算定基礎届は、年に一度提出する必要があるもので、社会保険に関する届出の一つです。健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料について必要である年1回の見直しをおこなうために提出します。
本記事では算定基礎届について、その提出方法や手続きの流れを詳しく解説いたします。
社会保険の更新・改定マニュアル完全解説版
年度更新や定時決定、随時改定と、労務担当者は給与の改定と並行して、年間業務として保険料の更新に関わる業務を行う必要があります。
一方でこのような手続きは、実際に従業員の給与から控除する社会保険料の金額にダイレクトに紐づくため、書類の記入内容や提出はミスなく確実に処理しなければなりません。しかし、書類の記入欄は項目が多く複雑で、さらに申請書や届出にはそれぞれ期限があり、提出が遅れた場合にはペナルティが課せられるケースもあります。
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ガイドブックでは、年度更新の申請書から定時決定における算定基礎届、随時改定時の月額変更届、さらには賞与を支給した場合の支払報告書の書き方から、記入例、提出方法までまでを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の更新・改定業務のマニュアルがほしい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. 算定基礎届とは?
算定基礎届の正式名称は『被保険者報酬月額算定基礎届』です。健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料といった社会保険料は、その従業員が受け取る給与によって算出されます。
給与は、月によっては労働時間や残業時間などによって細かく変わったり、昇給・減給により給与が変わったりすることがあります。そのため、月によって変動した給与に合わせて、社会保険料が適切かどうかを定期的に見直すことが必要です。
社会保険料は、毎年4〜6月に発生した報酬金額の一ヵ月あたりの平均額である『標準報酬月額』に基づいて決定します。給与によほど大きな変動がない限り、この決定した社会保険料をその年の9月から翌年の8月まで支払うのです。
もし、大きな変動があった際には、随時改定を行い月額変更届によって改定しなければいけません。
1-1. 定時決定とは?
定時決定とは、年に1回おこなわれる標準報酬月額を見直す手続きそのものを指します。
社会保険料は標準報酬月額をもとに算出するため、実際の給与と乖離が生じないように毎年おこないます。その際に年金事務所へ届け出るのが、算定基礎届になります。
1-2. 標準報酬月額に含まれるものと含まれないもの
標準報酬月額は、社会保険料を適切に算出するために正しく計算する必要があります。
以下の表にて、標準報酬月額に含まれるものと含まれないものについてご確認ください。
2. 算定基礎届の対象者
原則7月1日の段階で健康保険や厚生年金保険の被保険者である従業員すべてが、算定基礎届を提出する対象者となります。たとえその従業員が休職中であっても、被保険者なのであれば提出は必要です。
加えて、健康保険の資格を喪失する75歳以上であったり、厚生年金の資格を喪失する70歳以上であったとしても、在職老齢年金の受給金額を算出するために必要なため、同様に提出しなければいけません。
一方で、例外として以下3つのケースについては算定基礎届の対象者に含まれませんので、よく確認しておきましょう。
2-1. 6月1日以降に被保険者となったケース
7月1日の段階で被保険者なのであれば算定基礎届の対象者に含まれますが、なったタイミングが6月1日以降なのであれば提出する必要はありません。
これは、6月1日以降に被保険者となった場合、その資格取得時のタイミングで決定された標準報酬月額による保険料を翌年の8月まで支払うことになります。
2-2. 6月30日以前に退職したケース
6月30日以前に退職したのであれば、9月以降の標準報酬月額を届ける必要がないため、算定基礎届の提出は不要です。
2-3. 7月から9月に月額変更届を提出しなければならないケース
4〜6月に発生した報酬の平均額とその他の期間における標準報酬月額に大きな差があった場合は、随時改定を行い「月額変更届」を提出する必要があります。
社会保険料を標準報酬月額に基づいて決定する際は、その額によって等級ごとに区分がされています。月額変更届の提出は、この区分に2等級以上差が生じたときなど一定の要件に該当した場合に必要となります。
月額変更届を提出する予定があるため、算定基礎届は提出する必要はありません。
3. 算定基礎届提出のポイント
ここからは、算定基礎を提出する際のポイントを解説します。
スムーズに手続きが遂行できるよう、あらかじめ提出するうえで必要となるルールを確認しておきましょう。
3-1. 提出方法・提出先・提出期限
まず算定基礎届の提出方法としては、以下4つのうちいずれか(大企業などは電子のみ)を選択しておこないます。
- 送付された書類に同封されている返信用封筒を用いて郵送する
- 管轄の年金事務所窓口にて直接提出する
- 書類のデータをCDやDVDといった電子媒体に記録して郵送する
- e-GovあるいはAPIソフトを用いて電子申請をおこなおこなう
算定基礎届の提出先は、日本年金機構の事務センター、あるいは管轄の年金事務所です。
提出期限は、毎年7月1〜10日が設定されています。なお、期日が休日に重なる際は、次の平日までとなります。
社会保険料に関連する業務は、算定基礎届の提出のほかにも多数存在するため、あらかじめ必要な手続きを押さえて、年間スケジュールを想定しておくことが重要です。
とはいえ、社会保険料において必要となる業務量や、すべての計算方法について理解しきれていない担当者の方もいらっしゃるでしょう。
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3-2. 用紙・封筒の入手方法
