人事評価の5段階評価の割合や決め方を理解することは、客観性の高い人事評価制度を運用するうえで大切です。しかし、人事評価に関する5段階評価の情報はあまり多くないため、人事担当者として困ってしまうかもしれません。
本記事では、人事評価の5段階評価の割合や決め方はもちろん、絶対評価と相対評価の違いやそれぞれのメリット・デメリット、社員に納得してもらうための運用ポイントを解説します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 人事評価における5段階評価とは?
人事評価における5段階評価とは、5つに分けた評価基準にもとづいて従業員を評価する手法のことです。具体的には以下のような5つの段階を設定するケースが多いでしょう。
- S・A・B・C・D
- 5・4・3・2・1
- とても良い・良い・普通・あまり良くない・良くない
5段階評価は古くから活用されている評価手法ですが、わかりやすく使いやすいため、今でも多くの企業で採用されています。
2. 人事評価における絶対評価と相対評価の違い
人事評価の絶対評価と相対評価の違いについて、具体例を用いて説明します。
2-1. 絶対評価の内容
絶対評価とは、周囲と比べずに個人を評価する方法です。たとえば、社員の売上目標達成率に対して絶対評価を用いるとします。評価基準は、以下のような内容です。
- 評価5:110%以上
- 評価4:100%~109%
- 評価3:90%~99%
- 評価2:80%~89%
- 評価1:80%未満
上記の評価基準に照らし合わせると、売上目標達成率が100%だった場合は4となります。また、20人の社員のうち110%以上達成した人が10人いた場合は、10人全員に5がつきます。
このように、ほかの社員の成果に関わらず、個人の実績や能力を評価するのが絶対評価です。
2-2. 相対評価の内容
相対評価とは、周囲と比べて個人を評価する方法です。たとえば、20人の社員の売上目標達成率に対して相対評価を用いるとします。評価基準は、以下のような内容です。
- 評価5:達成率1位~3位(3名)
- 評価4:達成率4位~7位(4名)
- 評価3:達成率8位~13位(6名)
- 評価2:達成率14位~17位(4名)
- 評価1:達成率18位~20位(3名)
仮に、Aさんの達成率が100%だったとします。Aさんよりも達成率が高い社員が2人だった場合、Aさんは3位のため評価は5です。一方、Aさんよりも達成率が高い社員が10人いた場合、Aさんは11位のため評価は3となります。
このように、ほかの社員の成果に影響を受けるのが相対評価の特徴です。
3. 人事評価における絶対評価のメリット・デメリット
人事評価における絶対評価のメリットとデメリットを、順番に説明していきます。
3-1. 絶対評価のメリット
絶対評価のメリットは、個人の頑張りが反映されやすいことです。
たとえば、会社から与えられた売上目標が100万円で、Bさんの先月の売上が80万円だったものの、今月は努力を重ねて100万円を達成したとします。この場合、Bさんはほかの社員の成果に関わらず、達成率100%に沿った評価をしてもらえます。
その結果、Bさんはモチベーションを保ちながら仕事に取り組めるでしょう。
3-2. 絶対評価のデメリット
絶対評価のデメリットは、評価者の主観が入りやすいことです。とくに社員の積極性や協調性など、数値で評価しづらい項目は主観による評価をしてしまいがちです。
たとえば、ほかの社員には見えないところで積極的に仕事に取り組んでいるCさんという社員がいたとします。もし、Cさんの頑張りを評価者である上司が把握していない場合「Cさんは積極性が見られないから低評価をつけよう」という状況にならざるを得ません。
また、評価項目が明確に定まっていない場合、評価者の好き嫌いで判断してしまうこともデメリットの1つです。
4. 人事評価における相対評価のメリット・デメリット
この章では、相対評価のメリットとデメリットを解説します。
4-1. 相対評価のメリット
相対評価のメリットは、どの社員が会社に貢献しているかがわかりやすい点です。以下の2つを比べてください。
- 売上目標達成率110%以上の社員には全員に最高評価の5をつける(絶対評価)
- 売上目標達成率が高い社員から順番に、1位から最下位までを決める(相対評価)
