株式会社WEの戸田と申します。弊社では、人材育成を軸とした「組織変革」「事業創造」「地方創生」をおこなっています。
今回は、私たちがこれまで様々な企業さまや教育現場の学生たちとの取り組みを通して確認できた人々の変化をもとに、これからの組織がどうあるべきか、教育はどのような役割があるか、といった内容について、お話できればと思います。
現場での経験談を基にお伝えしていきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
【執筆者】戸田 裕昭|株式会社WE 代表取締役 / 上智大学非常勤講師 / 総務省地域力創造アドバイザー
大学卒業後、オフィス家具メーカーにて新規事業創出・地域活性化に携わる。総務省地域力創造アドバイザーや国土交通省スマートアイランド推進実証事業コーディネーターなどを担い、全国各地の地域における事業振興のアドバイスを行なっている。 また、個々人のやりたいことが起点となる事業創出を目的とした伴走型教育プログラムを開発・構築。小学校から大学までの教育機関や自治体、民間企業と連携し、人材育成を軸とした「組織変革」「事業創造」「地方創生」を行う。
目次
1. オリジナルプログラム「Will Based Learning(WBL)」
私たちの人材育成事業は、Will Based Learning(WBL)をベースに行っています。
WBLは、社会で活躍する人材の資質を養うことを目的に実施しているオリジナルプログラムです。元々は、上智大学で授業を実施させていただくことをきっかけに考え始めました。
私は、社会で活躍する人材について、次のような資質をもった人材と考えています。
- 自分自身の成長や変化に誠実に向き合うことができる(内省力、自己変革力)
- 創りたい社会や未来を言語化できて行動することができる(想像力、創造力)
- 自らの意思で事を起こせる(自発的行動力)
- 自分と違った意見でも受け止めてそこから学ぶことができる(他者許容力)
- どのような状況に直面しても行動を続けて目的を成し遂げられる(耐久力)
- どのような出来事でも本質を掴み全体像を理解して考えることができる(俯瞰力)
- 全ての力を発揮できるための心と身体をつくることができる(自己維持力)
まだまだ私自身も習得できていないことも多いですが、社会人になって様々な事業を経験したり、活躍している人を見て感じたりしたことから要素を抽出しています。
2. 企業研修でもWBLが導入されるようになったきっかけ
WBLは、ありがたいことに現在、さまざまな企業で採用いただいていますが、そのきっかけは大学での授業でした。
現在はコロナの影響で大学での授業に外部の方を呼ぶことが難しくなりましたが、コロナ以前は毎回の授業や最終発表会に私の社会人仲間が来てくれることも多く、そこで、
「大学生すごい!このままだとすぐ自分は負けてしまいそう!」
「大学生の時にこの授業を受けたかった!」
「これってうちの会社でやれないの?」
といった意見をもらうことが少なからずありました。
このような声をきっかけに、実際に企業でもWBLを実施させていただくようになりました。
3. 企業人事の方や事業創造部門のリーダーの悩み
企業においてWBLが採用された理由は、企業の方々とのヒアリング内容にもヒントがありました。
私たちがWBLを行う際は、ただ実施するだけでは意味がないと考えており、実施させていただく企業の方と、企業の文化や現状抱えてる課題など事前に何度もお打合せをさせていただきます。
そして、ヒアリングしたことを基に、WBLを各企業さまにあった形にカスタマイズしています。このヒアリングでは、次のような話をよく聞きました。
「弊社の従業員は優秀で、これをやって欲しいと伝えれば120%のものを出してくれます。ただ、指示しないと自発的に動けない人ばかりです。」
「これからの世の中で生きていくには新しいことを積極的にやっていかないといけない。しかし、どんなことをやったらいいのかわからないし、そのようなことをできる人材もいない。」
「新規事業を作るためのさまざまな制度を取り入れていますが、『どんなことをやったらいいですか?』と聞いてくる方が非常に多いです。WILLを持っている人材をどうやって作ったら良いか悩んでいます。」
また、中には「戸田さんみたいに勝手になんでもやっちゃう人材を育成したい!」というお言葉をもらうこともあり、非常に驚いています。
私自身は、大企業に20年弱所属していましたが、とにかく問題児でした。当時所属していた企業の皆さんには、本当に申し訳ないと思うぐらいです。