書類自体は、管轄の年金事務所から毎年6月頃に送られてきます。また、用紙は日本年金機構のWebサイトからダウンロードすることも可能です。
郵送で届出を提出する際の封筒は、算定基礎届に同封されている封筒を使い、提出します。
3-3. 算定基礎届の書き方・記入例
基礎算定届を記入する際には、記入例を参考のもと作成するとミスの防止に効果的でしょう。算定基礎届の書き方は、基本的には項目通りに内容を記していけば問題ありません。ただし、給与計算の基礎日数や、「通貨によるものの額」「現物によるものの額」を足した合計額、平均額の端数処理にはミスが間違いが発生しやすいです。
以下の日本年金機構が解説している記載例と、間違いやすいポイントを確認しておくことをおすすめします。
4. 算定基礎届の手続きの流れ
実際に算定基礎届を作成して手続きをおこなう流れについて見ていきましょう。
算定基礎届の手続きは、作成を含めて全5つのステップでおこないます。
① 4〜6月の間に支払った報酬を確認
標準報酬月額を算出するために、その基準となる4〜6月に支払われた報酬を確認します。報酬に含まれるものと含まれないものがあるので、間違えないように注意しましょう。
② 支払基礎日数の確認
標準報酬月額は4〜6月の間に支払った報酬の平均によって決定しますが、このなかで勤務日数が少ない月が含まれていると平均月額が適切なものとはなりません。そのため、支払いの基礎となる『支払基礎日数』を確認します。
算定基礎届においては、対象となる支払基礎日数を17日以上(パートやアルバイトなどの短時間労働者は11日以上)と定めています。
なお、支払基礎日数とは出勤した日数そのものではないことに注意しなければいけません。例えば月給制である正社員であれば、暦日数が支払基礎日数となります。欠勤した日があったのであれば、就業規則に基づいて欠勤日数を差し引きします。
パートやアルバイトといった短時間勤務の従業員については、支払基礎日数はそのまま出勤した日数となります。有給休暇を取得した際も、出勤した日と同様に支払基礎日数に含まれますので気をつけましょう。
③ 平均額を算出
4〜6月の支払基礎日数に基づいて、標準報酬の平均額を算出します。支払基礎日数によって計算方法が異なりますので、注意しましょう。
4〜6月のうち、どれも支払基礎日数が17日以上だったのであれば、支払われた給与の合計額の平均額がシンプルにそのまま標準報酬月額となります。
もし、4〜6月のうちで支払基礎日数が17日に満たない月が1つでもあるのであれば、その月を除いて平均額を算出し、標準報酬月額の決定に利用します。5月のみ17日未満だったのであれば4月と6月に支払われた給与の平均額が標準報酬月額のもととなります。4月のみ17日以上であったら、そのままその月の給与が標準報酬月額の決定に利用されます。
場合によっては、4〜6月のうちどの月も支払基礎日数が17日に満たないこともあるでしょう。この場合は、これまでに用いていた標準報酬月額を用いて定時決定します。
④ 標準報酬月額保険料額表で等級を確認
4~6月の平均賃金が算出されたら、標準報酬月額保険料額表に基づいて等級を確認しましょう。なお、標準報酬月額保険料額表は、全国健康保険協会であれば都道府県別によってありますので他県のものと混同しないように注意が必要です。
都道府県別の標準報酬月額保険料額表は、全国健康保険協会のWebサイトから過去の分も含めて確認できます。
⑤ 届出書に記載
標準報酬月額保険料額表から等級が確認できたら、届出書に記載して算定基礎届を作成します。
算定基礎届には提出者記入欄に加えて、被保険者の項目を一人ずつ埋めていく必要があります。記入が必要な項目は全部で5つです。
- 被保険者整理番号
- 被保険者氏名
- 生年月日
- 適用年月
- 個人番号(基礎年金番号)※70歳以上の場合のみ
書類に記載されている指示に従い、これまで確認してきた内容を正確に記載しましょう。
5. 算定基礎届についてよくある質問
ここからは、算定基礎届についてよく生じる疑問について紹介します。記載ミスをした算定基礎を訂正したい場合や、未提出となった場合どうなるのかについて解説していきます。
5-1. 算定基礎届を訂正するには?
算定基礎届の訂正方法は、提出前と提出後で異なります。
提出前に記載を訂正したい場合には、二重線を引いて訂正する方法で問題ありません。訂正印は不要です。
提出後の算定基礎届を訂正したい場合には、すみやかに年金事務所に連絡し、再提出の申出をおこないます。訂正専用の書類はないため、新たな算定基礎届の用紙の上部(表題部分)に「訂正届」と赤字で記載します。また、誤っている金額を赤字で記載し、正しい金額を黒字で記載します。その他の訂正がない項目は、黒のまま再度記載して提出します。
訂正後の内容によっては、添付資料が必要となることもあるため事前に年金事務所に確認するとよいでしょう。
5-2. 算定基礎届を提出しないとどうなる?
算定基礎届や月額変更届を提出しない場合や虚偽の内容を提出すると、厚生年金法などによって「6ヵ月以下の懲役または50万円の罰金」が課される可能性があります。
納期をしっかりと守り、正しい内容を記載できるよう余裕をもった対応を心がけましょう。
6. 適切な金額の社会保険料を支払うために算定基礎届を正しく作成しましょう
健康保険や介護保険、厚生年金といった社会保障を受けるために、社会保険料は必要です。適切な金額の社会保険料を支払うために、算定基礎届は正しく作成しなければいけません。まずは、その被保険者が算定基礎届の対象者かどうかを確認し、続いて標準報酬月額を正しく計算しましょう。
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一方でこのような手続きは、実際に従業員の給与から控除する社会保険料の金額にダイレクトに紐づくため、書類の記入内容や提出はミスなく確実に処理しなければなりません。しかし、書類の記入欄は項目が多く複雑で、さらに申請書や届出にはそれぞれ期限があり、提出が遅れた場合にはペナルティが課せられるケースもあります。
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