのため、プラス評価とマイナス評価のバランスを考慮しましょう。
また、指摘が必要な内容は改善方法も明記し、モチベーションが下がらないようにします。
4. 【職業別】人事評価の書き方を例文付きで紹介
人事評価の書き方は、業界や職種によっても異なります。ここでは、書き方のポイントを例文付きで解説します。
4-1. 営業職
営業職は目標の達成状況を数値で判断できるため、成果志向に傾きやすくなります。そのため、個々のスキルや勤務態度など、部下の行動面にも日頃から注意を向けて書く必要があります。
人事評価の書き方例文:部下の場合
今年度の営業成績は、目標の売り上げ1000万円に対して1200万円と、達成率120%を実現することができた。また、既存クライアントとのコミュニケーションに重きを置き、重要度や訪問期間別にリストを見直したうえで、フォロー営業を強化。
新規獲得件数は、目標の10件に対して8件の着地で未達となったが、フォロー営業が効果的に働き、既存顧客の単価を上げることに成功した。
人事評価の書き方例文:上司の場合
営業目標の1000万に対して、達成率120%の結果を残せたことは素晴らしく、評価に値する。また、訪問リストはチーム全体で活用することができ、個人のみならず全体の売り上げやモチベーション向上にもつながった。
顧客単価の向上は大きな成果ではあるため、来期も単価を維持しつつ、新規顧客獲得に向けてのさらなる取り組みを期待する。
ポジティブな評価のコメント例
- 戦略立案と実行能力
「緻密な市場分析に基づき、効果的なマーケティング戦略を立案し、その実行により目標を大幅に上回る成果を達成しました。」 - クリエイティブな提案
「革新的なアイデアとクリエイティブなキャンペーン提案により、ブランド認知度の向上と顧客エンゲージメントの増加に貢献しました。」 - データ分析能力
「データを駆使した分析により、市場のトレンドを正確に捉え、戦略に活かすことで競合に差をつける提案を行いました。」 -
コミュニケーションとチームワーク
「部門間の壁を越えた優れたコミュニケーション能力で、プロジェクトを円滑に進行させ、チーム全体のモチベーション向上に貢献しました。」 -
プロジェクト管理能力
「複数のプロジェクトを同時に管理し、期限内に高品質な成果を提出するなど、優れたプロジェクト管理能力を発揮しました。」
改善が必要な評価のコメント例
-
目標達成に向けた改善が必要
「設定された目標に対して成果が不十分です。目標達成に向けた具体的なアクションプランの策定が必要です。」 -
顧客関係の深化が求められる
「顧客との関係構築において、より一層の努力が必要です。顧客のニーズを深く理解し、長期的な関係を築くための戦略を考えてください。」 -
問題解決スキルの向上
「顧客からの問題提起に対して、より効果的な解決策を迅速に提供する能力を高める必要があります。」 -
チーム内コミュニケーションの改善
「チームメンバーとのコミュニケーションをさらに強化し、協力して目標を達成するための環境を作ることが望まれます。」 -
自己管理能力の向上
「時間管理やタスクの優先順位付けに苦労しているようです。より効率的に業務を進めるための自己管理スキルの向上が必要です。」
4-2. 事務職
業務内容の数値化が難しい部門です。普段の部下の仕事ぶりを確認するのはもちろん、業務効率化や残業時間の短縮、経費削減など細部まで評価しましょう。
人事評価の書き方例:部下の場合
今年度の事務業務は、目標のプロジェクト完了数10件に対して、達成率100%の10件を完了。特に既存業務の効率向上に尽力し、コスト削減に寄与した。
新たなプロジェクトの関連業務にも迅速に対応し、同僚との協力を通じて業務プロセスを改善。また、現状業務の課題を洗い出すためのチェックリストの導入も成功し、ミスの軽減と全体の業務効率向上に貢献できた。
人事評価の書き方例:上司の場合
目標のプロジェクト完了数を達成できたことは素晴らしい。とくに、既存業務の効率向上とコスト削減は評価に値する。また、チェックリストの導入は、ミスの軽減と業務のスムーズな進行にも寄与している。
次期は引き続き既存業務の効率向上に注力しつつ、チェックリストで洗い出した課題改善への取り組みでチームを支えてほしい。
ポジティブな評価のコメント例
-
組織的なサポート能力
「高度な組織的サポートを提供し、オフィス運営の効率化に大きく貢献しています。」 -
コミュニケーションスキル
「明確かつ効果的なコミュニケーションを通じて、部署間の円滑な情報交換を実現しています。」 -
タイムマネジメント
「優れたタイムマネジメント能力により、期限内に複数のタスクを高い精度で完了しています。」 -
精度と効率性
「業務処理において、常に高い精度と効率性を保ち、信頼性の高い成果を提供しています。」
改善が必要な評価のコメント例
-
組織的なサポートの向上
「組織的なサポート能力をさらに向上させるために、業務プロセスの見直しと改善に取り組んでください。」 -
