最近あらゆる場面で「モチベーション」という言葉を耳にしませんか?
ビジネスの場においても「モチベーション」という言葉は用いられています。
この記事ではビジネスの領域におけるモチベーションの定義や、従業員のモチベーションを高める方法について解説します。
目次
1. モチベーションとは?
モチベーション(motivation)はラテン語からきており、motive(動機)から派生した言葉です。 一定の方向や目標に向かって行動し、それを維持する働きを表し、「動機付け」「やる気」「意欲」を意味しています。
主に「行動を起こすきっかけとなる刺激や意欲」といったニュアンスで用いられます。 また、モチベーションには以下のような2つの構成要素があります。
・内的動機付け
・外的動機付け
1つ目は外的動機付けです。
外的動機付けとは、外部からの影響が動機付けとなる要因のことであり、営業成績に応じた報酬、昇給や昇格など企業が従業員に対して与える待遇がきっかけになる動機を指します。
即効性はありますが目先の目標にとらわれるようになり、長期的な利益を打ち出せなくなったり、アイディアや創造性が乏しくなったりする恐れが見込まれます。
効果が短期的であることから、外的動機付けはモチベーションを持ってもらう“きっかけ”にしか過ぎないということを念頭においておく必要があります。
・内的動機付け
もう1つの構成要素が内的動機付けです。 内的動機付けは従業員自身から湧き上がる仕事への興味や関心が関係しています。
スキルアップのための資格取得や、従業員自らが能動的に動くことがきっかけで発生し、自ら意義を感じて行動を起こしているため、効果が持続しやすく自発的な行動による成長が期待できます。
従業員1人1人の内的動機付けを刺激し、モチベーションを高める・高い状態を持ち続けられる取り組みを行うことで効果を得られます。
2. モチベーションに関する考え方
モチベーションを語る上で、人事領域では以下のような2つの代表的な理論があります。
・マズローの5段階説
一つ一つ詳しく解説します。
【理論1】ハーズバーグの二要因論
1つ目はハーズバーグの二要因理論です。 アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱し、「動機付けの要因」と呼ばれる満足度を計る要因と、「衛生要因」と呼ばれる不満足度を計る要因、2つの要因からなる理論です。
動機付け要因は達成感や承認など内面を、衛生的要因は給与や福利厚生などの外部の状況をそれぞれ表しています。
この理論が提唱された当時は産業革命真っ只中で、個人の生産効率を如何に発揮させるかが重視されていました。 ハーズバーグ氏は仕事における個人の生産効率を上げる中で、仕事への態度を決める要因について探ることがきっかけで、この理論が生まれました。
2つの要因は異なる意味合いを表していますが、どちらか一方を満たしても問題の解決には至らず、2つの要因を満たして初めて従業員のモチベーション向上に繋がります。
【理論2】マズローの5段階説
2つ目の理論はマズローの5段階説です。 アメリカの心理学者のアブラハム・マズローが提唱し、ビジネスにおいては広く取り入れられています。 「人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されている」とした心理学理論で、上から
・承認欲求
・社会的欲求(所属と合いの欲求)
・安全の欲求
・生理的欲求
が積み重なっています。 1つの欲求が満たされると次の欲求を望むとされています。
ビジネスにおける動機付けに関係が深いのは承認欲求と自己実現の欲求の2段階です。
2つの欲求はそれぞれ、
→自分の能力を発揮したい、自分らしく・自分にしかできないことを成し遂げたい欲求
承認欲求
→他者から尊敬されたい、認められたい、所属する組織や集団の中で評価される、能力を認められる欲求
を表しています。 この2つの欲求が満たされると従業員のモチベーション向上に作用します。
3. 従業員のモチベーションが高いと?
従業員にモチベーションを高く保たせることは重要だと認識していると思います。 では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
【項目1】離職率の低下
モチベーションが高いことで従業員がポジティブな気持ちで仕事に打ち込むことができるため、離職率の低下に繋がります。 メンタルも安定するため、充実感も生まれます。
また、従業員のモチベーションが高いことで会社の定着率も高まり、新規従業員の採用にかかるコスト削減も期待できます。
削減できた分のコストで従業員の福利厚生の充実や給料を上げることに回すことができることから、従業員の外的動機付けを刺激することにも繋がります。
【項目2】チーム内の雰囲気の向上
仕事をしていく中で、チーム内のコミュニケーションを行うことは大切です。
モチベーションの向上はコミュニケーションの活性化を生み、親密で丁寧なコミュニケーションを取ることで互いを知り、認め合うことで信頼関係が生まれることにも繋がります。
信頼関係の構築が行われることで互いに良い刺激を与えあえる関係になり、チーム内の雰囲気の向上が期待できます。
【項目3】労働生産性の向上
労働生産性とは従業員1人あたり、あるいは1時間あたりにどれほどの成果を生むことができたかを示す指標のことを言います。
モチベーションが高まることで、従業員が意欲的に仕事に取り組むようになるだけでなく、少ない労働力でも業務を行うことが可能になります。
4. 従業員のモチベーションが低下する原因
従業員のモチベーションを高めることで得られるメリットは数多くあります。一方で、従業員が不満やストレスを溜めてしまい、モチベーションが大きく低下する例もあります。
モチベーションの低下や意欲減退が起こる原因は人それぞれです。なかでも、人事評価や業務のミスマッチがモチベーション低下につながるケースは多いものです。それぞれのパターンについて詳しくみていきましょう。