前者の場合は、達成率が150%の社員も110%の社員も同じ評価です。一方、後者の場合は、達成率が150%の社員と110%の社員との間に差がつきます。その結果、売上に大きく貢献している社員が誰なのかが明確になります。
4-2. 相対評価のデメリット
相対評価のデメリットは「頑張りが報われない」と感じる社員が増える可能性があることです。
相対評価で判断すると、いくら売上目標達成率100%を記録し続けたとしても、毎月のようにそれ以上の実績を出している社員が多い場合、高い評価を受けられません。それどころか、ずっと低評価をつけられ続けます。
その結果「毎月頑張って売上目標を達成しているのに、会社は自分を評価してくれない」と感じる社員が出てくる可能性があるのです。
ここまで紹介したようにさまざまな評価手法がありますが、どのような評価制度が自社にあっているかわからず、お悩みの方もいらっしゃるでしょう。
そのような方に向けて当サイトでは「人事評価の手引き」という資料を無料配布しており、各評価指標のメリット・デメリットや、各評価指標を採用した際の起こりやすいトラブルも紹介しています。自社の企業理念や経営戦略をふまえた上での、人事評価選定の参考になる内容となっており、人事評価を導入する際のマニュアルとしても活用できます。資料はこちらから無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
5. 人事評価の5段階評価における割合の決め方
5段階評価における割合の決め方は、主に以下の2つです。それぞれの決め方について詳しく見ていきましょう。
5-1. 5段階を均等に配分する方法
5段階を均等に分ける方法は、以下の通りです。
- 評価5:20%
- 評価4:20%
- 評価3:20%
- 評価2:20%
- 評価1:20%
上記の方法であれば、最高評価の社員と最低評価の社員の割合が合わせて40%です。その結果、最高評価の価値は少し薄まるとはいえ、最低評価の社員が強い劣等感を抱かずに済みます。
5-2. 平均が多くなる正規分布の方法
平均が多くなる正規分布の方法は、以下の通りです。
- 評価5:10%
- 評価4:20%
- 評価3:40%
- 評価2:20%
- 評価1:10%
上記の方法であれば、社員が5の評価をもらうためには上位10%に入る必要があります。そのため、均等に分ける方法と比べて最高評価の価値が社内で高くなります。
最高評価の社員は、周囲から尊敬の対象として見られるかもしれません。逆に、最低評価の社員数も少なくなるため、その社員たちは社内での評価だけでなく、自己肯定感も下がる恐れがあります。
6. 人事評価の5段階評価における基準
5段階評価における各段階に該当する基準は企業によって異なりますが、優れた成績を残しており、仕事に積極的に取り組んでいる従業員に最も高い評価をつけるのが一般的です。逆に、成績の悪い従業員に対しては、低い評価をつけることになります。以下、各段階の一般的な基準を紹介します。
6-1. 最も高い評価
仕事において優れた成果を出している従業員に対しては、最も高い評価をつけます。高い能力を保有していること、モチベーションが高いこと、積極性があることなどに注目して、最も高い評価をつけるケースもあります。
高い評価をつけられた従業員は、モチベーションを維持して働いてくれるでしょう。また、他の従業員の模範となってくれることも期待できます。
6-2. 2番目に高い評価
2番目に高い評価は、最高評価ではないものの、会社が求める基準以上の働きをしている従業員に対してつけるのが一般的です。最高評価を目指すために何が不足しているのかをフィードバックすれば、評価を高めるために必要な努力をしてくれるでしょう。
6-3. 中間的な評価
中間的な評価は、可もなく不可もなく、現状を維持して働いている従業員に対してつけます。よい部分はあるものの、マイナス評価すべき点が多い場合に、つけるケースもあるでしょう。
5段階評価での絶対評価を採用すると、中間的な評価ばかりをしてしまう傾向があるため注意が必要です。
6-4. 2番目に低い評価
2番目に低い評価は、最低評価ではないものの、マイナス評価すべき点が多い従業員に対してつけます。会社が求める基準を満たしていないため、必要なサポートや指導をおこない、従業員の努力を促すことが重要です。
6-5. 最も低い評価