コミュニケーションスキルの強化
「より効果的なコミュニケーションを実現するために、明確性と積極性を高めることが望まれます。」 -
タイムマネジメントの改善
「タスクの優先順位付けと時間配分の見直しにより、タイムマネジメント能力のさらなる向上を図ってください。」 -
精度と効率性のバランス
「業務の精度を保ちながらも、効率性を高める方法を模索し、実践してください。」
4-3. 企画・マーケティング職
数値やデータを用い、論理的に進める必要がある部門です。しかし、結果を数値化できるかどうかは社員が担当する業務により異なります。また、大型の企画の場合、計画途中で評価を下さなければいけません。
そのため、日頃から社員の業務内容をよく確認しましょう。また、チームプレー部門のため、情意評価にも気を配ることが大切です。
人事評価の書き方例:部下の場合
今期プロジェクトにおいて、顧客からの新商品開発戦略の要望に応じ、市場調査・分析をおこない、複数プランを提案。クライアントとの密なコミュニケーションの結果、当初の予算から200万円引き上げたプランの採用に至る。
結果として、動画コンテンツの再生回数は10万回、商品の販売個数は30万個を達成。
人事評価の書き方例:上司の場合
クライアントの新商品開発要望に対し、独自のアイデアを盛り込んだ提案をおこない、コミュニケーションにおいて方向性の課題を解決。柔軟で迅速な対応力と主体的な発言が功を奏し、動画コンテンツの再生回数ならびに新商品の販売ノルマの達成へとつながった。
200万円の上乗せ受注はもちろんのこと、クライアントとの関係性についても評価したい。
ポジティブな評価のコメント例
-
戦略立案と実行能力
「緻密な市場分析に基づき、効果的なマーケティング戦略を立案し、その実行により目標を大幅に上回る成果を達成しました。」 -
クリエイティブな提案力
「革新的なアイデアとクリエイティブなキャンペーン提案により、ブランド認知度の向上と顧客エンゲージメントの増加に貢献しました。」 -
データ分析能力
「データを駆使した分析により、市場のトレンドを正確に捉え、戦略に活かすことで競合に差をつける提案を行いました。」 -
コミュニケーションとチームワーク
「部門間の壁を越えた優れたコミュニケーション能力で、プロジェクトを円滑に進行させ、チーム全体のモチベーション向上に貢献しました。」 -
プロジェクト管理能力
「複数のプロジェクトを同時に管理し、期限内に高品質な成果を提出するなど、優れたプロジェクト管理能力を発揮しました。」
改善が必要な評価のコメント例
-
戦略的思考の向上が必要
「マーケティング戦略の立案において、より市場のニーズに合致したアプローチが求められます。戦略的思考を深め、具体的な改善策を検討してください。」 -
クリエイティブなアイデアの発展が望まれる
「キャンペーンの提案において、より独創的で革新的なアイデアの提出が期待されます。クリエイティブな思考をさらに発展させてください。」 -
データに基づく分析力の強化
「市場分析において、より詳細なデータ分析を行い、その結果を戦略立案に活かすことが必要です。分析ツールの使用スキル向上に努めてください。」 -
コミュニケーションスキルの改善
「プロジェクト内外でのコミュニケーションに課題が見られます。明確かつ効果的なコミュニケーションを心がけ、関係者との連携を強化してください。」 -
タイムマネジメントの改善
「プロジェクトの納期遵守に苦労しているようです。より効率的なタイムマネジメントと優先順位の設定により、業務の進行を改善してください。」
4-4. 技術職
研究開発から生産技術の向上、設備保全職まで、さまざまな仕事が含まれます。研究開発などは新製品の開発や特許の取得、生産技術職では製造コストの削減など、それぞれ評価対象も異なります。
売上とは別の視点が必要なため、会社に対して、どのような技術貢献をしたかを評価しましょう。
人事評価の書き方例:部下の場合
前期は品質の低下や納期遅れが懸念として挙がっていたため、確認フローの見直しをおこなった。チェック作業を強化することで品質低下や工程の手戻りを防ぎ、全体の進行がスムーズになった。
結果的に、作業時間は前期の8%減、コストは15%削減と、大幅に改善することができた。
人事評価の書き方例:上司の場合
前期の課題を適切に把握し、改善へと導く能動的な姿勢は評価に値する。チェック工程の見直しによって作業進行を効率化できたこと、そして作業時間ならびにコスト削減の道すじを立てられたことは、今後にも大きく影響する功績だといえる。
ポジティブな評価のコメント例
-
技術的な専門知識とスキル
「最新の技術トレンドに常に精通し、その深い専門知識をプロジェクトに活かすことで、チームの目標達成に大きく貢献しています。」 -
問題解決能力
「複雑な技術的課題に対して、創造的かつ効率的な解決策を提案し、プロジェクトの成功に不可欠な役割を果たしています。」 -