4-1. 不当な人事評価
会社の人事評価は従業員のモチベーションに大きな影響をもたらします。
人事評価で低い査定を受けると従業員は「認めてもらえない」「正当に評価されていない」という印象を抱きます。これによって大きなモチベーション低下が起こり、生産性や業務効率も下がりやすくなります。
不当な人事評価は従業員の離職につながるおそれもあります。優秀な人材の流出を防ぐためにも、人事評価によるモチベーション低下を避ける工夫が必要となります。
従業員のモチベーションを維持するためには、適切な評価を行うことが重要です。人事評価は本来、従業員を評価してその成長を後押しするためのものです。人事評価によるマネジメントで従業員のモチベーションを高めれば、業績向上や売上アップといった嬉しい効果も得やすくなります。
4-2. やりたい仕事ができていない
従業員のモチベーションがなかなか上がらない場合、その原因は仕事内容にあるのかもしれません。本人がやりたいと感じている業務と現実の仕事内容にギャップがあると、モチベーションは下がりやすくなります。
とくに、業務内容がルーティン化しているケースでは、目の前の業務に対して「面倒な作業」という印象を抱いてしまうため、モチベーションの低下が顕著になります。興味の持てない業種のルーティンワークを楽しむことは難しいものです。
業務のミスマッチが生じていると、従業員は仕事に対してやりがいや達成感、将来性を感じられなくなっていきます。また、業務に対して目標やキャリアビジョンを持てなくなることも大きな問題です。
従業員のモチベーションを維持するためにも、適材適所の人材配置を意識しましょう。より適正の高い業種への配置を実行すれば、従業員は高い意欲を持って楽しみながら仕事を行えるようになります。
5. 従業員のモチベーションの高め方
ここまでモチベーションが高いことのメリットについて紹介しました。
以下ではモチベーションの高め方の具体例について説明します。
【方法1】職場環境を整える
従業員のモチベーションは職場環境の整備具合によって変化します。
オフィスが視覚的に汚れている、異臭がする、ミーティングを行いたくても場所がないといった状況になっていた場合、従業員はどのような感情を抱くでしょうか。 仕事のやる気が低下し、モチベーションの高かった従業員も下がってしまう恐れがあります。
掃除が行き届いている、コミュニケーションを行えるワークスペースが整っている、一休みできる空間がある、などの環境が整っていれば、仕事に対するやる気も上がり、結果的にモチベーションの向上に繋がります。
【方法2】目標を明確にする
仕事に関わらず、目標もなく行動すると大きな成果を生み出すことが難しくなります。
自らが行っている業務が組織や社会にどのように反映されているのかが明確になると、実感が湧きモチベーションが高まります。
成果や貢献度を具体的な数値で提示したり、表彰するといった形で視覚化したりすることで、モチベーションアップが期待できます。
【方法3】定期的な面談
モチベーションを高める上で、成果に着目することも大切ですが、目標達成までのプロセスに着目することも大切です。
目標に向けた取り組みの確認やフィードバックの提示、プロセスを細かく評価することで従業員にとっては小さな成功体験の創出に繋がるだけでなく、今後の方向性も見えてきます。
取り組み例として、チームでの定例ミーティングや上司と部下との1on1ミーティングが挙げられます。
6. テレワーク社員のモチベーションを維持するには
テレワークは働き方改革をきっかけに注目が集まり、コロナ禍以降では世間的に認知されるようになりました。
オフィスに出向かなくても勤務ができるメリットがある一方で、モチベーションを維持することが難しいというデメリットもあります。
また、従業員によって作業環境が異なることから能率性に差が生まれたり、本来持っている実力を発揮しにくくなるという懸念点もあります。
以下ではテレワークでもモチベーションを高める方法について紹介します。
・オンとオフの切り替えをはっきりさせる
テレワークを行う人の多くが自宅を拠点にしています。
自宅であれば、目の前にはいつもの生活空間が広がっているため、ついだらけてしまったり、家族がいて集中できないといった声もあります。
このような悩みを解決する方法の1つに、仕事をする時間の“オン”のモードと、プライベートの時間の“オフ”のモードの切り替えがあります。 具体例として、
・仕事部屋とプライベートの部屋を分ける作業スペースの確保
・“オン”と“オフ”の時間の区別をつけるために就業時間の明確化
などが挙げられます。
・従業員間のコミュニケーションの機会を増やす
先ほどモチベーションを高める方法の中で、コミュニケーションを取ることが大切であることについて触れましたが、テレワークになってしまうと、対面でのコミュニケーションをとることが難しくなってしまいます。
オフィスであれば、周りに多くの従業員がいるため、ふとした瞬間にコミュニケーションを取ることは可能ですが、テレワークとなると自分1人しかいないため、コミュニケーションを取る機会が減り、モチベーションを上げるきっかけがなくなってしまいます。
しかし、チャットツールやオンライン会議システムなどを効果的に用いることで、仕事の進捗状況を確認できるだけでなく、コミュニケーションを促しモチベーションの低下を防げたり、リフレッシュの効果が期待できます。
7. まとめ
今回はモチベーションの高め方について解説しました。 冒頭でも触れたように、内的動機付けによるモチベーションをもった従業員が多いほど、長期的にモチベーションを維持することが可能になります。
長期的な取り組みにより効果が実感できると従業員1人1人の生産性向上による業績アップなど、企業全体にも良い結果をもたらします。
自社に合った従業員のモチベーションの高め方を見つけ、一度検討してみてはいかがでしょうか。