成績が悪く、仕事に対する態度が悪い従業員に対しては、最も低い評価をつけます。本人に問題がある場合は、注意や指導をおこない改善を促しましょう。
一方、職場環境や評価制度に問題がある場合は、会社側が何らかの対応をしなければなりません。
7. 人事評価の5段階評価を運用するときのポイントや注意点
ここでは、人事評価の5段階評価を運用するときのポイントや注意点を紹介します。評価制度をうまく運用していくためにも理解を深めておきましょう。
7-1. 社員の意見を取り入れて5段階評価の方法を決定する
前述した通り、5段階評価の方法には均等に配分する方法と平均が多くなる方法の2つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
もちろん、最終的に代表者や人事担当者が決定するのは問題ありません。しかし、社員の感じ方は、社員に聞いてみなければわかりません。
社員としても、自身の意見が通るか通らないかは別として、意見を聞いてもらえれば「人事の人は社員の意見を取り入れようとしている」と感じます。
また、意見を聞くことで社員が評価制度に不満を抱く可能性が低くなります。そのためにも、社長の判断を仰ぐ前に社員の考えを把握しておきましょう。
7-2. 評価が低い社員のフォローを忘れない
5段階評価を導入する場合は、どうしても評価が高い社員と低い社員の二分化が起こります。この点は、どれほど評価の仕組みを整えても避けられないことです。
しかし、評価が低い社員に何もフォローをしなければ、不満を抱いて離職につながりかねません。たとえば本人の頑張った部分を認めたり、否定せずにモチベーションが上がるような言葉をかけたりしましょう。
現在の能力や実績はどうであれ、一人ひとりの社員がスキルを高めて会社の売上や利益を伸ばしていく存在になってもらえれば、評価の運用は適切にできているといえます。
7-3. 相対評価はモチベーションが上がりにくい
相対評価を採用すると、従業員のモチベーションが上がらないケースもあるため注意しなければなりません。同じ部署やチームに成績のよいライバルがいる場合、いくら頑張っても高い評価を得られないからです。
評価されないことに不満を感じて、やる気を失ったり、離職を考えたりする従業員が出てくるかもしれません。職場の状況によっても異なりますが、必要に応じて絶対評価を採用するなどの対応を検討しましょう。
7-4. 中間評価に偏らないようにする
5段階評価を実施するときは、中間評価に偏らないように注意しましょう。「3」や「普通」といった評価は無難であるため、安易につけてしまう評価者もいます。
しかし中間評価ばかりをつけると、何を評価しているのかがわかりにくくなり、従業員同士の差もつかないため、評価制度の意味がなくなってしまいます。もちろん中間評価をする場面があってもよいのですが、その理由を明確に説明できるようにしましょう。
7-5. 5段階で評価しにくいケースもある
5段階評価では評価しにくいケースもあります。たとえば、最も高い評価以上の成績を残している従業員がいる場合は、正確に評価することが難しいでしょう。
必要に応じて各段階の基準を見直したり、他の評価手法を組み合わせたりすることが大切です。
7-6. 必要に応じて複数の評価方法を組み合わせる
複数の評価方法を組み合わせることで、従業員を多面的に評価できます。1つの評価方法にこだわると、従業員のよい部分や悪い部分を見落としてしまい、間違った評価結果が出てしまうケースもあるでしょう。
複数の評価手法を用いれば、従業員をさまざまな角度から評価できるため、評価の精度が向上します。より正確な評価により、従業員の納得感が高まることも期待できるでしょう。
8. 人事評価における5段階評価を活用して従業員を育成しよう!
人事評価の5段階評価に関する情報が少ないため、運用する段階では「本当にこの内容でよいのだろうか」と不安に思うかもしれません。しかし、運用を続けることで現状の評価方法の課題点や、より適切な5段階評価の設定方法を理解できます。
さまざまな取り組みをおこないながら、社員の意見も取り入れつつ、あなたの会社に合った5段階評価の仕組みを模索してみてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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