プロジェクト管理能力
「優れたプロジェクト管理能力を発揮し、複数のプロジェクトを同時に遂行しながら、それぞれを期限内に、高品質で完遂しています。」 -
チームワークとコラボレーション
「チームメンバーと積極的に協力し、知識を共有することで、チーム全体の技術力向上に貢献しています。」 -
継続的な学習と自己改善
「新しい技術やツールを学ぶことに対して常に積極的で、自己のスキルセットを継続的に拡大し、その知識を実務に応用しています。」
4-5. クリエイティブ職
デザイナーやイラストレーター、フォトグラファーといったクリエイティブ職は、結果が数字として表れにくい職種のひとつです。
成果物のクオリティはもちろんですが、スケジューリングやコミュニケーションなど、その他のスキルについても評価できるような環境を整えましょう。
人事評価の書き方例:部下の場合
ディレクターとの打ち合わせに同席し、クライアントのニーズを捉えたアートデザインを提案。
複数回にわたる方向性の変更や、納期の前倒しなどのトラブルがあったが、チーム全体でバッファを設けたスケジュールを設定することで、最終納期の遵守に成功。
結果として、クライアントの満足度向上とプロジェクトの高い評価につながった。
人事評価の書き方例:上司の場合
独創的で効果的なデザインはクライアントの期待を超えるものとなり、プロジェクトを成功に導き、高い評価を得ることができた。
また、デザイナーが打ち合わせに同席することで、よりクライアントのニーズに対応できるよい事例となり、ディレクターからの信頼も向上したと判断できる。
ポジティブな評価のコメント例
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創造性とイノベーション
「常に革新的なアイデアを提供し、クリエイティブな解決策を通じてプロジェクトの成功に大きく貢献しています。」 -
プロジェクトへの貢献
「独自の視点とクリエイティブなスキルを活かし、プロジェクトに顕著な価値を加え、目標達成に向けて重要な役割を果たしています。」 -
柔軟性と適応性
「変化するプロジェクト要件やチームのニーズに柔軟に対応し、常に最高の成果を提供しています。」
改善が必要な評価のコメント例
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創造性のさらなる向上
「既存の枠にとらわれず、さらに創造的なアイデアを追求することで、プロジェクトに新たな価値をもたらすことが期待されます。」 -
プロジェクトへの積極的な貢献
「プロジェクトへのさらなる貢献を目指し、主体的にアイデアを提案し、実行に移す積極性が求められます。」 -
チームで協力する意識の強化
「チーム内でのコラボレーションと協力をさらに深めることで、共同での創造性の高い成果を目指してください。」 -
コミュニケーションスキルの改善
「アイデアやビジョンの伝達において、より明確かつ効果的なコミュニケーションを心がけてください。」
4-6. 看護師
看護師の人事評価は、効率ばかりを追い求めると大変な事故につながる可能性があります。
サービスの質に焦点を当てたうえで、人事評価をおこないましょう。具体的なエピソードや工夫した点を織り交ぜるのも効果的です。
人事評価の書き方例:部下の場合
クレーム件数の減少を狙いとして、患者様とのコミュニケーションを強化。雑談を通して得た「なにげない情報」をチーム内で共有するミーティングを設けた。
結果として、クレーム件数は昨年度の32件に比べて今年度は19件と、約6割の減少に成功。患者様とのコミュニケーションも円滑になり、院内の明るい雰囲気づくりに寄与できた。
人事評価の書き方例:上司の場合
クレーム件数の減少を目的としたコミュニケーション施策は、目を見張る効果があったとともに、自主性そのものが評価に値する。実際に結果としてもクレーム件数60%減少を打ち出しており、職員のモチベーションアップにつながった。
また、施策を通して職員と患者、患者同士のコミュニケーション量は明らかに増え、院内の雰囲気を明るくしている。引き続きの実践に期待したい。
ポジティブな評価のコメント例
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看護技術と知識
「看護の質を向上させるための高度な技術と専門知識を持ち、効果的に活用しています。」 -
コミュニケーション能力
「患者さんやそのご家族、そしてチームメンバーとの間で、明確かつ寄り添うコミュニケーションを実践し、信頼関係の構築に貢献しています。」 -
チームワーク
「チーム内で協力し、支援し合うことで、効率的で効果的なケアを実現しています。」 -
看護への意欲
「患者さん一人ひとりに対する深い思いやりと熱意を持ち、質の高い看護を提供しています。」 -
継続的な学習と自己改善