そんな私のような「問題児(=勝手になんでもやっちゃう人材)」を育成したいと考えている企業が多くなっているとは、思ってもいないことでした。
4. WBLをする中で耳にした受講生の声
WBLは全14回のプログラムとなりますが、企業さまの都合等で回数調整を行うこともあります。
しかし、実施回数を変更しても、私たちが大事にしていることは、受講生と「1:1:N」の関係になることです。つまり、「一人ひとりと向き合う形を、受講生全員(N)に対して行う」ということです。
通常の研修では、どうしても「1:N」になってしまいがちです。そうなると、私たちの一方的なものになってしまうので、そうならないように「1:1:N」を心掛けています。
そのためにおこなっていることとして、たとえば、1on1の実施やプログラム中のワーク時の積極的な声掛けがあります。
「なんでそう思ったの?」「そもそもどういうこと?」といった質問を投げかけることで、受講生と個人としての関わりを増やしていき、受講生は次第に心を開いて色々話してくれるようになります。
また、受講生からは、
「正直なんのために働いているのかわからない。」
「上からの指示が雑すぎてやる気にならない。」
「自由にやらせてほしい!」
「自分のやりたいことをやらせてくれない。」
といった不満を多く聞きますが、ここで、これらの不満がなぜ噴出しているのか、少し深掘りしてみたいと思います。
①「なんのために働いているのかわからない」
ワークライフバランスという言葉がありますが、私は好きではありません。そもそも「ライフ」の中に「ワーク」があり、切り離すことはできない。そのため、バランスを取ることもできないと考えているからです。
なぜこの話をしたかというと、「生活のために仕事をする」という考えを持つ方が非常に多いためです。
人は、人生の大半の時間をワーク(仕事)に使い、お金を稼いで、生活をしています。もし、ワークととライフが切り離されていれば、ワークに使う大半の時間について、短いライフ(生活)に対して効率的かどうかの判断軸で行動することになります。
ただし、「ワーク」が「ライフ」の中にあるとすると、今度は「ライフ」が何かわからなくなります。
このように、WBLでは人生の目的から考えることで、ワークライフバランスという考え方から脱却することができます。
②「上からの指示が雑すぎてやる気になれない」
このような声もありました。もちろん、この方の上司も悪い部分はあると思いますが、指示が雑だからやる気になれないという因果関係は成り立たないと考えています。なぜなら、やる意味や目的を自分で見出すこともできるからです。
このような考え方になってしまう方は、きっと学校に行っていた際も「何のための勉強なのか」「何のための進学なのか」といったことがわからず、みんながやっているからやったという人が多いでしょう。
全てのことに意味を見出すことは、思考のトレーニングによって実現できます。この詳細はまた別の機会でお話しできたらと思います。
③「自由にやらせてほしい」
私自身も、サラリーマン時代によく思うことがありました。「なぜ、一回一回確認しないといけないんだよ!」と。最低な部下ですよね(笑)。
しかし、仮に「自由にやれるとしたら、何をやりたいのか」といった質問をすると、多くは「何をやったらいいですか?」となってしまうケースも多いのではないでしょうか。
自由になったらやりたいことがないのに、自由にやらせてほしい。矛盾していますね。
④「自分のやりたいことをやらせてくれない」
「あなたの会社ではないのだから当たり前ですよ」と今なら言うこともできますが、僕も前はずっと思っていました。
会社には、会社が作ってきた文化があるし、それに従ったルールもあります。その中で、自分のやりたいことをやるとするならば、文化やルールを自分で決められる人になるしかありません。
もちろん、とても大変な道のりですが、できないことではないと思います。
会社として従業員の離職率を下げるために「ぜひ会社で自己実現をしてほしい」といったメッセージを伝えることもあると思います。
しかし、会社にいながら個人が自己実現できたら最高ですが、会社には会社の目指す世界があるので、それを実現する中で従業員の自己実現を目指さなければなりません。
まずは、会社として実現することがあることをちゃんと理解しないといけないと思います。
5. まとめ
ここまで色々と書いてきましたが、「では、具体的にどうしたらいいのか?」と思う方も多いと思います。
次回は、我々が実施しているWBLの要素を抽出しながら、「従業員の幸せとは何か」といったことについて、より詳しくお伝えできたらと思います。
WBLに関心を持っていただけたら幸いです。次回もよろしくお願いします。