「最新の医療知識と技術を積極的に学び、臨床スキルを継続的に向上させています。」
改善が必要な評価のコメント例
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看護技術と知識の向上
「さらなる看護技術の向上と専門知識の深化が求められます。定期的な研修への参加や学習を通じて、専門性を高めてください。」 -
コミュニケーションスキルの改善
「患者さんやチームメンバーとのコミュニケーションにおいて、より明確で円滑に進められる方法を模索し、実践してください。」 -
チーム内での協力の強化
「チーム内でのさらに協力することで、より一層効果的な看護を実現してください。」
4-6. 保育士
保育士の人事評価は、数字ではなく実際におこなった取り組みへの評価が軸となります。
保護者への対応や他の職員との連携、事故が起こらないような対応策など、改善や工夫が見られた点について触れましょう。
人事評価の書き方例:部下の場合
子どもたちに対して、おゆうぎの時間の前に気をつけることを復唱させることで、安全への意識づけを徹底。保護者に対しては、連絡帳を通して、園での様子や細やかな変化を伝えるよう努める。
結果として「しっかり見てもらえている」といった評価につながり、保護者からの信頼獲得に成功した。
人事評価の書き方例:上司の場合
子どもたちへの安全性の意識づけは、事故発生を予防する素晴らしい取り組みとして評価できる。保護者に対しても情報の共有が適切にできており、実際に、信頼を感じさせる保護者の声が複数挙がっていた。
忙しい状況のなかで、子どもたちや保護者のことを考えて行動する姿勢は、他の職員に対してもよい影響を与えている。
ポジティブな評価のコメント例
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子どもへの理解と対応
「子ども一人ひとりの様子を細かく観察して察知し、それぞれの成長速度に合わせた適切な保育をおこなっています。」 -
コミュニケーション能力
「子どもたち、同僚、保護者との間で、明確かつ温かみのあるコミュニケーションを実践し、信頼関係の構築に貢献しています。」 -
チームワーク
「チーム内で積極的に協力し、共に働く仲間を支援することで、保育園全体の質を高めています。」 -
保育計画の企画と実施
「子どもたちの成長を促す有意義な保育計画を企画し実施しています。」 -
保護者との関係構築
「保護者との信頼関係を深め、定期的なコミュニケーションを通じて、子どもたちの成長を共に支えています。」
改善が必要な評価のコメント例
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子どもへの理解と対応の向上
「子ども一人ひとりの特性や状態にさらに注意を払い、個別のサポートを強化することが望まれます。」 -
コミュニケーションスキルの改善
「より効果的なコミュニケーションを目指し、子どもたちや保護者との関係構築において、共感力をたかめましょう。」 -
チーム内での協力の促進
「チームワークをさらに強化し、同僚との協力を通じて、保育の質の向上を図ってください。」 -
保護者とのコミュニケーション強化
「保護者とのより密なコミュニケーションを心がけ、定期的な情報交換を通じて、家庭と保育園の連携を深めてください。」
4-7. 介護職
介護職は、利用者とのコミュニケーションや、他職員との情報共有など、目に見えない業務への評価が必要です。
数字で判断することが難しい職種であるため、どのような姿勢で業務に取り組んでいるか、普段から注意しておきましょう。
人事評価の書き方例:部下の場合
利用者一人ひとりの健康状態を日々チェックし、変化に迅速に対応できるよう配慮。利用者の状態変化やケアのニーズに柔軟かつ適切に対応し、信頼関係の構築に努めた。
また、チェックシートは他の職員とも共有し、チーム全体で把握し対処できるように心がけた。
人事評価の書き方例:上司の場合
利用者の健康を第一に、細やかなチェックを実行してくれた。他職員との共有もスムーズにおこなわれ、チームの士気が上がっていたように感じる。
利用者アンケートでもよい評価が目立つため、引き続きの取り組みを期待する。
ポジティブな評価のコメント例
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利用者への対応能力
「利用者のニーズを敏感に察知し、それに応じた適切なケアを提供しています。」 -
コミュニケーションスキル
「利用者、その家族、そして同僚との間で、明確かつ温かみのあるコミュニケーションを実践し、信頼関係の構築に貢献しています。」 -
チームワーク
「チーム内で積極的に協力し、共に働く仲間を支援することで、施設全体のサービスの質を高めています。」 -
利用者や家族との関係構築
「利用者やその家族との信頼関係を深め、コミュニケーションを通じて、それぞれの利用者の方に合ったサポートを提供しています。」
改善が必要な評価のコメント例
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利用者への対応能力の向上
「利用者の個々のニーズにさらに注意を払い、個別のケアプランの改善に努めてください。」 -
コミュニケーションスキルの改善
「より効果的なコミュニケーションを目指し、利用者やその家族への理解を深めましょう。」 -
チーム内での協力の促進
「チームワークをさらに強化し、同僚との連携する意識を高めましょう。」 -
利用者や家族とのコミュニケーション強化
「利用者やその家族とのより密な深いコミュニケーションを心がけ、サポートの質を向上させてください。」
4-8. 管理職
管理職の人事評価は、管理するチームや部署全体の業績や成績を反映した内容でなければなりません。
チームの業績向上につながる取り組みはもちろん、結果が重要視される職種であるため、数字を用いて人事評価をおこないましょう。
人事評価の書き方例:部下の場合
プロジェクトの発足にあたって、チームメンバーに目的や方向性を共有したうえで、それぞれ自身で定めた目標を発表し合うミーティングをおこなった。
それによって、個々のスキルを活かし、足りないところを補い合えるような、よいチームが構築できた。結果として、プロジェクトは目標数値の130%を達成し、成功を収めることができた。
人事評価の書き方例:上司の場合
チームメンバーの自主性を重んじたミーティングの開催は、チームビルディングにおけるよい例となり、他部署でも参考にしたいとの声が挙がっている。
数字としての結果も申し分なく、メンバーの育成もできたものと考えられる。
ポジティブな評価のコメント例
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リーダーシップ
「卓越したリーダーシップを発揮し、チームを統率して目標を達成しました。ビジョンの共有とチームのモチベーション向上に貢献しています。」 -
戦略的思考
「長期的な視点を持ち、戦略的な計画を立案・実行することで、組織の成長と成功に大きく貢献しています。」 -
チームマネジメント
「個々のチームメンバーの強みを活かし、効果的にチームをマネジメントして、高い成果を達成しました。」 -
コミュニケーションスキル
「明確かつ効果的なコミュニケーションを通じて、チーム内外の関係者との信頼関係を築き、組織全体の連携を強化しました。」 -
問題解決能力
「複雑な問題に直面しても、冷静かつ効果的な解決策を迅速に提案し、実行することで、危機を乗り越えました。」
改善が必要な評価のコメント例
-
リーダーシップの向上
「チームのビジョンと目標に対する明確な方向性をさらに示し、メンバーのモチベーションと組織へのエンゲージメントを高めるリーダーシップが求められます。」 -
戦略的思考の強化
「短期的な成果に加えて、長期的な目標達成に向けた戦略的な計画の立案と実行にさらに注力してください。」 -
チームマネジメントの改善
「チームメンバーの能力開発とキャリアサポートにもっと焦点を当て、個々の成長を促進するマネジメントを実践してください。」 -
コミュニケーションスキルの改善
「チーム内外のコミュニケーションを更に闊達におこなえる環境を整え、関係者全員が情報を共有しやすい風土を作ってください。」 -
問題解決能力の発展
「問題発生時の対応策だけでなく、予防策にも目を向けるなど、問題を解決、解消するスキルを高めましょう。」
以上のように、職種ごとに書くべきポイントは異なるので注意しましょう。
また、目標面談の際にメンバーにどうフィードバックをしていくのか、そもそもどのように人事評価を策定すれば良いかを悩んでらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方に向けて当サイトでは「人事評価の手引き」という資料を無料配布しております。本資料では、人事評価の策定から、人事評価を実際に導入したあとの振り返りの方法やフィードバックの仕方、またフィードバック時の注意点も紹介しており、これ一つで人事評価の策定から運用まで適切に進められます。参考になる資料ですのでぜひこちらからご覧ください。
5. 人事評価の書き方を覚えて社員の成長を促そう!
人事評価シートは社員の成績やスキル、課題を明確化し、公平な人事評価をおこなううえで重要な書類です。また、企業は人事評価シートの導入により、組織風土の形成や人材管理に役立てることもできます。
とはいえ、自己評価と他者評価の双方が必要な人事評価シートは、運用が煩雑になりやすい書類でもあります。人事評価を効率化したいと考えているなら、人事評価システムを導入し、一元管理するのがおすすめです。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。